【学校での一幕】
・イチャイチャ
「ほら命、ちゃんとピーマン食べて」
「いやだ。だって苦いんだもん……萌葉さんあげる」
「うーん……命ちゃんがあーんしてくれたら食べよっかな?」
「ほら、あーん」
「なっ……! だったら私が食べる!」
「白銀圭と藤原萌葉。まるで月と太陽のごとくこの秀知院学園に君臨していたマドンナ二人の間に、久遠命が彗星のごとく現れたな……」
「美少女三人組てぇてぇ……」
・眠かった
「命、起きて。授業始まっちゃうよ?」
「うーん……あと5分、いや5時間……」
「放課後になっちゃうよ? もう、知らないからね」
──5分後。
「久遠さん、大丈夫ですか。体調が悪いなら保健室に行きますか?」
「え、あ! ごめんなさいお母さん……!」
呼びかけられて目を覚ましたボクは、ガタリと机を震わせて立ち上がった。
目の前には目を丸くする先生の姿。
え、今ボクなんて言った……?
「せ、先生はお母さんではありませんよ……?」
「だから起きろっていったじゃんバカ……」
「くすくす……命ちゃんかわいー」
「先生のことお母さんって言っちゃうの、あるあるだよねー」
「ほ、ほわわわ──」
恥ずかしすぎんだろぉ──!?
・演劇部入部条件
「君が演劇部に入部したいって言ってきた久遠さんだね。初めまして」
「はい」
ボクは演劇部の見学に来ていた。
「前の学校では、何か部活はしていたの?」
「演劇部と放送部を掛け持ちしてました」
「いいねぇ。即戦力じゃん。なら入ったらすぐ練習に参加してもらおっかな。あと一つだけ、うちの部には絶対的な入部条件が一つあるんだけど──」
「なんですか?」
「恋愛禁止ね」
「えっ」
「恋愛禁止ね」
なんで!?
「前に演劇部の生徒が男女関係で問題起こしたらしくてさ、それ以来顧問の指示でこうなってるの。悪いけど納得してもらえないかな。ちなみに彼氏がいるなら、入部か彼氏、どっちかを諦めてね?」
「あ、彼氏いないので大丈夫です」
・告白された
「久遠さん、私と付き合ってください!」
「ごめんなさい」
ボクは体育館裏で告白してきた生徒を振っていた。これでもう何回目だろうか。
いつの間にか『久遠命には恋人がいない』という話が広がって、ワンチャンを狙った生徒の何人かがボクに告白してきてる。顔も知らないのにいきなり告白とかどういうことだよ……。
「理由を聞いても良いですか ……?」
「君のこと知らないし、あとボク好きな人いるの」
「うっ、ですよね。ちなみに久遠さんの好きな人って……?」
「言うわけないじゃん」
「その人とはお付き合いされないんですか?」
「一回告白して振られてるの。今は脈アリそうだけど……ちょっと社会的に許されないから、付き合うのは無理そうなんだ」
今まさに四宮と四条がぶつからんとしてるときに、ボクと四条先輩が付き合ったらやばいって。ロミジュリどころじゃないよ。日本経済巻き込んじゃうって。
「そう、でしたか。頑張ってください! 久遠さんの恋が実ることを祈ってます!」
そう言って、ボクに告白してきた
うん、なんで男女関係なくボクに告白してくるのかな???
後日、ボクの好きな人は姉さんか萌葉さんのどちらかという噂が流れた。
社会的に許されないってそういう意味じゃねぇから!?
【大人の階段を登らせた日】
『もしもし、命ちゃん』
「兄さん、どうかしたの?」
中等部生徒会の
『四宮が家で飯を食うことになってな。今日は圭ちゃんがご飯当番だし……良かったら命ちゃんもどうかと思って』
「姉さんの手料理? ふーん、まぁ、行ってあげても良いかな」
ねえねの手料理だって!? 行くに決まってるじゃないか!
「……って、それ姉さんに確認取ってるの?」
『いや、まだ取ってないが』
「はぁ……勝手に人数増やされるとか、料理当番からしたら噴飯ものだよ? そんなんだから姉さんに怒られるんだよ、兄さんは」
『うっ、すまん……』
『ごめんなさい命さん、やっぱり私帰りま──』
「あ、いえいえかぐやさん! 丁度中等部にいるから姉さんにはボクから話しておきますよ!」
彼女に気を使わせるなよ、バカにいに。
「姉さん」
ボクは萌葉さんと一緒に帰り支度をしている姉さんに声をかけた。
「実は兄さんとかぐやさんが──」
「あ、命ちゃん。実は圭ちゃんと一緒にうちでお泊まり会するんだけど、命ちゃんも良かったら一緒に来ない?」
「ちょっと萌葉、まだ行くとは言ってないじゃん……!」
「え、姉さんって今日料理当番じゃないの?」
「そうだよ? 本当はお父さんが料理当番だったんだけど、飲み会で……え、なんで知ってるの?」
「あ、いや。なんとなく? 第六感かな?」
「どういうこと???」
……待てよ。ということは今兄は家でかぐやさんと二人っきりってことだよな。
「そういうわけだから萌葉、私は家に──」
「よし行こう! 藤原一家にはそのうち挨拶しに行きたかったんだよね。兄さんにはボクが伝えておくから姉さんも行こうよ!」
今、蛹から蝶が羽ばたこうとしてるんだよ。それを邪魔しちゃいけないんだ……ッ!
「もしもし兄さん! ボクは姉さんと一緒に藤原家にお世話になるから、それじゃ! あとは楽しんで!」
『命ちゃん、それはどういう意味──』
よっしゃ、藤原家へレッツゴー!
藤原一家+ボクたち双子+TG部で宇宙人狼することになった。
姉さんとボクで皆殺しにしてやった。
ふーっはっはっは──!
【藤原千花の日】
「かぐやさんと会長がイチャイチャしてて辛いんです!」
その日喫茶店に訪れた千花さんはそんなことを言い始めた。
「何言ってるの千花ねぇ」
「何言ってるんですか、千花さん」
また変なことを……。というか、ついに二人が付き合ってることに気がついたのね。だいぶ遅かったな。
「その反応、二人ともさては知ってましたね。兄が彼女とイチャイチャしてても何とも思わないんですか? お兄さんが取られてるんですよ!?」
「別に。むしろ兄さんが幸せそうなのはウェルカムですよ」
「かぐやさんが幸せそうなら私は別に。お兄ぃもまぁ、報われても良いんじゃない? って感じだよ」
「そうでした、この二人はブラコンでも独占欲はないんでした……!」
何だよブラコンって。失礼だな。
「むしろ千花ねぇは何がそんなに不満なの?」
「だってかぐやさんが取られたみたいじゃないですか。あの二人、もう子どもができちゃうようなことも済ませちゃったんですよ?」
なんと。兄さんめ、ついにやったんだな。おめでとう。今度お赤飯炊いてあげるよ。
「はぁ──!? ど、どどどどういうこと!? 兄さんとかぐやさんは『(自主規制)』しちゃったの!?」
「はい、『(自主規制)』しちゃいました」
こらこら、P音を重ねれば何言っても良いわけじゃないないんだよ。
「ゆ、許せない。お兄ぃめ、よくも私のかぐやさんを汚して……!」
「そうですよね、脳が破壊されますよね!」
「こんなのもう寝取られだよ……!」
「正確にはそれBSSなんじゃ……」
「人の義姉に手を出す野獣、躾のなってない駄犬め……」
姉さんから漂う闇のオーラがすごい。落ち着いて? 順序が逆だよ? 兄さんが手を出したから義姉になるんだよ?
「千花ねぇ、一緒にホームセンター行こ。私ニッパー買いたいんだよね……」
「姉さん、何を切るつもりなの?」
「圭ちゃんは甘いですね。紙やすりで十分ですよ」
「千花さんは何を削るつもりなんですか?」
だめだ、ボクが二人を止めないと兄さんがみゆきちゃんになってしまう……!
「二人とも冷静になって考えてみてよ。男女のお付き合いに性行為はつきものでしょ? 遊びじゃなくて本気の愛なんだから、そう目くじら立てないであげてよ」
「それは、そうだけど……」
「そうですけど……」
「じゃあなに? 二人は彼氏ができたときに絶対に性行為しないの? 神に誓って未来永劫処女でいるの?」
「「……すいませんでした」」
君らだって恋愛願望あるんだったら、茶化しちゃだめだよ。
「でも彼氏とか全然想像つかないな……千花ねぇはそういう相手いないの?」
「いませんねぇ。私お相撲さんと結婚するのが夢なので」
と、特殊な性癖だね?
「この中だと命さんが一番彼氏できる可能性が高いんじゃないんですか?」
「え、なになにどういうこと?」
「千花さん、黙って、お願いだから」
「命さんは一度男の子に告白してるんですよ」
「えー! なにそれ教えてよ! 将来私の義弟になるかもしれない人でしょ!? めーい、めーい、めーい──」
イライラゲージ、充電完了……ッ!
「むきゃ──!!!」
ボクに彼氏ができても絶対家族には教えてやらないからな! 面倒なことになるに決まって──。
そのとき、喫茶店の扉が開いた。どうやらお客さんらしい。
「いらっしゃいませ……あ、君たちは」
やってきたのは中等部の顔見知りたちだった。
「こんにちは、本当に久遠さんここでバイトしてたんだ」
「給仕服似合ってるね、すっごく可愛いよ」
「ありがとうございます。お席に案内させていただきます」
「「久遠さんが敬語? は、背徳感……」」
追い出すぞ?
「ふー」
「おつかれ」
同級生の二人の対応を終えたボクは再び姉と千花さんの席へと戻ってきた。
「命さん、『久遠』って呼ばれてましたよね。どういうことですか?」
「あぁ、母が離婚して姓を変えたんですよ」
「ご両親離婚しちゃったんですか!?」
「ちょっと訳アリで」
「でもこれまた珍しい苗字ですね。白銀も相当ですけど、久遠ってあんまり……あ、私のおじいちゃんの友達に一人久遠家の人がいましたね」
千花さんのおじいちゃんって、元総理大臣の人だよな?
「久遠おじちゃんはおじいちゃんが総理やってたときに蔵相やってた人でして、すっごく頑固で厳格な人なんですよ。でも中身は優しくて、飴ちゃんくれたりとか──」
へー、なんだか馴染み深い性格の人なんだな。外面と中身が乖離してる点とか特に。
「千花ねぇってその人と仲良いんだ?」
「まぁ、久遠おじちゃんは天涯孤独ですからね、私みたいな子供には優しいんです」
「天涯孤独……?」
「もともと一人娘がいたらしいんですけどあるとき喧嘩しちゃって、家を出てっちゃったらしいです。すごく悲しそうな顔で話してました。きっと後悔してるんでしょうね……」
「そ、そうなんだー」
な、なんか嫌な予感がするぞ?
「音信不通の娘さんから届いた唯一の手紙には、子どもが生まれるとだけ書いてたそうですよ。でも、娘さんは子どもを産むと同時に死んじゃってたらしくて。孫の方も今はどこにいるのか……」
「ち、ちなみに名前とか分からないんですか?」
「孫には『令』って名前をつけるつもりだったそうですよ?」
おい滅茶苦茶デカいコネが降ってきたぞ!?
はい、えー、調べたところボクらの
……まぁ、でもありがたい。これからやることを考えれば、政界とのつながりもあった方が良いしね。
「久遠おじちゃん、喜んでましたね」
「夏が来たら、家族で会いに行きますよ。千花さんも一緒に行きませんか?」
「そうですね。私も久しぶりにおじいちゃんに会いたいですし!」
……待てよ、その頃兄さんはアメリカじゃね? ごめん曽祖父様。後継者の顔見せられないかも。
「ねぇ、千花さん」
「なんですか?」
「ボク、これからとびっきりのゲームを企画しようと思うんですけど、参加者を募るなら
「それはもちろん、全世界ですよ! ゲームは参加者が多ければ多いほど楽しいじゃないですか!」
「……ふふっ、そうですね」
「というわけで雁庵さん。あなたには死んでもらいます」
約一ヶ月後、四宮雁庵の訃報が世界中を駆け回った。
【ゲームスタートの日】