羽田空港、国際線ターミナルにて一同が会していた。
いやー、まさかこんな大所帯になるとは思ってなかったな。
「えーっと、メンバー確認します。まずは兄以下、高等部生徒会の皆さん」
「全員いるぞ」
「まさかかぐやさんを助けるために海外に行くことになるとは思ってませんでしたよ、はい」
「僕はこれが初海外なんだけど、大丈夫かマジで……?」
「安心して石上。私もよ」
兄、千花さん、優さん、ミコさん。
「続いて四条家の双子」
「いるぞ」
「いるわよ」
帝先輩に眞妃さん。
「そして千花さんのお母様」
「今日は外交畑を代表して同行するわ。上はあまり大ごとにはしたくないらしいわね」
四宮家が穏当にことを済ますよう日本政府に言い聞かせてるからね。
そりゃそうだろ。四宮の娘が自作自演とは言え攫われているんだぞ? 80年前なら開戦事由に値するからな。本来ならもっと大騒ぎだ。
誘拐にはちゃんと現地のはぐれもの雇ってるし、四宮家が関与した証拠も消してるから傍から見たらガチ事件にしか見えない。いや、両国政府からしたらガチ事件なんだけども。
「そして奈央さん」
「護衛として同行させていただきます」
「最後にお母さん」
「……私、必要かしら。まぁ交渉事なら役に立つとは思うわ。もともと四宮商事で働いていたわけだし」
はい、お母さんズ三人である。千花さんのお母様とは前にお泊りしたときに会ったから、一応会うのはこれで二度目だね。
「早坂さんに白銀さんね。千花から娘さんと息子さんの話を良く聞いているわ。一度会ってみたかったのよ」
「こちらこそ、娘の愛がお世話になっております」
おいおい、井戸端会議的始めないでよ。あと今は久遠です。離婚してるので。
「……どうしましょう、命。母親同士の会話なんてどうしたら良いか分からないわ」
そして母さんは参加する気なのかよ。
「奈央さんのプロット丸パクリしたら?」
「……おほん、こちらこそ息子がお世話になってまして、なんでもリボンさんはママ役をしてくださっているとか」
「ごめんなさい千花、通訳してもらえないかしら?」
「会長のお母様! 私のお母様に変なことを吹き込まないでくださいよ!?」
「白銀家のご両親ってどちらもお金払えるくらい面白いのね」
奈央さんは何を言っているの???
「えー、お母さんズは放っておくとして……四条家と四宮の代表者であるお二方は何をそんなに睨んでるんですか?」
「「……」」
はい、ボクの目の前では真琴さんと雲鷹さんがバッチバチに睨み合っています。
「鼠が……まだ腐ってなかったか……?」
「あいにく我らはまだ生きているのでね。そちらはもはや堆肥となってしまったと聞いたが? 良い芽が芽吹くと良いな」
「お父様と雲鷹おじさま、昔っから仲悪いのよね。どうしてこの人選にしたわけ?」
眞妃さんが呆れたようにそう言った。
仕方ないだろ!? おハゲは日本に残らなきゃだし、次男は論外。代表になれるのが三男しかいなかったんだよ! むしろなんでそっちは当主が来るんだよ!?
「お二人共、ちゃんとパーティーでは四宮と四条が和解していることを示してくださいよ?」
頼むぞマジで。
「それで命ちゃん、現地に着いたらどうする?」
「大きく2チームに分かれましょうか。ボクと帝先輩、そして四宮と四条代表の二人は両家の結束を示すべく上流階級の集いに参加します。生徒会メンバーと眞妃さんとお母さんズはかぐやさん救出を優先してください」
「私は現地に着いたら大使館に向かうから、通訳は千花に任せたわよ」
「娘の愛が先行して現地で情報収集をしておりますので、そこから手がかりを探りましょう」
それでは我らドリームチーム、出撃!
「はぁ……はぁ……なんとか俺たちで四宮を誘拐した山賊の居場所を突き止め、現地当局と協力し壊滅させたぞ。こんなチベット高原の奥地とは思わなかった。それにしても早坂のお母様強すぎだろ……」
「恐縮でございます、御行様」
「肝心の四宮は──」
『もしもし、御行くん?』
「早坂か! 四宮の救出は……!?」
『山賊狩りの間にかぐや様と接触したは良いんだけど、残党に追われて逃げてて合流できそうにないです』
『会長、聞こえますか。ほんとに助けに来てくれたのですね。うれしい……』
「四宮か! 無事で良かった……今どこにいる?」
『インドにいます』
「……は?」
『追っ手から逃げていたら、いつの間にかインドにいました。それも宗教的な係争地に来てしまったみたいで、ヒンドゥー教徒の住民とイスラム教徒の住民たちが争っていて私の身が危険なんです。かいちょ……たすけて……?』
「っしゃおらぁ! お前ら次はインド行くぞぉ!」
「まったく、白銀会長って現金な人ですね」
「ところで愛さん。住民の皆さんが何やら手作り感満載の武器を持ち出しているみたいですけれど、あれも四宮家の仕込みなの?」
「いえ、ガチの紛争です」
「絶対に逃げなきゃじゃない!?」
「はぁ……はぁ……なんとか俺たちで住民たちを説得し言葉で和解させたぞ。藤原と伊井野と四条が間に入ってくれて助かった……」
「ラブ&ピースですね!」
「近代法は宗教の垣根を越えるべく存在しますから。藤原先輩がいなければ話すら聞いてもらえそうにありませんでしたけど……」
「四条家のネームバリューも忘れないでほしいわね」
『もしもし、御行くん?』
「早坂か!? 今どこ──」
『過激派に攫われて中東の何処かにいます。早坂と一緒に現在逃走中です。かいちょ……たすけて……?』
「っしゃおらぁ! お前ら次はアラブに行くぞぉ!」
「はぁ……はぁ……取り敢えず過激派の資金源を特定し、命ちゃんたちに圧力をかけてもらい、そしてまた現地当局と協力して過激派を壊滅させたぞ……?」
「僕、まだ何も役に立ってない気がする……」
「石上は捕まってた人質たちを解放してあげたじゃない。か、かっこよかった、わよ……?」
「たまたま近くで伊井野さんのお母様が活動していて助かりましたね。彼らは国連が運営する難民キャンプで受け入れてもらえるそうですよ」
『もしも──』
「次はどこだ四宮!?」
『攫われて地中海を渡ったみたいで、多分今イタリアにいます。かいちょ……助けて……?』
「っしゃおらぁ! お前ら次はイタリアに行くぞぉ!」
『私、もはやかぐやの電話交換手になってる……』
「はぁ……はぁ……とりあえずイタリアンマフィアは今後30年は表で活動できないようにしてやったし、麻薬流通ルートも全部摘発したぞ。フランス校の生徒会が手を貸してくれて助かった……」
『日本の生徒会がイタリアでマフィアとやり合ってるとベツィーから聞いたときは意味が分からなかったが、そうか。ミユキは労働者階級出身にしてブルジョワ階級のシノミヤを娶ろうとする、革命の戦士なのだな』
「はは!
「大丈夫ですか!? フランス校の生徒会長滅茶苦茶アカいんですけど!?」
「藤原先輩、言うてうちの生徒会室にも学生運動の名残で秘密の部屋があるくらいですし、これが普通なんじゃないんですか?」
「石上、秘密の部屋ってなに? 私が知らなかっただけで、秀知院学園は魔法学校か何かなの?」
『もしも──』
「次はどこだ四宮ぁ!? 南米だなぁ!? ヨシッ!」
「……私、役に立ちそうな現地企業や人材に目星をつけて取り込んでいるだけなのだけれど。これは役に立っているのかしら」
「大丈夫です白銀様。御行様の今後を考えれば、そちらのほうが有意義かと」
一方その頃、日本では後にリーマン・ショック以来最悪の経済危機と呼ばれるガンアン・ショックが始まっていた。
「売られた株は全て買い支えろ! 外資のハゲタカどもには鐚一文も渡すな! 四宮90万どころか日本のサラリーマンの命運は俺たちにかかってるんだぞぉぉああ──!!!」
黄光は発狂した。
「俺が死んだという誤報で世界がとんでもないことになってやがる……」
雁庵は困惑した。
「あ、あれ。サクラをちょっと仕込んだだけなのに滅茶苦茶大ごとになっとる……」
命は冷汗をかいた。