ドンガラガッシャーン……!
それからというものの、デビルズパレスはより一層賑やかになった。
「主様、大丈夫ですか……!」
これは、あとから聞いた話なのだが、ある日ベリアンが厨房に駆け込むと、そこにいたのは主様ではなく、旦那様が派手に転んだ姿があったのだという。
「ごめんね、ベリアン。トオルがまた変なことで張り切っちゃったみたいで……」
倒れている旦那様の横には主様がいて謝罪をしている姿は、その場にいなかった俺でも簡単に想像出来た。
「張り切ったとは、どういうことでしょう……?」
主様の発言に、ベリアンはかなり困り果てただろうな。
「ごめん、ベリアン……」
そこによろよろと旦那様が立ち上がったそうだ。自分に被った様々な調理道具を避けながら。
「執事のみんなにいつものお礼をと料理に挑戦したんだけど……挑戦する前に、俺は道具のことを理解しないとダメみたいです」
と言う旦那様は、非常に不器用な人だった。
何かやろう、手伝おうという意欲はあるものの、その手先はついてこられず毎回この屋敷に囁かなトラブルを引き起こしていた。俺はそれらを庭のどこかで寝転がりながら、あ、今日も賑やかだな、なんて思いながら眠りにつく。
「あ、ハナマルさん! 今日はそんなところにいたんですね!」そこにムーがやって来た。「ハウレスさんたちが探していましたよ! 今日は連携特訓だって!」
「えぇ、面倒くさいねぇ……」
ちょっとムー、肉のササミをやるから見なかったことにしてくれよ、なんて交渉をしながら、俺は主様と旦那様の幸せを願った。もし主様を泣かせるようなことをしなら、トオルくんから取り上げてしまうぞ、なんて思いながら。
「肉のササミは魅力的ですけど……そんなことしたらハウレスさんたちが困りますし……」
とムーが悩み始めたところで俺はさっさとこの場から逃げようとしたが、間もなくそれは誰かに阻まれた。
「ハナマルさん、今日という今日は逃がしませんよ?」
「ゲッ、ユーハンちゃん……」
突如現れたユーハンに行く手を阻まれる俺。コイツ、俺を探すのにだんだん慣れてきていないか? それはちょっと困るんだよな、と思いながら足元のムーに助けを求めようとしたが、それは無理のようだ。
「これで逃げられませんね、ハナマルさん!」
俺はここから逃げることより、訓練とやらをどうやって手抜きするかどうか考えた。どうやっても、ここから逃げ出すことは難しいみたいだし……。
「あ、そーだ! 今日、旦那様と約束があって……」
「なら早めに訓練を終わらせましょうか?」
ユーハンは俺の嘘に対して切り返すのも早くなった。
「面倒くさいねぇ……」
俺は呟き、屋敷の方へ視線を投げる。まだ屋敷の方は騒がしかったが、どうせ旦那様が転んだとかなんかなのだろう。
今日もデビルズパレスは、平和だ。
おしまい