神のお告げですよ皆さん! 〜我が青春は神と共に〜 作:ウズベ
だけど出てくるのはまだ少し先の話
エデン条約を巡る事件が終わり、ニキの周りではしばらくは平穏な日常が続いていた。そんな中ニキは……
「ダメだ〜!」
新しい魔法陣を開発していたが、大した成果がなかった。もちろんアヤネの監視付きで。
(本当に効果があるのかなぁ……)
半信半疑だったアヤネの目の前でニキが懸命に魔法陣を描いていた。
「ねえ、ちょっと貸してみて」
アヤネがニキの描いた魔法陣にほんの少し追記を行う。すると魔法陣が点滅を始めた。
「え、できちゃった……」
唐突に出来上がった魔法陣にアヤネがぽかんとしていたが、ニキが感激の涙を流していた。
「流石ですアヤネちゃん! これぞ神の恩恵、早速私で実践を!!」
物怖じせずに魔方陣を踏みにいくニキだったが、何も起こらなかった。
「おかしいですねえ、そんなはずは……」
魔法陣に出たり入ったり、踏んだりを繰り返していったが大した効果も見られずその場は終わった。その魔法陣の効果が何なのか、それは後になって分かるが今はまだ語らないでおこう。
それから数日が過ぎた。無事に外出禁止を解かれた彼女は電車に乗っていた。この日は皆、別々の予定で暇を持て余していたので雑誌で話題の公園に遊びに行っていた。
「子ウサギ公園、ですか……」
いざという時の儀式のセットを持ちながら目的地に向かう。しかし、なぜか園内は騒然としていた。
「?」
公園を歩いていた彼女だったが、突然ウサギのヘルメットをかぶった少女に銃を向けられた。
「なにものだ!?」
「へ? ただの、観光客ですよ」
「そこから離れて!!」
二人の背後からヴァルキューレ警察学校の生徒が現れた。
「ヴァルキューレの!?」
戸惑うニキだったが、銃を向けたヘルメットの少女がいきなり発砲を仕掛けてきた。
「ちょ、儀式のセットが!?」
「あぶないですよ!」
ヴァルキューレの生徒が慌ててニキをその場から逃がした。
「大丈夫ですか!?」
「いえ、それよりも彼女たちは?」
二人で逃走を続けるが、園内からは銃声や爆発音、さらには車両のサイレン音が響いていた。
(どうしてこんなことに?)
何とか逃げ回る二人はやがてヴァルキューレの本部付近にまで接近した。
「待て!」
先ほど銃を向けた少女が攻撃を仕掛けに来た。
「危ない!」
咄嗟にヴァルキューレ生が盾を構えるが、貫通されてしまった。
「そんな!?」
(見たこともない装備!?)
慌ててプライムフォーチュンで攻撃するが、ひらりとかわされてしまい反撃を受けた。
「はっ、そんなもんか!」
すると、小型のドローンらしきものがその場に乱入し、ニキとヴァルキューレの生徒に不意打ちを仕掛ける。
「Rabbit2、もたもたしないでください」
声の主は冷静に指示するが、舌打ちと不服そうな表情を浮かべながらRabbit2がさらに攻撃を仕掛ける。
「させません!」
立ち上がったニキは全身を発光させてその場から一時逃走した。
「閃光弾か!?」
何とかその場から離れたニキだったが、負傷したヴァルキューレの生徒を背負いながらの移動だったため遠くまで逃げられずにいた。
「す、すみません……」
「いいんです。巻き込まれたとはいえ、私を守っていただいたあなたを見捨てるなど太陽の神がお嘆きになりますとも」
謝罪する生徒を許しつつ、二人は茂みに隠れていた。銃声や爆発音はなおも鳴り響いており、しまいにはヘリが公園の敷地内を巡回している始末だった。
(あんなヘリ、見たことが……)
「どうしよう、アヤネちゃんたちを呼ぶべきでしょうか?」
茂みから動けずにいる中、公園の入り口に設置されたヴァルキューレ側の本部では一つの怒声が響き渡っていた。
「何をしているんだ!」
彼女は尾刃カンナ、ヴァルキューレの狂犬とあだ名される彼女はこの事態の鎮圧に動いていた。だが、ことはうまく運ばない。先遣隊が壊滅し、公園の内部より求められる救援の声と敵の反撃に彼女はいら立っていた。
「カンナ」
するとその場に先生が現れ、周囲の者たちがざわつき始めた。
「シャーレの先生!?」
「話はリンから聞かせてもらったよ。ここからは私も協力する」
「しかし……」
反論しようとするカンナだったが先生のまなざしを前に、引き下がるのだった。そして、相手の情報をカンナからもらった彼は一通り目を通すのだった。
「ですが、いかがなさいますか? 今ヴァルキューレの戦力はほとんど…… いるとしてもこの近くで彼女たちを通報した生活安全局の生徒しかいませんよ?」
「大丈夫、そのうちの二人についてはよく知っているから」
不安な表情を浮かべるカンナを安心させるかのような声色で先生は現場に向かう。
一方、ニキと負傷した生徒は様子をうかがっていたが、突然どこかから狙撃を受けていた。
「いったいどこから!?」
うろたえるニキは負傷した生徒を庇いながらヘリがカンナ率いる小隊に爆破を仕掛けようとしているのが見えた。
「まずい!」
咄嗟に飛び出したニキは”神のお告げフラッシュ”を発動して、目くらましを仕掛けるが……
「ぐはっ!」
狙撃手も分からずに飛び出したために逆に見つかってしまった。
「先生、あそこで大きな光が上がっています! 行きましょう!」
先生は現在、中務キリノと合歓垣フブキをはじめとした生活安全局の生徒たちを主体とした少数の部隊ですでに現場入りしていた。
「それにしても、あの光…… 信号弾や閃光弾の類じゃなさそうだねえ」
「ひょっとしたら……」
疑念を抱くフブキに対して先生はある確信を抱いていた。
「助けが来てくれればいいのですが……」
ニキの目の前には先ほど交戦していた生徒と無線機で連絡を取っていたであろう生徒2名が立ちはだかる。
「くっ……」
「あなたが誰なのかは知りませんが、邪魔をするなら容赦は致しません」
「Rabbit1、私が行こう。さっきの借りを返してやる」
「いいでしょう」
リーダー格の生徒が了承したことで自信たっぷりなRabbit2が前に出る。
(と、とりあえずどうにかなりますかねえ)
「はぁあああああああ!!」
力を込めたニキはプライムフォーチュンを構える。
「喰らえ! ”神に感謝する踊り”」
魔法陣を用意しようとしていたニキだったが、あっという間に距離を詰められてしまう。
「遅い」
鋭い蹴りを先に仕掛けられ、抵抗する間もなくあっさりと囚われの身になってしまう。
(速い! この人たち、なんだかこういう場面に慣れるようですね……)
「こうなったら、神の導き!」
組みつかれていた状態で放ったおみくじは周囲に散らばるが……
「も、もうだめだ、おしまいだぁ……」
なんと仕掛けたニキ本人が脱力してしまう。
(だ、大凶!? なんでこんな時に来るのですか神よ~!!)
「なんだ、こいつ?」
二人はニキの言動に戸惑いながらも縄で縛りあげようと動き出した。すると、遠くから一発の銃弾が組みついていた彼女の腕に命中する。
「あ、当たった!?」
「何者だ!?」
「悪いけど、これ以上好きにはさせないよ」
駆けつけたのは先生に率いられたヴァルキューレの生徒たちだった。
「せ、先生!? 偉大なる我が神よ!!」
(神?)
周囲が疑問を浮かべる中、ニキは涙を流していた。
「神が私たちにお慈悲をくださったのですね……!」
「大丈夫ですか、久城さん!? お怪我はありませんか?」
「え、キリノとこの子って知り合いだったの?」
キリノが肩を貸す光景にフブキがあっけにとられていたがその間に騒ぎを起こした生徒が集まっていた。数は4人。だがいずれもヴァルキューレの生徒を軽く制圧した強豪だ。
「災難だったねニキ。でももう大丈夫。ここからは私の指示に従ってくれるかな?」
「もちろんです!」
立ち上がったニキが加わり、戦闘が始まった。
当初は装備の質や実力の差が不安視されていたが、先生の戦術指揮でその差は徐々に埋められていくことになった。そんな中、ニキはRabbit2がいら立っている姿を見つけた。すでに狙撃手がフブキにより捕らえられ、勢いに翳りが見えていたため隙だらけだった。
「油断大敵! 喰らいなさい”悶絶弾”!」
不意打ちで放った一発が命中する。
「先生! こちらも終わりました」
「もごぉおおおおお……! な、なにを……」
悶絶弾を直に受けたことでそれ以上抵抗することもできず、あっけなく捕縛されたのだった。
先生が介入したことで子ウサギ公園の人騒がせな事件は終息したのだった。だが、事件を引き起こした生徒たちのことが先生はいまだに気がかりだったのだ。
「はい、これでもう大丈夫です」
ヴァルキューレの生徒による処置を施されたニキは先生のもとに向かった。
「ニキ、もう大丈夫なの?」
「はい。でも、彼女たちはいったい……」
戦いは終わった。ニキと先生は翌日、事件鎮圧の感謝を目的としてヴァルキューレに呼び出されていた。なお、すでにこのことはアビドスのみんなには知られている。
「うへ~ それにしたってニキちゃんはよく巻き込まれるねえ」
ホシノに小言を言われたのは内緒だ。
「この度はご協力感謝いたします」
「い、いえいえ! 私はただ…… 巻き込まれただけですから」
カンナからのお礼の言葉に対してたじろぐニキ。その横で先生は捉えられたRabbit小隊のことが気がかりだった。
「ねえ、カンナ。彼女たちについて改めて教えてくれる?」
「彼女たちは元SRT特殊学園の生徒達だった子たちです」
SRT特殊学園__連邦生徒会長の直属で他の自治区の制約で動けないヴァルキューレと違って制約なしで連邦生徒会の命令のもとで無制限で動けるものたちの学園だったのだ。
「そういえば雑誌で見たことあります。スーパーエリートでテレビでも特集されていましたね」
「ですがご存じの通り連邦生徒会長が失踪したことで彼女達を管理、と言いますか行動の責任の所在が曖昧になってしまったので先日閉鎖を余儀なくされていたのです」
話の中でカンナがコーヒーを3人分用意する。
「そうだったんだね…… でもどうして彼女たちはあそこで?」
「実はヴァルキューレ生としての編入を受け入れてはいたのですが、先ほどのように要求を拒んだ生徒達による暴動が起こってしまったのです……」
カンナが俯きながらコーヒーを含む。
「ありがとうカンナ。少しその子達と話をしてもいいかな?」
「え? えぇ……」
「先生! 私からもよろしいでしょうか?」
ニキが手をあげる横で二人がポカンとした表情を浮かべる。
「私のトークであの方達を必ずや説得して見せましょう!」
それからRabbit小隊の事情徴収が始まった。なおこの場にはキリノとフブキも一緒で、隊員一人一人と事情聴取を行っていたが思うように進まなかった。今回事件を引き起こしたのは以下の4名だった。
Rabbit1_月雪ミヤコ
Rabbit2_空井サキ
Rabbit3_風倉モエ
Rabbit4_霞沢ミユ
そんな中ニキはRabbit4__霞沢ミユの担当になった。すでにフブキに決まっていた中で急遽二人でやることとなった。念のためヴァルキューレ生を見張りにつけ一対一で向かい合う。
「怖がらなくていいですよ」
ニキがほほ笑むがミユはオドオドしてばかりだった。尋問ははじめフブキが行っていた。ミユに生活安全局への編入を進めるが、人見知りな彼女の顔色が悪化していき、ついには断られてしまった。
「……」
オドオドしているミユは不安そうな眼差しで周囲を見渡していた。
「ミユさん、あなたは神を信じますか?」
「え?」
「神とはなんなのか、神はどこから来たのか」
ニキはまず、勧誘を始めた。
(よし、これでまず相手に何を言ってるんだとこちらに意識を向けさせるんだ)
「祈りとは誰に捧げるのか、何を信じるのか」
(いや、なんで今その話!?)
フブキが不満げな表情を浮かべている。
「あなたは今、何を見ていますか?」
「え、ええ?」
戸惑うミユの手を握り、ニキは満面の笑みを浮かべる。
「先生ですね。あなたはあの方を見ています」
「え、ちが「違わないですよ!」」
ミユの反論を封じ込め、なおも話す。
「あの方は神なのです! あのまなざしに込められた慈悲深い御心とあなたたちを導かんとする信念、それこそあなたたちの味方である証拠!
あの方を頼りなさい、そして私ともに太陽の神の祝福を受けましょう!! さぁ!!!」
「む、無理です…… うぇええええん」
ニキの鬼気迫る演説にミユが泣き出してしまう。
「あ、あれぇ~?」
「あれぇ、じゃないよ! もう中止!!」
フブキすらあきれるレベルだったため、その日ニキは先生により帰宅を説得されやむなくアビドスに戻るのだった。
その後、ニキはアビドスで修行や神のお告げを耳にしていたが、ある日不思議な夢を見ていた。
「ここは、平原?」
振り向くとそこにはアヤネにミレニアムのユウカ、便利屋のカヨコ、ゲヘナ風紀委員会のアコとトリニティのハナコが白い服に身を包み全裸の先生の帰りに安堵していたのが見えた。
「なんだったんでしょう? あの夢……」
To Be Continued……
次回予告
次々と見える不穏な未来、それはアビドスだけではなかった!
ニキ「やはり神の祈りが足りないのでしょうか?」
そんな中、ニキがひらめいた奇策とは!?
次回、跳んで神の子
元から奇策ばかりだって?それはその通り