ダブルリードの苦労人   作:桜紅月音

10 / 127
知らない間に評価バーに色が付いていました。

ありがとうございます。



9/16日修正


10.合奏曲と苦労人

サンフェスを終え、季節は夏に向かっていく時期。

滝先生がとある発言をしたのだ。

 

 

「さて、ここからが重要な話なのですが、今年はオーディションを行う事にしたいと思います」

 

 

「え、まじ?」

 

 

「え、オーディションて?」

 

 

「はい。私がひとりひとりみなさんの演奏を聴いて、ソロパートも含め、大会に出るメンバーと編成を決める、ということです」

 

 

「ええええーーーー」

 

 

そう夏のコンクールのメンバーをオーディションで決めると言い出したのだ。

去年の我が吹部は、上級生優先。特に三年生は黙っていないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

そんな僕達は、A部門と言うカテゴリーでコンクールに出場する。この部門では課題曲と自由曲の二曲を最大55名までの編成で演奏するきまりになっていて、それ以上人数が居る場合、誰かが出場できない事になる。北宇治高校では以前から、上級生が優先的に出場してきた。つまり、ほとんどの場合初心者と一年生が外れてきたのだった。そこに突然降ってわいたオーディション。当然、反対の声は大きかった。

 

 

「難しく考えなくても大丈夫ですよ」

 

 

「三年生が一年生より上手ければよいだけのことです。もっとも皆さんの中に、一年生より下手だけど大会には出たいという上級生が居るなら別ですが」

 

 

それはそうなんだけど…だからと言って僕たちが出来る事なんてある訳もなく、

粘着だの悪魔だの酷い言われようだった。先生可哀そう。

 

 

「それで演奏する曲は先生が決めるって言ってましたよね?」

 

 

パート教室に戻ってきた僕達。岡先輩にそう聞いた。

 

 

「だから、来夢が取りに行ってる」

 

 

「じゃ、もうちょっとですね」

 

 

「曲貰ってきた」

 

 

岡先輩とそんな会話を広げていたら、タイミングよく来夢先輩がCDを手に持って現れた。噂をすればという話。

 

 

「課題曲が田坂直樹 プロヴァンスの風で自由曲が堀川奈美恵作の三日月の舞」

 

 

「知ってる?」

 

 

「いや、名前は聞いたことはあるんですけど、曲は知らないですね…」

 

 

「私も知らないんだよねー」

 

 

「鎧塚は?」

 

 

「私も知らない」

 

 

「そっか…」

 

 

「とりあえず聞いてみようよ」

 

 

と来夢先輩がCDをかけ始めた。

それをみんなでじっくりと聞き始めるのだった。

 

 

「トランペットが目立ってますよね。三日月の舞」

 

 

「香織はやる気出るだろうね」

 

 

来南先輩がそう言う。

トランペットの香織先輩は、気合入っているのは間違いない。

 

 

「ですね」

 

 

「というかオーボエもソロあるじゃん」

 

 

来南先輩がそう言った事で、何故か気合が入った。

 

 

「鈴木君、ソロ頑張ろうね」

 

 

「それはそうだけど、どっちかしか吹けないんだけど…」

 

 

本当、鎧塚の感性はよく分からない。

 

 

 

 

 

*****

 

 

「鈴木も帰り?」

 

 

練習を終え、校門を出ようとしたタイミングで吉川が声をかけてきた。

彼女もまた、帰宅のタイミングだった模様。

 

 

「うん、そっちもかな?」

 

 

「うん、じゃ、一緒に帰りましょ」

 

 

吉川は僕の隣に並んで一緒に歩き始める。

 

 

「トランペットはどう?高坂さん辺りが大変だとは思うけど」

 

 

「はぁ…本当に大変よ…」

 

 

そう言う彼女は、本当に大変そうな表情を浮かべる。

 

 

「まぁ…そうだろうね、プライド凄く高そうだし、ソロパートとか狙ってると思うし」

 

 

「それよ!」

 

 

突然大きな声を出した吉川にびっくりして、思わず後ずさりしてしまう。

本当にびっくりした

 

 

「おっと…ごめん、急に大きな声を出して…」

 

 

「問題ないから気にしないで」

 

 

「それで高坂さんがどうかした?」

 

 

「香織先輩って今年が最後でしょ?」

 

 

「3年生だし、この夏のコンクールで最後にはなっちゃうし」

 

 

「だからよ!今まで、香織先輩ってソロやった事ないでしょ?」

 

 

「うん、去年までは上級生が優先されてきたからね」

 

 

「だから、私には香織先輩に吹いて欲しいの!」

 

 

「あーそういう事ね…理解した」

 

 

「話は早くて助かるわ」

 

 

今までは三年生が優先されてコンクールに出ていた。

ソロパートに至っては尚更ね。そもそも三年生が居なかったオーボエは別として。

例年通りならば、ソロパートは香織先輩となるのだが、今年からはオーディションするときた。するとどうなるだろうか。上級生、下級生は関係ない。上手な人が選ばれる。

実力主義になる。吉川はそこら辺が気になっているのだろう。

 

 

「同じパートだから、特にそう思ってると思うんだけど…気にしすぎるのも良くないよ」

 

 

「分かってるわよ。ただ、私は香織先輩に吹いて欲しいだけ」

 

 

「吉川の気持ちは分かるけど、まだ、オーディションまで時間があるから大丈夫だよ、香織先輩も上手なんだから」

 

 

「そうね、でも、話を聞いてくれてありがとう」

 

 

「また、心配な事があったら話してくれたらいいよ。抱えるのも良くないからね」

 

 

「ありがと。あんたに話を聞いて貰ってちょっとはすっきりした」

 

 

「それはなにより」

 

 

ストレスを貯めても仕方ないからね。

 

 

「お礼に帰り、何か奢ってあげる」

 

 

「本当?」

 

 

「本当よ。あっ、でも高い物は辞めて頂戴。今、お金ないし」

 

 

吉川は恥ずかしそうにしながらそう言った。

 

 

「はいはい。ジュース奢ってくれたら十分だから」

 

 

人をなんだと思っているのだ。

そんな高い物を要求した覚えはないっていうの。全く…

ヒロインは?

  • 小笠原晴香
  • 中世古香織
  • 鳥塚ヒロネ
  • 喜多村来南
  • 傘木希美
  • 加部友恵
  • 井上順菜
  • 剣崎梨々花
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。