ただただ思いつかなかっただけです。
10/8日修正
「えっと、改めてパートリーダーの鈴木拓哉です。よろしくね」
あの後、それぞれのパート毎に分かれて説明をすることになった。
それと合わせて、お互いの自己紹介くらいはすることになった。
「鎧塚みぞれ」
『…』
みぞれの言葉足らずに、一年生の三人は困惑していた。
「みぞれ…それだけじゃ何も分からないよ…」
「そう?」
相変わらずだなぁ……
「えっと…彼女は鎧塚みぞれ、僕と同じオーボエ担当で三年生。言葉足らずだけど良い子だから…仲良くしてあげてね」
みぞれの代わりに、三人にそう説明をする。
「はい!剣崎梨々花です!梨々花って呼んでください」
梨々花ちゃんはさっき僕にしたような挨拶を再びした。
「兜谷えるです!えるって呼んでください。宜しくお願いします!」
「籠手山駿河って言います!名前は…呼びやすいように呼んでください よろしくお願いします」
「三人ともよろしくね」
『はい!』
「えっと……これで簡単な挨拶は済んだから…今からは練習の事とかの説明をするね」
『はい、よろしくお願いします』
一年生三人はとっても元気が良いね。
「練習時間は平日は18時まで、6月からは18時半って感じで、休日は大体、9時に練習開始って感じだから覚えて貰って…パート連の時にはこの教室ですることになるから。よろしくね」
『はい!』
「分からない事はまたその時に聞いてくれたらいいからね」
と言って、時計を確認する。
再集合までの時間まで時間はあったのを確認して
「えっと、時間までちょっとだけ時間あるから聞きたい事があったらここで聞きます」
すると梨々花ちゃんが手を挙げた。
「梨々花ちゃん」
「先輩って誰かと付き合ってたりしますか?」
梨々花ちゃんの口から飛び出してきたのはまさかの恋愛事だった。
女子が大半を占める吹部にとっては、欠かない話題だった。
それは新一年生も例外ではなかった。
「おっと、恋愛事が来るとは思ってなかったな」
「あっ。それ私も聞こうと思ってた」
梨々花ちゃんから問いにえるちゃんも乗ってきた。
「えっと…誰とも付き合ってないよ」
僕がそう答えると、一年生三人はテンションが上がっていた。
「随分とモテてるね拓哉」
「みぞれ…久しぶりに口を開けたと思ったら言うのはそれなのか…」
みぞれから飛んできた言葉に若干呆れ半分にそう言う。
「なら、私達にもチャンスがあるって事ですね」
「まぁ…そういう事になるね」
誰とも付き合ってない中、一年生にもチャンスがあるのはそうだけど
「チャンスがきたら狙ってみようかな…?」
梨々花ちゃんがボソッと言ったのだが、みぞれが聞こえていたみたいでこう返した。
「剣崎さん、拓哉の事を狙ってるのは剣崎さんだけじゃないよ」
「やっぱりそうなんですね」
「うん」
「なら、私達は先輩達よりも不利な立場にいるので出来る限り接点を増やしていかないと、ですね」
「うん、かかってきて」
こんなみぞれは見た事ない…
こんな会話をしていると、あっという間に時間が近づいていた。
「そういうわけですので、しばらくの間1年生は加部さんと黄前さんが見ます。あとでそれぞれ集まってください」
音楽室に戻ると、他のパートも帰ってきていた所だった。
音楽室に入ってくる滝先生。扉に頭をぶつけていた。
「痛っ、ああすみません。少し早かったですか」
滝先生の登場に、新入生は湧いていた。
一年共にしている二年生、三年生の女子からは特にわーと言った歓声は無かった。
「それにしても随分集まりましたね、これだけの人数がいれば、きっと演奏にも厚みが出るでしょう、もっとも人数がいるだけで、まったく結果を出さない無能な集団にならないとも限りませんが」
本当に滝先生…変わらないよね。
なんというか…棘のある言い方というか…
「去年も同じことをお話したのですが、私は生徒の自主性を重んじることをモットーとしています。皆さんを甘やかしたり、突き放したいわけではありません。これが一番合理的な方法だと私は考えています」
滝先生はそう言って、全国大会出場の文字を書いた。
「これが去年の目標でした。今年の判断は皆さんにお任せします」
「先生、チョーク借りてもいいですか?」
「どうぞ」
「口先だけのスローガンなら誰でもできる だからここで はっきり言っておきます やるからには本気でやりたい ここで決めた目標を 本気で最後までやり抜きたい」
優子がチョークを手に取り文字を書いていく。その最中に黒板を引っ掻く音がして梨々花ちゃんとみぞれがうろたえていた。
「多数決を取るので、しっかりと手を挙げてください。これから1年緩くやるか、それとも」
そして優子は、全国大会金賞と書かれた黒板を叩く。
「全国大会金賞を目標にする人」
優子がそう言うと、手を挙げる部員のみんな。
去年の今頃と違い、挙手には自信満々だった。
「みんなの気持ちはわかりました。では今年の目標は全国大会金賞とします。これから大変なこともいっぱいあると思いますが、きっと乗り越えられると信じています。頑張りましょう!」
『はい!』
こうして、新生北宇治吹奏楽部はスタートを切った。