ダブルリードの苦労人   作:桜紅月音

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サンフェス

 

サンフェス当日がやってきた。

 

「ほらほら、北宇治の滝先生」

 

「えっ どこどこ?」

 

他校の子達がそう話しているのが聞こえてきた。

滝先生がどんどんと人気になっているのが分かる。

 

「今年もこの日がやってきましたね 他校のいいところもすべて吸収するつもりで 大切に過ごしてください」

 

『はい』

 

「北宇治の演奏を楽しみにして この場所に足を運んでいる観客もたくさんいる 決して気を抜かないようにしろ」

 

『はい!』

 

滝先生、松本先生の言葉で気合が入る。

 

「先輩~緊張しすぎて…やばいですぅ~」

 

「そんなに緊張しなくて大丈夫なのに…」

 

僕に話しかけてきた梨々花ちゃんの表情は、確かに緊張していそうだった。

 

「そう言われてもですね…緊張するものなんですよ」

 

「まぁ…今まで見てきた先輩達もそんな事を言ってたなぁ…」

 

梨々花ちゃんとそんな事を言っていると、低音パートの方から

 

「自分でできます」

 

「ごめん!」

 

「みっちゃん! 先輩にそんな言い方…!」

 

「その呼び方はやめてって言ってるでしょ!」

 

「ちょっと どうしたの?」

 

「本番前だぞ」

 

「あっ ううん 何でもないです 何でもないです ごめんね 私がびっくりさせちゃった?」

 

「すみません 私 やめます」

 

そう言うと、スーザフォンを地面に置く美玲ちゃん

 

「えっ? ちょっと!」

 

「これ以上いると 迷惑になりそうなんで」

 

「そんなことないよ ちょっと!」

 

逃げ出す美玲ちゃん、追いかける久美子とそれに続く奏ちゃん

 

「何? 何? どうしたの?」

 

状況が把握できず戸惑う優子を置いて、美玲ちゃんを追いかける久美子と奏ちゃん

追いかけても仕方ないし…出来る事は僕にはないかぁ…それに追いかけたらもっとややこしい事になるし…

 

 

 

 

 

「ねえ、そろそろ戻ってこないとまずくない?」

 

あれからしばらく立っても、久美子達は帰って来なくて、夏紀はそう聞いて来たけど…何もする事出来ないんだけど…すると、三人が戻ってくるのが見えてきた。

 

「夏紀、戻ってきたよ」

 

「本当だ。ちょっと行ってくるね」

 

その後、夏紀は三人に話をしに行っていた。

まぁ…さっきまでの表情を浮かべていない美玲ちゃんを見て、また久美子が助けてあげたんだろうなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

*******

 

「拓哉先輩、心配をおかけしましてすみませんでした…」

 

「ううん、時間には戻ってきてくれたし気にしてないよ」

 

演奏を終えた後、久美子と奏ちゃんが僕の元にやってきて、久美子が謝ってきた。

 

「ありがとう さっちゃん」

 

「フフフ」

 

「葉月先輩 さきほどは申し訳ありませんでした」

 

そんな中、美玲ちゃんはさつきと葉月ちゃんの所に居て、葉月ちゃんに美玲ちゃんは謝罪をしていた。

 

「アイス おごりね!」

 

「えっ? あっ はい」

 

「アッハハ 冗談だってば」

 

「えっ そうなんですか?」

 

「アハハハハ」

 

三人のやりとりを遠くから、見ていると奏ちゃんが口を開いた。

 

「私 美玲があわせる必要なんて これっぽっちもないと思うんです だって美玲は正しいんですから」

 

「美玲ちゃんは変わりたかったんじゃないかな ホントはみんなと仲良くなりたいって」

 

「フン ホント 説得上手ですよね 黄前先輩」

 

「そんなつもりじゃ…」

 

「いいですよ 美玲がいいならそれで」

 

奏ちゃんがそう言うと、奏ちゃんは僕と久美子から離れていった。

 

「久美子もお疲れ様、ゆっくりと帰って休むんだよ」

 

「はい」

 

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