「昨日の事で話したい事が…」
昨日、練習を早退で休んだ友恵からそう話を切り出されて、僕は彼女の話を聞くことにした。
「それで結果は?」
「うん、拓哉が気づいてくれたのが良くて、もうちょっと遅かったら顎関節症って言われた…」
「そっか…」
病院に行った結果、特に大きな病気にはなってなかったが、今後の為にも楽器は辞めた方が良いと言われたのこと。要するに、ドクターストップって事である。
「三年生で奏者を辞めないといけないのはきついね…」
「うん…拓哉には色々としてもらったのに…」
友恵は今にも泣きそうな声でそう言っていた。
「気にしてないよ。それで先生とか優子には言ったの?」
「滝先生には言ったよ」
「先生はなんて?」
「うん…新しい楽器を進められた」
僕が友恵にそう聞くと、その話は断ったと言っていた。
今の北宇治は、新しい楽器をやってコンクールメンバーになれるほど甘くはない。
「それに、吹けないって言われてむしろホッとしたっていうか…これでオーディション落ちて気遣われる心配もなくなったし…」
「心のどこかでプレッシャーになってたのかもね」
「だと思う…」
そして、友恵は続けて言う。
「それに、マネージャーになればみんなと最後まで部活は続けられるしね」
「友恵が自分自身で決めたのなら、僕はその意見を尊重するよ」
「ありがとうね拓哉」
友恵は笑顔でそう言っていた。
「でも、話を聞いたらみんなびっくりするだろうね」
「特に黄前ちゃんとかは」
「あー分かる。今してくれた話をすればいいだけだけど。納得はしないだろうねー」
「だと思う」
友恵とそんな話をして、二人で笑いあう。
「そう言えば、拓哉って縣祭りって誰かと行く約束してる?」
「そういえば、もうそんな時期か」
「で?誰かと行く予定は?」
「誰とも行く約束はしてないよー」
「それならさ!私と行かない?」
******
「なんで先輩も来てるんですか…」
「いいじゃん。こうやって一緒に行けるの拓哉君にとっても嬉しいでしょ」
縣祭り当日、友恵と一緒に行く予定にしてたはずなのだが、何故かヒロネ、晴香先輩、香織先輩に捕まっていた。そしてヒロネに抱き着かれているという始末
「拓哉…私と約束してた筈…」
「友恵…これはその…」
そんな僕と、怖い目で見てくる友恵と、その付き添いで来たであろう優子と夏紀は笑っていたけど
「ヒロネもそれぐらいにしてあげたら?」
「む~最近、会えてなかったからこれぐらいいいでしょ」
と言いながら離れてくれるヒロネ
「こう見えて、拓哉君と会えるかもって嬉しそうにしてたんだよ」
と耳元で囁いてくる香織先輩。
「そうなんですね」
「それで拓哉君、私も頑張ったんだけど…似合ってるかな?」
「…晴香先輩は何着ても似合ってますよ」
「褒めてくれるのは嬉しいんだけど…ほら、どこがいいかとかある?」
「そーですね…」
晴香先輩にそう聞かれて、僕は先輩のコーデをじっくりと見る。
「大人になりましたね。雰囲気もそうですけど」
「ありがとう//」
「ねね、私はどうかな?」
「えぇ…ヒロネは…」
ヒロネは、谷間を出して、短パンを履いた服装だった。
「随分と攻めたというか…」
「拓哉を堕とす為に私だって頑張ったの!」
「それにしては違う気がします…」
「友恵ちゃんまでそんな事を言うの…」
ヒロネの言葉に友恵がそうはっきりと突っ込んだ。
「それで拓哉君達は、優子ちゃん達と縣祭りに来たの?」
「そうなんですよ~!香織先輩!」
優子も香織先輩ラブは変わってない。
さっきからずっと香織先輩の隣に居るし
「拓哉、そろそろ行かない?ここで話してたら時間過ぎちゃうよ」
「そうだね、では先輩方、僕達はここらで…」
「うん、またどこかでね」
香織先輩はやっぱり大人だ。
それに対して_
「ちょっと晴香!私はあっちに行きたいから離して!」
「はいはい、ヒロネは拓哉君の事を好きすぎるのを治そうね~」
ヒロネは子供っぽい…。晴香先輩にどこかに連行されていった。
「ヒロネ先輩ってずっとあんな感じだよね」
「まぁ…治して欲しいのはあるよね」
夏紀と連れて行かれるヒロネを見て、そう話す。
その背後では_
「…」
「友恵、どうしたの?」
「え。えっ?何?」
「それはこっちの話よ?拓哉の事をじっと見てどうしたのよ」
「ううん、なんでもないよ。私も鳥塚先輩みたいになった方がいいのかなって」
「友恵はそんな事をしなくてもいいの。友恵は友恵なんだから」
優子と友恵がそう話していたのは、僕と夏紀には聞こえていなかった。