縣祭り翌日、ミーティングという形で、吹部のみんなを音楽室に集めた。
優子が今後のスケジュールをみんなに配り終わって
「は~い 注目! パート練習に映る前に1つ 今後の部活に関わる大事な話がありま~す」
優子がそう言うと、部員達からざわめきが起こった。
「そんな大ごとじゃないよ」
「自分で話す?」
「うん」
友恵が優子に連れられるがまま、みんなの前に立つ。
「突然すみません 私 加部友恵は吹奏楽部の奏者を辞めることになりました。オーディションにも参加しません」
友恵がそう言うと、トランペットパートから特にざわめきが起こった。
「あ~ ストップストップ そんな大騒ぎしないで 退部するわけじゃないんで」
「そうなんですか?」
「あんたたち ほっぽっていくわけないでしょ? 私はマネージャーとして みんなのサポートをしていきたいと思っています なので これからは 困ったことがあったら どんどん言ってください 演奏のこと 練習のこと 人間関係…恋愛相談は…別料金で!」
友恵がそう言うと、笑いが起きて
「とにかく これは前向きな決定なので みんな心配しないで練習に励んでください では マネージャー加部友恵をこれからよろしくお願いします!」
と言って締めた。
「お疲れ様」
「うん、みんなに言うのは緊張するね」
ミーティングを終えると、友恵は僕のそばまでやってきた。
「内容だけが内容なだけにね」
「うん…それでさ昨日の話なんだけど_」
友恵がそう言って、話題を振ろうとした時、久美子がやってきた。
「加部ちゃん先輩、話があるんですけど」
「だろうね…」
友恵がそう言うと、久美子は僕の方を向いてこう言ってきた。
「拓哉先輩、加部ちゃん先輩借りて行ってもいいですか?」
「うん」
「ごめんね拓哉、さっきの話また後で」
「うん」
友恵にそう言うと、友恵は久美子に連れて行かれた。
-家庭科実習室-
「先輩、私に話す事ありますよね?」
友恵と二人きりになった久美子はそう言い、友恵に話題を振った。
「あー、本当は言おうと思ってた、でも、なーんか言い出せなくって」
「私達、『相棒なんですよね?だったら隠し事はないはずですよね?」
「うう…黄前ちゃん、なんか今日怖くない?もしかして怒ってる?」
「怒ってないと思いますか?」
「ごめんなさい…」
肩を落とす友恵に、久美子は思わずため息をついた。
「…いつからですか?」
「え?」
「楽器が吹けないって分かったの。いつからですか」
「5月の半ばくらいかな 楽器吹いてたら いきなりあごが痛くなって ほら「口が壊れる」 つて言うでしょ? アンブシュアが保てなくなって 最初は大したことないって思ってたんだけど 高音吹くたびにきつくなってきて…拓哉にも相談して、拓哉のおかげで顎関節症にはならなかったけど…ドクターストップになったって感じかな」
「他の楽器に移るわけには…」
「もちろん勧められたよ でもこれから新しい楽器やってコンクールメンバーになれるほど 今の北宇治は甘くない それに… そんなにショックじゃなかったんだよね 吹けないって言われてむしろホッとしたっていうか… これでオーディション落ちて気遣われる心配もなくなったし… マネージャーになればみんなと部活は続けられるしって ズルい性格でしょ?」
首を横に振る久美子
「ウソだね 黄前ちゃん クソ真面目だから」
「黄前ちゃん」
「ん?」
「手 出して」
「何ですか?」
手の平を合わせて手を繋げる加部
「ふ~ん…!」
「う~…」
「よしっ フフッ 念を送った」
友恵がそう言って、この話は終わったかのように思えたが、久美子は新しく生まれた疑問を友恵にぶつけた。
「気になったんですけど…」
「うん、何?」
「加部ちゃん先輩って、拓哉先輩の事好きだったりします?」
久美子は、流石に友恵に限ってそれはないだろうと思っていたのだが、帰ってきた言葉に頭を抱える事になった。
「うん、好きだよ。もちろん恋愛的にね」
「そうなんですね…」
「高坂さんも拓哉の事好きなんだってね」
「えっ!?なんで知ってるんですか?」
「だって、パート練習の時に拓哉の話題が出ると、高坂さんも女の子なんだって表情をするからね。嫌でも分かるよ」
友恵からの言葉になんて返そうかと思っていると、友恵が続けて言った。
「でも、誰が相手だったとしても拓哉の事は譲れないかな」
「…」
「じゃあ、そろそろパート練習に戻らないとね。指導係がサボりなんてようないし」
そう言って、教室から出ていく友恵の事を見るしか出来ない久美子だった。