ダブルリードの苦労人   作:桜紅月音

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京都府大会と先輩

 

府大会に向けて練習に意識を持っていかれて、気付けば時期は8月初旬に差し掛かっていた。

そして、府大会当日がやってきた。

 

「おはよう友恵」

 

「拓哉、おはようー!」

 

と言いながら背中をバシッと叩いてくる友恵。

 

「叩くのは辞めて欲しいんだけどね…」

 

「あはは、私なりのエールのつもりだよ」

 

「エールなら嬉しいけど、痛かったのに変わりはないから」

 

友恵とそんな話をしていると、

 

「おはようございます」

 

久美子が元気な声でやってきた。

 

「おはよう久美子、昨日はしっかりと寝れた?」

 

「最初のうちは寝れなかったんですけど…気づいたら寝てて」

 

「分かる!私も緊張しててさ、中々寝れなかったよ」

 

久美子の言葉に、友恵が乗っかって返した。

 

「でも、寝れたようだから良かった。それじゃあ、一年生指導係として二人とも後はよろしくね」

 

僕がそう言うと、友恵『任せておいて』と言い、久美子も『はい!頑張ります!』と返してきた。

 

 

 

 

 

 

********

 

「みんな揃ってる?」

 

「大丈夫、みんないるよ」

 

「楽器とか譜面台は?」

 

「それもオッケー」

 

「オッケー、問題なしっと」

 

出発前、僕達幹部三人で最終確認を行い、しかめっ面をしていた優子が息を吐いた。

 

「あー眠い。バスの中で寝そう」

 

「昨日寝れなかったの?遠足前の幼稚園児みたい」

 

「あれあれー昨日、『朝、起こして』って言ってきたのは誰でしたっけ?」

 

「それはプロ意識ってやつ、部長たるもの、ミスが起きないように、二重三重と保険かけてるわけ、現にあんたからの電話の前に目覚めたし」

 

「うわ、そっちから頼んだくせに」

 

「朝から私の美声を聞けたんだから、感謝してほしいくらい」

 

「あーめんどくせ…この二人…」

 

二人のやり取りを聞いて、ボソッと呟いたつもりだったのだが、この二人に聞こえていたらしく…『どういう意味』と怒鳴られて、パートの所まで避難してきた。因みにだけど、まだ、あの二人は言い合ってる…

 

「みぞれ先輩、頑張ってください。私、すっごく応援しますから」

 

「うん」

 

パートの所に戻ってくると、梨々花ちゃんがみぞれに対して応援のメッセージを送っていた。

 

「バスの中でお腹を壊しちゃだめですからね、あったかくしないと。あとあと_」

 

梨々花ちゃんによる有難い言葉をみぞれは真顔で聞き『うん』とだけ言って返した。

こっちもこっちで変わらないな

 

「梨々花ちゃん、そこまでしてくれてありがとうね」

 

「あっ!先輩~おかえりなさい」

 

「うん、ただいまって言ったらいいのかな…」

 

「先輩にはこれあげちゃいます!」

 

そう言って梨々花ちゃんは、手に持っていたお守りを渡してきた。

 

「お守り…?」

 

「そうです!先輩達の演奏が上手に出来るようにと、わざわざ買いに行ってきました」

 

お守りを見る感じ、宇治あたりでは見た事がない物なので本当に買いに行ってくれたと思う。

ここまでしてくれるなんて。

 

「これ貰っちゃったら梨々花ちゃんの気持ちに答えないといけないね」

 

「頑張ってください!」

 

「うん、ありがとう」

 

僕はそう言って、梨々花ちゃんの頭を撫でる。

 

「えへへ~先輩に撫でて貰っちゃった~」

 

「梨々花ちゃんもサポートよろしくね」

 

「はい!」

 

そして、僕とみぞれはバスへと乗り込んだ。

 

「拓哉は緊張してる?」

 

「してない訳じゃないけど、緊張してるかな」

 

「それなら、周りに居るみんなの事をじゃがいもだと思ったら、リラックスできる」

 

「さっきの梨々花ちゃんの話?」

 

「うん」

 

「ふふっ」

 

「何かおかしかった?」

 

「ううん、みぞれの事を見てたらリラックス出来たよ」

 

「え?」

 

 

 

 

-府大会会場-

 

「あれ北宇治?」

 

「やっぱりオーラーあるなぁ~」

 

「あそこの二人、北宇治といえば、あそこのオーボエ二人組だよ」

 

「うわあ~オーラーある~」

 

何か僕達の事を見てる人達がいるなぁ…そんなに有名人なの僕達って…

立華からの人達からも見られてる気がするし

 

「私達、有名人?」

 

「どうやら…そうみたい」

 

「私達の世代は、拓哉とみぞれにかかってるからね」

 

「優子、それは嬉しい誉め言葉だね」

 

「本番も頼んだわよ」

 

そう言って、優子はトランペットパートの方へと戻っていった。

そんな時だった。

 

「ばあー」

 

『!?』

 

「ごめんごめん、そこまで驚かすつもりはなかったんだよ」

 

と言って、現れたのは香織先輩だった。

 

「お久しぶりです香織先輩。正直言って驚きました」

 

「うん、びっくり」

 

「久しぶりに拓哉君達の顔が観たくて来ちゃった」

 

「それは嬉しいです。って事は、晴香先輩辺りと来てたりする感じですか?」

 

「そうそう、晴香と葵と一緒に、それとヒロネも」

 

「結構…大勢で来たんですね」

 

香織先輩に言われて、辺りを見渡すと久美子と話す葵先輩の姿が見えた。

確か、幼馴染って最初言ってたっけ。それは良いとして…ヒロネの姿が見えないのだが

 

「あー!拓哉君だー!」

 

「ぐへぇ…急に抱き着かないでくださいよ晴香先輩…」

 

「む~今は晴香でいいのに」

 

「そういう訳にも行きませんって…」

 

僕の姿を発見したのか、大きな声を出して抱き着いて来た晴香先輩。

香織先輩は大人な女性になってる一方で、晴香先輩はまだ…って感じかな。

 

「そうだ!ヒロネも来てるよ」

 

「さっき、香織先輩から聞きましたよ」

 

「うん、話したよ」

 

「そうなんだ。ヒロネが一番拓哉君に会いたそうにしてたもんね」

 

卒業式前に家に毎日行ってやると言っていたけど、結局の所、一回も来ていないという話。

 

「それでヒロネは?」

 

「もう会場に入ってるって」

 

「えっ?なんで?」

 

「なんでも私達に邪魔されるのが嫌みたい」

 

「何よそれ」

 

「あの…二人で話を広げるの辞めて貰っていいですか…」

 

すると、遠くから

 

「はーい、北宇治移動しまーす」

 

「呼ばれちゃったね」

 

「ですね」

 

「忙しい時にお邪魔してごめんね」

 

「いえいえ、先輩方と会えて良かったですよ。また会えると嬉しいです」

 

「うん、本番頑張って」

 

「はい、行ってきます」

 

晴香先輩、香織先輩に背中を押される感じで、僕は会場内へと入っていった。

 

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