会場に入り、リハーサル室に入って音出しを済まし、みぞれと打ち合わせをしていると滝先生が手をパンと叩き、注目を自身に集めた。
「はい、遂にこの日がやってきましたね、私が北宇治高校吹奏楽部の顧問としてこの場に立つのは、これで二度目になります。課題曲、自由曲が決まって以降、皆さんは今日までずっと努力してきました。楽譜を配られた時に比べて、演奏の完成度もどんどんと高くなりました。私は、皆さんとならさらに高いクオリティーの音楽を作り上げられると考えています。次の演奏の機会に繋げられるよう、全力を尽くしましょう!」
『はい!』
滝先生と入れ替わる形で今度は優子がみんなの前に立って、話を始めた。
「みんな、お腹壊してない?体調は大丈夫?昨日はよく寝れた?」
優子の言葉にあちこちから笑い声が聞こえてきた。
「今日、こうしてメンバーが揃っている事を嬉しく思います。怪我も病気も無かった。当たり前に思えて、これって凄く大事な事だと思います。なんせ、自分達のベストで挑めるって事だから。私は、このメンバーやれば怖い物なんてないって知ってる。いつも通りの力を出せば、絶対に次に進めると信じてます。心配する事なんてひとつもない。十二分間の舞台。本気で楽しんで行きましょう!」
『はい!』
「では、いつのやつやります__北宇治ファイトー!」
『おー!』
「北宇治高校の皆さん、お時間です」
僕達はステージに立って、悔いのない演奏をした。
*********
演奏を終え、僕達はホールの通路で待機の時間。
「先輩、演奏お疲れ様でした」
「麗奈もお疲れ様」
「隣いいですか?」
「うん、どうぞ」
僕の言葉を聞いて、麗奈は僕の隣に座り、しばらくして久美子がやってきた。
「映像買ったんだ」
「はい、せっかくなので」
吹奏楽コンクールでは、演奏中の姿を撮影し、その映像の販売を行っている。
「あれ?」
「どうしたの?さっきからずっと映像ばっか見てるけど」
「いやさ、今日の夢ちゃんって眼鏡してないんだなって」
「いつもの事じゃないの?」
「そうだっけ。眼鏡のイメージが強かったんだけど、コンタクトにしたのか。あれ、今日のバスでは眼鏡してたような…」
「気分で変えてるんじゃない」
「夢ちゃんって小日向さんの事?」
「そうです」
夢ちゃんこと小日向夢さん。
さつきと同じ一年生で、優子や麗奈と同じトランペットパートの女の子。僕は接点が無いに等しいので良く知らない。梨々花ちゃんや奏ちゃん、さつきをよく構ってるからだけど。
「あ、みぞれ先輩」
「久美子、麗奈、そろそろスタンバイだから行こっか」
「はい」
僕がそう言うと、久美子はすぐに立ってくれたが麗奈は映像をジッと見続けていた。
「麗奈ー行くよ」
「あ、ごめん、行こうか」
「どうしたの?ぼーっとしてた?」
「いや、なんでもない。ちょっとね」
「大丈夫?」
「はい、考え事をしてただけなので」
久美子と麗奈と一緒に会場の外に向かうと、そこには既にかなりの待機してる人達がかなりいた。
既に待っていた梨々花ちゃんと奏ちゃんの元に向かうと
「遅いですよ先輩方」
「そうですよーこんな暑い中待たせるのはどうなんです」
「凄い文句の言われよう…」
二人から文句の嵐だった。
「仕方ないじゃないですか、先輩方見つからなかったんですから」
「奏ちゃん…」
そんな会話をしていると、結果の紙を持ったスタッフが現れた。
「緊張しますね」
「だねー」
そして、紙を広げられる。
その中から、三十七番 北宇治高校の名前を探す。
「あった」
「どこにあります!?」
「ほら、あそこ」
奏ちゃんに指を指して、教えてあげる。
「先輩、やりましたね」
「うん、ほっとした。本当に」
「こんな所で終わってたまるって話」
「立てますか?」
「立てる立てる。ただ、力が抜けただけ」
久美子はそう言って、差し出された奏ちゃんの手を取る。
すると、麗奈が口を開いた。
「関西、決まったね」
「うん、良かった」
「龍聖と立華、関西だって」
「え?あ、うん」
「油断したらダメだね」
龍聖…記憶が正しければ去年、銅賞だった気がするし、去年の北宇治に似てる気がするような…