合宿_みぞれの覚醒イベントなど色々あって、それからもひたすら練習をして、気付いたら関西大会は明日に迫っていた。
「いよいよ明日ね」
「うん、明日で終わる可能性だってあるけど」
「恐ろしい事言わないで頂戴」
「ごめんごめん」
「拓哉なりの緊張をほぐすジョークでしょ」
「当たり~」
「やった」
「何よこれ」
全体での練習を終え、優子、夏紀と三人で仲良く帰る道。
去年は突破出来た関西大会。今年は去年よりも難しいという前評判。
「今年は厳しい壁だけど…私達ならきっと行ける」
去年、北宇治が関西に行った事によって、強豪校が更に練習に身を入れたと聞いた。
優子の言う通り、今年は去年よりもレベルが上がっている筈。
「去年、香織先輩達でも出来なかった全国金を取る為にも必ず全国に行くよ」
「分かってるって」
「そこで香織先輩が出てくるあたりが優子らしい」
「そこはほら、香織先輩の事大好きだし」
「はいはい、あんたの香織先輩ラブはいいから」
香織先輩の話を進めようとする優子を強引に止めて引っ張っていく夏紀。
そんな光景を見て、僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。
-関西大会会場-
「香織先輩の為にも頑張ります」
関西大会当日、会場にやってきた香織先輩、晴香先輩を会って僕と優子は会話をしていた。
夏紀は、低音パートに居てこの場には居なかった。
「それで拓哉君って、今はフリーなのかな?」
「…ヒロネ先輩…そういうのは終わってからにしてくれませんか?」
「だって…」
そして、何故かいるヒロネ先輩…。
「そうだよ!演奏前なんだから邪魔しないの!ごめんね拓哉君…」
「いえ…一年ぶりなのに変わっていなくて安心したというか…」
「ヒロネ先輩、揶揄うのも程ほどにしてください!」
隣に居た優子にも釘を刺される。
「優子、そろそろ行かないと…」
「えっ?あっ、本当だ」
「もうそんな時間?」
「それじゃ、僕達は行きますね」
「うん、頑張って」
「はい!」
晴香先輩の言葉を聞いて、何故か気合が入った。
-リハーサル室 -
チューリングをやっていると、滝先生が手をパンパンと叩いた。
「では部長」
「はい」
優子は滝先生の隣に立って口を開いた
「はい注目~!」
「してるって」
夏紀がそう言うと、部員達からは笑いが起った。
「去年の冬から部長になっていろんなことがありました。1年生、2年生、3年生それぞれ大変なこともあったと思います。でも、みんなで支えあって、最高の形でここまで来られたと思っています。それと夏紀」
「はあ?」
「ありがとう」
そう言ってお辞儀をする優子
「ああ…なんで今なの…」
照れる夏紀。
普段、言い合っている仲なのにね。
「そして拓哉」
「うん?」
「私の事支えてくれてありがとう」
「うん、こちらこそ部を引っ張っていってくれてありがとう」
お互いの事を見た後、優子は続けて
「この最高のメンバーで私はずっと演奏していたい。これで終わりになんかしたくない 全員で全国行こう!」
『はいっ!』
優子の言葉を聞いて、僕達は更に気合が入った。
「では、みんなで」
「北宇治ーー」
『ファイトーー!!』
-会場内-
司会「15番 京都府代表 北宇治高等学校 ゴールド金賞」
司会からそう言われて、部員達から安堵の声が聞こえてくる。
ステージ上では優子と夏紀がグータッチを交わしていた。
夏紀が一番ホッとしてると思う。足を引っ張ってはいけないと負い目を感じていたようだったし…
『続きましてきたる10月に行われる全国大会に出場する3団体を発表します』
「1校目3番大阪府代表 明静工科高等学校」
流石強豪校。関西で躓くことなんてなかった。
「2校目 8番 大阪府代表 秀塔大学付属高等学校」
こちらもまた、同じく強豪校。
全国に行ける三枠の二枠は埋まってしまった。北宇治は最後の一枠に入れるだろうか…
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「優子…お疲れ様」
「…拓哉…」
僕の声を聴いて、こちらを向く優子の目には涙が浮かんでいた。
つまりはそういう事である。
「…拓哉…ごめん…全国金を一緒に取ろうって行ったのに…」
北宇治は全国へ行く事は叶わなかった。
同じ京都府代表の龍聖が全国へと足を進めた。大阪東照が関西止まりなのもあって、会場は異常な雰囲気になっていた。
「…いいって…部員みんなで頑張ってここまでやってきたのは分かってるんだから…優子も部長としてやってきたのはよく知ってるから…気にしなくていい」
「…でも…悔しくはないの…?」
「…もちろん悔しいよ。それはみんなが思ってる事、それに優子も最高の演奏をしたっていうのは分かるんでしょ?」
「…うん…」
「なら自信を持たないと」
そう言った記憶はあるがその後何を言ったか覚えていない。
でも、優子が気持ちを入れ替えたのは分かった。
ホールの外に出ると、部員達が落ち込んでいた。
それを見た優子は歩き出し
「ちょっとちょっと、何この空気お通夜じゃないんだから、何落ち込んでんの?」
そしてみんなの前まで行き続ける。
「私たちは今日、最高の演奏をした! それは事実でしょ? これまで私たちを支えてくれた部員のみんな、先生たちや保護者の皆さんのためにも、胸を張って帰らなきゃ! 確かに全国には行けなかった。でも落ち込む必要はない、私たちはあの瞬間最高の演奏をした! そしてこの経験は絶対に明日に繋がる 来年に繋がる 1年間部長をやった私が断言するよ、北宇治はもっと良くなる! もっともっと強くなる! だから顔を上げて!」
そう言うともなかのメンバーが拍手をしてくれた。
「今日という日は、来年のコンクールに向けての1日目! 明日からの練習頑張っていきましょう!」
『はい!』
「それでは撤収します」
優子の言葉を筆頭にして、みんなで撤収の準備に取り掛かる。
帰り道のバス車内。隣に座った梨々花ちゃんから声をかけられた。
「拓哉先輩~」
「梨々花ちゃん…」
「来年は必ず、私達が全国に行って金賞取ってきますから」
「うん、この想いは久美子達に託すよ」
「なんでそこは私じゃないんですか!」
そう言う梨々花ちゃんはとっても可愛く思えた。