ダブルリードの苦労人   作:桜紅月音

121 / 121
関西大会

 

合宿_みぞれの覚醒イベントなど色々あって、それからもひたすら練習をして、気付いたら関西大会は明日に迫っていた。

 

「いよいよ明日ね」

 

「うん、明日で終わる可能性だってあるけど」

 

「恐ろしい事言わないで頂戴」

 

「ごめんごめん」

 

「拓哉なりの緊張をほぐすジョークでしょ」

 

「当たり~」

 

「やった」

 

「何よこれ」

 

全体での練習を終え、優子、夏紀と三人で仲良く帰る道。

去年は突破出来た関西大会。今年は去年よりも難しいという前評判。

 

「今年は厳しい壁だけど…私達ならきっと行ける」

 

突然、何か言い始めた優子

 

「去年、香織先輩達でも出来なかった全国金を取る為にも必ず全国に行くよ」

 

「分かってるって」

 

「そこで香織先輩が出てくるあたりが優子らしい」

 

「そこはほら、香織先輩の事大好きだし」

 

「はいはい、あんたの香織先輩ラブはいいから」

 

香織先輩の話を進めようとする優子を強引に止めて引っ張っていく夏紀。

そんな光景を見て、僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

-関西大会会場-

 

「香織先輩の為にも頑張ります」

 

関西大会当日、会場にやってきた香織先輩、晴香先輩を会って僕と優子は会話をしていた。

夏紀は、低音パートに居て今は居ない。

 

「それで拓哉君って、今はフリーなのかな?」

 

「…ヒロネ先輩…そういうのは終わってからにしてくれませんか?」

 

「だって…」

 

そして、何故かいるヒロネ先輩…。

 

「そうだよ!演奏前なんだから邪魔しないの!ごめんね拓哉君…」

 

「いえ…一年ぶりなのに変わっていなくて安心したというか…」

 

「ヒロネ先輩、揶揄うのも程ほどにしてください!」

 

隣に居た優子にも釘を刺される。

 

「優子、そろそろ行かないと…」

 

「えっ?あっ、本当だ」

 

「もうそんな時間?」

 

「それじゃ、僕達は行きますね」

 

「うん、頑張って」

 

「はい!」

 

晴香先輩の言葉を聞いて、何故か気合が入った。

 

 

 

-リハーサル室 -

 

チューリングをやっていると、滝先生が手をパンパンと叩いた。

 

「では 部長」

 

「はい」

 

優子は滝先生の隣に立って口を開いた

 

「はい 注目~!」

 

「してるって」

 

2人のやりとりをして部員達から笑いが起こった。

 

「去年の冬から部長になって いろんなことがありました 1年生 2年生 3年生 それぞれ大変なこともあったと思います でも みんなで支えあって 最高の形でここまで来られたと思っています それと夏紀」

 

「はあ?」

 

「ありがとう」

 

そう言ってお辞儀をする優子

 

「あ あ… なんで今なの…」

 

照れる夏紀。

普段、言い合っている仲なのにね。

 

「そして拓哉」

 

「うん?」

 

「私の事支えてくれてありがとう」

 

「うん、こちらこそ部を引っ張っていってくれてありがとう」

 

お互いの事を見た後、優子は続けて

 

「この最高のメンバーで 私はずっと演奏していたい これで終わりになんかしたくない 全員で全国行こう!」

 

『はいっ!』

 

そして、気合が入った。

 

 

 

 

-会場内-

 

司会「15番 京都府代表 北宇治高等学校 ゴールド金賞」

 

司会からそう言われて、部員達から安堵の声が聞こえてくる。

ステージ上では優子と夏紀がグータッチを交わしていた。

夏紀が一番ホッとしてると思う。足を引っ張ってはいけないと負い目を感じていたようだったし…

 

司会「続きまして きたる10月に行われる全国大会に出場する3団体を発表します」

 

司会「1校目 3番 大阪府代表 明静工科高等学校 2校目 8番 大阪府代表 秀塔大学付属高等学校」

 

司会「3校目22番 京都府代表 龍聖学園高等部」

 

「あんなに頑張ったのに…」

 

「クソッ…」

 

と言った言葉が部員達から聞こえてきた。

そりゃ悔しいよなぁ…僕だって悔しいもん…

 

思い空気の中、会場の外に出るとそこには泣き崩れ落ちる優子とそれを慰める夏紀の姿があった。

 

「…拓哉…」

 

夏紀がそう声をかけてくると、優子の肩がちょっとだけ動いたのが分かった。

 

「…拓哉…ごめん…全国金を一緒に取ろうって行ったのに…」

 

「…いいって…部員みんなで頑張ってここまでやってきたのは分かってるんだから…優子も部長としてやってきたのはよく知ってるから…気にしなくていい」

 

「…でも…悔しくはないの…?」

 

拓哉「…もちろん悔しいよ。それはみんなが思ってる事、それに優子も最高の演奏をしたっていうのは分かるんでしょ?」

 

「…うん…」

 

「なら自信を持たないと」

 

そう言った記憶はあるがその後何を言ったか覚えていない。

でも、優子が気持ちを入れ替えたのは分かった。

 

ホールの外に出ると、部員達が落ち込んでいた。

それを見た優子は歩き出し

 

「ちょっとちょっと 何この空気 お通夜じゃないんだから 何落ち込んでんの?」

 

そしてみんなの前まで行き続ける。

 

「私たちは今日 最高の演奏をした! それは事実でしょ? これまで私たちを支えてくれた部員のみんな 先生たちや保護者の皆さんのためにも 胸を張って帰らなきゃ! 確かに全国には行けなかった でも落ち込む必要はない 私たちはあの瞬間最高の演奏をした! そしてこの経験は絶対に明日に繋がる 来年に繋がる 1年間 部長をやった私が断言するよ 北宇治はもっと良くなる! もっともっと強くなる! だから顔を上げて!」

 

そう言うともなかのメンバーが拍手をして、コンクールマンバーが振り向く。

 

「今日という日は 来年のコンクールに向けての1日目! 明日からの練習 頑張っていきましょう!」

 

『はい!』

 

「それでは撤収します」

 

優子の言葉を筆頭にして、みんなで撤収の準備に取り掛かる。

帰り道のバス車内。隣に座った梨々花ちゃんから声をかけられた。

 

「拓哉先輩~」

 

「梨々花ちゃん…」

 

「来年は必ず、私達が全国に行って金賞取ってきますから」

 

「うん、この想いは久美子達に託すよ」

 

「なんでそこは私じゃないんですか!」

 

そう言う梨々花ちゃんはとっても可愛く思えた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

想いを音色に乗せて(作者:猫柳/nekoyanagi)(原作:響け!ユーフォニアム)

▼ 両親を早くに亡くし、バイトと勉学、音楽の両立に四苦八苦しながら北宇治高校吹奏楽部で己の理想の音色をトランペットで表現しようと頑張る男の子の物語。▼ 原作終了後、大学以降の物語も書きたいなぁと思っております。▼ クロスオーバーは迷っているので念の為です。原作の間に出すことは恐らくないです。▼ キャラタグ一旦消去させていただきます。▼ 青のオーケストラ要素ち…


総合評価:1790/評価:8.96/連載:18話/更新日時:2026年03月09日(月) 19:00 小説情報

或る、フルート吹きの青春(作者:ハヤブサ320)(原作:響け!ユーフォニアム)

「あの人に出会って、また歩き出そうと思ったんだ」▼とあるフルート奏者が出会いと別れを経験しながら、北宇治高校吹奏楽部でコンクール全国大会金賞を目指す物語。▼高校二年生編完結。▼2025年6月21日 三年生編連載開始▼小説ロゴを作ってみました。▼【挿絵表示】▼同小説をpixivでも連載しています。▼https://www.pixiv.net/novel/ser…


総合評価:621/評価:7.73/連載:62話/更新日時:2026年05月22日(金) 07:00 小説情報

北宇治のまえせつさん(作者:コーヒーまめ)(原作:響け!ユーフォニアム)

矢田明宏、15歳。和歌山の孤児院から引き取られ京都は北宇治へ。そんな未踏の地で織りなす高校生活とは。▼以前投稿していた『黒江真由との短編──或いは、こんな居場所──』という作品を長編として練り直し投稿したものです。


総合評価:1619/評価:8.92/連載:27話/更新日時:2026年05月17日(日) 18:02 小説情報

カリスマチート転生者先輩 in 北宇治(作者:山田太郎)(原作:響け!ユーフォニアム)

カリスマチート転生者先輩を小笠原世代に生やして、早いうちに吹奏楽部を改革します。▼ガールズラブタグは超保険です。必須タグなので入れましたが、殆ど0です。そこを期待している方はすみません。▼テンポ優先のため、アニメで描かれた部分は必要な部分だけ書きます。未視聴の方はアニメを観ましょう。▼原作2年目で完結しました。3年目はあまり書けるパートがなさそうなので、思い…


総合評価:1746/評価:8.48/完結:8話/更新日時:2026年02月20日(金) 20:00 小説情報

いつか途切れた、音の続きを(作者:いつかの音色)(原作:響け!ユーフォニアム)

 中学二年生のあの時、私は間違えた。私の行動一つで部が崩壊してしまうと、あの時の私は知らなかった。そして、私は逃げてしまった。▼ 周囲への気配りが足りなかった。みんなが何を考えているか、なんて全然考えていなかった。何より、心が弱かった。▼ もう二度と、同じ過ちは繰り返さない。私はもう絶対に、逃げたりしない。▼ ▼△▼ 南中出身、音楽チートの主人公を黄前世代に…


総合評価:2982/評価:9/連載:18話/更新日時:2026年05月17日(日) 21:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>