関西大会を終えてしばらくして_
「久美子、お疲れ~」
「お疲れ様です…」
「遅かったじゃん、何食べる?」
「えっと…」
僕達、幹部三人にファミレスに呼び出された久美子は、困惑の様子を浮かべた。
「とりあえず座って」
「はい…」
優子に座るように言われた久美子は、恐る恐るソファーに座る。
「そんなに怖がらなくていいから」
「そうそう、そんな恐ろしい事を言う訳じゃないし」
「それじゃあ…なんで呼び出されたんですか…」
久美子がそう聞いてきた時、僕は夏紀と目を合わせて。
「そこはほら、部長から」
僕がそう言うと、隣の優子が口を開いた。
「そうそう、来年の部長やってくれない?」
「…はい?」
優子の言葉に、久美子は言葉の意味を理解するまで数秒かかった。
「いやいやいや、無理ですよ!」
ブンブンと頭を振る久美子
「おめでとう!ついにユーフォも副部長から部長にランクアップ!」
「そんなの求めてないですよ。だいたい、私に務まると思えないんですけど」
「いけるいける。大丈夫」
笑いながらそう言う夏紀。真剣な表情を浮かべる優子。
「…その言い方はずるいですよ…」
「引き受けてくれる?」
優子の問いに、久美子は僕の方も見てくる。
僕は頷いた。
「…分かりました。私でよければ」
久美子がそう言うと、夏紀が茶化すように『新部長おめでとう』と言い、優子は鞄の中からノートを出してきた。
「って事は次は副部長か。誰か良いとかある?」
「一応聞いてくれるんですね」
「参考程度には、本決定は当日になってからのお楽しみっていうのが我が吹部の伝統やから」
「はーそんな伝統が」
「本当に最悪だった。夏紀が副部長って聞いた時は」
「あの時の優子の顔、めちゃ面白かった」
「はぁ?」
優子と夏紀…
「二人とも…今はやりあってる場合じゃないでしょ」
「あはは…」
「それでどうする?久美子」
「希望とは特にないです。誰でもありがたいですし」
久美子がそう言うと、夏紀が久美子に聞いた。
「うーん。じゃあ、高坂さんとか?」
「あの子はどう考えても副部長ではないでしょ。音楽に専念させるべき」
「これに関しては優子に賛成かな」
麗奈は副部長みたいなタイプじゃないもん。
「じゃあ、緑とか」
「緑ちゃんか~」
「緑ちゃんって、コンバスの川島さん?」
「そうそう、あの子、メンタル半端ないから。弱点メンタルの久美子にはちょうどいいんじゃない?」
夏紀の言葉に、久美子は『弱点メンタルってなんですか』と聞き返す。
優子の前にあるノートに、優子は緑ちゃんの名前を書く。
「ありといえばあり、でも、あの子だと強すぎる気もするけど、ほら、あんたが意外と面倒な性格してるから。そこらへんまでしっかりフォローしてくれるやつがいいと思うけど」
「面倒な性格なのに、なんで私を部長にさせたがるんですか?」
優子の言葉に久美子がそう返した。
「何言ってんの、去年、この役職を受けた時点で、私はあんたを部長に指名するつもりやったから」
「へ?」
呆然と口を開けている久美子にさらっと優子は部長にする気だったと言った。
「それに拓哉もあんたの事を凄く評価してたみたいだからね」
「まぁね、吹部って人が多いから、纏めていくためには人間関係を回して行ける人がいい、それと演奏技術もそこそこの実力がないとってなると、久美子が一番適任だと思った訳」
「私も同じ意見」
「なるほど…」
僕と優子の言葉を聞いて、久美子はジュースを飲みながらそう言った。
「まぁ、頑張って」
「そうそう、困ったら。私達OB,OGを頼ってくれていいから」
「OGなんて、気が早すぎますよ」
「ふふ、そうね。卒業までは、まだ普通の先輩か」
「面倒なOBだけにはなりたくはないな…」
「拓哉はむしろ、来てくださいって言われそう。私と違って」
僕が呟いた言葉を聞いた夏紀がそう返してきた。
慌てて、久美子が『そんな事はないです』と返していたけど。
その後、久美子と別れて僕達はお互いそれぞれの家へと帰るのだった。