晴香編1
「お兄ちゃんー私の髪飾りどこか知らない〜?」
「知らないけど…前あげた奴は?」
「壊れちゃった…」
さつきは落ち込みながらそう言う。
「あー…そういう事か…」
「どうしよう…」
「今後、京都駅行くから、その時に良いのあった買ってくるよ」
「本当!?お兄ちゃん大好きっ!!」
「抱きつくの辞めてー…」
という訳で僕は市内へと駆け出していた。
2年生に進級したお祝いに、何か買ってあげたいと思っていたから丁度良かったといえば良かったんだけど。
「うーん…どれにしよう…」
いざやってきたのはいいものも、種類が豊富な事もあって困った。
かと言ってさつきに聞くのもなぁ…と。それに今は部活中だから返信が来る保証もない。そう悩んでいると
「あれ?拓哉君?」
「あっ…晴香先輩。お久しぶりです」
「うん、久しぶりー」
声をかけてきたのは晴香先輩だった。
こうして会うのは、アンコンの講演会だから随分と久しぶりだった。
「髪飾り選んでるの?」
「そうなんですよーさつきへのプレゼントも兼ねてです」
僕がそう言うと、良いお兄ちゃんだねと先輩は返してくれた。
褒められて悪い気はしなかった。
「ここって種類多いから悩むよね〜」
「今の僕がそれです」
晴香先輩も同じ悩みを抱えていた。
「私の場合は、ゴムで纏める時の方が多いんだけどね」
晴香先輩はそう言って自身の髪を触っていた。
「そういえば、大学の方はどうですか?」
「いきなりだねー拓哉君は…優子ちゃん達と一緒だっけ?」
「はい。学部は違いますけど、同じ所です。」
「相変わらず仲良しなんだね」
「いえいえー」
先輩に、そう言われて誤魔化す様にしながら僕はこう答えた。
相変わらずの関係を続けていることは否定しないけど。
「私の方は充実してるよ。それからね、葵の大学のサークルに入ってサックス続けてる」
「晴香先輩も葵先輩と仲良しなんですね。それにサックス続けてるって聞いて良かったです。ちょっと安心しました」
「何よそれー」
僕の言葉を聞いて晴香先輩は怒り始めた。
冗談ぽく怒っているので、怖くはないけれど。
「お互いにやれる範囲で頑張りましょうって事ですね」
「うん!私も頑張るよ。サックスに勉強に___」
手で数えながら言う晴香先輩。
勉強とサックス以外に何か始めたのかな。
「頑張ってくださいね」
「もちろん!」
晴香先輩とそう話を終えて、髪飾りの方に目を再び向けるが、すぐに決めるのは無理だった。
「拓哉君」
「はい?」
「この後って暇かな?」
「まぁ…用事を終わらせて帰るだけなので、暇といえば暇ですけど…」
晴香先輩に暇かと聞かれて、そう返す。
何だろう…
「良かった。私に付き合ってくれないかな?奢るから」
「えっ?」
その後、さつきの髪飾りを晴香先輩と一緒に選んで宇治まで帰ってきた。
晴香先輩と一緒に
「上手ですね」
「ありがとね」
晴香先輩とやってきたのは、喫茶店。
なんでも晴香先輩がハマっている店らしい。本人がそう言っていた。
そして、今は、晴香先輩と葵先輩がサックスを吹いている映像を見ていた。
「葵先輩も上手ですし、良いですよね」
「葵に言っておくね。多分喜ぶと思う」
「そうだと良いですけどね」
僕は、苦笑いを浮かべながらコップを取り、オレンジジュースを口の中に入れた。
「香織も会いたがったしね」
「良いナースさんになりそうですよね」
「うん、すっごく頑張ってるって言ってたよ」
看護学校に行ってる香織先輩。
次に会ったら、アンコンの時に比べてもっと素敵な人になっているんだろうなと僕は思った。
「それで、拓哉君は久しぶりに私と会ったのに何かないの?」
「何をお求めなんですか…」
「ヒロネはまだしも、香織に会った時はいつも綺麗ですねーとか言ってたでしょ。私に何かないのかなぁーって」
「晴香先輩も綺麗ですよー」
「そういう事じゃないんだよ」
「えぇ……」
去年のめんどくさい先輩が戻ってきた。
なんか懐かしい。
なんて思っていると、僕のスマホに着信が
「すみません…先輩、さつきがそろそろ帰るってメッセージ来たので帰ります」
「あっ、そっか」
「はい。今日は奢って貰ってありがとうございます。また会えたら」
そう言って、喫茶店を出ようとしたのだが。先輩に呼び止められた。
「拓哉君、私も拓哉君の家に行ってもいい?」
「いいですけど…」
そして、晴香先輩と一緒に僕の家に向かった。
「ただいまー!」
家に帰ってしばらくしてから、さつきが帰ってきた。
「さつきちゃん、おかえり」
晴香先輩がそう言って、さつきを迎えていた。
「晴香お姉ちゃんだー!」
先輩の姿を見て、さつきはすぐに抱き着いた。
「さつきー制服着替えておいで」
「分かった!」
僕がそう言うと、さつきはドタバタとさせながら自分の部屋に走っていく。
「さつきちゃん、元気だねー」
「元気ありすぎて困ってますけどね…」
あははと言いながら僕はそう言った。
「私、一人っ子だから。拓哉君とさつきちゃんみたいな関係良いなって思う時あるんだよね」
「今日、ご飯食べて行ってください」
「いいの?」
「はい。せっかくなんで。さつきも喜びますし」
「じゃあ、食べて行くね」
そして、晴香先輩はさつきを本当の妹のように、さつきはお姉ちゃんのように過ごしていた。