みぞれ編 その1
北宇治を卒業し、大学が始まる数日前、僕はみぞれとデートをしていたその帰り道。
彼女からこう言われた。
「そういえば、お母さんが今日、家に来てって。話があるみたい」
そう話すみぞれは、どこか嬉しそうな表情をしていた。
「みぞれ…何か隠してる?」
「ううん、何も隠してない」
本当かどうか怪しいが、彼女に言われるがまま、みぞれの家に向かうと、みぞれの両親が居た。
そして、みぞれのお父さんから発せられた言葉に、僕はびっくりした。
「みぞれと同棲の話をしたと思うのだが」
「はい、保留になってると思いますけど」
「その話なんだが…拓哉君のお母さんと話して…」
うん?お母さんとどう関わりがあるんだろう。そう思っていると
「みぞれと同棲をしてもらえないか?」
「へっ…!?」
お父さんの言葉にそんな声が漏れてしまった。
「音大にも近いしね。良い案だと思うんだ」
お父さんはそう言って、続けて
「みぞれの荷物は既に向こうに送ってる。みぞれに聞いてないのか?」
そう言われて、みぞれの方向を見るとみぞれは反対側の方を向いた。
忘れていたか……この後、みぞれに聞くと「嬉しすぎて言うの忘れていた」らしい。
大事な事だから忘れないで欲しかった所。
そんなこんなで、次の日は休みなのもあって言われた場所に向かうと、
「そこそこ広い」
「お父さん頑張ったって言ってた」
「うん、分かる」
お父さんからは、お金の事は心配しないでと言われたが…本当にいいのか心配になった。
なんて思っていると、隣に居るみぞれの様子がおかしいのに気づいた。
「みぞれどうしたの?」
「今日は休みだから…」
「うん?」
「拓哉とイチャイチャしたい//」
「照れながら言わないでよ」
そう言うと、気付けば僕の視線は、マンションの天井だった。
そして、すぐさまみぞれの顔が目に入った。
********
「おはよ、みぞれ」
「うん、おはよう拓哉」
同棲を始めて、早2週間。
こうして挨拶を交わすのももう慣れた。
「今日も可愛いよ」
「そう//ありがと//」
照れながら言うみぞれの恰好はワンピース。
本当、みぞれにはワンピースが似合っていた。
「それじゃあ、行こっか」
僕はそう言って、みぞれに手を差し出す。
彼女は、いつものように僕の手を握ってくる。
「拓哉の手大きい」
「いつも言ってるねそれ」
このやり取りも何回やっただろう。
片手では済まないくらいにはやっていると思う。
優子が居たら、「このバカップルは」とか言いそうである。
「拓哉。そろそろ時間…」
「本当だ」
みぞれに指摘されて、時間を見ると一限目の時間までギリギリになりそうだった。
間に合うには間に合うのだが、ちょっと急いで行かないといけない。
「じゃあ、行こっか」
「うん」
そして、いつものよう僕達は音大へと向かう。
-昼休み-
みぞれと一緒に、大学内のいつもの場所で昼食を摂っていた。
「どう?私のお弁当は…」
「うん、美味しいよ」
僕がそう言うと、みぞれはパッと笑顔になった。
「お母さんが、料理は出来た方が良いって言ったから頑張った…!」
「みぞれは偉いなぁ~」
そう言って、僕はみぞれの頭を撫でる。
「だって、拓哉のお嫁さんになりたいから」
「まだ気は早いけどね」
みぞれの両親からは、そういった話をした事もあって、みぞれの事を頼むよとは言われた。
一時、みぞれと同棲の話を出たくらいには。信頼されているのが分かった。その話は現在、保留中である。
「そういえば、今日の音楽史の授業、みぞれは分かった?」
「うん、分かる」
「流石だねー」
音大には、簡単に分けて座学系、実技系。レッスンと三つに分けられる。
座学は、一般教養に加え音楽史を学ぶ。みぞれと話している内容はこれだった。
「拓哉は分からない?」
「ううん、考えた事も無かったから、新しい知識を付けれて楽しいなって」
「それは私も」
みぞれは目を輝かせてそう言ってきた。
「実技は問題ないんだけどね」
「でも、大変」
「それはそう」
音大に来てからは、音楽付けの毎日だった。
そう思うと、高校時代とあんまり変わらないなと
「鎧塚さんと鈴木君は凄いね」
「そんなことないよー」
新山先生と唐櫃先生からの推薦もあって、僕達の名前は音大に知れわたっていた。
それは、同級生にも。褒められて悪い気はしないけど、ずっと褒められるのはちょっと気になってしまった。
「これが北宇治を支えたオーボエカップルか…」
そんな異名もまた、同級生を中心に知れ渡っていた。
嫌な気はしないけど。
「変な異名を言わないでくれるかな」
「大阪東照でも噂になってたもん。北宇治はオーボエが良いんだよってさ」
「へー」
大阪東照出身の彼女の言葉に、みぞれはそう返していた。
「興味無さそうじゃん…」
「興味ないから」
みぞれがそう言うと、彼女は「酷い」と言った。
その反応を見て、僕はクスっと笑う。
********
「今日も疲れたねー」
「うん」
今日もまた、音大の講義を終え、近くのスーパーに寄り、必要な物を買って帰ってきた。
アパートの窓から見える外の景色はすっかりと暗くなっていた。
「先にお風呂に入る?」
「ううん、拓哉の手伝いする」
そう言って、キッチンに立つ僕の隣に寄ってくるみぞれ。
「ありがと、それならそっち任せてもいいかな?」
「分かった」
僕の言葉を聞いて、先程買ってきた具材達をカットしていく。
今日は、久しぶりに夏紀達とパーティーをすることになっていた。
「優子達。もうちょっとで着くって」
「楽しみ」
そう言うみぞれはクスっと笑っていた。
「優子、何買ってくるんだろう」
「優子と夏紀よりも希美の方が心配なんだけど」
「ふふふ、そうだね」
みぞれとそう話していると、家のチャイムが鳴った。
「拓哉、みぞれー来たよー」
今日も、楽しいパーティーになりそうだった。
次回は、友恵ちゃんか希美やるつもりです。
後、投稿済みの話かなり弄ってる回もありますので暇な時に読んで頂けると嬉しいです。まだまだ修正中ですが……分岐ルートはかなり手を入れるつもりです。