「何がいい?」
優子は、捕まえた黄前さんにそう聞く。
思ってもいない言葉に、黄前さんは思考が止まっていた。
「ジュース」
「あっ…じゃあオレンジで」
優子に改めて言われて、黄前さんは思考を取り戻し、優子にそう伝え、優子は黄前のリクエスト通りに、オレンジジュースのボタンを押す。
「あんたさ、私のこと嫌い?」
「あっ…嫌いというか、苦手という… あっ」
優子の思ってもいない発言に、黄前さんは言葉を選ぼうとしながらも本音だろう。そんな言葉が飛び出していた。
「もしかして府大会のこと引きずってる? 言っとくけど、あれに関しては私絶対に間違ってないから、今でもソロは香織先輩が吹くべきだと思ってるから」
優子は、オーディションの事をそう話す。
香織先輩信者の優子にとっては、それは当たり前の話。
「先輩はマジ エンジェルだからね。可愛いし優しいし、もうヤバい」
「はあ…」
黄前さんそこはツッコむ所…
なんて声を出せる訳もなく…心の中でそう唱える
「何そのリアクション、今のはツッコむところでしょ」
「あっ冗談…?あっいや…アハハハ…」
優子の言葉に、黄前さんは苦笑いを浮かべる。
「私たち2年生は、去年いろいろあってさ、私も吹部やめようかって、結構悩んだんだけど、その時応援してくれたのが、香織先輩だったわけ」
「夏紀先輩や鈴木先輩からも、ちょっと聞いたことがあります。去年の話、先輩も悩んでたんですね」
「まあね。で?どこまで立ち聞きしてたの?さっきの話」
優子に聞かれた黄前さんはそのまま伝えた。
僕の名前は出されなかったからそこは良かった。
「あすか先輩も知ってるんだ、さすがだなぁ…あっ言っとくけど、夏紀には内緒だからね」
「え?何でですか?夏紀先輩なら協力してくくれるかもしれないのに」
「あんなのに協力されたら迷惑でしょ」
「迷惑って…」
「それに夏紀は、純粋に希美のためを思って、部に戻そうとしてるんだからみぞれのことを聞いたら、どうしていいか分からなくなる。あいつの性格的に、拓哉もそれを分かってて言ってないし」
「鈴木先輩と夏紀先輩、幼馴染ですもんね」
「ええ、あんなとの拓哉が幼馴染なんて信じられないけどね」
優子はそう言って、自身が買ったジュースを口に放り込んだ。
そんな優子に、黄前さんは話をぶっ込んだ。
「先輩はコンクール嫌いですか?」
「はあ?いきなり何?」
「ああすみません、さっき香織先輩のソロの話も出たから、コンクールって何だろうなぁって」
「まあ、納得いかないことが多いのは確かなんじゃない?私だって中学最後の大会は、今でも納得してないわけだし」
南中時代、優子や希美の世代は府大会銀賞だった。
特に部長だった希美は、責任を感じていた筈。優子と同じ様に結果に満足していない同級生は多かった筈。でも優子は続ける。
「でもそれは、結果が悪かったから、結果が良かったら納得していた気がする。今の私たちみたいにね」
「ですよね」
「ふざけてやってるわけじゃない、みんな夏休みを潰して、練習している けど、コンクールは優劣をつける、金や銀。それに銅「この曲を選んだ時点で難しい」とか演奏以前の話を評価シートに平気で書かれたりすることさえある、努力が足りなかった、劣ってたということにされちゃう、理不尽の極まりよね」
「じゃあ、先輩はコンクールが無いほうがいいって思ってるんですか?」
優子の言葉に、黄前さんはそう聞き返す。
「思ったこともあるよ。ただ去年みたいに「みんなで のんびり楽しく演奏しましょう」っていう空気がいいかというと、そんなことはなかった。上を目指して頑張ってる1年よりも、サボってる3年がコンクールに出るみたいなのは、やっぱり引っかかった。今年は実力主義になって、いろいろあったけど、本気で全国行こうと思うんだったら。うまい人が吹くべきだと思う」
優子はそう話をまとめる。
「え?先輩それって…」
「結局、好き嫌いじゃなく、コンクールに出る以上は金がいいっていうことなんじゃない? で…」
「どうしたんですか先輩…」
優子の様子に違和感を覚えた黄前さんは、優子の剣幕に恐れながらもそう聞き返す。
「さっきは言ってなかったようだけど…誰と一緒に聞いてたのかしら?」
「…鈴木先輩です…」
優子の剣幕に負けてしまった黄前さんは、僕の名前を出す。
「言ってくれてありがとうね」
「えっ…えっと…」
「もう寝る時間だから寝にいきなさい」
「…はい…」
優子は黄前さんにそう言って彼女を見送った。
そして、優子の視線は隠れている僕に向く。
「で、拓哉はそこで何をしてるの?」
上手い事隠れていたつもりだったが、優子にはバレていた。
「ばれてたのか…」
「ええ、さっき目線があったもの。それに黄前さんの雰囲気的に誰かと一緒に居たのは分かってたけどね」
「流石だね優子は」
僕はそう言って、近くのベンチに腰を下ろす。
そんな僕の隣に優子は座ってくる。
「何年の付き合いだと思ってるの」
「中学から5年の付き合いだよ」
「付き合いだけならあいつに勝てる訳ないでしょうが!」
優子はそう言って、僕の事を叩いてくる。
「それで、拓哉は希美の件、どう思ってる訳。あの子と一緒に居たなら、話も聞いてただろうし、聞かせてくれない?」
優子は真剣な目で聞いてきた。
「あすか先輩が何を思っているのか分からないけど…僕は戻ってきても良いと思ってる」
「拓哉はそう思ってるのね」
「優子がみぞれの事を考えて、希美の復帰を反対してるのも分かる」
優子は、僕の言葉をしっかりと聞いてくれる。
「それに…元々は仲の良かった二人なんだから、きっかけがあれば仲良く出来る筈だよきっと」
「拓哉…」
「でも、関西が終わるまで合わせたくないのは思ってるかな。先輩達の事。それに優子と約束した全国に行く約束もあるから」
僕がそう言うと、優子は僕に身体を預けてきた。
「優子…何してんの…」
「私って拓哉に愛されてるなぁって思って」
「付き合ってもないけどね僕達」
そう言いながらも、僕は優子の頭をしばらくの間撫で続けた。
数分が経って、僕はベンチから立つ。
「それじゃあ、そろそろ寝よっか」
「そうね。明日も早いし」
優子も同じベンチから起き上がって、自分の部屋へと歩き始める。
「優子」
「何?」
「優子の願い叶えてあげるからね。それと。その服可愛いね」
僕がそう言うと、優子の顔は一瞬で赤くなる。
「か、かわ//」
そんな優子を置いて、僕は自分の部屋に戻ってすぐさま就寝についた。
優子は、拓哉に可愛いって言われてしばらくの間寝付けなかったのを夏紀が見ていたとかなんとか。
ヒロインは?
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中世古香織
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鳥塚ヒロネ
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喜多村来南
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傘木希美
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加部友恵
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