先日の事件があってから、部の雰囲気は物凄く悪い空気だ。
無理もない。
去年まであの体たらくでやっていたのだ。
それが急に全国なんて…いくらなんでも無理な話である
「お疲れ~」
「こんにちは」
音楽室に向かっていると、椅子出しを行っている一年生と遭遇した。
軽い感じで挨拶をする。
「そこ椅子置くところ違うよ!」
「す、すみません」
「まぁまぁ、そんな大声で言う必要はないよ」
と大声で怒り気味の吉川を落ち着かせながら
「次から気をつけてくれたらいいからね」
と一年生の後輩に優しめにいう。
「はーい。みんな聞いてくださーい」
「このあと一年生の希望者は腹式呼吸の練習をしますので中庭に集合してください」
「上級生は新入生をきちんと指導してあげてください」
と晴香先輩が言うが、自分達のパートには後輩が来なかったので特に変わることもない。
いつも通りに先輩2人と同級生と一緒に練習する日々。うん、本当に変わらない
「あれ?夏紀じゃん。今日はもう帰り?」
「時間になったからね」
放課後、来南先輩達が用事があるとかなんとかでパート練習を終え、廊下を歩いているとばったり同級生と出くわした。彼女は中川夏紀。家がお隣同士で、要するに幼馴染。
高校まで一緒だと思っていなかったけど…
「こっちも終わりだし、途中まで一緒に帰る?」
「お言葉に甘えてそうさせてもらう」
「そっちの練習はどうよ」
夏紀と一緒の帰り道、ふと彼女にそんな事を聞いてみた。
「一年生にうまい子がいてさー」
「あーあの子ユーフォ経験者だったか」
先日、あすか先輩に凄く気に入られていた一年生…確か黄前久美子ちゃんだったかな。
経験者だったら、初日の『だめだこりゃ』の発言に納得がいった。
「そう、演奏を聞いていたら滅茶苦茶上手くてさー」
と夏紀の愚痴を聞く。
夏紀がこうやって話すのは僕と吉川、後二人居るけど、最近は話している所を見ていないような気がする。一人は吹奏楽部を辞めてしまったから分かるけど…
「それでやる気が起きないわけだ」
「そう、だから何か奢って」
僕の肩に手を置いて、そう言ってくる夏紀。
「そんな事だと思ったわ。まぁ…駅の近くのコンビニでもいい?」
「まじ!奢ってくれるの?」
「夏紀に奢って元気になるならそれぐらい気にしないよ」
とコンビニでそこそこ奢らせられた。
******
次の日、また音楽室で事件が起こった。
「では、合奏できるクオリティーになったら呼んでください」
「え?曲は?」
「でも、あの、曲とかは?」
「なんでもいいですよ。みなさんの得意なもので」
「えー?」
「そうですね、じゃあ海兵隊でどうでしょう?」
「海兵隊?」
という滝先生によるボイコット…もとい、言い方は悪いが…指導放棄といえるのかな?この場合は…
「拓哉君~あの先生をどうにかしてきて」
パート練習の時間になり、パート練習の教室に入るや否、岡美貴乃先輩に無理難題を押し付けられた。
「はっきりと言います。無理です!」
と岡先輩の隣にいる来南先輩は滅茶苦茶笑っている。
こんな状況で大丈夫なのか…と心配になってくる。
「鎧塚はいいとして…先輩方そんな調子だと滝先生に目を付けられますよ」
「なんであの子は良くて、私たちはダメなんだよ」
「まぁまぁ…最低限出来るようにはなりましょうよ…」
「君が言うと納得しないといけないのが時にイラっとくるね」
と先輩は言っているが、笑いながら言ってくれているのでこのパートは良い雰囲気なのは間違いないと思う。
「でも、他のパートの先輩方よりは上手なんですから…もっと上手になりましょう」
「そうだよ!拓哉君の技術は凄いんだからさ、もっと上手くなろうよ」
「そうだね、もっと上手になって拓哉君にぎゃふんって言わせるんだから」
「その調子ですよ岡先輩」
「鈴木君、私の練習も見て欲しい」
「鎧塚もこう言ってる事ですし、練習再開しましょうか」
僕達のパート、即ちダブルリードはいつもこんな感じです。
他のパートは、あすか先輩と夏紀がいる低音パートは、夏紀曰く良い感じらしい。
夏紀本人は、やる気がないって言っててサボってるらしいけど…
それとは対照的に、他のパートは練習をしていないパートも居るとかなんとか…
トランペットも香織先輩がいるとは言え、吉川と高坂さんと言いあってるらしい…
「大丈夫なのかな…僕達の吹奏楽部は…」
「鈴木君、手止まってる…」
「ごめんごめん…練習頑張ろっか」
「うん」
せめて、僕達のパートだけでも平和に終わって欲しい。
ヒロインは?
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小笠原晴香
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中世古香織
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鳥塚ヒロネ
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喜多村来南
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傘木希美
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加部友恵
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井上順菜
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剣崎梨々花