ダブルリードの苦労人   作:桜紅月音

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合宿

 

-合宿1日目-

 

僕達にとって貴重な3日間の休みを終えるとやってくるのは合宿

そんな中、合奏練習の休憩中

 

「みぞれ、大丈夫?」

 

「うん…」

 

リズと青い鳥のソロの部分でかなり悩んでいるみぞれに声をかけたのが、彼女から返ってきたのはいつのような返事だった。

 

「…」

 

隣に座っているみぞれの事を心配に思っていると、優子が声をかけてきた。

 

「拓哉、ちょっといい?」

 

「うん、いいよ」

 

そう言って、優子に付いて行く。

メインホールを出て、ちょっとしたスペースまでやってきた。

 

「拓哉、みぞれはどう?」

 

「まだ…なんていうんだろう…リズを自分に当てはめて悩んでいるように見えるんだよね…」

 

「何よそれ…」

 

「こればっかりはみぞれの気持ちの問題って所もあるからなぁ…新山先生にも言うつもり…」

 

「解決出来そう?」

 

「出来るようにはするけど…みぞれのソロの部分はどうにかしないとだよねぇ…」

 

「うん、みぞれには頑張って貰わないと全国には行けないと思うし」

 

「だね」

 

「私も手伝える事があったら手伝うから言ってね」

 

「ありがと。流石部長、頼りになります」

 

「はいはい、そういうの聞き飽きたってば。それに。みぞれに復活して貰わないといけないんだから」

 

 

 

 

 

-夜-

 

ダブルリードの皆と一緒にご飯を食べようとしたのだが、1年生3人は他のパートの1年生達と、みぞれは希美と一緒に食べていたので、僕は開いていた席に座って食べようとしたら高坂さんが声をかけてきた。

 

「拓哉先輩、音大に行かないって本当なんですか?」

 

「珍しく声をかけてきたと思ったらそれかい」

 

「どうなんですか?」

 

「確かに行かないって決めたけど…」

 

「そうですか…先輩の音もっと聞きたかったんですけど」

 

「高坂さんみたい技術がある人に褒められると素直に嬉しい」

 

「後、苗字で呼ぶの辞めて貰っていいですか?」

 

「じゃ、なんて呼べば?」

 

「下の名前で」

 

「…麗奈って事?」

 

「はい。久美子だけ下の名前で呼ばれてるのずるいので」

 

「絶対、それが理由でしょ…」

 

「そうです。」

 

「麗奈本人が良いなら…そう呼ぶけど」

 

「そうしてください」

 

「分かった。麗奈、これでいい?」

 

「はい。後ここ座ってもいいですか?」

 

「空いてる所ここしかないからね」

 

「では失礼します」

 

そう言って麗奈は目の前の椅子に座る。

麗奈が座ってすぐに優子がやってきた。

 

「拓哉の所しか開いてないの?」

 

「来た時にはここしか開いてなかった」

 

「というよりも高坂と拓哉が一緒って珍しい事もあるのね」

 

「拓哉先輩と仲良くなりたかったので」

 

「高坂がそんな事を言うなんて」

 

「悪いですか?」

 

「誰もそんな事言ってないでしょ。それに仲良くするのは良い事よ」

 

と言いながら、僕の隣の席に座ってくる。

 

「しっかりと隣の席は確保するんですね」

 

「当たり前じゃないの」

 

「ですね」

 

 

 

 

 

 

-2日目-

 

今日もハードな練習を終え、合宿2日目も昼の休憩時間になっていた。

昨日、優子と話していた通り、新山先生にもみぞれの事を話した。先生も悩んでいたようで話すと言っていた。

そんな中、みぞれは声をかけてきた。

 

「拓哉君、相談してもいい?」

 

そう言ってきたのである。

 

「それで相談って言うのは?」

 

「拓哉君は今回のソロパートの所をどう思ってるのかなって」

 

「…うん…びっくり」

 

「えっ?」

 

「みぞれが演奏の事で聞いてくるとは思ってなかったなぁって」

 

「なんでそう思うの?」

 

「僕よりも新山先生に聞きに行くと思ってた」

 

「先生に聞きに行くつもりだけど、拓哉君の意見も聞いてみたい」

 

「そうだね。じゃ、まず」

 

「うん」

 

「みぞれはリズを自分に重ねてる?」

 

「うん、希美がみぞれがリズで、希美が青い鳥って言ってたから」

 

なるほど、リズを自分に重ねているように見えたのは希美の影響か。

 

「ならさ、その発想を逆転にしてみるのはどう?」

 

「逆にしてみる…?」

 

「そう、リズを希美、みぞれが青い鳥」

 

「私が青い鳥?」

 

「そういう事、出来そう?」

 

「やってみる」

 

「頑張って」

 

そう言って去っていくみぞれは、何かから解き放たれたように見え、この後、新山先生と話したらしく、悩みから解き放たれた彼女の演奏を聞いた時には泣きそうになった。

 

「どうして泣いてるの…?」

 

「…いや…なんでもないよ」

 

そう言いながら目に溜まっている涙を拭う。

 

「鈴木君のおかげもあるわね」

 

「そんな事ないです、僕はみぞれにアドバイスしただけなので」

 

「ううん、拓哉君のおかげで私も助かった。ありがと」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-3日目-

 

「では、全体入れ因習を始めましょうまず始めに…」

 

「すみません、第3楽章通しでやってもいいですか?」

 

「いいでしょう」

 

合宿3日目、合奏練習を前にみぞれが第3楽章を通しでやりたいと言った為、演奏を行った。

僕は昨日聞いていたので、演奏を終えると聞いていない部員達は感動のあまり泣き出す子まで現れた。

 

「すごいです 先輩」

 

「圧倒されました」

 

「自分の演奏に集中できなくなっちゃいました」

 

「みぞれ 本当にすごかった!」

 

とみぞれの周りに部員達が集まっていた。

 

 

 

その中で、僕は希美に連れ出されていた。

 

 

「みぞれが上手なのは分かっていたけど、ここまでとは思ってなかったなぁ」

 

「それは僕も同じ意見」

 

「拓哉でしょ、みぞれを変えたのは」

 

「僕はアドバイスを送っただけ。それ以外の事はしてない」

 

「それも拓哉らしいね」

 

「希美」

 

希美と話していると、みぞれとみぞれに付き添って優子がやってきた。

 

「ほら来たよ、しっかりと話したら?」

 

「うん」

 

希美は頷き、みぞれの前に立つ。

希美と入れ替わるように、優子が隣にやってえくる。

 

「ありがと、みぞれを変えてくれて」

 

「変わったのはみぞれ本人なんだけどなぁ」

 

「でも変えたきっかけは拓哉でしょ」

 

優子とそう話をしていると、向こうでは希美が口を開いた。

 

「みぞれさ 今まで手加減してたんだね」

 

「えっ?」

 

「私のレベルに合わせてたから 今まで全力が出せなかったんだ」

 

「違…」

 

「私 バカだね~ みぞれに 頑張って~とか言って みぞれが本気出せないの 私の実力が 足りてないだけだったわ」

 

「違う」

 

「新山先生に 音大 薦められたの みぞれだけだもんね 分かってたけど… みぞれ 昔っからうまいもん ズルいよ みぞれは ホント ズルい…」

 

「希美…」

 

「私さぁ みぞれに負けたくなくて なんか 同等になれるかなって思って 同じ音大行くって言った 私 才能ないからさ みぞれみたいに すごくないから 音大行くって言ってれば それなりに見えるかなって思って」

 

「希美」

 

「私… みぞれみたいに すごくないから 私 普通の人だから」

 

「違う」

 

「みぞれはさ これからきっと 広い世界に出ていくんだよね「リズと青い鳥」は 何とか みぞれの演奏に見合うように頑張るよ」

 

「希美…」

 

「みぞれのソロを支えられるように」

 

「聞いて! 希美はいつも勝手 1年生の時だって 勝手に辞めた 私に黙って」

 

「昔の事でしょ」

 

「昔じゃない 私にとっては ずっと今 私は ずっと希美を追いかけてきた 希美に見放されたくなくて楽器も続けてきた 私の一番はずっと希美 希美と一緒にいたいから オーボエも頑張った 希美といられれば何だっていい」

 

「そんな大げさなこと言わないで…」

 

「大げさじゃない 全部ホント」

 

「ズルいよ…」

 

「希美が 私の全部なの」

 

「私 みぞれが思っているような 人間じゃないよ むしろ軽蔑されるべき」

 

「希美は 私の特別 希美にとって何でもなくても 私には全部… 全部特別…!」

 

「ん~ 何でそんなにいってくれるのか分かんな…」

 

希美が何かを言おうとした時、みぞれがハグのポーズをとった。

 

「どうしたの?」

 

「大好きのハグ」

 

希美にだきつくみぞれ

 

「私達もやっとく?」

 

「なんで…」

 

「なんとなく」

 

「今は違うでしょ…」

 

優子が茶化してきた中、2人(みぞれと希美)は気にしてなくて

 

「私 希美がいなかったら 何もなかった 楽器だってやってない 希美が 声かけてくれて 友達になってくれて 優しくしてくれて うれしかった」

 

「ごめん それ よく覚えていないんだよ…」

 

「みんなを引っ張って いつも楽しそうで すごいなって思ってる」

 

「みぞれは 努力家だよ」

 

「希美の笑い声が好き 希美の話し方が好き 希美の足音が好き 希美の髪が好き 希美の… 希美の 全部」

 

「みぞれのオーボエが好き」

 

 

「これで大丈夫のはず」

 

「ちょっと…これ以上何かがあるっていうの…」

 

すると、みぞれが僕の目の前までやってきて、僕の手を握ってきた。

 

「えっ…何?」

 

「拓哉君にもお礼が言いたくて…」

 

「何もしてないって」

 

「ううん、私と希美を救ってくれたのは拓哉君だから」

 

「それと拓哉君の事()()()()()()()()()()

 

「うん、ありがとう」

 

と僕は言ってみぞれを抱きしめて背中を優しく撫でる。

しばらくして、みぞれは離れて優子の前に立ち

 

「みぞれ…?」

 

「拓哉君の事大事にしてね」

 

「うん。もちろんだよ」

 

と言って優子はみぞれの事を抱きしめて、3日間に及ぶ合宿は終わった。

 

 

野球×ユーフォ ヒロイン 3年生順

  • 小笠原晴香
  • 中世古香織
  • 斎藤葵
  • 姫神琴子
  • 鳥塚ヒロネ
  • 吉川優子
  • 中川夏紀
  • 鎧塚みぞれ
  • 傘木希美
  • 加部友恵
  • 島りお
  • 黄前久美子
  • 高坂麗奈
  • 川島緑輝
  • 加藤葉月
  • 井上順菜
  • 堺万紗子
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