ダブルリードの苦労人   作:桜紅月音

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10/26日修正


自由曲

-音楽室- 

 

 

「今年の課題曲は『マーチ・スカイブルー・ドリーム』自由曲は『リズと青い鳥』です 高難度の曲ですが 皆さんの目標を達成するのにふさわしい曲だと私は考えています オーディションはテスト週間前に2日かけて行います 審査は一人ずつとなりますので そのつもりでいてください。コンクールメンバーの上限は55名ですが 出場するレベルに達していないと判断する人数が多かった場合にはその数を下回ることも十分にあり得ます 慢心せずに練習に取り組んでください」

 

 

『はい!』

 

 

滝先生から今回のコンクールの曲が発表された。

今年の課題曲は、オーボエとフルートのソロがメインとなる曲だ。

 

 

「拓哉、みぞれよろしくね」

 

 

パート練習に向かう前に、希美にそう声を掛けられた。

まぁ…フルートは間違いなく希美が選ばれるだろう。そしてオーボエは、僕かみぞれのどっちかになる。梨々花ちゃんも十分上手いけど。コンクールメンバーになれるかはまた別の問題なのだ。

 

 

 

-パート連-

 

 

「この曲はね、『リズと青い鳥』という童話を元にして作曲された曲ね」

 

 

「へぇ~」

 

 

「どんな童話か気になるなら図書室にあったと思うから、借りてみるのもいいと思う」

 

 

「ありがとうございます~」

 

 

パート練習を始める前に、梨々花ちゃん達三人に簡単な説明を行っていた。

何も知らないよりは良いと思っての判断。

 

 

「オーボエのソロはどっちが吹くんですか?」

 

 

梨々花ちゃんは楽譜を見てそう聞いてきた。

一番目立つ所なので、疑問に思っても不思議ではないよね。

 

 

「う~ん…みぞれの方が良いと思うんだけどね。僕は」

 

 

「先輩はソロ狙わないんですか?」

 

 

「そういう事ではないよ、フルートとの掛け合いがあるからさ」

 

 

「そういう事ですかぁ~」

 

 

「流石梨々花ちゃん、理解が早くて助かるよ」

 

 

僕の意図をくみ取ってくれた梨々花ちゃんに、僕は彼女の頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-次の日-

 

 

みんなよりも早くやってきて、廊下を歩いていると音楽室に入るみぞれと希美の姿が目に入った。

 

 

「二人ともお疲れ」

 

 

「拓哉こそお疲れ。もしかしてこれ借りに来た?」

 

 

そう言って希美は、絵本(リズと青い鳥)をカバンから取り出す希美

 

 

「そう」

 

 

「読む?」

 

 

「ううん、みぞれと梨々花ちゃんの為に借りようと思っただけだから大丈夫」

 

 

「そう 私も子供の頃、読んだことあるんだよな~懐かしい」

 

 

「リズっていう一人ぼっちの女の子のお話」

 

 

「ひとり…」

 

 

「ず~っとひとりぼっちだったリズのところに ある日知らない少女がやってくるの、二人はすごく仲良くなってそのまま一緒に暮らし始めるんだけど 最後二人は別れちゃうんだよね、リズの元にやってきた少女は 実は青い鳥でね リズの元から飛び立って行っちゃうんだ 確かそんな話 それで、『リズと青い鳥』ってさ 私とみぞれに何か似てるなって思ってた。みぞれがリズで希美が青い鳥」

 

 

希美がそう言って更に続ける。

 

 

「なんかちょっと私たちみたいだな」

 

 

「どういう…?」

 

 

希美の言葉に、みぞれがそう聞こうとしていたが、希美はみぞれの言葉を遮るようにまだ話す。

 

 

「でも別れるなんて悲しいよね~ 物語はハッピーエンドがいいよ」

 

 

「うん」

 

 

「ちょっと吹いてみない?ソロのとこ第3楽章」

 

 

「愛ゆえの決断…」

 

 

「頭のとこ」

 

 

二人はお互いに音出しをする。

 

 

「いいよ」

 

 

二人は第3楽章を吹き始めた。

けど、演奏技術は高い。それは分かり切っている。

でも、なんかタイミングが合っていないというか、何かが足りないような気がした。

 

 

「ん~ピッチちょい微妙だったかな?まっでもこっからかかな~」

 

 

「まだ時間あるから、もっと上手になれるよ」

 

 

「そうだね」

 

 

「あー早く本番で吹きたいな この曲」

 

 

「のぞみは…」

 

 

「ん?」

 

 

「のぞみは、練習が好き?」

 

 

「好きだよ。めっちゃ好き」

 

 

「この曲も?」

 

 

「すごい好きだって…」

 

 

「本番、楽しみだね」

 

 

希美がそう言うと、音楽室のドアが開いた。

そこには、優子がやってきていた。

 

 

「おはよう優子。早いね」

 

 

「おはよ~三人とも早いね~日曜なのに、感心感心」

 

 

「おっはよございます」

 

 

その後を追いかけるようにやってきた夏紀が、優子にぶつかりながら入ってきた。

 

 

「あら部長さん、おはようございま~す」

 

 

「明らかに見えていたでしょ」

 

 

「ちょっと寝ぼけてて~」

 

 

音楽室に入ってきた優子と夏紀は、相変わらずだった。

 

 

「ハッハハ、またやってる」

 

 

二人のやり取りを見て、希美が笑っていた。

 

 

「おはようございま~す」

 

 

「あっおはよ~」

 

 

そして、麗奈と久美子の二人もいつもと同じ時間にやってきて、静かだった音楽室がちょっとだけ騒がしくなる。

 

 

「眠そうだね久美子…」

 

 

「先輩方…随分早いんですね」

 

 

「君らも十分早いよ~」

 

 

「そうなんですけど…」

 

 

その、部員達が次々とやってくる。

希美もフルートの子達がやってきて

 

 

「パート錬行ってくる」

 

 

「うん」

 

 

「了解」

 

 

希美は僕達に手を振って、フルートパートに向かっていく。

フルートの部員達が、希美に話しかけていた。仲良さそうだよね。

 

 

「先輩グミ食べます?」

 

 

「あっもらうもらう」

 

 

「ちょ~っ先輩に言ったんだよ~」

 

 

「朝ごはん食べてこなかったんだ~」

 

 

「食べてこないともたないよ~」

 

 

「朝ごはん何食べてます?」

 

 

「普通にトースト、あとはチーズとか卵とか」

 

 

「ご飯となんか」

 

 

「みそ汁ぶっかけご飯」

 

 

「それ許せない」

 

 

「おいしいですよ~」

 

 

「許せない」

 

 

「蕾実は?」

 

 

「あ…フレンチトースト」

 

 

『お~』

 

 

「あっちは楽しそうで良いよね」

 

 

フルートパートの会話を聞いて、みぞれと梨々花ちゃんにそう聞いてみた。

 

 

「先輩も私達と一緒にします?」

 

 

「いやいや…」

 

 

梨々花ちゃんとそんな話をしているけど、みぞれは何も発していない。

 

 

「みぞれ…?」

 

 

「本番なんて、一生来なくていい」

 

 

みぞれのその言葉を聞いて、僕は黙まりこんでしまった。

野球×ユーフォ ヒロイン 3年生順

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