あれから少ないながらもそれぞれでしっかりと練習を行ってきた。
気づけばサンライズフェスティバルの日がやってきた。
吹奏楽部のイベントや大会の当日は朝からとても忙しい。まず当たり前のことだけど、会場に楽器を運ばなくてはいけない。ちいさめの楽器なら自分で運べるのだけど、
「全員居る?」
「ホルン全員居ます」
「トランペット全員そろってます」
「フルートは?」
「フルートは・・・一人遅れてる」
「連絡は取れてるの?」
「いま駅に着いたって」
こういった日というのはドタバタするものだ。
「あんた、緊張してなさそうね」
「まぁね、緊張し過ぎるのも良くないからね」
「サンフェス、お互いに良い演奏をしましょうね」
「そっちも頼むね」
演奏と言っても僕はしないんだけどね。
ともあれ、吉川が声をかけてくれたのは地味にありがたかった。
何気に緊張してたし
「隣座ってもいい?」
「いいよ」
「拓哉君どう?緊張してる?」
隣に座った鎧塚が珍しく声をかけてきた。
「吉川に声をかけてもらって、緊張どこかに行ったわ」
「そう…」
という彼女は緊張しているように見えた。
「鎧塚は緊張してる?」
「そんな事はないよ?でも…手を握って欲しいかな?」
「それぐらいなら全然いいよ」
と言って、鎧塚も手をしっかりと握る。
「うん…拓哉君のおかげでさっきよりはマシになった。ありがとうね」
彼女はさっきまでの不安そうな表情と違って、とても良い表情をしていた。
僕は吉川に助けられたので、同じように鎧塚も助ける事が出来ればいいんだけどね
「いいか、お前ら。いよいよ本番だぞ。手を抜いたら承知しないからな!」
「はい」
「練習どおりやれば出来る!」
「はいっ!」
「気合を入れろ! 声が小さい!」
「はいっ!!」
「よーし、私からは以上だ」
松本先生の有難いお言葉を貰ったし、いつものようにやるしかないね。
「すみません、ちょっと迷っちゃいました、先生からは?」
「終わりました」
「そうですか。えっとー、私からは特にありません。皆さんの演奏、楽しみにしてます」
「じゃあみんな、自分の楽器のチューニング終わらせておいて下さい」
「はいっ」
「ほら、夏紀」
「サンキュー」
演奏をする予定がない僕は、夏紀の所に居た。
自分の準備は既に終わっていて、そのままぼっとするのはいいけど、何かをしておかないと気が済まないからね
「夏紀、緊張し過ぎないようにね。いつものようにやればいいから」
「拓哉にしてはかなり気遣ってくれるじゃん。どうしたの?」
「何も気にしなくていいから。こういったイベントって夏紀にとって初めてだからね、声をかけただけだよ」
「ありがとうね。拓哉も頑張りなよ」
「うん!夏紀も頼むよ」
『それではただいまより府内各高校吹奏楽部によりますサンライズフェスティバルパレードをスタートいたします』
「じゃ、お互いに頑張ろうね」
「うん」
『立華高校吹奏楽部のみなさん。準備をおねがいします』
「あの粘着悪魔何度も同じことばっかりやらせて!」
「もう完璧に出来てるってわからせてやる」
ここでも滝先生に対しての言葉が出てくるのか。
まぁ、それがやる気に繋がっているのなら別にいいか
「次立華高校でしょ?」
「で、一個挟んで洛秋だってさ」
「はさまれたとこかわいそうだよなー」
「逆に目だっていいんじゃね? メリハリ効いて」
あー好き勝手に言っておけ。
その言葉を後悔にしてあげるよ。このメンバーでな
『続きまして立華高校吹奏楽部のみなさんです』
「うわーーーー」
「何これーー? すごいね」
「立華高校の十八番(おはこ)ですよ」
「うわーーー」
「来たわね」
「うわ うますぎる」
「でしょ」
「全く外さない」
「これはうちら悲惨だわ」
「深呼吸して」
「あ、はい」
「俺、なんか自信がなくなってきた」
「大丈夫。落ち着いて」
「ちょっと、もう出番だよ。みんなしっか・・」
あーみんな…とりあえず落ち着けを言いそうになった時、トランペットの方から音が聞こえてきた。そっちを見ると高坂さんが音を出していた。
「あ、馬鹿、高坂なに音出してんのよ。ここ来たら音だし禁止って言われたでしょう?」
「すみません」
「びっくりしたねー」
「何かと思ったよ」
あの子もそういう地の通った子か。
吉川は大変そうだけど…色んな意味で頑張れだなこれ…
ともあれ、雰囲気に飲み込まれそうになってたけど、これでどうにかなりそうだ。
『続きまして北宇治高校吹奏楽部のみなさんです』
「先生、スタートです」
「本来、音楽とはライバルに己の実力を見せ付けるためにあるものではありません。ですが、今ここにいる多くの他校の生徒や観客は北宇治の力をいまだしりません。ですから今日はそれを知ってもらういい機会だと先生は思います。さ、北宇治の実力、見せ付けてきなさい」
「はいっ」
そして、僕たちは闘いの場へと向かう。
「かっこいいねー」
「結構上手いじゃん」
「どこだっけ?ここ」
「へーやるなー」
「見た?ドラムメジャーの子、超美人じゃね?」
「知ってる?ここ」
「知らない。調べてみる」
「うそ、北宇治?」
「こんなに上手かったっけ?」
「へーー、北宇治ねー」
さっきまでヤジを飛ばしてきていた人達はそんな言葉を言っている。
どうやら、僕達、北宇治は観客に爪痕を残せたようだ。
こうしてサンライズフェスティバルは終わった。
ヒロインは?
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小笠原晴香
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中世古香織
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鳥塚ヒロネ
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喜多村来南
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傘木希美
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加部友恵
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井上順菜
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剣崎梨々花