そして、演奏会前日
「拓哉先輩、みぞれ先輩、明日の演奏会楽しみにしててください!」
僕達の教室に梨々花ちゃんがやってきた。
それまた、とても嬉しそうな笑顔で
「そこまで自信満々なら楽しみにしてるよ」
「はいっ!」
「私も見に行く」
みぞれがそう言うと、梨々花ちゃんは『先輩~』と言ってみぞれに抱き着いていた。
本当に、梨々花ちゃんはみぞれの事が好き過ぎるなと改めて思った。
「梨々花ちゃん達の所が凄く良いっていうのは聞いてるよ」
「うん、私も聞いてる」
「ありがとうございます!先輩達の胸を借りて頑張ります!」
「あはは、梨々花ちゃんなら大丈夫だよ」
「はい!では、失礼します」
梨々花ちゃんはそう言って、教室から去っていった。
アンコンというのは、少人数でやるからこそ面白い。
あの子が以外に上手かったりとか、思ってもいない事もある。
話を聞く限り、釜屋さんがその部類に入るだろうねきっと。
「拓哉の場所には、人が良く来るね」
「ううん、みんなみぞれに惹かれてるんじゃないのかな」
みぞれがそう言うのも、毎日のように誰かしらがこの教室にやってくるのだ。
接点のあるメンバーなら分かるが、あまり接点のなかった子が来た時はびっくりした。
「でも、明日は楽しみ」
「だね。さ、僕達もみんなに負けないように練習再開しよっか」
「うん」
あちこちから聞こえてくる音に負けじと僕達も演奏を再開した。
フルートの音。クラの音が聞こえてくる中、僕とみぞれはオーボエの音を響かせるのだった。
そして、演奏会はやってきた。
「どうよ、私達の演奏は負けてなかったでしょ!」
演奏を終えた優子がどや顔をしながら僕達の所までやってきた。
引退してから約3か月。全然吹いていなかった事もあり、感覚を取り戻すまで時間がかかったと夏紀は言っていたが、何も問題は無かった。
「うん、十分すぎるくらいには」
「優子、凄い」
「みぞれ~!」
みぞれに褒められた事に嬉しくなったのか優子は、みぞれに抱き着いた。
「優子…暑い…」
「あはは、優子がみぞれに抱き着いてる」
「希美も夏紀もお疲れ様」
「ありがと、久しぶりに緊張した」
希美と夏紀も合流して、なんだかんだいつものメンバーになった。
すると、優子が聞いてきた。
「そういえば、拓哉はどこに投票入れたの?」
「えっ?聞きたい?」
「うん、拓哉とみぞれが投票入れた編成は凄いって事でしょ」
部員投票と一般投票枠の二つがあった。学校代表は部員投票から選ぶのこと
なんで知ってるかというと、久美子が自分から話をして、聞いたからだけど
「優子達の所に入れたよ。こんな事を言ったらさつきと梨々花ちゃんに何か言われそうだけど…」
「あはは、そんな事はないって」
僕の言葉に、希美が笑いながら言ってきた。
「そうなんだ~てっきりクラの所に入れたんだと思った」
「クラは、ここの自慢できる所なんだしそうでしょ」
部員投票の結果。一位になったのは、クラリネット四重奏「革命家」だった。
島が泣きそうになりながら、クラの四人を抱きしめている所を見た。
それはさておき、
「それにしても…両方2位の奏ちゃんの所は悔しいだろうね」
奏ちゃんが居る編成である『金管七重奏「金管七重奏のための”ティー・タイム”」』は、一般でも校内投票でも二位だった。まぁ…奏ちゃんが悔しがっている姿が目に浮かぶ。
「そこは、黄前ちゃん達に任せるとして…拓哉が私達の事を評価してくれたのは嬉しいかなって」
「一般投票なんて言い方アレだけど、人の好みだし。僕に好きな演奏が夏紀達だったという事で」
僕がそう言うと、みぞれに抱き着いていた優子が…
「拓哉~!」
「うわぁ!」
「あっ」
みぞれに抱き着いていた優子が、僕に抱き着いてきたのである。
みぞれから視線が刺さる。
「優子…なんで今度は僕に…」
「だってそんな事中々言わないだもん」
「みぞれ…あれいいの?」
「ううん、後で拓哉に甘やかしてもらう」
優子の後ろに居る、みぞれと希美の会話が聞こえてきたが、一体何をしないといけないのだろうか…不安になる僕なのであった。