クソが。完全に油断して見聞色の覇気を切ってた。だが、その顔を見てすぐに理解した。
こんな最弱の『東の海』になんで王下七武海のジンベエが来たのかと思えばよ──テメェもこのアーロンと裏でグルだったわけか。
「仲間、か。ハッ、ハハハハハハッ!笑わせてくれるじゃねぇか!魚人の誇る『仁義』ってのは、弱い人間をいたぶって金を毟り取るクズを庇うことか?『海侠』の名が泣くぜ、ジンベエ!」
別にこのココヤシ村が僕の庇護下にあるわけじゃねぇし、どうなろうと見捨ててもいいんだが──おいテメェ、今僕に背後から攻撃したよな?
つまりよ、テメェは僕の明確な『敵』に回るってことだ。いいぜ、ここで兄弟仲良く泥の底に沈めてやるよ。
「何がおかしい!今は海賊旗を分かとうとも、アーロンはかつて同じ船に乗ったわしの大切な弟分じゃ!仲間が目の前で一方的に蹂躙されそうな時に黙って眺めているのは──男の仁義に欠ける!」
「......ジンベエの兄貴......っ」
泥から這い出たアーロンが、地べたを惨めに這いずりながら情けねぇ声を出しやがる。
「魚クセェ口で高尚な綺麗事を言うな、気色悪ぃ。テメェらゴミどもは、いつも言ってることとやってることが伴ってねぇんだよ。アーロン程度の雑魚がこの海で210億ベリーも貯め込めたのは不思議だったが、後ろ盾に現役の七武海がいるならすべて腑に落ちるぜ。その汚ぇ金、テメェの取り分もしっかり含まれてたんだろ?」
「──侮辱も大概にせェ!口が過ぎるぞ、若造ッ!」
「あんまり品のねぇ挑発はやらねぇ主義なんだが──いつでも来いよ、下等種族。テメェと僕の絶対的な格の差を、その魂の髄まで思い知らせてや......あ?おい、ちょっと待て」
『リオ様』
「なんだ、しらほし。見ての通り、僕は今あんまり暇じゃねぇんだけど」
『アーロン様のこれまでの悪事は、わたくしもヌマの中からしかと確認いたしました。圧倒的な力で無力な人々を虫けら扱いしたアーロン海賊団の皆様が、それ以上の力で凄惨な報いを受けるのは当然の道理だと思います』
「ああ、そうだろ。だから目の前のこいつもアーロンと同罪で──」
「待てと言われて大人しく待つバカがどこの海におる!戦闘中に独り言などと舐めた余裕を見せおって!『魚人空手・鮫瓦正拳』!!」
大気中の水分そのものを震わせて伝う凄まじい衝撃波。練り上げられた武装色を纏った正拳突きが迫る。
チッ、ヌマの中のしらほしとの会話に意識を割きすぎた。避けきれねぇ、受けるしかねぇか。
「......ッ、チィ!!」
ドゴォンッ!と背後の瓦礫が派手に弾け飛ぶ。しらほしとの念話に集中しすぎたせいで、咄嗟のガードが甘くなった。
「わしら誇り高き魚人を下等種族と蔑んだこと、その身をもって後悔させてくれるわい!」
痛いじゃねぇか、本場の魚人空手。こっちも即座に武装色を固めて防いだっていうのに、衝撃で腕がほんの少し痺れたぞ。いいぜ、気が変わった。テメェのことは今すぐ優先的にぶっ殺──
『リオ様』
おい黙ってろ、しらほし。今はいくらお前でも、呑気にお喋りしてやる余裕はねぇ。七武海クラスの実力者を相手に油断してかかると、さっきみたいに不本意な1撃をもらう可能性がある。
『リオ様』
「おいジンベエ、この僕に2回も攻撃──」
『リオ様』
「したんだ。当然、死ぬ覚悟は──」
『リオ様!』
「出来てるんだろうな?」
『リオ様!!ぅ──────え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!リオ様がわたくしを無視するぅ〜〜〜!!』
「耳元でうるせぇよ!これ以上戦闘中に騒ぐなら、視覚も意識の接続も強制的にシャットアウトするぞ!」
『怒った!!!リオ様がわたくしに怒鳴った〜〜〜〜〜〜!!え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!』
「またしても戦闘中に独り言か!『魚人空手・七千枚瓦回し蹴り』!!」
「っ!調子に乗ってんじゃねぇぞ、太っちょ!」
野郎の豪快な回し蹴りに合わせて、僕も高密度の泥と武装色を纏わせた右脚を全力で振り抜く。
激突した衝撃波で互いに後方へと吹っ飛び、体重の軽い僕はそのままアーロンパークの崩れた残骸へと激しく打ちつけられた。
クソが、この僕が、こんな魚人どもの作ったゴミの山に埋まるなんて最大の屈辱だ。
『ごめんなさい!ごめんなさい、リオ様!わたくしがしつこく話しかけているから、リオ様が戦いに集中できなくて──本当に申し訳ありません!』
「ああ、そうだよ。全くもってその通りだ、全部お前のせいだ。だから、どうしても言いたいことがあるなら今ここで全部手短に言え。お前の話を聞き終わってから、目の前のあいつをぶち殺す」
『あのっ、アーロン様とジンベエ様は全く違うのです!かつてのタイヨウの海賊団が解散したあと、人間に対するお2人の今後の方針は真逆でして、それが原因でジンベエ様とアーロン様は激しく喧嘩別れしたのです!』
「だが現実問題として、アーロンが死ぬ寸前のピンチの時にジンベエが海中から現れた。こんなにも都合よく、完璧なタイミングでだ。ジンベエがアーロンと裏で組んで連絡を取り合っていた可能性の方がどう考えても高いだろ」
『いえ、あの高潔なジンベエ様に限ってそのような卑劣なことは絶対にないと思います!恐らく、風の噂を聞いて偶然アーロン様の様子を見に来たタイミングで、運悪くわたしたちと鉢合わせしただけかと......!』
「瓦礫から出てこんか!不遜王リオ!」
外でジンベエが威勢よく喚き散らしてやがる。うるせぇ、今大事な話をしてんだから少し待て。
「で、お前はそれを僕に伝えてどうしろってんだ。理由はどうあれ、僕はこの短い間にあいつから既に2回も攻撃を受けた。グルだろうが偶然だろうが、僕に刃を向けた事実に変わりはねぇ」
『ジンベエ様は魚人島の英雄であり、顔です!もしここでリオ様が彼を殺してしまえば、魚人島そのものを完全に敵に回すことになります!』
「なに言ってんだ、既に王女であるお前を『誘拐』したことになっている時点で、魚人島とはとっくに敵対関係だろうが」
『それに、ジンベエ様はあの白ひげ様とも深い親交があります!ここで彼を討ってしまわれると、白ひげ様とリオ様の良好な関係まで悪化する可能性があります!』
「出てこんのか!威勢がいいのは口だけで、尻尾を巻いて逃げおったか!」
外で吠えてんじゃねぇ、少し黙ってろクソが。
「白ひげのジジイとの関係がこの程度のことで崩れるとは思わねぇし、仮に崩れたところで僕は一向に構わねぇ。僕は白ひげの子飼いでも部下でもねぇんだ──それにしても、お前、やけに必死にジンベエを庇うじゃねぇか」
『ジンベエ様は、タイヨウの海賊団が解散した後に、唯一オトヒメお母様の平和への意を汲み取って、人間との関係修復のために嫌々ながらも王下七武海の地位に就いてくださったお方です。わたくし個人としても、深い恩があるのです』
「──ハッ。お前の恩なんざ僕には関係ねぇな。関係ねぇが......まあ、本当にアーロンとグルじゃないってんなら、今回だけは特別に見逃してやってもいい」
......まったく、仕方ねぇな。普段は控えめなしらほしが、僕に対してここまで必死に自分のわがままを言うのは珍しい。仲間のお願いなら、少しは聞いてやるのが船長ってもんだろ。
「出てこんのなら、わしの方から行くぞ!」
『本当ですか!?ありがとうございます!リオ様!』
『ああ。だが、本当に白かどうかの確認はお前が直接しろ。今僕が前に出て話したところで、お互い殺気立っててまともなやり取りはできねぇだろ』
『はい!お任せください!ありがとうございます、リオ様!』
僕は瓦礫の中でパチンと指を鳴らす。
その瞬間、ジンベエが踏み込もうとした戦場の中央に巨大な黒い泥の渦が発生し、そこから見上げるほど巨大なしらほしの姿がふわりと現れた。
「そこまでです、おやめください!ジンベエ様!!」
(......ったく、これじゃあ今日の僕は、完全に殴られ損の蹴られ損じゃねぇかよ)
「謝っても到底許されることではないことをした!だが、それでもまずは頭を下げて謝らせてほしい!わしの不徳の致すところ、弟分がこの地で多大なる迷惑と苦痛をかけ、誠に申し訳ない!!」
ジンベエの剛腕によって、地面にめり込むほど力ずくで頭を打ちつけられたボロボロのアーロン。
そして、額から血を流す勢いで土下座して謝る王下七武海・ジンベエの後ろで、恐怖に震えながらそれに倣って一斉に土下座する3人の幹部連中。
突然現れた巨大な人魚姫の仲裁と、怪物たちのいきなりの全力の謝罪を受け、武器を持ったまま激しく困惑するココヤシ村の連中。
クソが、しらほしから事情を聞いて青ざめたジンベエに、僕に対しても何度も何度もバカみてぇに真剣に頭を下げられたせいで、すっかり奴に対する殺意が消え失せちまった。
本当に殴られ損の蹴られ損だ。ああ、ムシャクシャする。このやり場のない苛立ちを誰かにぶつけたい。
それから、実に2時間にも渡る魚人どもの謝罪と事情説明が延々と続いた。あー、もう飽きた、さっさと帰りてぇ。いつまでこんな茶番を待てばいいんだ、クソが。
あ、今ジンベエが泣き叫ぶ村のガキにポカポカ殴られてる。おい、殴り方が甘すぎんだろ、もっとしっかり腰を入れて顎を殴れ。
──ん、あ?なんだよ、ナミとかいったか。さっきからなに僕の方をジッと見てんだよ。
「殺してよ!ねぇ、なんでこのままアーロンを殺さないの!!あんた、あいつらよりずっと強いんでしょ!!」
ナミが涙でぐしゃぐしゃになった顔で僕に詰め寄ってきた。
「あー、そうだな。僕は確かに最初は全員殺そうと思ってここに来たんだが──今の状況を見りゃ、あっさり殺さない方があいつにとって生き地獄で苦しみそうだし、殺さないことにした」
「......なんでよ。あんた──私たちを助けに来た正義の味方じゃないの!」
ハッ、笑わせるなよ。この僕が正義の味方?どこの誰が、いつそんな寝言を言った。
「おいガキ、僕は40億の賞金首、れっきとした海賊だぜ?僕の行動は全て僕自身の意思と気分によって決められる。どこの誰であろうと、僕に指図や命令はできねぇ」
「それによ、よく見てみろ。あのアーロンは今ここで死なない代わりに、死ぬより惨めな思いを一生味わうことになる。散々見下していた『下等種族』の人間に大事な仲間の大半を目の前で殺され、尊敬する兄貴分に自分のせいで何度も何度も人間へ土下座させて──あいつはこれから先、この消えない屈辱と惨めな思いを抱えながら生きることになるんだ」
「それに、僕は僕個人の極めて私的な理由であいつを殺しに来たが、海賊に支配された政府非加盟の村なら、この程度の悲劇は世界中の海で当たり前にあり得る話だ。なにもアーロンだけが特別極悪非道な悪人ってわけじゃねぇ」
「要するにこの時代、自分たちを守る確かな『力』がねぇと、誰にも奪われずに平和に生きることは出来ねぇってことだ」
「わかんない!あんたが言ってること、全然わかんない!そんな冷たい難しいことばっかり話して、私にはわかんないよ!」
「今の話のどこが難しいんだよ、クソガキが。なら、お前の頭でもわかるように単純明快な真理を教えてやる──二度と奪われずに守りたいなら、お前自身が強くなれ。弱けりゃあ、この海じゃ何も守れねぇ」
「......どうやって。ただの人間の私が、どうやってあんな化け物たちより強くなればいいのよ」
「知るか。何でもかんでも他人の僕に聞くな。毎日死ぬほど走って、死ぬほど身体を鍛えて、死ぬほど休むか──あるいは、手っ取り早いのは僕みたいに強い『悪魔の実』でも見つけて食えばいい」
ナミは唇を噛み締めてようやく黙った。よし、面倒なガキの相手はもう充分したろ。あっちの広場じゃ、責任を取って腹を切ろうとしてる律儀なジンベエを、村の大人たちが必死に止めてなんかいい雰囲気で盛り上がってんな。そのまま切腹させとけばいいのに、つくづく救いようのないお人好しどもめ。
よし、僕たちはもう帰るぞ。ここでの用事は終わったし、これ以上やることもねぇ。下手に村人どもに感謝されて囲まれたら、帰るのがめんどくせぇしな。
「おいしらほし、帰るぞ──」
「──ちょうだい。ねえ、その悪魔の実、私にちょうだい」
「......あ?」
僕の裾を掴んで引き止めたこのガキ、悪魔の実が市場でどれだけの価値があるか分かって話してんのか?
そもそも、なんで僕が縁もゆかりもねぇテメェに貴重な悪魔の実をタダでくれてやんなきゃなんねぇんだ。
「悪魔の実がダメなら──せめて、私がこれから強くなるための『武器』をちょうだい!」
「あ?」
ああ、なるほどな。最初に到底無理なデカい要求を吹っ掛けておいて、断られた直後にワンランク下げた別の要求をすれば、相手が妥協して交渉の成功確率が上がるってやつか。小賢しい交渉術を知ってやがる──で、結局のところ、僕がテメェに武器を与えるメリットも理由も1つもねぇんだが。
「──わ、私も!私にもください!......もう誰にも負けないように、強くなるための武器を!」
「ノジコ!?」
なんだ、今度は後ろから出てきた青髪のガキか?
(おいおいテメェら、揃いも揃って僕のことを気前のいいサンタクロースか、都合のいい善人とでも思ってんのか)
大体、テメェらが強くなるための武器くらい自分の金で手に入れろ。もしくは、そこにいる村の大人どもに頼んで貰え。海賊の僕にたかるな。
「で、聞くが、テメェらに僕の武器をくれてやったら、僕に一体何の得があるんだ?」
「私たちが強くなります!」
「心の底からありがとうって言います!」
「............テメェら、本気で僕を舐めてんのか?」
「な、なら、お金はないけど......将来、私の身体で払うから......!」
「ちょっと何馬鹿なこと言ってんのよナミ!相手は本物の海賊よ、そんなこと言ったらどうなるか分かってんの......!?」
ああ、そうだよ。青髪のガキ、テメェの言うことが100パーセント正しい。海賊相手に、たとえ冗談でも『身体で払う』なんて軽々しく言うもんじゃねぇ。
もっとも、僕はテメェらみたいな洗濯板のお子様にこれっぽっちも興味はねぇけどよ。
おい、そこらの村の大人どもも早くこっちへ止めに来いよ。テメェら、なにいつまでもアーロンをボコボコにぶん殴ってるジンベエの仲裁なんかしてんだ。
あんな奴もういいから、死ぬまで好きに殴らせとけ。今の状況、そいつら魚人より40億の僕の方が危険度が高ぇからな、絶対に。
「──クソが。ああ、もうウザってぇな。いいか、テメェら2人のうちどっちかが、この僕が『おっ』と驚くような、あるいは今後僕の役に立つと思わせられるような価値あるものを見せることができたら、特別に武器をくれてやる──制限時間は10分だ。10分以内にここに用意してこい」
ガキどもはまだ何か言いたそうにしていたが、僕がこれ以上条件を緩める気がないのを察してか、すぐに顔を見合わせてそれぞれ違う方向へと全力で走っていった。
「しらほし、きっちり10分後にここを発って帰るぞ!」
「はい!わかりました、リオ様!」
まあ、こんな田舎のガキどもが、世界中の財宝を見てきた僕が投資したいと思わせるような代物を用意できるとは到底思わねぇ。
そして、きっちり10分後。息を切らして戻ってきた2人が差し出したものを見て、僕は片眉を上げた。
「......まあ、このみかんは確かに甘くて美味いし、こっちの海図の出来もガキが描いたにしちゃ悪くねぇけどよ」
青髪のノジコとかいうガキが持ってきたのが、村の誇りだという木箱いっぱいの大量のみかん。まあ、水分が多くて甘酸っぱくて普通に美味い。
そしてオレンジ髪のナミが持ってきたのが、今まで自分が測量して描いてきたという海図の一部。
いや、まあ、その幼い年齢でこれだけ正確で緻密な海図を描ける技術は素直にすげぇと思うけど......こんな平和な『東の海』の海図なんて、普段グランドラインにいる僕には何の利用価値もねぇんだよな。
「もうひと押し、なんかねぇのか?流石にこの2つだけで、この僕から業物の武器を貰おうなんて虫が良すぎて無理だぞ?」
僕のヌマに眠っているキャプテン・ジョンコレクションの武器を、そこらの武器屋で売ってる安物と一緒にするなよ。
「──なら、わしがその子らの代わりに不足分の対価を出したい。それじゃあ、いかんか。リオさん」
後ろでアーロンを縛り上げていたジンベエが、重々しく前に進み出てきた。
「ほう。ガキどもにはこれでも少し甘くしてやったんだが、七武海のテメェが関わるなら話は別だ──いいぜ、ジンベエ。今後、テメェが『僕の言うことをなんでも1つだけ絶対に聞く』って誓うなら、このガキどもに僕の宝物庫から最高の武器をくれてやる」
「承知した!この程度の約束でこれまでの償いになるとは思っとらんが、それでこの村の方々のためになるなら、その勇敢な少女たちの役に立てるのなら、わしは喜んでその条件を呑むとも!」
海侠ジンベエの『絶対の約束』が手に入った。みかんと海図のおまけ付きだ、悪くない取引だろ。
僕はヌマの中に手を突っ込み、僕が普段の戦闘では使わねぇ武器──よし、このあたりでいいか。
黒い沼から2つの輝く武器を引きずり出し、ガキどもの足元の地面へと無造作に投げる。
「ほらよ、約束の品だ。『戦斧』と、取り回しのいい『双斧』だ。テメェらガキが将来これを自在に使いこなせるようになれば、そこらの海賊なんざちっとも怖くねぇだろ」
ガキ2人は投げてやった武器に目をキラキラと輝かせて──早速、軽い方の『双斧』をどっちが使うかでギャーギャーと取り合いを始めている。
まあ、もう1つの『戦斧』なんて今のあいつらにはデカくて重すぎて、まともに持ち上げることすらできねぇだろうからな。
村人たちの歓声と騒ぎが大きくなる前に、僕としらほしは静かに海岸へと引き上げた。
「リオ様......本当にありがとうございます。わたくしのわがままを聞いて、ジンベエ様とアーロン様方を生かしてくださって」
「まあ、アーロンの部下は最初のうちにほとんど窒息させて殺しちまったけどな──あー、それよりしらほし、ウタへのお土産がこのみかんだけで、あいつら大人しく納得すると思うか?」
「.........し、します!リオ様が直接選ばれて渡したものであれば、ウタ様もきっと!」
「いや、絶対しねぇよ。今のお前の微妙な沈黙が、何よりの答えみたいなもんだろ」
まあでも、予定していた1ヶ月よりだいぶ早く帰れることになったし、ウタもそこまでめんどくせぇ文句は言わねぇだろ。
さて、留守番のクロコダイルと鷹の目の野郎、ちゃんとウォーターセブンで僕の新しい船の依頼は済ませてくれてるだろうな。
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