僕がキャプテン・ジョンの宝だ   作:Mr.♟️

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ウォーターセブン2

 

「リオの手料理......!」

 

何故か朝早くから僕の船に来ているハンコックと食卓を囲んでいる。おい、クロコダイル。僕を睨むのは違うんじゃねぇの?同盟相手はぞんざいに扱えねぇだろ。

 

「──ねえ、リオってさ、ハンコックの『メロメロ甘風(メロメロメロウ)』で石になるの?」

 

食事の手を止めたウタが、ジト目で僕を見つめながら突拍子もないことを聞いてきた。

 

「なるんじゃねぇの。知らんけど」

 

話題のチョイスが下手くそなのか、あえて火種を撒いているのかどっちだ。自分から聞いといて不満そうな顔してんじゃねぇよ。

 

「っは!つまりそれは、リオはわらわの美しさに魅了されておるということで──」

 

「男なら誰だって石化されんだろ。すました顔して飯食ってるミホークも、不機嫌ぶってるクロコダイルもな」

 

メロメロの実は、絶世の美女であるハンコックと相性が良すぎる。それに尽きるだろ。

 

「おい、こっちを巻き込むんじゃねぇ」

「同意見だ」

 

大人2人が即座に否定の声を上げる。

 

「もし効かねぇってんなら、試しに一発やってもらうか?」

 

「....チッ」

「反撃はさせてもらうぞ」

 

おいおい、いい歳こいた大海賊どもがムキになってかっこ悪いんじゃねぇの?僕みたいに堂々と認めろよ。別にやましい事でもあるまいし。

 

「ならさ、私がやったら石化する?」

 

「しねぇよ」

 

なんでこれにも不満気なんだよ。お前はメロメロの実を食べてねぇだろ。『ウタワールド』の中なら理不尽に石にされるかもしれんが、現実世界でそんな物理法則を無視した現象が起きるわけねぇよ。

 

「諦めよ、小娘。リオはわらわのような大人の美女が好きなのじゃ」

 

「違うも〜ん。リオは『私がいないと出航しない』って言うくらい私のことが大好きなんだから。ね?」

 

「そんなこと言ってねぇよ」

 

「それで、リオは私を船に乗せるために6000億ベリーも使ってエレジアを直してくれたんだよ!おばさんにそんなことしてくれる?」

 

いや、だいぶ都合よく脚色されてるな。前半部分は結構な嘘が混ざっているぞ。というより、大部分がマウントを取るためのハッタリだ。

 

「過去の栄伝じゃな。大事なのは未来だということが分からんのか、小娘」

 

「過去が今に繋がって、今が未来に繋がるんだよ!そんなことも知らないの、おばさん。はい、負け惜しみ〜」

 

あ、ハンコックの額に青筋が浮かんだ。ウタのカウンターが綺麗に決まったな。お前ら、平穏な空気で朝食を楽しみたいとか思わねぇの?僕は心の底から思うけど。

 

「──リオ。この小娘、石にしても構わぬか?」

 

「構うに決まってんだろ。やめとけ」

 

一触即発の空気をぶった斬るため、多少強引に話題を変えることにした。

 

「あ、そうだ。んなことより、女ヶ島の先々々代女帝はまだ生きてるのか?」

 

純粋に気になってたんだ。クソ親父が酒を飲むたびに楽しそうに話していた、ロックス海賊団の生き残りがどこにいるのか。そもそも、まだ生きているのかどうか。

 

「生きておるが、今やただの騒がしい置物のようなものじゃ。まさか、面識があったのか?」

 

「面識はねぇよ。ふーん、置物か。まあ、歳も歳だから仕方ないか」

 

クソ親父いわく、『顔がいいだけのうるさいナルシスト小娘』だったか。まあ、全盛期のクソ親父はその女に振られたらしいが。

 

見てみたかったなぁ、あのクソ親父を振るほど見る目がある女を。

 

振った時、どんな顔をしてたのかも気になる。あわよくば僕の船に乗せて戦力にしたいとか考えてたんだが、流石にババアじゃキツイか?

 

いや、身体の衰えなら僕の『秘蔵・黄金の泥湯(トレジャー・マッド・スパ)』に浸からせれば、どうとでもなるな。

 

「会ってみたいんだが、ダメか?」

 

「.....それは、そなたが女ヶ島に来るということか?」

 

「まあ、そうなるな。だから事前に聞いてる。同盟相手の国に無断で乗り込むわけにはいかねぇだろ。ダメか?」

 

「いつでもウェルカムじゃ。好きなだけいてください.....っ!」

 

両頬を手で押さえて身悶えするハンコック。なあ、僕は海賊女帝と話してるんだよな?偽物じゃねぇよな?

 

「──っ! 絶対だめだよ! 今の声なんかゾワッてしたもん!」

 

「このバカガキに賛同するわけじゃねぇが、次の航路はアラバスタにしろ。アラバスタの国王がお前に会いたいってうるせぇんだ」

 

珍しいこともあるもんだな。クロコダイルがウタと同じ意見に同調するなんて。

 

まあ、クロコダイルの顔を立ててやる必要もあるし、女ヶ島の件は急ぎじゃない。次はアラバスタでいいか。

 

「なっ、お主らいい加減にするのじゃ!リオは女ヶ島に行きとうと言うておるじゃろ!」

 

「あ?いい加減にするのはテメェだ、海賊女帝。たかが同盟相手が、うちの船の航路に口を出す資格はねぇよ」

 

「──リオ。白米のおかわりがない」

 

「あー、米はもう備蓄がねぇな。あとで島に買い出しに行ってくれ」

 

「わかった」

 

ミホークはこの騒ぎの中でも我関せずと飯を食い切り、理不尽な頼み事じゃなければ文句も言わずに動いてくれるから本当に助かる。

 

理不尽な頼み事や裏の仕事はクロコダイルに回せば完璧に処理してくれるし、大人組は役割分担が出来ていて優秀だ。

 

じゃねぇわ。そろそろ止めないと、ウタとハンコック、クロコダイルまで本気で船上で戦い始めそうじゃねぇかよ。

 

「おい、静かにしろ。次はアラバスタだ。その次に女ヶ島に行く」

 

アラバスタに僕自身の用事はねぇし、顔見せで数日滞在するくらいでいいだろ。

 

「──はいっ。そなたがそう言うなら、喜んで待ちます」

 

「......おい、リオ。こいつ、マジで一度干からびさせていいか?」

 

「いいよ!賛成!」

 

「バカなこと言ってんな、お前ら」

 

朝から騒がしい。まあ、悪くねぇけど。

 

「ん〜〜〜〜〜〜!リオ様の作るご飯は美味しいですっ!」

 

そりゃあ、ありがとうな。まあ、できれば普通に料理人が仲間に欲しいんだが。どっかに落ちてねぇかな。

 


 

「───出来たんだ、あんたらが求めた理想の船が!」

 

「ゴミみたいな船作ってたら、マジで命はないと思っとけよ?」

 

僕がどれだけ希少な素材を提供したか分かってるよな?その上、破格の料金も上乗せして前払いしてやってるんだ。僕の期待を下回るような鉄屑を作っていたら、マジでこの造船所ごと海に沈めるぞ。

 

「リ〜オ。そんな脅すようなこと言ったら可哀想でしょ!きっとすごくいい船を造ってくれてるよ!」

 

「俺は乗れればなんでもいい」

 

「バカか。船は海賊の象徴だ。なんでもいいわけがねぇだろ」

 

ミホークの投げやりな言葉を、クロコダイルが呆れたように鼻で笑って一蹴する。

 

そうそう、クロコダイルの言う通りだ。船は海賊の顔であり象徴だ。僕たちの格に相応しく、かつ納得できる船じゃないとダメに決まってんだろ。

 

「私も、今の船より大きいと助かりますっ....!」

 

しらほしが巨体を縮こまらせながら、申し訳なさそうに口を挟む。

 

「んま〜!御託は抜きにして、まずはその目で見てくれ──俺の、いや、俺たちの最高傑作を!」

 

僕たちに見えないようドック全体を覆っていた巨大な天幕が、重々しい音と共に下ろされる。その直後、視界に飛び込んできた船に、僕は思わず息を呑んだ。

 

──へぇ、良いじゃねぇか。

 

「おっきい!!!!」

 

「ふんっ、白ひげのモビー・ディック号に匹敵するデカさか。悪くねぇな」

 

目をキラキラと輝かせて見上げるウタと、言葉とは裏腹に口角がガッツリ上がっているクロコダイル。いい年したおっさんのツンデレとか誰得だよ。

 

「図体がデカいのはいいが、強度は問題ないんだろうな?」

 

「ああ!それがこの船のすごいところなんだ!おたくが用意してくれた『陽樹イブ』は、船大工として震えが止まらなくなるほどの最高の材料だった!形状記憶に自動再生!この船は──今までの造船の常識を根底からぶっ壊してくれたんだ!」

 

お、おう。興奮しすぎてめちゃくちゃ捲し立ててくるじゃねぇか。陽樹イブの特性が船全体に生きてるってことは、事実上、手入れ要らずの不沈艦ってことか?最高じゃねぇか。

 

「更におたくの巨大な人魚姫が、船内のどの部屋にも行き来しやすいように特殊な水路と空間設計を──」

 

「それに加え、ご希望だった新世界仕様の潜水機能も完璧に組み込んで──」

 

「何よりの目玉は、外部からの物理的な衝撃をそのまま溜め込んで──必要時に動力に変換できる特殊システムだ!普通の木材の船だと衝撃でぶっ壊れちまうから実現できない....俺の机上の空論だったんだが、おたくが持ってきてくれたイブの強度と再生力のおかげでついに──」

 

おい、そろそろ誰か止めろよ。熱が入りすぎて止まんねぇぞ、こいつ。もう30分は図面を広げながら一方的に話されてるんだが。

 

「──要するに、この船は現存するどの船よりも頑丈で、最高にスゲェってことだな?」

 

「〜〜〜〜〜〜〜っ!その通りだ!んま〜!兄ちゃん、話がわかるじゃないか!」

 

「性能だけじゃなく、外観もかなり──いーや!死ぬほどこだわって作ったんだ!」

 

「ああ。船首のモチーフが狼だよな?」

 

合ってるよな?犬とかじゃないよな?

 

「分かってくれるじゃないか!狼ってのはな、群れの仲間意識が異常に強く、一度敵と見なした外敵には一切の容赦がない誇り高き動物だ!差し出がましいかもしれないが、おたくらのこれからの航海に幸運あれって気持ちを込めて、俺がデザインさせてもらった!」

 

「──仲間意識か。悪くない」

 

お、意外だな。さっきまで乗れればなんでもいいとか言っていたミホークが、静かに目を細めて喜んでる。

 

やっぱり、こいつの造船所に頼んで正解だった。実は少しだけ不安だったんだよ。『伝説の船大工トムの弟子』って肩書きだけて名前負けしてたらどうしようってな。

 

「僕のうるさい仲間たちも大絶賛だし、正直僕が想定していたよりも遥かに良い船だ。お前のその腕と心意気を見込んで、追加で投資してやる──幾ら欲しい?無利子でいいぞ」

 

いくらでも無利子で貸してやるよ。返済期限も設けねぇ。ただ、もし僕たちが修繕の客としてウォーターセブンに来た時は、何よりも最優先で優遇しろよ?

 

「──────んま〜!本当にいいのか!?」

 

「ここでケチって、資金繰りに苦しんで潰れられたら僕が困るんだよ。軌道に乗るまでの運転資金が山ほど必要だろ」

 

トムが死んでから営業を再開して、まだそんなに月日が経ってねぇんだろ?僕たちの船に万が一何かトラブルが起きた時にここにきて、『潰れてます』なんて言われたら冗談抜きで困るからな。

 

精々でかい造船所に成長させろよ。

 


 

船のデザインだよ

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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