僕がキャプテン・ジョンの宝だ   作:Mr.♟️

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記憶と記録

 

『──僕に会いてぇなら、テメェから来るのが礼儀なんじゃねぇの?格下から機嫌を伺いにくるのが常識だろ』

 

なんで僕がお前の呼びかけに応じてわざわざ新世界まで行かなきゃならねぇんだよ。身の程を知れ、クソが。

 

『......フッフッフ。そう好戦的になるな。お前がそう言うから、わざわざお前のために新世界から偉大なる航路まで戻ってきたんだ』

 

『んなこと、誰が頼んだ。むしろこっちは、2度とクロコダイルの電伝虫にかけるなって伝えたはずだぞ。クソストーカー』

 

本気で僕に会いに来るつもりかよ。別に来てもいいけど──お前と顔を合わせたらノータイムで殺しに行ってやるから覚悟しろよ。

 

『.........自分の言葉を覚えてねぇのか。お前が会いたいならこっちから来いっていったんだろ。まさに、今さっきもな』

 

『断り文句だってわかんねぇのかな。誰が好き好んで汚物と顔を合わせんだ。鏡みてみろよ、不愉快なもんが映ってるからよ』

 

そんでそのままショック死しろ。誰にも気付かれずに1人悲しく死んでくれ。

 

『.......フッフッフ。そう邪険にしなくてもいいじゃねぇか。俺とお前は手を組むメリットが互いにある』

 

『あ?寝ぼけてんのか、それともドがつくほどのバカなのかどっちだ。テメェが僕を脅す選択肢をとった時点で──手を組むことはありえねぇ』

 

何回連絡しても僕に取り次がないクロコダイルにムカついたのか知らねぇけどよ、『フッフッフ。繋がねぇなら、エレジアに手を出すかもしれねぇぞ?いいのか、ワニ。お前のとこの船長がご熱心な国なんだろ』なんて舐め腐った脅しをかけてきたお前は許さねぇ。

 

今更手のひらを返しても遅せぇんだよ。僕とお前が手を取り合うことだけは絶対にない。

 

『...........ああ、わかった。その件については謝罪してやる。それで水に流せ。ビジネスの話をしようじゃねぇか』

 

『自分の謝罪に価値があると思ってんのか?驚きだな、その頭の軽さに』

 

ピキってんの分かるぞ。電話越しでも伝わってくるから、相当キレてんだろうな。僕には関係ねぇけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──調子に乗りすぎだ。後悔するぞ、俺にそんな口を聞いたことを。いいや、後悔することさえ出来なくなる』

 

『死にたいならかかってこい。お前程度なら、いつでもやってやる──勘違いするな。お前が下で、僕が上だ』

 

返答を待たずに受話器を置いてクロコダイルに投げる。ったく、僕にこんな面倒なことさせんなよな。

 

 

 

 

 

 

「困りものだな。うちの船長は揉め事が好きすぎる」

 

「うるせぇよ。まあでも、これでお前も毎日の鬼電から解放されんだろ」

 

僕が関わった相手が若返っている秘密。ドフラミンゴの狙いはそれを知ること。まあ、知ったところで手に入れることは出来ねぇんだけど。

 

「後悔しねぇか?フラミンゴ野郎は裏で色んなやつと繋がってる。多方面に喧嘩を売ることになるぞ」

 

「関係ねぇよ。野郎はエレジアを脅しの材料にした。気にくわねぇから潰す。それが僕たち海賊だろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──地雷を踏み抜いたみてぇだな」

 

フラミンゴ野郎。お前の実力じゃ、どう足掻いてもリオには勝てねぇよ。喧嘩売る相手を間違えたな。

 

 


 

この船に乗ってから、ささやかながら良いことがある。今まで吸っていた葉巻よりもグレードの高い葉巻をリオから貰えること。

 

そして、葉巻の消費速度が倍になったのが悪いことだ。

 

「.....ライブ好き過ぎるだろ」

 

熱狂する民衆の熱気に葉巻の煙を吐き出す。

 

島国に船を停泊させる度、毎回のように特設ステージを組んでライブをやってるんじゃねぇか。

 

「うちの音楽家がやりたいって言ってんだから仕方ねぇだろ。最近はハンコックとビビも参加して更に人気爆発中だしな。海賊よりアイドルとかの方が余程似合ってら」

 

俺の隣で特等席の椅子に腰掛けながら満足げに鼻で笑ってやがる。まあ、同意できなくもねぇな。

 

「オメェも参加すればいいんじゃねぇか?」

 

「僕は聞く方が好きなんだよ。なんならクロコダイル、お前が参加してもいいんだぜ?」

 

「するわけねぇだろ」

 

誰が女子供と同じキラキラしたステージで歌って踊るんだ。お前、絶対にそれを撮影して俺を弄るネタにするつもりだろ。魂胆が透けて見えんだよ。

 

「ハッ、そいつぁ残念だな」

 

「──ふむ。だが、たまにはあのような華やかな舞台に参加してみるのも悪くないかもしれぬな」

 

「正気か、鷹の目」

 

ワイングラスを傾けながら呟いた鷹の目を、ジト目で睨みつける。そう思うなら、お前一人でその黒刀を置いて参加してこい。俺とこいつに同意を求めてるんじゃねぇよ。

 

「まあ、僕たちはともかく、しらほしが参加できないのは申し訳ねぇな。どうしてもあの巨体だとステージに上がれねぇ」

 

「海賊の船長なのかアイドル事務所のマネージャーなのかわからねぇことを言うじゃねぇか」

 

こんなふざけた海賊団、世界中探してもこの船だけだぞ。

 

「人からの見え方なんてどうでもいいだろ。バカなことを言うやつらには分からせればいい。ってか、ライブまだ始まんねぇのかよ」

 

こいつの言葉を合図にしたように、会場を包んでいた照明が一気に落ちた。

 

それと同時に一瞬静まり返り──そして始まる。

 

地響きのような大歓声が。

 

スポットライトがステージの中心を射抜く。

 

『みんなー!今日もレイヴン海賊団のライブに来てくれてありがとう!最後まで最高に盛り上がっていくよー!』

 

ウタの透き通るような声が会場全体に響き渡ると、観客のボルテージは一瞬で最高潮に達した。

 

その後ろではビビが照れくさそうに、だが堂々と胸を張って客席へ手を振っている。

 

あんまり褒めたくねぇが、こういう時のウタの声は本当に透き通っている。そいつだけが目立つのは気に食わねぇから、ビビ。お前が主役を喰っちまえ。

 

それが出来たら、こいつももう少しお前に時間をさくようになるぞ。多分。

 

 

『わらわの美しさに平伏すがよい!』

 

普段とおなじ見下ろしすぎて見上げているポーズを披露するだけで、最前列の観客数十人を歓喜の表情のまま文字通り石化させやがった。

 

面はいいかもしれねぇが、なぜこいつがビビより人気があるのか分からねぇな。テメェらはなんで、勝手に石化してんだ。メロメロの実の能力使ってなかったろ。

 

 

 

「む。今回は俺がステージの護衛だったな。脇に控えておくとするか」

 

鷹の目がゆっくりと立ち上がり、ゆっくりとステージの方へ足を進める。さっさと行け、なにゆっくりしてやがんだ。

 

「ああ。怪しいヤツがいたらノータイムで殺せよ。特に、ステージの下からローアングルで撮影しようとしてるやつは、見つけ次第真っ二つにしろ」

 

「わかった」

 

「わかったじゃねぇよ。殺すんじゃねぇ。カメラを壊すくらいに留めておけ」

 

何バカなこと言ってやがんだ、お前らは。少しだけ痛んできたこめかみを強く押さえる。俺の頭痛の9割はお前らのせいだ。

 

「あ、クロコダイル。配信用電伝虫でちゃんと撮影しとけよ」

 

「....チッ、負けたからな」

 

あの時グーを出してたら勝ったのによ。

 

あ?配信用電伝虫はエレジアのゴードンとかいう国王がなにかに使えるかもしれねぇって、海辺で拾ったのを商船経由で送ってきたもんだ。

 


 

「みんな、今日は来てくれて本当にありがとうー!」

 

歓声を上げてくれるファンのみんなに手を振りながら、私は内心でリオへの『大好き』を爆発させていた。

 

だってだって、私のためにこの巨大な特設ステージごと、機材から照明まで全部リオのヌマの中に保管して持ち歩いてくれてるんだよ!

 

『紙切れのベリーは安っぽくて価値がないからヌマに入れたくない』なんて文句を言ってたあのリオが!私のためなら、こんなに大きなステージを入れるのも『無駄じゃねぇ』って言ってくれたんだから!

 

「ああああ!!!!ウタちゃん!わたし、これからもずっとウタちゃんの曲楽しみにしてるから!」

 

目の前の女の子が、涙目で私の手をぎゅっと握ってくれた。

 

「うん!ありがとう!これからは『配信用電伝虫』?とかいう新しい機材を使って、遠くの島にいても映像が見れるようになる予定だから、楽しみにしててね!」

 

ああ、いけないいけない。今は大事な握手会中だった。気を抜くとすぐにリオのことばっかり考えちゃう。

 

ビビちゃんは『疲労が激しいからここまでだ』ってミホークに強制的に休まされちゃったし、ハンコックは『わらわがリオ以外と触れ合うなどあり得ぬ!』って言って絶対に握手会なんてやらないし。

 

結局、ライブ後にこうしてファンのみんなと直接お話しする握手会までやってるのは、私一人だけなんだよね〜。

 

「ウタちゃん!俺、ウタちゃんの歌を聞いて人生変わりました!一生応援します!」

 

次にやってきた興奮気味の男の人が、勢いよく両手で私の手を握りしめてきた。

 

「ありがとう!これからもいっぱい歌を届けるから、ずっと聞いててね!」

 

「はいっ!──あっ、あの、リオ船長にもよろしくお伝えください!俺、不遜王のこと男としてマジで尊敬してます!」

 

「えへへ、伝えておくね!」

 

リオのことを褒められると、私が褒められるより何倍も嬉しいな。誇らしい気持ちで彼を見送る。

 

「あ、あの.....ウタちゃん。今日、病気で来れなかった娘に、サインをお願いしてもいいですか?」

 

今度は、少し控えめなおばさんが申し訳なさそうに色紙を差し出してきた。

 

「もちろん!お嬢ちゃん、早く良くなるといいね。私の歌で元気になれるように、魔法かけとく!」

 

サラサラッとサインを書いて手渡すと、おばさんは『ありがとうございます『と嬉しそうに何度も頭を下げてくれた。

 

うん、みんなの笑顔をこうして近くで直接見れるから、やっぱり握手会は最高だよ!

 

「はい、次の方どうぞー!」

 

私が最高の笑顔で声をかけると、列の前にちょこんと小さな女の子が現れた。

 

水玉模様のケープを羽織った可愛い女の子。片手にはグレープを摘んでいる。

 

「あれ?お母さんとはぐれちゃったのかな?ライブ、楽しんでくれた?」

 

私がしゃがみ込んで目線を合わせ、優しく手を差し出すと、その子はグレープを口に放り込みながら、スッと手を伸ばしてきた。

 

「うん。最初で最後のライブ楽しかった」

 

「えっ?」

 

ちいさな手が私の手に触れた瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の視界がぐらりと反転した。

 

 

 

 

 

 

 

(え?あれ、何が起きたの?)

 

声が出ない。視線が、さっきよりもずっと低い。

 

自分の手を見下ろすと、そこにあったのは自分の手じゃなくて──綿が詰まってるであろう、継ぎ接ぎだらけの不格好な『ぬいぐるみ』の手だった。

 

「契約は家に帰ってから」

 

女の子の冷たい声が響く。

 

嘘、どういうこと?私、ぬいぐるみになっちゃったの!?

 

パニックになって周りを見上げると、さっきまで私の前でサインを受け取って喜んでいたおばさんが、色紙を持ったままポカンとした顔で周囲を見回していた。

 

「あれ?私、なんでこんな何もないところに並んでるの....?この色紙、誰のサイン......?」

 

「さあ?ライブが終わったから、帰ろうとしてたんじゃないか?」

 

列に並んでいた全員が、まるで最初から私が存在していなかったかのように、ぞろぞろと帰り支度を始めている。

 

 

 

 

違う!私だよ、ウタだよ!ここにいるよ!

 

 

 

 

叫ぼうとしても、口からは何も音が出ない。手足は辛うじて動くも、女の子に抱えられて身動きがとれない。

 

「ドフィが言ってた通り、本当に無防備だった。これで任務完了」

 

女の子が冷たい目で見下ろしてくる。

 

ドフィ....?誰そ!!?そんな人知らないよ!!!

 

 

 

 

 

 

助けて、リオ.....!私、リオの傍から離れたくないよ!

 

 

 

 

声にならない悲鳴を上げながら、私はただのぬいぐるみとして、何も出来ずに運ばれていく。やだ!離れたくない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───もう二度と、大切な人から離れたくない...!

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なあ、そこのガキ。ちょっと待て」

 

リオ!!!!

 

「──ぅうぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっんんん!!!!」

 

それと同時に、私を抱えてる女の子は泣き始めた。

 


 

おかしいと思った。僕がいつでもヌマの中に戻せるようにマーキングしている存在が動き始めたことが。

 

一度ヌマの中に入れた物であれば、いつでも出し入れできるようにマーキングしておくことができる。

 

とはいっても、一定の範囲から離れたら手元に戻すことはできなくなるがな。その境界線から離れそうだったから、わざわざ見に来た。

 

だが、僕がマーキングした『何か』を持っているのは、見知らぬガキだった。僕の能力が狂ったかと思えば、そうではなかったらしい。

 

「泣き真似をやめろ」

 

僕は海賊に育てられた、海賊のガキだぜ?幼少期から僕を騙そうとするアホが後を絶たなかったんだ。そんな三文芝居の嘘泣きが通じるかよ。

 

それに、うちの船には元・泣き虫がいるんだ。本気泣きか嘘泣きかなんて、息遣い一つで簡単にわかる。

 

「.....嘘泣きじゃないもん」

 

この状況をどう判断するべきか。正直、目の前のガキが持っているぬいぐるみに、見覚えが一切ない。ヌマに入れた覚えもなければ、マーキングした覚えもない。

 

だが、僕はなんの意味もなくマーキングなんて絶対にしない。疲れるんだ、あれ。気を張ってないと途切れるし、滅多に使わない。使い勝手が微妙すぎんだよ。

 

そんな僕がマーキングしている『覚えのないぬいぐるみ』と、怪しいガキ。この時代だ、ただませてるだけの子どもかもしれねぇと判断出来なくもねぇが──違和感がデカすぎる。

 

「そうか。だが、そのぬいぐるみは僕のもんだ。返してもらおうか」

 

「うん!返すから、こっちに来て?」

 

何かを狙っているような目つきに見えなくはねぇが、こんなガキを多少疑わしいってだけでいきなり攻撃するのは気が乗らねぇ。

 

だが、ただのガキじゃない場合──例えば、近距離で効果を発揮する悪魔の実の能力者だった場合、後手に回ったら面倒だ。

 

チッ、保険はかけとくか。

 

こんなガキを警戒するなんて気は乗らねぇけど、あまりにも不可解なことが多すぎるから仕方ねぇ。

 

「ああ」

 

僕は歩み寄りながら、足元の地面をいつでも『ヌマ』に変えられるように変質させる。少し鋭い相手であれば気づく程度の、わかりやすい罠。変な真似をすれば、速攻で底なし沼に沈めてやる。

 

「──っ。はいっ、返したよ」

 

ガキが僕の足元の異変に気づいたのか、一瞬怯んだように動きを止め、少し距離を置いたままぬいぐるみを差し出してきた。

 

普通に返してもらえた。

 

いや、見覚えがないから『返してもらった』で合ってるかはわからねぇが、マーキングの反応がある以上、きっと僕のもんだろ。警戒しすぎたか。最近敵が増えすぎて、もしかしたら神経質になってたのかもしれねぇ。

 

 

 

 

 

 

「──あ?なんだこれ」

 

受け取った瞬間、ぬいぐるみが勝手に動いた。

 

なんだこれ。なんで生きてるみたいに、必死に僕の服にしがみついてんだ?仮にこれが僕の私物だった場合、こんな自動で動く珍しいぬいぐるみなんて、忘れることはねぇはずだが。

 

「もう行くねっ!」

 

ガキが逃げるように、足早に消えていった。

 

 

 

 

 

「──違和感が気持ちわりぃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──ごめんなさい、ドフィ。おもちゃには変えたけど、とられちゃった』

 

『.....フッフッフ。構わねぇよ。最も大切な存在がすぐ手元にいるのに、認識すら出来ずにただの不気味なガラクタとして扱う。それが最高に滑稽で、却って面白いじゃねぇか』

 

『俺もそいつのことを思い出すことが出来ねぇが....俺が俺自身に宛てたメモを見る限り、そいつをおもちゃにするだけでも十二分に俺の溜飲は下がるらしい』

 

後悔出来ねぇだろ?大切な存在を失ったていうのによ。

 


 

僕の初めての親友、親愛なるウタへ

 

この手紙を読んでるってことは、僕はもう海の上だ。

 

黙って出ていく非礼を許せとは言わない。だがな、これだけは絶対に勘違いするな。

 

僕は、赤髪とは違う。

 

あいつがどんな高尚な理由でお前を置いていったかは知らねぇ。安全のため?足手まといだから?いらなくなったから?

 

ふざけるな。理由はどうあれ、赤髪はお前をこの島に捨てたんだ。

 

だが、僕は違う。

 

僕がお前を置いていくのは、守るためでも、厄介払いでもねぇ。

 

お前が『エレジアに残る』と、自分で選んだからだ。

 

 

仲間だからこそ、僕はその意思を尊重する。

 

 

もしお前が『行く』と一言でも言ってくれれば、相手が世界政府だろうが四皇だろうが、僕は迷わずお前を連れて行った。

 

 

危険?上等だ。僕が全部ねじ伏せて、隣にいるお前を守ればいいだけの話だろ?

 

僕は赤髪とは違う。自分の宝一つ守れねぇほど弱くはねぇし、お前と一緒に戦うなら、僕たちは誰にも負けねぇ。 

 

.....ま、強がってはみたが。本音を言えば、やっぱり僕の隣にはウタがいてほしかった

 

6000億ベリーの投資?ああ、そんなはした金はどうでもいい。ただ、お前と一緒に──僕の初めての親友と一緒に、世界の頂点からの景色を見たかった。

 

 

僕の船の『音楽家』の席は、空けておく。

 

 

他の奴を乗せる気はサラサラねぇ。その席に座っていいのは、世界で唯一、この僕に喧嘩を売れる生意気な歌姫だけだ。

 

 

気が変わったらいつでも来い。ビブルカードがあるだろ?

 

 

迎えに来てほしいなら連絡しろ。ゴードンに番号は渡してある。

 

 

もし、それでもお前がずっっっっっと来なかったら──僕が海賊王になった時、一番最初に迎えに行ってやる。

 

 

世界一の歌姫を、世界一の海賊船でな。

 

 

 

だから、それまで元気で過ごせよ。

 

 

 

僕はお前の歌が、この世の誰よりも大好きなんだ。

 

 

 

今までクソガキ扱いして悪かった。

 

 

 

訂正してやる。お前は──誰よりも立派なレディーだ。

 

 

レイヴン・リオ

 

『──という内容の手紙が国庫の厳重な金庫の中にあったんだが、その.....私には『ウタ』という名前に全く覚えがなくてね。エレジアの関係者にはいないはずなんだが、なぜ私はこれを国庫に保管したんだろうか。リオくんなら何か知っているかと思ってね』

 

「...........そうか。よく連絡してくれた。一応、その手紙はそのままにしておけ」

 

『?何か問題でもあったのかな?わかった。君の言う通りにしておくよ』

 

通話を切った電伝虫を見下ろし、僕は深く息を吐き出した。

 

「気持ち悪い。なんだこれは。なんなんだ」

 

「僕には、その手紙を書いた覚えが微塵もない。だが、エレジアの復興のために6000億ベリーを投資した事実だけは覚えている」

 

「だが、なぜそんな莫大な投資をした?滅びた国の復興なんて、僕の趣味じゃねぇ。ゴードンには悪いが、ゴードンのためにそこまでしてやったとは到底思えない」

 

「──出港してから随分と難しい顔をしているが、なにかあったのか。趣味じゃねぇ薄汚れたぬいぐるみを肩に乗せてよ」

 

「わからねぇ。だが、何かが決定的に『おかしい』のだけは確かだ」

 

違和感はそれだけじゃない。

 

肩にしがみついて、片時も僕から離れないこの謎のぬいぐるみに何か手がかりがないかと思って、今一度ヌマの中の財宝を確認した。

 

すると──その中から出てきた数十台のカメラのフィルムに、『見覚えのねぇ赤白髪のガキ』の写真が大量に残っていた。

 

僕がエレジアを出航した時の船に、そいつは乗っていた。何十台ものカメラを使い尽くすほどに、僕はそいつの笑った顔や歌っている姿を撮影し続けていた。

 

ただの気まぐれだとしても、僕はそんな無駄なことは絶対にしない。

 

それに、僕がそこまで特別扱いした相手を覚えてないのはおかしい。僕の記憶では、しらほしを仲間に加えるまでは『完全に一人で旅をしていた』はずなのに。

 

記録と記憶が全く噛み合わねぇ。

 

「俺たちにも分かるように、お前の身に何があったか一から十まで話してみろ。そのぬいぐるみについてもだ」

 

クロコダイルに促され、僕は島で起きた不可解な出来事と、ゴードンからの電話の内容を全て話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな。お前が会ったのは、ドフラミンゴのファミリーの幹部『シュガー』だ。ホビホビの悪魔の実の能力者で、触れた相手をおもちゃに変える力を持ってる」

 

「だが、ホビホビの実は人をおもちゃに変える『だけ』のはずだ。人間の記憶を丸ごと消し去るような能力じゃねぇだろ」

 

「ああ。だから、お前が感じているその強烈な違和感の正体までは、俺にも分からねぇ」

 

「疲れているのではないか、リオ?わらわと──その、寝室でゆっくり休めば.....」

 

「──そうだ、リオ。お前は音貝を持ってたはずだ。そいつに何か手がかりは残っていないのか?」

 

ハンコックの戯言を遮るように、ミホークが腕を組みながら鋭い指摘をした。

 

「.....期待は出来ないが確認してみるか。音貝なんて使ったことがねぇから、意味ないと思うが」

 


 

ゴードンの声が、電伝虫越しに聞こえてくる。

 

私は今、綿の詰まった不格好なぬいぐるみの姿のまま、大好きなリオの肩に必死にしがみついていた。

 

読み上げられた手紙の内容は、初めて聞くものだった。リオに聞いても教えてくれなかったし──

 

私はあの時エレジアに残らずに、リオと一緒に海へ出ることを選んだから。もしあの時私が残る選択をしていたら、リオはこんな不器用で、でも最高に嬉しい手紙を私に置いていくつもりだったんだ....!

 

『僕はお前の歌が、この世の誰よりも大好きなんだ。今までクソガキ扱いして悪かった。訂正してやる。お前は──誰よりも立派なレディーだ』

 

嬉しい。嬉しくて大泣きして、すぐにリオに抱きつきたいのに、おもちゃの目からは涙すら出ない。

 

『──という内容の手紙が国庫の厳重な金庫の中にあったんだが、その...私には『ウタ』という名前に全く覚えがなくてね。エレジアの関係者にはいないはずなんだが、なぜ私はこれを国庫に保管したんだろうか。リオくんなら何か知っているかと思ってね』

 

「.......そうか。よく連絡してくれた。一応、その手紙はそのままにしておけ」

 

『?何か問題でもあったのかな?わかった。君の言う通りにしておくよ』

 

通話を切った電伝虫を見下ろし、リオは深く息を吐き出した。

 

「気持ち悪い。なんだこれは。なんなんだ」

 

(ちょっと!自分で書いた渾身の手紙を気持ち悪いって言わないでよ!)

 

私は耳元で抗議しようとしたけれど、ぬいぐるみの口からは何も音は出ない。リオには私の声が届かない。

 

「僕には、その手紙を書いた覚えが微塵もない。だが、エレジアの復興のために6000億ベリーを投資した事実だけは覚えている。だが、なぜそんな莫大な投資をした?滅びた国の復興なんて、僕の趣味じゃねぇ。ゴードンのためにそこまでしてやったとは到底思えない」

 

(それは、私の故郷だからだよ!ねぇ、思い出してよリオ!)

 

「──出港してから随分と難しい顔をしているが、なにかあったのか。趣味じゃねぇ薄汚れたぬいぐるみを肩に乗せてよ」

 

クロコダイルが呆れたように葉巻の煙を吐く。

 

「わからねぇ。だが、何かが決定的に『おかしい』のだけは確かだ」

 

違和感はそれだけじゃない、とリオが続ける。

 

肩にしがみついて、片時もリオから離れようとしない私をチラリと見つめながら、リオはヌマの中から数十台のカメラを取り出した。

 

「これを見ろ。カメラのフィルムに、『見覚えのねぇ赤白髪のガキ』の写真が大量に残っていた。僕がエレジアを出航した時の船に、そいつは乗っていたんだ」

 

(そうだよ!それ、私!リオがいつも呆れた顔しながら撮ってくれてたじゃん!)

 

「何十台ものカメラを使い尽くすほどに、僕はそいつの笑った顔や歌っている姿を撮影し続けていた。ただの気まぐれだとしても、僕はそんな無駄なことは絶対にしない」

 

写真を見つめるリオの瞳が、少しだけ揺れている。過去の自分の行動が理解できなくて動揺してる.....?

 

胸がギュッと締め付けられた。

 

世界中の人が私のことを忘れても。リオの記憶から私の存在がスッポリ抜け落ちてしまっても。

 

リオが私に向けてくれた特大の『愛情』と『記録』の数々は、悪魔の実の呪いなんかじゃ絶対に消し去れないほど、大きくて重かったんだ。

 

「俺たちにも分かるように、お前の身に何があったか一から十まで話してみろ。そのぬいぐるみについてもだ」

 

クロコダイルに促され、リオは不可解な記録と記憶の不一致と、ゴードンさんからの電話の内容を全て話した。

 

「なるほどな。お前が会ったのは、ドフラミンゴのファミリーの幹部『シュガー』だ。ホビホビの悪魔の実の能力者で、触れた相手をおもちゃに変える力を持ってる」

 

「だが、ホビホビの実は人をおもちゃに変える『だけ』のはずだ。人間の記憶を丸ごと消し去るような能力じゃねぇだろ」

 

「ああ。だから、お前が感じているその強烈な違和感の正体までは、俺にも分からねぇ」

 

クロコダイルの言葉に、私は肩の上で力なくうなだれた。ダメだ。色々詳しいクロコダイルでも、記憶が消えることまでは知らないんだ。

 

「疲れているのではないか、リオ?わらわと──その、寝室でゆっくり休めば....」

 

(こんな時に何言ってんのハンコック!今は私のリオに近寄らないで!少しは認めてあげてたのに!!!)

 

ハンコックを威嚇していると、ミホークが静かに口を開いた。

 

「──そうだ、リオ。お前は音貝を持ってたよな?そいつに何か手がかりは残っていないのか?」

 

「....期待は出来ないが確認してみるか。音貝なんて使ったことがねぇから、意味ないと思うが」

 

音貝!私の歌声が入ってるやつがあるはず!あと、イタズラで声を吹き込んだヤツとか!

 

お願い。お願いだから、私のことを思い出して──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、待って。もし私の歌声が流れたら───ウタワールドに引き込めたりしないかな........?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




チート能力同士は先に発動した方が勝利するって誰かが言っていた。

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