僕がキャプテン・ジョンの宝だ   作:Mr.♟️

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幼い頃の夢を

 

「──話し合いの席につくつもりはねぇか」

 

どうしてこうなった。なぜ、こいつらがもう既にここに来ている。こいつらが上陸してから、まだ10分も経っていないはずだ。

 

「話し合いじゃなくて命乞いの時間の間違いだろ」

 

「ワニ野郎、テメェ.....随分と偉そうな口を利くじゃねぇか」

 

舐めんのも大概にしろ。テメェは誰とも組まず、孤独を貫く海賊じゃなかったのか。こんな女子どもばっかりのガキの海賊団に絆されやがって。

 

「私たちとの格の差、よーくわかった?キャハハッ!」

 

殺す。運び屋ミキータ、誰に向かって口を聞いてやがる。普段なら、テメェらみたいな三流のゴミ海賊共が、俺と言葉を交わすことなんざ一生出来ねぇんだよ。

 

「ハッ──フッフッフ。だが、どうだ。お前らがこれだけ集まっても、肝心のテメェらの船長はまだこの場に来てねぇようだがな」

 

落ち着け。俺のファミリーはやられたかもしれないが、北にはまだハナフダが残ってる。あいつは動物系古代種の能力者だ。あんなクソガキなんかに負けるはずがねぇ。

 

あいつが敵の船長さえ捕らえることができていれば、状況は一変する。甘ちゃんのこいつらなら、そいつを解放するためならどんな不利な条件を出そうと飲むはずだ。

 

 

 

 

 

「あの、それは無駄な期待だと思うわ」

 

「あ?ついに小娘まで俺にそんな口をきくのか。調子に乗りすぎじゃねぇか」

 

王女ビビ。こいつはまだ懸賞金すらマトモにかかってねぇが、確かネフェルタリ家の人間だったはずだ。

 

自分たちから天竜人の座を降りた、底辺を這いずるゴミみたいな一族。

 

「──フッフッフ。らしくないじゃねぇか、ワニ野郎。こんな弱ェ仲間を庇うために、わざわざ自分が前に出るってか」

 

「....フンッ。そんなんじゃねぇ。あんまり俺たちがお前を虐めすぎて、心が折れて自殺でもされたら、あいつの予定が狂うだろ」

 

あ?ここに来れてないのが回答だろ。この状況でもまだあの生意気なクソガキがハナフダに勝って、ここへ来ると思ってんのか。王下七武海を舐めてんじゃねぇ。

 

「テメェを大衆の面前で公開処刑してぶっ殺すって予定がな」

 

────殺す。こいつら全員、調子に乗りすぎだ。

 

いや、落ち着け。焦る必要はねぇ。幸いなことにヴェルゴは海軍で順調にスパイ活動をしているし、地下にいるシュガーさえ無事なら、他の連中はいなくても問題ない。

 

邪魔な奴らを時間をかけてでも全員おもちゃに変えて、また新しい家族を揃えればいいだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?────どうなってやがる!!」

 

突如、脳内に記憶が濁流のように戻ってきている。

 

シュガーがおもちゃにして、世界の誰の記憶にも残らねぇはずの連中の存在が──明確に認識できるようになっている。

 

なぜだ。なぜ能力が解けた。シュガーに何が起きた!

 

 

 

 

 

 

「──ふんっ。わらわがこのような薄汚い小娘の相手を任せられるなど、不本意でしかないわ。このような石像をここまで運ぶなど、面倒極まりない」

 

「海賊女帝......!」

 

コツン、とヒールの音を響かせて王宮の間に姿を現したボア・ハンコックの傍らには、完全に石化して無惨に転がったシュガーの姿があった。

 

まさか、先回りして地下室のシュガーを直接やりに行ってたのか!

 

なぜ、シュガーの能力や居場所が正確にわかった....!あそこは、俺たちファミリーの幹部以外は、誰も知らねぇはずだぞ!

 

「気をつけるがよい、天夜叉。お主が楽に死ぬことはない──そなたは、決して触れてはならぬ逆鱗に触れてしまったのじゃ」

 

俺は自分が、どれほど取り返しのつかない最悪の地雷を踏み抜いたのかを──この時になってようやく理解した。前触れもなく俺を攻めて来た理由はわかった。

 

だが、何故だ。甘ちゃんのこいつらがガキを元の姿に戻すために攻めてくる...これは理解できる。だが、そうはならねぇはずだ。

 

なぜなら記憶がねぇから。違和感を抱くことさえ出来ねぇ。俺を攻撃しようなんて考えには至らねぇはずだ。

 


 

他の連中は全員外に出した。ここからの話はあんまり気分がいいものじゃねぇし、特にハンコックには見せない方がいい。

 

「.....フッフッフ。どうやってわかった。シュガーの能力は完璧だ。穴は存在しねぇ」

 

ボコられた上に、海楼石の錠をかけられて力も入らねぇくせによく話せるな。

 

「お前と言葉をかわしたくねぇ。存在したから僕はお前を潰しに来た。それだけの事だ」

 

運が良かったから気がつくことができた。それに過ぎねぇけど、わざわざ教えてやることはない。嫌いな奴に優しくする必要なんてねぇだろ。

 

「.....俺を殺せば、カイドウが動くぞ。取引だ。俺が知ってる情報を幾つか教えてやる。その代わり見逃せ」

 

「何言ってるんだ?僕はお前を見逃してやるつもりだぞ。見返りなんていらねぇよ」

 

まあでも、僕は優しいから嫌いな奴でも優しくしてやるし、なんなら願い事まで叶えてやる。ああ、もしかしたら海賊よりも聖人の方が向いてるのかもしれねぇな。

 

「──ハッ、今更誰に喧嘩を売ったのか不安になったのか」

 

あ?なにを勝ち誇ってやがる。公開処刑なんて生易しい処罰はお前が犯した罪と見合わねぇって話だろ。お前への罰は、お前の願いを叶えることに変更しただけだ。

 

「流石は元天竜人だ。的はずれなことしか言えねぇんだな」

 

「っ!」

 

おいおい、そんな怖い顔すんなよ。ヌマの中に捕らえてる天竜人から話を聞いたら教えてくれたぞ。

 

天竜人とおなじドンキホーテなんて使ってたら気になるだろ。余っ程印象に残ってたのか、父親を殺して自分を天竜人に戻せっていったガキがいるってスラスラ話してたぞ。

 

僕がヌマに監禁──もとい、保護してる天竜人は僕のためならなんでも話してくれるからなぁ。不思議なことによ。

 

「そこまでして聖地に戻りたかったんだろ?いいじゃねぇか。僕がその願いを叶えてやるよ」

 

ヌマの中から捕らえていた天竜人2人を外に出す。あー、これで天竜人のストックが切れた。

 

うちの船の連中が海軍にまかり間違って捕まった時の交換材料だったのに。1回もその使い方してねぇよ。

 

「──っ!噂は本当だったか。テメェが天竜人を捕らえてるって噂は」

 

「そう怒るなよ。僕はお前の願いが叶えばいいと思って、後押ししてやってるんだぜ?」

 

ああ、こんな胸糞悪い姿、うちの連中には絶対に見せることはできねぇよな。この世で最も醜悪で下劣な連中に、人間を『奴隷』として引き渡すなんて外道な真似。

 

「筋書きはこれでどうだ?お前が天竜人を殺して、もう1人の天竜人がお前を聖地マリージョアに連れ帰る──当然、奴隷としてな」

 

ドフラミンゴの顔が、怒りと屈辱で尋常じゃなく歪む。

 

そんなに喜ぶなよ。僕まで嬉しくなってくるじゃねぇか。後悔してるか?後悔してもおせぇよ、バーカ。よりによってウタに手を出したんだ。一生、這い上がれない生き地獄で後悔しとけ。

 

「っざけんな.....!」

 

「大マジに決まってんだろ。よかったな、戻りたかった場所に帰れて」

 

天竜人を殺したとなれば、王下七武海でいることも出来ねぇだろ。2度と会うことはねぇだろうな。

 

乾いた破裂音と共に、天竜人の血がドフラミンゴの顔に飛び散る。銃口から煙を吹きながら、それを見ていた生き残りの天竜人に問いかけた。

 

「そいつを殺したのは誰だ?」

 

「──ドンキホーテ・ドフラミンゴ」

 

「お前がこのあとすることは」

 

「海軍への保護申し入れと、大罪人を奴隷として連れ帰ることです!」

 

「おー、よく分かってるな」

 

僕は銃をヌマにしまい、絶望に目を見開くドフラミンゴを見下ろす。

 

というわけだ。いくらそんな惨めな表情をしたところで、僕の同情は一ミリも誘えねぇよ。お前は、僕のたった一つの宝に手を出したんだ。マリージョアで、最大限苦しんでから惨めに死んでくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──もー、リオってば私の事好きすぎるんだから〜」

 

「あ?どっか遠くで待ってろって言っただろ。なんでドアの前にいんだよ」

 

盗み聞きしてんじゃねぇよ。

 

「負け惜しみ〜♪」

 

「......うぜぇ」

 


 

世界経済新聞は儲かって仕方ねぇだろうな。新聞の見出しはこうだ。

 

【天夜叉堕つ!王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴ、奴隷へと堕ちる!】

 

【四皇激突!百獣海賊団、新世界で白ひげ海賊団と大規模抗争!】

 

【珍事!四皇赤髪海賊団、立ち寄った街の女児用品を買い占め!?】

 

「──余計なことしやがって、白ひげのじじいめ」

 

僕の視線は、二つ目の見出しで止まっていた。

 

何も頼んでねぇのに勝手に気を回して、カイドウの艦隊を足止めしやがって。これじゃあ、また借りを作ることになったじゃねぇか。

 

「随分気に入られてるみてぇだな。白ひげの野郎に」

 

「まあ、カイドウとぶつからなくてもいいのはラッキーだな。好き好んで四皇と戦争なんてやってらんねぇし」

 

必要があるならやるけどよ。無駄な小競り合いは意味ねぇだろ。やるならどっちかが潰れるまでだ。

 

「それで、今回の傘下連中の功績はどうすんだ?ダズ、ギャルディーノ、ミキータ、ハニークイーン、バカラは活躍してたみたいだが」

 

「そうだな。乗りたいやつは乗せてやってもいい。傘下のままがいいやつらは、それなりの裁量権と金を与えて前半の海に返してやってくれ」

 

いい経験になっただろ。

 

「俺も同意見だ。新世界で縄張り争いするにはまだ時期尚早だ。返してやるのが安全面を考えてもいいだろ」

 

「とりあえず、当面の間はエレジアとドレスローザをメインの拠点に据える。それで問題ないよな?」

 

新世界の拠点はこの2つか。いずれは拠点を増やすが、今はその時じゃない。拠点だけ増やしても守りきれねぇ。

 

「それは賛成だが、お前が連れてきたやつらはどうするつもりだ。シュガーも石化したまま船に乗せたみてぇだが」

 

「ホビホビの実が知らないやつの手に渡るのは避けたい。シュガーは石像のまま保管しておくべきだ」

 

あんな能力で不意打ちされたら避けようがねぇからな。

 

「この国の王女と、ハナフダのガキ2人はどうするつもりだ」

 

「ヴィオラは船に乗せる。本人も国に王女としては残りたくないみてぇだし、あの能力は欲しい」

 

遠距離の相手を見る程度の能力ならいらねぇけど、人の心まで見透かせるなら欲しい。

 

「ハナフダのガキ2人は....まあ、これから決める。ヴィオラの能力で僕への敵意がなかったと判明したら乗せてやってもいい。血筋から考えても、弱くはないだろ」

 

まあ、ガキって言っても多分僕とあんまり変わらねぇけど。

 

なんで親分を殺した僕の船に乗りたがってるかは知らねぇが──あのガキ二人が『どうか連れて行ってくれ!』って僕の足に泣きながら引っ付いて離れなかったおかげで、王宮に着いたのは僕とバカラが一番最後だったんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残るわけないだガネ!こんな化物だらけの新世界なんかに居続けたら、間違いなく消し炭になって死ぬだガネ!」

 

頭の3の数字を激しく揺らしながら、ギャルディーノが全力で首を横に振って帰還を主張する。その横で、ドレス姿のバカラが呆れたようにため息をついた。

 

「これだから運気の乏しい方は。私は当然、この船に乗せていただきますわ。それに、もし見初められるようなことがあれば──ふふっ」

 

バカラが妖艶な笑みを浮かべ、自身の艶やかな髪を優雅に掻き上げる。

 

「──俺は乗らん。今のままの実力では、到底ボスの役には立てない。前半の海でさらに己を鍛え直す」

 

ダズが腕を組み、己の力不足を噛み締めるように低く唸った。彼なりの、クロコダイルに対する絶対的な忠誠心故の結論だ。

 

「安全な海に引っ込んでるだけなんて、つまらないじゃなぁい?私はあんな退屈な海、もう飽き飽きよぉ〜」

 

露出度の高いドレスを纏ったハニークイーンが、視線を流しながら、気だるげにソファへ身を預ける。

 

「そうよ。せっかく頑張って結果を出したのに、ここで乗らないなんてバカバカしいでしょ!アタシは絶対に行くわよ!」

 

ミキータがレモン柄のスカートを軽やかに翻し、力強く主張する。

 

結果、ダズとギャルディーノは傘下として前半の海へ戻り、女性陣三名がレイヴン海賊団の新たな船員として新世界の航海へ同行することになった。

 


 

見た。俺たちははっきりと見てしまった。親父が殺される、その瞬間を。

 

親父がカイドウの邪魔になる可能性のある海賊を潰すために船を出すのは、いつもの事だった。

 

俺と姉貴は『戦場の空気に慣れるため』という名目で、比較的安全な後方に放置される。そう、いつも通りだ。今回も最初は、ずっと後ろの方で砂埃を眺めているだけだった。

 

 

だが、今回の戦闘は今までと全く訳が違った。

 

 

一方的な蹂躙で終わるはずが、いつまで経っても戦闘が終わらないどころか、味方の能力者たちの断末魔のような悲鳴が次々と響いてきたんだから。

 

俺と姉貴は好奇心に駆られて、前へ前へ──最前線へと足を進めた。あの親父がここまで手こずっていることなんて今まで一度もなかったから、純粋に気になったのだ。

 

俺たちのことを、将来カイドウに献上する『駒』くらいにしか考えていない親父。人間性は完全に終わっていたが、能力者としての規格外の実力だけは確かだったから。

 

だから、心底驚いた。

 

その絶対的な力を持つ親父が──たったの一撃で、ボロ屑のように粉砕された瞬間を見て。

 

 

 

そして、それと同時に強烈に感じた。

 

 

 

 

──海賊王になるのは、間違いなくこの人だと。

 

 

 

 

 

『──この人になら.....』

 

無意識に、口から熱い吐息と一緒に声が漏れていた。

 

実の親父が殺された瞬間だっていうのに、悲しみなんて微塵も湧かなかった。俺は──俺たちは完全に魅了されていた。

 

土煙の晴れた先に立つ、自分たちと大して歳が変わらないであろう、圧倒的な力を持つ男の姿に。

 

俺が言葉を零したのと同じタイミングで、隣の姉貴も爛々と目を輝かせていた。言葉なんかなくても分かる。俺たちは姉弟だから、お互いに何を考えているのか痛いほど理解できた。

 

俺たちが一生を懸けて仕えるべき王は、四皇カイドウなんかじゃない。この人だ、と。

 

 

『──俺たちを、あんたの船に乗せてくれ!』

『私たちを船に乗せろっっっ!!』

 

「........あ?」

 

親殺しの仇に向かって突撃した俺たちは、当然のように警戒されて少し首を絞められたり、本気で殺されかけたりもした。

 

でも、俺たちが一切抵抗せずに無抵抗を貫いたら、とりあえず話だけは聞いてくれた。

 

そこから言葉を尽くして、尽くして、尽くして、なんとか説得しようとしたが──あの人は冷たい目で睨むだけで、全然頷いてくれねぇ。

 

だから仕方なく、俺と姉貴はプライドも何もかも投げ捨てて、男の脚に縋り付いて力の限り泣き叫んでお願いしたのだ。

 

 

その涙ぐましい成果あって、俺たちは二人とも、とりあえず船に乗せてもらえることになった。

 

「.....悪魔の実でも食って強くならないと、あの人の力になれない」

「私もそう思うでありんす。でも、悪魔の実なんて持ってないでありんす」

 

あんな化物みたいな強者揃いの船で生き残るには、今の俺たちじゃ足手まといだ。

 

「.....図々しいかもしれないけど、リオさんに」

「リオさんに貰えばいいんでありんす!!」

 

「姉貴ぃ.........」

 

俺は頭を抱えた。

 

少しは、その....遠慮とか常識とか覚えろの。貴重な悪魔の実を易々と貰えるかどうかも分からねぇだろ。

 

俺たち、なんとかあそこまで縋り付いて船に乗せてもらうことを約束してもらったばっかりの『見習い』なんだからよ。

 


 

ハニークイーン

 

 

【挿絵表示】

 

 

バカラ

 

 

【挿絵表示】

 

 

ミキータ

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作の6年くらい前かな?

みんな幸せ。嬉しい。

うるティの語尾は基本的にありんす固定でいきます。
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