僕がキャプテン・ジョンの宝だ   作:Mr.♟️

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魚人島へ向けて

 

なんでそんなキラキラした目で僕のことを見てんだよ。

 

「私も泥風呂に入ってみたい!」

 

「嫌に決まってんだろ。なんで僕が他人のためにわざわざ能力を使わないとならねぇんだ」

 

普通の風呂を沸かしてやるから、大人しく入ってさっさと寝ろ。くれぐれも僕の夜番に付き合おうとして見張り台に来るのはやめろよ。どうせ10分足らずで船を漕いで寝ちまうんだから。

 

「でも、白ひげのおじさんには入らせてあげたんでしょ?今までリオがそう言って断ってたから仕方なーく諦めてたけど、もう見逃せないよね!」

 

「バーカ。僕は無償で施しをするのも受けるのも嫌いなんだよ。白ひげにはエレジアの後ろ盾になってもらう対価として提供した。ただそれだけのことだ」

 

『秘蔵・黄金の泥湯(トレジャー・マッド・スパ)』の効果を十全に発動するためには、めんどくせぇ条件があんだよ。わがままも大概にしておけよ。

 

「ふーん、リオにとって私は白ひげのおじさんより大切じゃないんだ。白ひげのおじさんはよくて、私はダメなんだ」

 

「めんどくさい女みたいなこと言ってんじゃねぇよ。あのな、この僕が毎日普通に風呂を沸かしてやってるだけでも感謝しろ」

 

「感謝してるよー。ちゃんと毎日ありがとうって言ってるもん」

 

「そうだな、それはいいことだ。偉い。お前は偉い、だから泥風呂は諦めろ」

 

「ふーん、だ」

 

ぷいっとそっぽを向いて拗ねやがった、めんどくせぇ。

 

このクソガキ、はっ倒してやろうか?いや、いっそのことちゃんと理由を伝えて納得させて断った方がいいか。

 

「──ウタ、お前は風呂にどこで入る」

 

「え?そんなのお風呂場に決まってるじゃん」

 

そうだよな。つまり、僕は風呂場で悪魔の実の能力を使うことになる。

 

「お前は風呂場では湯船に浸かるだけか?他になにかすることはないか?」

 

「エエエエッ!!!?いきなりセクハラだ!」

 

「フッハハハ、やっぱりはっ倒してやろうか?このクソガキ」

 

両腕を胸の前でクロスして、警戒するように僕の方を見てきやがる。これだから言いたくなかったんだ、このクソガキ。

 

まあそれでも、僕の質問の意図を探るようにウタは答え始めた。

 

「頭も洗うし、身体も洗うよ。あとは歌を歌いながら湯船に浸かって、ゆ〜っくり過ごすかな?」

 

「そうだよな。当然シャワーを使うよな?それで、悪魔の実の能力者の弱点はなんだ?」

 

「海......水!そっか、シャワーのお湯でリオも悪魔の実の能力が発揮できなくなるんだ!」

 

「半分正解だ。正確に言えば、僕の本体から切り離された泥風呂はすぐに癒しの効能を失う。まあそれでも、ただの温かい薬湯くらいの効果は残るだろうがな」

 

これでわかっただろ、諦めろ。まあでも、とりあえず頭を使って正解したご褒美に頭くらい撫でてやるよ。

 

「あれ、でも白ひげのおじさんは効能のあるリオの泥風呂に入れたんだよね?すっっっごい若返ってたし!」

 

このバカ、ここまで順を追って話してまだ理解できねぇのか。白ひげには出来てお前にはできない理由が分かるだろ。

 

頭を撫でる手をピタリと止めて、今度はその額に軽くデコピンをする。

 

うっせぇ、痛がって文句言ってくんな。

 

「能力者である僕が同じ湯船に一緒に入ってれば、いくらシャワーが飛ぼうが関係なく効能を維持できんだろ」

 

そのせいで、滞在中は毎日毎日あの筋骨隆々のジジイと風呂に入ることになった僕は可哀想すぎる。

 

しかもあのジジイは遠慮って言葉を知らねぇ。背中を流せだの、風呂上がりにいい酒を出せだの。僕が将来成長したら飲もうと思って保管していた秘蔵の酒を、どれだけタダ飲みされたことか。

 

「それなら、私もリオと一緒にお風呂に入ればいいんじゃないの?」

 

「お前、今後2度と自分のことレディーって言うなよ?」

 

これだからガキは。羞恥心ってもんを知らねぇ。

 

「なんで!!?私はただ、リオとなら一緒にお風呂に入ってもいいって言っただけなのに!」

 

「だいたい、なんでそこまでして僕の泥風呂に入りてぇんだよ。あれか?美肌効果目的か?」

 

「それもあるけど......リオの泥風呂で身体が元気になったら、夜眠くならないで一緒に見張りできると思うから」

 

「変な気を回さずに夜は大人しく寝てろ。その気持ちだけで充分だ、マセガキ」

 

「なっ!?違うもん!私と一緒にお風呂に入るのを恥ずかしがってるリオの方がよっぽどマセガキだよ!」

 

「はぁ?この僕がマセガキなわけねぇだろ。僕はテメェの『自分はレディーだ』って言葉を尊重して配慮してやってんだろうが!」

 

「いつもガキガキ言ってくるくせに、都合のいい時だけレディー扱いして逃げるんだ!リオかっこ悪〜い」

 

「ぶん殴りてぇ。その生意気なツラ、今すぐ思いっきり殴りてぇ」

 

「はい、負け惜しみ〜」

 

このガキぃ、徹底的に思い知らせてやろうか?あ?僕は別にいいんだぜ?こんな8歳のお子ちゃまと一緒に風呂に入るくらい、なんてことねぇ。

 

「いいんだな、おい。お前が本当に問題ないなら、『秘蔵・黄金の泥湯(トレジャー・マッド・スパ)』に入れてやるよ。今ここで『自分はマセガキでしたごめんなさい』って謝るなら勘弁してやるが」

 

「だから、私は全然問題ないって最初っから言ってるもん!リオが変に意識してるだけでしょ!」

 

「つくづく強情なガキだな、おい。クソが、風呂場にこいや。今すぐに準備してやるよ」

 

湯気が白く立ち込める狭い浴室。

 

白濁とした温かい泥で満たされた浴槽の中に、僕とウタは並んで浸かっていた。僕は壁側を向き、視線のやり場に困って膝を抱えてうずくまっている。

 

「......絶対、目を開けたらダメだからね」

 

「見ねぇよ......あの、なんだ。温度はどうだ」

 

「......うん、ちょうどいい。とろとろしてて、すごく心地いい温かさ......もうこのまま寝れそう」

 

「絶対寝るなよ。マジで、絶対にここで寝るなよ。僕に風呂場での介抱なんて面倒な真似させんなよ」

 

狭い浴槽の中でウタの柔らかい肌が触れるたび、泥(僕)を通してその体温がダイレクトに伝わってくる。気まずい。死ぬほど気まずい。

 

なんで僕はあんなガキの安い挑発に乗っちまったんだ。

 

「......あ、でも、目を閉じてたらリオ、頭とか洗えないよね?」

 

「僕のことは考えるな。お前が上がった後に1人で勝手に洗うから」

 

「ふふ、そっか」

 

背後でチャプ、と粘り気のある泥が跳ねる音がする。ウタがすっかりリラックスして肩まで深く浸かったようだ。

 

「......本当に気持ちいい。すっごく落ち着く」

 

「──そうかよ」

 

「ありがとう、リオ。いっつも私のわがまま聞いてくれて」

 

「......うるせぇよ。黙って入ってろ」

 

無防備で、とろけたような甘い声。僕は熱くなった自分の顔を隠すように、深く白い泥の中へと鼻先まで潜り込んだ。

 

......まあ、今回だけだ。本当に今回だけだからな。

 


 

結局、泥風呂で元気になったウタは僕の「寝てろ」という言いつけを聞かず、夜の見張り台までついて来た。

 

『今夜は私が絶対寝ないで見張るから!』と豪語していたが、案の定、10分もしないうちにカクカクと船を漕ぎ出し、20分が経つ頃には完全に夢の中だ。

 

「だから、部屋の布団で寝ろって言ったんだよ」

 

僕は呆れたようにため息をつきつつ、見張り台に備え付けておいた厚手の毛布を広げ、ウタの小さな肩にかけてやる。

 

僕の肩にコテンと頭を預けて、すーすーと気持ちよさそうな寝息を立てているその無防備な顔には、年相応のあどけない幼さが残っている。

 

「──なんで赤髪は、こんなお前のことを捨てたんだろうな」

 

「可愛らしいガキじゃねぇか」

 

年相応にワガママで、生意気で、本当に手のかかるガキだ。だが、他人の痛みに敏感で、誰かのために本気で怒ったり泣いたりできる思いやりのある奴だ。

 

性格だって──まあ、決して悪くはない。

 

「僕には未だにわからねぇよ。お前を捨てた赤髪なんかに、未だに親愛の情みてぇなもんを抱き続けてるお前の気持ちがな」

 

理由がどうあれ、テメェが育てたガキを捨てるような奴はろくでもねぇ。経済的にどうしても厳しくて育てられないとかなら、100歩譲って理解できなくもない。

 

だが、相手は海を統べる四皇だぞ?世界最強の一角が、たかがガキ1人守りきれないなんてありえねぇ話だろ。

 

僕は、眠るウタのポケットからこぼれ落ちそうになっていた白い音貝をそっと拾い上げ、指先で弄んだ。

 

元々僕の所有物なのに、あの船出の日にウタに没収されたやつだ。

 

「お前はさ、僕が音貝にお前の歌を保存してる理由をしつこく聞きたがってたよな。いつも適当にはぐらかしてたが......まあ、純粋に僕がお前の歌を気に入ってるってのも嘘じゃねぇ」

 

だが、本当の理由は別にある。もし今後、この広い海で赤髪と遭遇するようなことがあった時──

 

「いつかあいつの目の前に突きつけてやりたいんだよ。テメェが捨てた可愛らしいガキは、テメェの知らないところで世界一の歌姫になったぞってな」

 

赤髪は、今のお前がどんな風に無邪気に笑うのかも、どんなに凄い歌を歌えるようになったのかも、何1つ知らねぇ。

 

今のウタを知っているのは、育てたのは、隣で守ったのは──ゴードンとこの僕だ。

 

「テメェが勝手に手放した宝に、どれだけの価値があったのか。幼いお前が──ウタがどんな表情で毎日を過ごし、どう成長していったのか。その最高の歌声と共に、骨の髄まで見せつけてやりたい」

 

そしたらよ、涼しい顔をした大海賊も少しは悔しそうに顔を歪めるだろうよ。お前の歌が詰まった音貝と、楽しそうに成長していく大量の写真を見たらな。

 

「赤髪も、お前を手放したことを死ぬほど後悔するだろ。とんでもなく惜しいことをしたってな」

 

本当に僕には理解できねぇ。

 

自分を置いていった相手を、心のどこかで想い続けるウタの気持ちが。だが、お前が赤髪を大切に想っている以上、僕が勝手に赤髪を殺すわけにはいかねぇ。

 

だからせめて、このくらいの意地悪な嫌がらせならしてもいいだろ?僕は眠るウタの柔らかな頭を、起こさないようにそっと撫でた。

 

「だからさ、やりたいことはなんでも言えよ。大体のことなら、この僕が全部叶えてやる」

 

陳腐なことを言うつもりはねぇが、お前が世界一幸せに過ごすこと。

 

それが、お前を捨てた赤髪に対する、最大級の『ざまぁみろ』に繋がんだろ。多分な。

 

「......さて、湿っぽい話はこれで終わりだ」

 

僕は夜風に吹かれながら気持ちを切り替え、手元の海図と分厚いガイドブックを開いた。

 

「魚人島の観光スポット、一応調べておくか」

 

明日船をシャボンでコーティング加工して、海底の魚人島へ向かう予定だ。

 

魚人と人間の歴史的な関係性は良好とは言い難いが、僕たちみたいなガキ2人を寄ってたかって迫害するような真似はしてこないと信じたい。

 

「ま、もし魚人島の連中がウタに手を出してくるようなら──」

 

僕は月明かりに静かに照らされた夜の海を見据え、小さく不敵に笑った。

 

「遠慮なく徹底的に抵抗してやるだけだがな」

 

くれぐれもそんなめんどくせぇ真似はさせてくれんなよ、魚人島。

 


 

『今夜は私が絶対寝ないで見張るから!』なんて自信満々に豪語したのに、心地よい波の音と、一定のリズムで揺れる船の安心感、そして何よりさっきの泥風呂のポカポカした温かさに負けて、私はいつの間にか意識を手放していたみたい。

 

つまり、ぐっすり寝ていた。

 

ふと意識が浮上して目が覚めたのは、肩にふわりと温かいものが乗せられた時だった。

 

(リオの匂いがする。多分、私に毛布をかけてくれたんだ)

 

「だから、部屋の布団で寝ろって言ったんだよ」

 

頭上から降ってくる、呆れたような、でもどこか優しい溜め息。

 

(うっ。ごめんね、リオ)

 

すぐ起きようと思ったけど......なんだかリオが静かに独り言を話し始めたから、ちょっとしたイタズラ心でそのまま寝たフリを決め込むことにした。夜のリオがどんな独り言を言うのか、すごく気になるんだもん。

 

私の頭がリオの肩にコテンと重たく寄りかかっているにもかかわらず、リオは払い除けたり嫌がったりせず、そのまま肩を貸してくれている。

 

「──なんで赤髪は、こんなお前のことを捨てたんだろうな」

 

(......え?)

 

心臓がドキッとした。リオの声がすごく真剣で、そしてどこか悔しそうだったから。

 

リオ、私のためにシャンクスのこと、そんなに怒ってくれてるんだ。

 

「可愛らしいガキじゃねぇか」

 

(はえっ!?)

 

い、今なんて言った!?可愛らしい!?あの憎まれ口ばっかりのリオが!?いつも『クソガキ』とか『生意気』とか『マセガキ』とか言うくせに、私が寝てると思ったらそんなこと言うの!?

 

顔がカァーッと一気に熱くなるのがわかる。ダメ、今目を開けたら絶対に恥ずかしくて変な空気になっちゃう!

 

私は必死に規則正しい寝息のリズムを保った。

 

「僕には未だにわからねぇよ。お前を捨てた赤髪なんかに、未だに親愛の情みてぇなもんを抱き続けてるお前の気持ちがな」

 

リオの声は低く、静かな海に溶けていく。私がまだシャンクスを想っていること......全部バレてたんだ。それがリオにはすごく歯がゆいみたい。

 

と、いきなり私のポケットがふっと軽くなった。あ、私の音貝!いつの間に抜いたの!返して!とらないでよ!それはもう私のなんだから!元々はリオのだったけど、今は私のなの!

 

「お前はさ、僕が音貝にお前の歌を保存してる理由をしつこく聞きたがってたよな。いつも適当にはぐらかしてたが......まあ、純粋に僕がお前の歌を気に入ってるってのも嘘じゃねぇ」

 

(嘘じゃない、ってことは......やっぱり私の歌が大好きってことじゃん!)

 

そっか。リオ、やっぱり私の歌を気に入ってくれてたんだ。素直にそう言えばいいのに。でも、『それも嘘じゃねぇ』ってことは、他にも何か理由があるの?

 

「いつかあいつの目の前に突きつけてやりたいんだよ。テメェが捨てた可愛らしいガキは、テメェの知らないところで世界一の歌姫になったぞってな」

 

(え......?)

 

「テメェが勝手に手放した宝に、どれだけの価値があったのか。幼いお前が──ウタがどんな表情で毎日を過ごし、どう成長していったのか。その最高の歌声と共に、骨の髄まで見せつけてやりたい」

 

(た、宝......って......)

 

リオの静かな声に、確かな熱が帯びていく。シャンクスへの怒りだけじゃない。私という存在にどれだけの価値があるか、私がどれだけ楽しく笑って凄くなったか、それをいつかシャンクスに見せつけてやりたいって、リオは本気で言ってるんだ。

 

「赤髪も、お前を手放したことを死ぬほど後悔するだろ。とんでもなく惜しいことをしたってな」

 

(......バカだなぁ、リオは)

 

リオにとって私は、『海賊に捨てられた可哀想な子』なんかじゃなくて、世界に誇れるとっっっっっても価値のある大切なお宝なんだ。

 

私の頭に、リオの温かい手のひらが乗せられた。私を起こさないように、まるでガラスの壊れ物を扱うような、信じられないくらい優しい手つき。

 

「だからさ、やりたいことはなんでも言えよ。大体のことなら、この僕が全部叶えてやる」

 

(──っ、もう)

 

ダメだ。今目を開けたら、絶対に涙が溢れて泣いちゃいそう。

 

なんでも叶えてやるだなんて、そんなお姫様にするみたいな嬉しいこと、寝てる私の耳元で言わないでよ。

 

嬉しくて、くすぐったくて、愛おしくて、胸がいっぱいになる。

 

「......さて、湿っぽい話はこれで終わりだ」

 

リオの手がそっと離れ、カサリと紙をめくる音が聞こえる。気持ちを切り替えたみたい。いつもの冷静で頼もしいリオの声に戻った。

 

「魚人島の観光スポット、一応調べておくか」

 

魚人島、私たちの次の目的地だね。新世界から偉大なる航路の前半に行くために通るんだったよね?でも、魚人と人間の関係はあんまり良くないって前にリオが言ってたっけ。

 

「ま、もし魚人島の連中がウタに手を出してくるようなら──」

 

紙をめくる手がピタリと止まる気配。

 

「遠慮なく徹底的に抵抗してやるだけだがな」

 

ふふ、本当に頼もしいなぁ。魚人島でも、偉大なる航路でも、新世界でも。もうシャンクスたちがいなくても......隣にリオがいれば、私はどこへ行っても絶対に大丈夫。

 

だって、私には世界一の歌姫になるまで──ううん、なってからもずっと、私を『宝物』だと言って全力で守ってくれる最高のパートナーがいるんだから。

 

今の私は、レイヴン・リオの海賊団の誇り高き音楽家。たとえ世界一の歌姫になっても、その肩書きだけは永遠に変わらない。

 

(──ありがとう、リオ。大好きだよ)

 

私は心の中でそう温かく呟いて──今度は本当に、幸せな夢の中へと落ちていった。

 


 

翌朝。目が覚めるなり、ウタの様子が明らかにおかしい。まるでせき止めていたダムが決壊したみたいに、朝から矢継ぎ早に要望を飛ばしてきやがる。

 

「ねぇリオ、私が歯磨きさせてあげようか?」

 

「......僕はお前の介護人か、それとも従者か、おい。自分の歯くらい自分で磨けアホ」

 

「じゃあ、今の私の写真撮る?」

 

「......」

 

「あ、朝ごはんは分厚いステーキが食べたいな!」

 

「......」

 

「ねぇ、写真撮る?」

 

「......」

 

「あとね、可愛い新しい服もいっぱい欲しいなー!」

 

「......」

 

「あ、そういえば起きたらポケットから私の音貝がなくなってたの。絶対リオが夜のうちにとったでしょ、返してー」

 

「......」

 

「今から朝の歌を歌うけど、私の可愛い歌声、新しい音貝で録音しなくてもいいの?」

 

「......」

 

「それとね、リオとお揃いのアクセサリーが欲しいなー!」

 

「......」

 

「ほらほら、記念に写真撮らせてあげようか?」

 

「──いい加減にしろ!朝っぱらから何枚写真を撮らせるつもりだボケ!」

 

おい、なんで起きた直後からこんな意味不明な波状攻撃を受けてるんだ、僕は。

 

今までにないレベルのワガママのオンパレードだ。特に写真と録音。なんで僕にそんなに自分の記録を残させようとしてんだ。

 

いつから僕がお前の専属カメラマン兼下僕になったんだ!おい!

 

僕は深い溜め息をつきながら、渋々といった様子で沼から写真機を取り出す。

 

「ほら、そんなに撮られたいなら1枚だけ撮ってやる。さっさとこっち向け」

 

「えへへ、世界一可愛く撮ってね!」

 

パシャリ。

 

「ステーキは今日の夜に作ってやるよ。朝のメニューはもう決めて準備しちまったからな」

 

「えー、夜かぁ。ま、リオが作ってくれるならいいや!」

 

「服は今日上陸する島で買ってもいいが、たぶん魚人島の方が珍しいデザインがあって品揃えがいいだろ。それまで待てないなら次の島で買ってもいいけどよ」

 

「んー、じゃあ魚人島まで我慢する!一緒に選んでね!」

 

「それと音貝のことは知らねぇよ。そもそもあれは元々僕のだ。寝ぼけてんのか?病院行くか?」

 

「むー、すぐそうやってとぼけちゃって」

 

「だいたい、なんで僕がお前の歌をいちいち録音しねぇといけないんだよ。流石の僕でも、空の音貝なんて泥の中に30個しか持ってねぇのに」

 

「30個も持ってるじゃん!ケチケチしないで私のために1個くらい使いなよ!」

 

「断る。──で、お前、さっきドサクサに紛れてなんて言った?」

 

「え?アクセサリーのこと?」

 

ウタはニシシと悪戯っぽく笑って、下から僕の顔を嬉しそうに覗き込んだ。

 

「リオとお揃いのアクセサリーが欲しいって言ったの!」

 

「──お揃い、か」

 

いずれ海賊王になる男と、世界一の歌姫になる女が身につけるお揃いの証。まあ、僕たちだけの仲間内の装飾品を作るのも悪くねぇか。

 

「......仕方ねぇな。そのうち作ってやるよ」

 

「やったー!絶対だよ、約束だよ!」

 

「はいはい。ほら、馬鹿みたいな枚数の写真を撮るんだろ?次はあっちの甲板で撮ってやるから移動しろ」

 

「うん!」

 

(しかしこいつ、今日は朝からやけに機嫌がいいな。なんかいい夢でも見たのか?いや、こんだけ好き勝手わがまま言って不機嫌だったら本気で殴りたいけど)

 

僕が不思議に思って首を傾げていると、レンズの向こうで、ファインダー越しのウタがどこか勝ち誇ったような満面の笑顔でピースサインをした気がした。

 

マジでなんだ、こいつ?

 

(ふふん、だってリオは、私がやりたいことを我慢しないでわがまま言った方が嬉しいんだよね?シャンクスに見せつけるためにも、これからもいっっっぱいわがまま言って、写真も歌もたっくさん残してあげるからね!)

 


 

ウタ→リオは私がわがままを沢山言った方が嬉しいんだ!たっくさん言おう!自分のことを『宝物』って言って誰よりも大切にしてくれる。リオは世界で1番大切な人。

 

リオ→遠慮せずにやりたいことを言えばいい(※なんでもかんでも無茶なわがままを言ってくれという意味合いではないが、まあ大抵のことは聞いてやる)。

 

仲間に後ろから刺されたクソ親父とは違って、一度懐に入れた身内は大切にする。

 

 









迫り来る四皇は?

  • お見合い催促ビッグマム海賊団幹部
  • 寂しがり屋カイドウ
  • 自称親父白ひげ
  • 娘を救いに来た赤髪海賊団
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