僕がキャプテン・ジョンの宝だ   作:Mr.♟️

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黄金の血脈

 

手配書を掲げてはしゃぐウタを横目に、僕は自分の手配書を睨みつける

 

 

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「この僕がたかが2億ベリーか。政府も海軍も見る目がねぇな」

 

 

【挿絵表示】

 

それに、なんで僕の手配書に堂々とウタが写りこんでやがる。もっとマシな写真はなかったのか。これじゃ緊張感のかけらもねぇ

 

「う、ウタ様もリオ様もすごいです!」

 

「他人事みたいに言ってるけど、お前も充分ヤバいからな。初手で2,000万ベリーなんて、そうそういねぇよ」

 

 

【挿絵表示】

 

しらほしの手配書(ALIVE ONLY)は、世界政府が魚人島との関係を保つために気を回した結果だろうが──完全に逆効果だ

 

しらほしを捕まえて海軍に渡すより、裏ルートで奴隷オークションに流した方が桁違いに高く売れる。本気で保護するつもりなら、最低でも20億は懸けなきゃ抑制力にならねぇよ

 

「そ、そうなのですか....?私はてっきり、お二人のオマケかと...」

 

「んなわけあるか。もっと自信を持て。この僕の船に乗ってるんだからな」

 

「は、はいっ!」

 

しらほしが嬉しそうに、けれど少し複雑そうに頷く。僕は手配書を懐にしまってから、エターナルポースをだす

 

「さて、次の目的地だが──ウォーターセブンを目指す。今の船じゃ心許ねぇ」

 

新世界でも通用する『最高の船』を手に入れるなら、あそこの職人しかいねぇだろう。僕の完璧な要望に応えられるかは知らねぇが、他のところに頼むよりはマシだ

 

「それと、道中で目についた世界政府非加盟国と、喧嘩を売ってくる海賊共は片っ端から傘下に加えていくぞ」

 

「傘下かぁ。私たちの傘下になってくれる海賊、いるかな?」

 

「おい、勘違いすんじゃねぇよウタ。なってもらうんじゃねぇ、してやるんだ。海賊らしく力で分からせりゃいいだろ」

 

「あ、そっか!確かに!」

 

ウタがあっけらかんと納得する横で、しらほしが巨体を縮こまらせる

 

「うぅ....わ、私はそういった荒事は、その、お力になれませんので...」

 

「バカなこと言ってんな。まかり間違ってウタが海に落ちたら、助けられんのはお前だけだ。お前は自分ができることをやりゃあいい」

 

別に戦力として期待してるわけじゃねぇ。僕は衝動的とはいえ、魚人島での地位を捨ててまでついてきたお前のその気概を買ってんだよ

 

「~~ッ!はい!私、絶対にお力になります!リオ様とウタ様が溺れた時は、必ず!」

 

「僕は溺れねぇよ」

 

「む、私だって落ちないもん!」

 

僕たちの即答にしらほしの目から特大の涙が溢れ出す

 

「ぅぅっ──え~~~~~~~~ん!!!!やっぱり私、お役に立てないじゃないですかぁ~~~~!!!!」

 

「....仕方ねぇな。ウタ、試しに飛び降りて溺れてこい」

 

「えっ、なんで私!?」

 

「可哀想だろ。あんなに泣いてるのに。ほら、海遊びしたいって言ってただろ?」

 

「言ってない!リオが飛び込めばいいでしょ!」

 

「僕が飛び込んでもいいが、しばらくお前の飯から肉を抜くぞ。それでもいいなら...なぁ?」

 

「理不尽!!」

 

ギャーギャーと騒がしい甲板の上で、僕は笑みを浮かべる。悪くねぇな、バカみてぇに騒ぎながら航海するのも

 

「なんで笑ってるの!?そんなに私の事海に落としたかったの!?」

 

.....クソガキ。僕がいい気分に浸ってんだから大人しく溺れてこい

 


 

シャボンディ諸島でのあの一件から、ちょうど1年が経過した

 

僕たちの進路は、当初の予定とは似ても似つかないものになっていた。本来ならとっくに『水の都ウォーターセブン』に到着し、最高の船を手に入れているはずだった

 

だが、現実はそう甘くはねぇ。僕の机の上にはバカみてぇな量の書類が積み上げられている

 

「ねぇねぇ!リオ、見てよこれ!ついに6億ベリー!全世界デビューからたった1年で、これって凄くない!?」

 

ウタが最新の手配書を僕の顔の前に突きつけてくる。はしゃぐウタを軽く手で払い除けながら、僕は自分の手配書を指先で弾いた

 

「僕は7億ベリーだ。1億の差があるな」

 

「むー!リオは相変わらず可愛げがないんだから。いつか、絶対に超すもん!」

 

超えねぇよ。船員の懸賞金が船長より上になることはねぇからな。まあ、やる気がでたみたいだから黙っておくか

 

ウタが頬を膨らませる隣で、しらほしがそわそわしながら自分の手配書を差し出してきた

 

「あの...私も3億ベリーになりました。リオ様、ウタ様、少しは──お二人の隣に立つ資格ができたでしょうか?」

 

しらほしの成長は、この1年で最も計算外な出来事だった。精神的な成長が著しく、1年前までの泣き虫が嘘みてぇだ

 

「資格なんざ、はなっからあんだろ。僕が船に乗せている。それが答えだ。強くなったのもお前が頑張ったからだ」

 

「リオ様とウタ様が厳しくご指導してくださったからです!正直...懸賞金が上がるのを嬉しいと思えるなんて、1年前のわたくしには想像もできませんでした」

 

しらほしが戦い方を教えて欲しいと言ってきたあの日、数日で折れると思ったが最後まで僕の指導についてきた。見聞色は才能がなかったが、その分武装色の才能はピカイチだった

 

(──本当によく頑張ったよ、お前は)

 

ほら、見てみろ。懸賞金額が上がったことを嬉しいと笑ってやがる。今じゃ、僕たちと同じ『DEAD OR ALIVE』が手配書に刻まれている

 

この規格外の巨体で武装色を使いこなすんだ。政府も『保護すべき対象』から『排除すべき脅威』に認識を改めざるを得なかったんだろう

 

ここまでが僕たちにとっていいこと。ここからはめんどくせぇことだ

 

僕は手元の新聞を握りつぶし、水平線の彼方を睨みつけた

 

「チッ、クロコダイルと鷹の目が邪魔してこなけりゃあ、僕の予定通りに進んだのによ....」

 

この1年、僕たちの進路を最も狂わせたのは海軍だけじゃねぇ。二人の王下七武海だ

 

「アハハッ、リオは人気者だね」

 

「はっ倒すぞ」

 

まず、あの砂野郎、クロコダイルだ。奴の狙いは分かりやすい。僕を屈服させて傘下に引き入れ、僕がここまで作り上げた組織と情報網を丸ごと乗っ取ろうとしてやがる。目的がある分まだマシだ。だが、それもあと1回で終わる

 

『次に戦う時は、負けた方が勝った方の下につく』という条件を向こうから提案してきたからだ

 

「あ、今クロコダイルについて考えてるでしょ」

 

「なんでわかんだよ、怖ぇよ」

 

かなり前から『アラバスタ』とかいう国にご熱心らしいが、それでも定期的に僕の前に現れては砂嵐を巻き起こしていく。僕のことが好きなのかと疑いたくなるレベルだ

 

(──それでも、野郎は優秀だ)

 

僕はクロコダイルという男の実力と頭脳は買っている。仲間にできるなら今までのくだらねぇ嫌がらせも許してやる。正直、肥大化した傘下を管理できる人間が圧倒的に足りねぇんだ。アイツみたいな優秀な奴がいれば、僕の負担も減る

 

僕がクロコダイルに負けることは万に一つもねぇ。砂と泥──相性が良すぎるんだよ

 

(テメェを僕の仲間にしてやる、クロコダイル)

 

砂野郎以上に意味がわからねぇのが、鷹の目のミホークだ

 

あいつは最悪だ。暇つぶしとか宣いながら、文字通り島を斬るような勢いで絡んでくる

 

奴の目的はただ一つ、僕と戦うことだけだ。自分が満足するまで剣を振るい、満足すれば去っていく

 

「今度はミホーク様のことをお考えでしょうか?」

 

「なんで分かんだよ。お前ら、最近僕の考えを読んできて怖ぇよ」

 

仲間に誘っても『興味ない』の一点張り。クロコダイルよりも来る頻度が多く、この1年で100回は刀を交えた。クソ迷惑な暇人

 

 

 

 

 

 

──おいおい、今日来たのかよ。しっかりと覚悟はしてきたんだろうな

 

31回目の邂逅。水平線の向こうから迫りくるのは、この1年僕の邪魔をしてきた忌々しい船だ

 

 

「──クロコダイルっ!テメェ、負けたら大人しく僕の下につけよ!約束破るんじゃねぇぞ!....ウタ、近くの島に船を向かわせろ」

 

「クハハハ──こっちのセリフだァ!俺の下につく覚悟はできてんだろうな!テメェが集めた有象無象ごと、俺が有効活用してやるよ!」

 


 

最初は、ただの勢いだけがいいクソ生意気なルーキーだと思っていた。さっさと潰すか取り入れるかするつもりだった

 

だが──おかしい

 

どう考えてもおかしいだろ。覇気、それも三種類すべてを自在に操る傑物が、なぜ偉大なる航路前半の海で燻っている

 

1回目の接触では俺は即座に引いた。あの若さであれだけの実力、背後に何かしらの後ろ盾があるのは明白だったからな

 

俺は徹底的に調べた。あのガキが何者で、どこから湧いて出たのか

 

出自の特定には至らなかったが、ガキがエレジアの復興に深く関わっていることが判明した。エレジア──かつて白ひげが滞在した島だ。まさか、あのジジイの秘蔵っ子か?

 

2回目は戦いながら気になることを直接聞いた。ある程度刃を交えてから、俺はまた撤退を選んだ

 

滑稽だろ?王下七武海たる俺が本気で攻めている最中だというのに、船員の2人は戦う気配すら見せず、呑気に応援しながら眺めてやがったんだ

 

あの不気味なほどの余裕を無視するには、目の前にいる野郎が少しばかり強すぎた。なんかの隠し玉があるのかもしれねぇ

 

(──キャプテン・ジョンの息子だと聞いた時は、流石に喉の奥が乾いたぜ)

 

だが、それは同時に、あのガキがジョンの遺産のありかを知っている可能性が高いことを意味する。それに、白ひげの関係者なら尚更俺が奴を狙わねぇ理由がねぇ

 

3回目は、あろうことか俺に『傘下に入れ』などと抜かしやがった。ふざけるな。むしろテメェが俺の軍門に降るべきだ

 

 

 

 

15回目。俺がアラバスタの件で少しばかり足を取られている間に、アイツは驚くべき速度で一大勢力を築き上げてやがった。支配下に置いた傘下は50を超え、この前半の海では間違いなく最大戦力

 

こいつを俺の下に組み込み、その兵隊とネットワークを操ることができれば、俺の計画をもっと大きく修正できる。その日は、少し遊んでから引いた

 

16回目。アイツは甘い。反吐が出るほどの甘ちゃんだ

 

傘下に入れた海賊共をわざわざ教育して更生させようなんて無駄な真似を。そいつらが多少理不尽に暴れたところで、テメェには関係ねぇだろ

 

それとは別に、不可解なことがある。奴が傘下に置いた国々では慢性的な食糧難が悉く解決しているという噂だ。どんなペテンを使ったのか、そこだけは興味があった

 

17回目。勧誘のために戦いに行くと、奴は普段以上にブチ切れてやがった

 

俺はまだ何もしてねぇぞと問えば、どうやらゼファーと鷹の目に傘下の海賊団を20以上潰されたらしい。その日は戦った後、ウタとかいうガキの歌を聴きながら飯を食ってから帰った。んなことでブチギレてると、大きくなれねぇぞ

 

 

18回目。奴が庇護している国の実態を洗った

 

ふん、やはり甘ぇ。支配権をわざわざ王に与えてやがる。効率的に支配するなら、国における全ての権利はテメェが握っておくべきだ

 

俺の問いに、奴はこう吐き捨てた

 

『自分の意思で従わせるからこそ、その忠誠に価値があんだよ。わかんねぇか?』

 

──笑わせる。理想主義のガキが

 

19回目。俺は奴をただの甘ちゃんだと思っていたが、それだけでは片付けられなくなってきた。奴の傘下共は略奪を止め、野郎が決めたルールを忠実に守り、国を守ってやがる。本当に海賊か?

 

それだけじゃない。奴が偶然にも天竜人と同じ国に訪れた時、必ずと言っていいほど天竜人が『行方不明』になっている。シャボンディの時のように証拠を残しちゃいねぇが、間違いなく奴の仕業だ。甘ちゃんなのか狂人なのか大物なのか、ハッキリとしやがれ

 

20回目。厄日だ、野郎のところに戦いに来ただけなのに

 

空からは忌々しい雨が降り、鷹の目と鉢合わせた挙句、ゼファーまでいやがる。戦場では白ひげの息子を自称するウィーブルという化け物が暴れていた──白ひげの息子だと?ああ、知っているさ。あのジジイの息子は『白ひげ海賊団』の連中だけだ....!

 

俺がアイツをぶちのめそうとした時、リオは事もあろうに白ひげ本人に電伝虫で確認しやがった

 

『白ひげのジジイ──あんた、テメェのガキを捨てたりしてねぇよな? 回答次第で、僕はあんたを軽蔑するぞ』

 

四皇に対してその言い草は何だ。鷹の目、テメェも横から邪魔をするな。失せろ

 

21回目。コブラ王のガキが、俺の周辺を嗅ぎ回り始めた。疑っているのか俺の後ろをチョロチョロとついてきやがる

 

まあいい、あんな小娘は放置だ。その日も戦いの後、いつものように飯を食って帰った。ジョンの財宝はすべて奴の『ヌマ』の中に保管されているらしい。なおさら奴を俺の下につける必要がでてきた

 

 

 

 

29回目

 

──野郎は強い

 

この1年、何度も刃を交えてきたが、戦うたびに奴は成長してやがる。なんの冗談だ。元々化け物じみた実力の持ち主が、戦う度に底を上げ続けるなんざ、不公平にも程があるだろう

 

 

30回目

 

この『30』という数字は重い。俺がかつて、白ひげに挑んできた回数と同じだ

 

思えば野郎とは、バカみたいに戦い、共に飯を食い、生意気なガキの歌を聴き、あの泣き虫な人魚が逞しくなっていく様を見てきた

 

──ハッ。仲良しごっこは、ここまでだ

 

 

『次で俺とテメェが戦うのは31回目だ』

 

俺は奴に持ちかけた

 

『次に俺が負けたら、俺が貴様の仲間になってやる。だが俺が勝ったら、テメェら全員──俺の下につけ』

 

『あ?上等だ』

 

リオは不敵に笑い、そしてほざきやがった

 

『次に戦う時は──デービーバックファイトだ。覚悟して来いよ』

 

そして、31回目の今日

 

俺は空に向かって銃を撃つ。火花が散り、決戦の火蓋が切られた

 

昨今広がっているお遊びデービーバックファイトじゃねぇ。本当のデービーバックファイト。船長同士の、文字通りのタイマンだ

 

 

 

 

 

「──俺を納得させてみろ。レイヴン・リオ」

 

俺は砂を纏い、最高速度で突っ込む。本気で来い。テメェの全てを俺に見せてみろ。俺を納得させてみろ──テメェが白ひげを越える器なのか──証明してみろ

 


 

「──む、今日はクロコダイルに先を越されたか」

 

「あ、鷹の目!今日のお菓子は?」

 

赤髪の娘に人魚姫。こやつらは俺がレイヴンと戦いに来ても疎むどころか、お菓子を要求してくる。飴玉を渡した時は失望したような表情を浮かべられた

 

「俺の船に乗せてある。どこぞの国の有名なタルトだ。勝手に持ってきて食え」

 

ウタはすぐに俺の船にお菓子を探しに行った。それにしても、今日のクロコダイルはいつもより本気に見える

 

「あ、あの、ミホーク様もリオ様と戦いにいらしたのですか?」

 

「いや、違う。俺はレイヴンからの誘いを受けに来た」

 

「え、え〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?ミホーク様がお仲間に!?」

 

人魚姫の驚愕の声が島中に響き渡る。今までこの俺をあそこまで執拗に諦めずに誘い続けてきた男はいなかった

 

人魚姫の驚愕の声が島中に響き渡るが、視線を2人から逸らすつもりはない

 

今までこの俺をあそこまで執拗に諦めずに誘い続けてきた男はいなかった。100回を超える決闘。戦うたびに底を上げ、俺を楽しませ続けたレイヴンの熱量、技量。お前になら、俺の背中を預けてもいい。そう思わされた

 

 

 

 

 

戦場の中央では、クロコダイルが右手の鉤爪を振り上げ、咆哮を上げていた

 

砂漠の向日葵(デザート・ジラソーレ)!!』

 

大地が巨大な蟻地獄と化し、レイヴンの足元を飲み込もうとする。だが、レイヴンは動じない。足元から溢れ出した漆黒の泥が、砂の侵食を真っ向から押し返していく

 

「テメェの砂じゃ、僕のヌマには勝てねぇ!」

 

レイヴンが腕を振るうと、泥が巨大な触手となってクロコダイルに襲いかかる

 

クロコダイルはそれを『砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)』で一刀両断にするが、斬られた泥は即座に癒着し、粘り気を持って奴の四肢に絡みつこうとする

 

「──なら、干からびろ!『干割(グラウンド・セッコ)』!!」

 

クロコダイルが触手に手を触れると、水分を失った泥は砂へと変わる。そのまま手を地面に触れ、島全体の水分が急速に奪われていく。岩肌は砕け、植物は瞬時に砂へと変貌した

 

だが、その渇きがレイヴンに届く直前、奴のヌマがそれを防いだ

 

「甘ぇよ!『底なし大湿地(グランド・スワンプ)』!!」

 

レイヴンが踏み込んだ瞬間、島の半分が瞬時にして泥の海へと変貌した。砂と泥が一瞬拮抗したが──すぐにクロコダイルの足元が沈む。砂に変化して逃れようとする奴に対し、レイヴンはさらに追い打ちをかけるように、右腕に黒い稲妻──覇王色を纏わせた

 

「どこに逃げるつもりだ、クロコダイル!!」

「──っ、このガキ.....!!」

 

覇王色を纏ったレイヴンと武装色を纏い迎えうつクロコダイル激突の衝撃波が、俺の頬を撫でる

 

砂が舞い、泥が跳ねる。クロコダイルとレイヴンは──心做しか笑顔を浮かべながら殴りあっているように見える

 

 


 

(クソが、ムカつくぜ──俺を相手に手を抜きやがって)

 

「──テメェ、まだ全力じゃねぇだろ。手を抜くんじゃねぇ.. !俺を殺す気で来い!」

 

「あ?バカ言ってんじゃねぇ。僕は充分全力で戦ってんだろ」

 

「嘘つくんじゃねぇ!俺が何回テメェと拳をかわしてきたと思ってる。わかる、分かるんだよ...!テメェにはまだ隠し玉がある事がな!」

 

そんなんじゃ認められねぇ。納得できねぇ。見せろ、テメェの全力を。テメェが白ひげ以上の──海賊王の器なのかどうかを!

 

「──クロコダイル。僕は君のことを本当に仲間にしたいと思ってる。でも、僕が本気を出したら──殺すことになる」

 

(うざってぇ面をしやがって。あ?テメェが本気を出したら俺が死ぬだ?──上等だっつってんだ)

 

野郎のその言葉は、間違いなく俺の逆鱗に触れた

 

「テメェが今まで口説いてきた男は!俺は、テメェの全力を受け切ることもできねぇ雑魚だってか!?舐めてんじゃねぇ!テメェが本気を見せねぇなら、俺は死んでも仲間にならねぇ!」

 

リオ、テメェは強い。俺よりも強い。ムカつくが、テメェが全力を出さなくても俺に勝つことはできるだろうよ

 

だが、それなら俺は、お前の何を信じればいい!

 

お前のどこに夢を見ればいい!

 

テメェのどこに──白ひげ以上の大海賊になるという幻想を抱けばいい!

 

俺は大海賊サー・クロコダイルだ....!納得もできずに誰かの下につくほど、俺の誇りは安くねぇ!

 

野郎は沈黙し、やがて深い溜息をついた

 

 

 

 

「──クソが。知らねぇからな、死んでも。もし生きてたら、絶対に僕の仲間になれよ」

 

ようやくか。ようやく俺を殺す気になったか。見せろ! 海賊王を目指すテメェの本気を!

 

泥流駆動(マッド・アクセル)

 

──なんだそれは

 

奴の身体から、凄まじい熱気と蒸気が吹き出す

 

「僕の体内に...武装色の覇気で纏った『極小の管』を泥で無数に形成した。その管の中に、超高密度に圧縮した泥を同じく覇気で弾き飛ばすように超高速循環させ──高速回転する泥の摩擦で、僕のスピードと力は飛躍的に向上する」

 

野郎の全身が、超振動しているのか震えている。周囲の空気が、その熱量に焼かれて歪んでやがる

 

「それが奥の手か──来いよ、レイヴン・リオ!」

「調整できねぇんだ。だからよ──殺しても許してくれ」

 

次の瞬間、野郎の姿が消えた

 

いや、速すぎて俺の視界が追いつかねぇ

 

「『深淵駆動(アビス・ドライブ)』!!」

 

正面から迫る、黒い稲妻を纏った巨大な一撃

 

俺は全開の武装色を拳に込め迎え撃つが──接触した瞬間に理解した。これは『格』が違う

 

白ひげの拳が『世界を揺らす一撃』なら、こいつの一撃は『世界を貫く一撃』だ

 

「が、は.......っ!!!」

 

武装色の防御を強引に突き破り、黒い衝撃が俺の全身を駆け抜ける。背後まで突き抜ける衝撃波。視界が歪み、重力が消えた

 

 

意識が、泥の深淵へと遠のいていく

 

沈みゆく視界の中で、俺は確かに見た

 

かつて追い求め、ついぞ届かなかった白ひげの背中──それと同じくらい遠く、不敵に笑うレイヴン・リオの面を

 

(......ああ、認めてやる。これなら、認めることができる。テメェが、あのジジイを越えうる逸材だってな──)

 

 

 

 

吹き飛ばされた俺の身体は、不意に何者かの強靭な腕によって受け止められた

 

(....鷹の目?なんでテメェがここにいやがる....クソが、もう、意識が....)

 

 

 

「あ?なんで鷹の目がいんだ?おい、クロコダイルは死んでねぇよな?」

 

全身から蒸気を上げながら、レイヴンが肩で息をつきつつ歩み寄ってくる

 

「──生きている。俺はお前の誘いを受けることに決めた。だからここに来たのだ、レイヴ──リオ」

 

俺は受けとめたクロコダイルを地べたに横たわらせた

 

「なんだ、今日は?誘ってた野郎が二人とも同時に誘いをうけたのか。ハッ、最高じゃねぇか。運命ってやつかよ」

 

「リオリオリオリオ!すっごくかっこよかったよ!やっぱりリオも、たまにはあんな風に全力で泥臭く戦わないとね!」

 

赤髪の娘──ウタがリオに駆け寄り、やつの泥だらけの頬を指でつついている。相変わらず仲がいいな

 

「どこが泥臭ぇんだ....これ以上ないほど優雅な戦い方だっただろうが」

 

「リ、リオ様!そのまま放置していては、クロコダイル様が...その、死んでしまわれるのではないでしょうか!?」

 

人魚姫、しらほしが心配そうに巨体を震わせながら、ボロボロのクロコダイルを指差した。その程度で死ぬほど柔では...いや、割と致命傷か

 

「そうだな。仕方ねぇから、僕の『秘蔵・黄金の泥湯(トレジャー・マッド・スパ)』に浸からせる。外傷なら1時間もせずに治るだろ」

 

リオが指を鳴らすと、クロコダイルの身体の下から白濁とした泥が湧き出し、やつを包み込んだ。ほう、戦うだけのヌマではないのか

 

「リオ!仲間が増えたなら宴だよね?ね?」

 

「そうだな。こいつが起きたら、鷹の目──ミホークとクロコダイルの歓迎会だ」

 

(──現役の王下七武海が1人の男の軍門に下った。この影響力は、リオ。お前が考えているより大きいぞ。まあ、その辺りはクロコダイルが上手くやるだろ。俺は剣を振るうことと、畑を耕すことしかできん)

 


 

【黄金の血脈】『キャプテン・ジョンの実子』発覚、七武海二名を従え新時代の王へ

 

■伝説の再来『キャプテン・ジョンの実子』という衝撃

 

本紙が独自に入手した情報によると、船長レイヴン・リオの正体は、世界中の財宝を強奪した伝説の海賊『キャプテン・ジョン』の実子であるという。

 

海軍が彼に対し、一介のルーキーとしては異例中の異例である『40億ベリー』という、四皇に比肩する巨額の懸賞金を懸けた背景には、この血脈の危険性と、配下の実力、彼が父から継承した可能性がある『莫大な遺産』の存在があるものと推測される。

 

■沈黙なき拡大、支配域に訪れた『異常な平和』

 

この一年、レイヴン海賊団は偉大なる航路前半の海において、海軍の干渉を悉くねじ伏せ、その勢力を拡大させた。現在傘下に入った海賊団は30を超え、その全てが不遜王リオの厳格な規律の下で再編されているとされている

 

同団の庇護下に入った政府非加盟国20カ国以上の現状には驚きを隠せない。海賊の支配下にありながら、これらの国々では慢性的な食糧難や紛争が完全に解消され、民衆は安寧を享受している。

 

既存の勢力を『腰抜けの集まり』と嘲笑した不遜王リオによる、世界政府の無能を証明するかのようなこの『平和』は、世界秩序に対する最も痛烈な思想的挑戦である。

 

■世界の均衡崩壊、王下七武海二名が『軍門に降る』

 

世界中を震撼させている最大級のトピックは、王下七武海である世界最強の剣士ジュラキュール・ミホーク、および砂漠の王サー・クロコダイルの2名が、レイヴン海賊団に与し、未だに王下七武海の座に居座っているという事実。世界政府はどうするつもりなのだろうか

 

この二大巨頭が、なぜ一人の少年の傍らに控えるに至ったのか。経緯は依然不明だが、三大勢力の一角である七武海が事実上崩壊し、一海賊団に与した事実は、既存のパワーバランスの完全なる終焉を意味しているのではないだろうか。

 

■懸賞金額更新

 

船長:レイヴン・リオ(懸賞金:40億ベリー)

 

不遜王リオ。キャプテン・ジョンの実子にして、既存の全勢力を嘲笑し、僅か1年で一大勢力を築き上げた凶悪海賊。

 

音楽家:ウタ(懸賞金:25億ベリー)

 

破滅の歌姫ウタ。その歌声で民衆を熱狂させ、世界各地でファンクラブができている危険人物。

 

 

船員:しらほし(懸賞金:15億ベリー)

 

軍艦をも破壊する強大な力を有している人魚姫。海上で彼女に勝てる人間はいない。

 

 

 

 

 

「親父!親父!面白いことになってるよい!リオが暴れてるよい!」

 

「マルコ、リオのハナッタレが暴れてんのは当たり前のこ──40億ベリー!?」

 

「しかも、クロコダイルと鷹の目が仲間になったみたいだよい」

 

「あのハナッタレ、さっさと新世界に戻ってこねぇか?面白ぇ話を聞かせてくれそうじゃねぇか!」

 

「あいつは必要な時しか連絡してこないよい。最後に来た連絡は親父が子どもを捨てるロクデナシかの確認の連絡だったよい」

 

「ああ、なんだったんだろうな。あの野郎、定期的に連絡してこねぇか」

 

(リオはもう、俺たちの仲間みたいなもんだよい。連絡もしてこない風来坊だけどよい)

 

 

 

 

 

 

 

「カタクリ!どうなってんだい!まだジョンの倅とは連絡がとれないのかい!」

 

「偉大なる航路前半の海はママの威光の範囲外だから、中々レイヴン・リオに連絡をとる術がないんだ」

 

 

 

 

 

 

 

「ウォロロロロロ!懐かしい名前じゃねぇか!あいつの息子か!.....会いてぇなぁ」

 

(今日は笑い上戸みたいだ)

 

 

 

 

 

 

「ワニ野郎!俺の誘いは何度も断っておいて、ルーキーの船に乗るだと....!舐めてやがんのか!」

 

ドフラミンゴは額に青筋を浮かべ、新聞を握りつぶす

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜじゃ!なぜワシは一向にヤツに会えんのじゃ!このままだと、オトヒメ王妃に合わせる顔がない!」

 

「.....そういえば、やつはアーロンを殺すようなことを言っていたと兵士が言っておった」

 

「アーロンの元に行けば、やみくもに探すより会える可能性があるのか....?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──船を出せ!わらわはレイヴン・リオに会いに行く!世界を嘲笑する男の顔を、直々に拝んでくれようぞ!」

 

(──天竜人失踪事件、黒幕はこやつしか考えられん。会って話してみたい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?少しの間船を離れる?」

 

「ああ、ちょっと用事があんだ。全員で行くと時間がかかるからよ、僕としらほしだけで行ってくる。一応僕の希望内容が書いてる紙と....船に使って欲しい素材を置いていくからウォーターセブンで注文しといてくれ」

 

「え、ダメだよ。私もついて行く。ついていくなら、しらほしより私だよね?」

 

「今回だけはダメだ。悪いけどよ、僕としらほしだけ。ってか、僕がしらほしに運んでもらうから、しらほしがいないと困る」

 

「でも、」

「心配すんな。この僕を赤髪と同じだと思うなよ。暇ができたらちゃんと連絡するからよ。だから泣くな」

 

「........................うん。早く帰ってきてね」

 

「どうだろうな。まあ、1ヶ月くらいか?」

 

「遅い!」

 

「しらほしが頑張れば頑張るほど早くなる」

 

「しらほし....頑張ってくれるよね?ね!」

 

「は、はい!.....でも、もしかしてその間リオ様と2人っき」

「しらほし?」

 

「が、がんばります...」

 

「で、テメェは俺たちに子守りを押し付けてどこに行く予定なんだ?」

 

「とある魚人に....少し、野暮用がある。危険なことじゃねぇから安心してくれ」

 


 

置いてかれたくないウタ

 

 

【挿絵表示】

 

 

普段何かしらの理由をつけて布団に潜り込もうとするウタ

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

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