僕がキャプテン・ジョンの宝だ   作:Mr.♟️

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ココヤシ村

 

僅か1週間で偉大なる航路から東の海に移動できた。さすが人魚姫、海中での移動速度はしらほしがNO.1だろうな。

 

「──ありがとうよ、しらほし。お前は目立つし、とりあえず僕の中に入ってろ」

 

「はい!あ、でも、暗闇は嫌です...あの、前に入れてくださったお宝が沢山ある場所でお願いします。あと、外の光景も見せてください!」

 

「当たり前だろ。それに、光の届かない場所は──他の奴らで埋まってるしな」

 

僕が右手を広げると、ヌマが巨大なしらほしを優しく飲み込んでいく。

 

クソ親父の財宝が積み上がった宝物庫にしらほしを通し、視覚を共有させる。さて、野暮用の相手──アーロンの居場所を特定するか。

 

「君は、どうやってここに来たんだ?」

 

「あ?.......おっさん、風車似合ってねぇな」

 

「ほっとけ!!!」

 

「突っ込まない方が失礼じゃねぇの?まあ、別にいいけどよ」

 

なんだその帽子に風車をぶっ刺してる斬新なファッションは。まあ、変人ではあるが村人に会えてよかった。

 

「こ、言葉遣い....」

 

「あ?この僕の話し方に文句つけんのか、おっさん。それより、聞きたい事があんだけどよ」

 

僕のことを知らないのか。珍しいというか、危険意識が欠如してんじゃねぇか?いや、東の海だから仕方ねぇか。

 

「いや、話している場合じゃない。今すぐに、君が元いた場所に戻るんだ」

 

僕の方をガシッとつから強く掴んでそんなことを言いやがる。

 

いや、帰らねぇよ。ってかよ、この反応──僕をこの村から逃がそうとしてるよな?何かから逃がそうとしてるよな?

 

この島はアーロンが支配している。んでもって、このおっさんの反応──アーロンのやつ、海賊らしくクソみてぇなことしてるんじゃねぇの?

 

「もしかして、アーロン関連か?」

 

「!!知っているのなら、なぜこの島に来た!君を連れてきたのは誰だ...!」

 

「おいおい、落ち着けよおっさん。なあ、アーロンはこの島でどんなことをしてんだ?」

 

「......わかった。話す。話すから、聞いたら元いた場所に帰るんだ」

 

ありがとうよ、アーロン。もしお前が善人だったなら、僕はお前を何発か殴って帰らなくちゃいけなかった。でもよ、お前が悪人なら──容赦しなくていいよな?

 

この村の住民には悪ぃけど、お前がゴミみてぇな海賊でよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっさん。運が良かったな──この僕がアーロン一味をぶっ潰して、テメェらの大事なナミってガキも連れ戻してやるよ」

 

おっさんが必死に僕を止めようとしてる。

 

「奴らは子供だからと慈悲をかけるような性格をしていない!魚人の力は人間とは根本から違うんだ!死ぬぞ、小僧!」

 

「魚人、ねぇ」

 

『しらほし、聞こえたか?同族が随分と舐めた真似をしてるらしいぜ』

 

ヌマの中にいるしらほしのに呼びかける。数秒の沈黙の後、僕にだけ彼女の声が届いた。

 

『──リオ様。それが事実であれば、許すわけには参りません。私が同じ深海に住まう者としてケジメをつけます』

 

『僕の獲物を奪うつもりか?バーカ、お前は大人しくヌマの中から眺めておけ』

 

「な、なあ、小僧。いきなり独り言なんてどうしたんだ...?」

 

「なんでもねぇよ。で、趣味の悪いアーロンパークとか言うのは──あっちか」

 

「あ、おい待て小僧!行くな!本当に殺されるぞ!」

 


 

測量室で、私は海図にペンを走らせ続ける

 

私が頑張れば、私が我慢すれば、私が1億ベリー稼げば──全部うまくいく。これ以上ココヤシ村のみんなは死なない

 

裏切り者と罵られても、誰からも愛されなくてもいい

 

(....みんなが生きていてくれるなら、なんでもいい)

 

途端に外が騒がしくなった。なに、うるさい

 

『──侵入者だ!』

「同胞たちがやられている!」

『アーロンさんはどこにいるんだ!?』

「俺たちじゃ太刀打ちできねぇぞ!」

「クソ!野郎、悪魔の実の能力者だ!」

 

悲鳴、怒号、そして断末魔

 

誰?魚人を相手に戦ってる?

 

誰が?

 

村のみんなに魚人を倒す力なんてない。ここにくる海軍はいつもアーロンたちに海へ沈められる

 

(まさか、私たちを助けてくれる人が.....?)

 

私はペンを投げ捨て、測量室の扉を勢いよく開き、外へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....なに、これ」

 

信じられない光景が広がっていた

 

アーロンパークの門が跡形もなく粉砕されている。そして、いつも偉そうに私たちを支配していた魚人たちが、見渡す限りの『泥の海』に沈みかけていた

 

「──なあ、アーロンはまだか?ってか、お前らもっと足掻かないと完全に飲み込まれるぞ。ま、もがいても底なし沼から抜け出せやしねぇけどな」

 

ハチも、クロオビも、チュウも。一般魚人も幹部たちも、全員が一様に溺れないように必死に泥を掻いている。こんな光景、夢でも見ていたことがない

 

その中心で、一人の男の子がまるで玉座に座る王のように泥の椅子に腰掛けていた

 

「──あ?お前がナミとかいうガキか」

 

男の子が私に気づくと、泥の海が割れて、彼までの一直線の道ができた

 

「....こいよ」

 

「な、なんで、なんで私のこと知ってるの.....?」

 

「ゲンゾウとかいうおっさんに聞いた。思ってたより、ずっとガキだな」

 

私を見つめる瞳に、僅かな同情と温かさを感じた。昔、村のみんなが向けてくれていたような温かさを

 

「ガキ1人でこんな所に閉じ込められて、怖かっただろ?けど、もう安心していい。アーロン一味は今日で壊滅する」

 

「アー、ロンいちみが、壊滅.....ほん、とうに?」

 

上手く喋れない。目の前の奇跡が、夢のような現実が、私の頭を混乱させる。ベルメールさんが殺されてから1年。この悪夢の支配が、今日、終わる?

 

「なんでどいつもこいつも僕のことを知らねぇんだよ.....ああ、全員残らずぶちのめしてやる」

 

彼は私の隣に、もう一つの泥の椅子を作ってくれた

 

「座れよ。お前を今までこき使ってた魚人共が、地に伏す瞬間を特等席で見せてやる」

 

その言葉に、張り詰めていた糸が切れた

 

今まで積もり積もっていた、不安と、恐怖と、そしてそれ以上の希望が、涙となって溢れ出す。

 

 

 

止めることができない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──これは...どうなっているんだ!同胞たちよ!!!」

 

「おいおい、待ちわびたぜ?アーロンさんよ」

 

 

 

 

 

「テメェは───なんでこんな所にいやがる!?懸賞金40億ベリー!【不遜王】リオ!」

 

 


 

「40億ベリー!?」

 

頭が真っ白になった。私とそう変わらない年格好の男の子が、四皇並みの賞金首?

 

だから...この化け物じみた魚人たちを、ゴミのように扱えるんだ

 

「僕の隣でデケェ声を出すな。耳に響く。で、どうする?アーロンさんよ」

 

リオは退屈そうに指を弄んでいる

 

「.....どういうことだ。何が望みだ」

 

「テメェは村人から『生存料』とかいう端金を毟り取ってたらしいな。いいぜ。立場が逆転した今、次はテメェらが僕に生存料を払え。そしたら、こいつらを解放してやるよ」

 

「解放....!?そんなの、」

「静かにしてろ。これだからガキは」

 

冷たい視線に射抜かれ、言葉が詰まる....なによ、なによ!助けてくれるんじゃなかったの!?ゲンさんに頼まれて来たんじゃないの!?

 

私たちを救うんじゃなくて、ただの『新しい支配者』が来ただけなの......!?

 

「それとも、僕相手に戦うか?テメェらみたいに、最弱の海に引きこもって王様気取ってる雑魚が」

 

「....いくらだ。いくら払えば同胞を返す」

 

「魚人一匹につき、50億ベリーだ。払えねェなら今この場で順に処刑する。どうだ?テメェの大好きな『金がすべてのルール』に乗っ取って請求してやったぞ」

 

「ぐっ....!ふざけるな、そんな額──」

「口答えしたな。とりあえず三匹、処刑」

 

リオがパチンと指を鳴らす

 

瞬間、泥の中に首まで浸かっていた魚人のうち三人が、断末魔すら上げられずにズブズブとヌマの奥底に引きずり込まれた。

 

アーロンが、今まで私たちにしてきたことを、もっと残酷な形でやり返されてる

 

「で、払えんのか。払えたとして誰の命を買う?テメェの命か、それとも同胞か──もしくは、死ぬと分かってなお僕に立ち向かってくるか?」

 

アーロンが黙ってリオを睨みつけている。あの魚人至上主義で傲慢なアーロンが、自分より小さな男の子を前に、完全に気圧されて震えている

 

「目つきが気に食わねェな。追加で五匹処刑」

 

「や、やめてくれ!」

「アー....ロン、さん.......っ!」

「──待っ、」

 

アーロンの制止を鼻で笑い、リオはさらに五人を深淵へと沈めた

 

「.....頼む!やめてくれ!俺の同胞たちを.....!これ以上殺さないでくれ!!」

 

あのアーロンが、今まで私たちを地獄に突き落として笑っていた男が、地べたに膝を突き、少年に許しを乞うている

 

隣に座るリオは、口元に悪魔のような残忍な笑みを浮かべている

 

「なあ、アーロン。テメェは僕に何もしてねェのに狙われるなんて可哀想だな。理不尽だよな?だからチャンスをやってるんだ。誰を50億で助ける?早くしねェと、全員死ぬぞ」

 

一分、一秒ごとに、泥の海が魚人たちを飲み込んでいく。その光景に耐えかねたのか、アーロンはついに理性を失い、リオへと突撃を仕掛けた──!

 

「──テメェも僕の掌の上だって言っただろ」

 

アーロンが踏み出した二歩目は、永遠に訪れなかった。彼の下半身は、即座にヌマ化した地面へと沈んでいってしまい、強固な泥で固定されていたからだ

 

「重てェだろ。で、僕に逆らうってことは、同胞を見捨てて自分も死にたいってことだよな?」

 

幹部3名を残し、他の魚人はすべて泥の下へと消えていった。アーロンの悲痛な叫びが、虚しくパークに響く

 

(なによ.....なによ!自分だけが被害者みたいな顔して!あんた達が来なかったら、今もベルメールさんは生きてたのに....!)

 

「残すところ、テメェを含めて四人か。ああ、可哀想になァ、アーロン。もしオトヒメ王妃が僕にホーディの身柄を譲ってくれてりゃあ、テメェはこんな目に合わなかったのによ」

 

「人間....!!この下等種族がァ.....!!俺の仲間を、俺の仲間を返せッ!!返しやがれェッ!!」

 

「あ?次に殺してほしいのはどいつだ。口が長ェ奴か、タコか、それとも強面か」

 

「ま、待てっ!....買う、買えばいいんだろ.....ッ!!」

 

「お、払えんのか? 4匹で200億ベリーだぞ」

 

(待って....まさか、お金を受け取って、この化け物たちを解放するつもりなの....!?)

 

「──ああ、パークの地下金庫に210億ある。全部持っていけ!」

 

「そうかそうか。あ──悪いな、言い忘れてた。『子供』の魚人が一匹50億だったんだ。大人なら一匹500億。で、買うのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「────俺がテメェに何をしたッ!!会ったこともねェ、恨まれる覚えもねェ!!なんでわざわざ、偉大なる航路からこの最弱の海に、俺たちを殺しに来やがった!!」

 

リオは初めて笑みを消し、酷く冷徹な声で告げた

 

「魚人島のゴタゴタのせいで、僕の歌姫が傷ついた。肩口を弾丸が掠めたんだよ.....んで、その実行犯の『憧れ』がテメェだったわけだ。犯人は王妃の顔を立てて譲らざるを得なかった。だから、代わりにテメェを殺しに来た」

 

 

 

「.....んだよ、それ。テメェの仲間の下らねぇかすり傷のせいで、俺たちが」

「バーカ。テメェの命より重いに決まってんだろ」

 

「クズでいてくれてありがとうよ、アーロン。おかげで心置きなくゴミ掃除ができる。もう、充分苦しんだだろ?」

 

「僕も怒りをぶつけられて満足した......だからさ、さよならの時間だ」

 

幹部連中とアーロンが、ズブズブと音を立てて泥に沈んでいく。アーロンは必死に仲間の方向へ手を伸ばすが、その指先は届かない。一人、また一人と、深淵に消えていく

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ......のッ! 下......等種、族がァァァァァッッッ!!!」

『魚人空手──槍波!!』

 

──その瞬間だった。

怒濤の勢いで放たれた水の槍が、私の隣に座っていたリオを捉え、その身体を遥か後方へと吹き飛ばした──

 

 

「.......え?」

 

40億の賞金首が、リオが何も出来ず防宙を舞う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わしの仲間に何をしておる!不遜王リオ!」

 

ヌマが地面に戻り、その地面をアーロンパークのプールから上がったジンベエザメの魚人が足を踏み入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......今のは、痛かった。クソ痛かった」

 

吹き飛ばされた瓦礫の中から、リオがゆっくりと立ち上がる。その表情からは余裕が消え、剥き出しの戦意が立ち昇っていた。

 

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