コロガルサイクル 作:テンプレ戦士
魔力が無い。
それを世間では『魔無し』というんだって。
『魔無し』であるということは、良くない。
何で? って理由を私には言えないけど。
一番はやっぱり、他と違う、ってことみたい。
もしも私が、たくさんの同年代と一緒に暮らす環境にいたら、どうなっていたのか。
「(ま──考えても仕方ないからどうでもいいんだけどね)」
実際には行ってないんだから、なんの意味もない考え。
なのにどうして考えてるのかって? やかましいわ。
「カーディフのアンティ・クルルン、前へ」
単純な話、多くの人が持っているものを持ってない、ということ。
そういうことはきっと他にもあることだし。
魔法が使えないっていう、それは、ある意味で劣っているっていうことだから嫌なのは間違いない、だけど。
そんなのでも
これからだよこれから、人生を嘆くような歳じゃないもの。
……大体にして、魔力が無いからって何か困ることってあったっけ?
考えてみたらそんなになかったような。
沈んだ人生どころか、同年代より元気だよ私、周りから心配されるのもなんか嫌だったから。
良いことじゃん、塞ぎこんで根暗になるよりはまともだよ、立派だよ。
それに、私の生きるこの世界、何も都合の悪いことばっかりじゃあない。
救済措置、それかセーフティ、要するに私にはまだ可能性が……『能力おろしの日』に魔力を授かるという最低保証付きの可能性がある。
傍から見れば、強くなる才能が無いと言っても過言じゃない、『魔無し』の私であっても、他所の家の子たちと同じような『力』を手に入れられる、かも。
たとえ弱くても、何も手に入らないってことはない、らしい。
顔も見たことないけど、神様っていうのは案外融通が利くお人なのかもしれないって、そう思いながら隣町の教会までやってきた。
そして、私ことアンティは、今こうして厳めしい顔つきのおじさん神官の姿を前に、不思議な光を放つ魔法陣の中に立っている。
「ではこれより、『能力おろし』を始める……」
シュワワワワワ……
ピカー
──カッ
うわまぶしい。
「終わったな」
「ほー……」
ちょっと目を開けるの早かったが、終わったみたいだ。
これで私もようやく『魔無し』でなくなって……
「結果を確認させてもらう、『
「これは…………ふぅむ、なんという……」
「どうしたもの……前例が……」
……能力おろしが終わったーと思って一息ついてたら。
神官のおじさんの顔がいかめしいていうか、凄いことになっていました。
なになに、私なにかしちゃったの? もしかしてすごすぎて規格外な属性きちゃった?
うん、はい、身の程知らずですねはい。
でも確定するまでは期待することが許されるハズだ!
神官おじさんが再起動するまで待っていると──不意に口を開いて。
「(なんかすっごい強くて格好イイやつでどうか……いや強欲ですね分かります、お願いどうかまともなやつを何卒……お願いー!!!)」
「汝のスキルは……転輪法」
「転……りん?」
「転輪法」
「……なんです、それ」
「……大変申し訳ないが、知る限り前例が無い、故に説明もできん」
「身体の内に力を感じられるか? その力を外側へ送り出すように、念じるのだ」
「えっと……」
──何だか、様子がおかしいような。
──大丈夫か私。
不安で心がキュッとなりそう。
いやまだだ、まだ終わったと決まったわけじゃ……。
でも『てんりんほう』……て。
「(転輪法……転、輪、法?)
「(転がる、輪の、なんか……属性って、そういうのじゃなくない? 光とか、水とかさぁ……)」
なんだそりゃってなる。
なんだそれって今なっている。
頭の天辺からがらがら崩れ始める……私の未来に対する展望、自信が。
魔力なんかなくても困らないとか言ってたせい? 口に出さなくても思ってたらダメだったっていうの。
前言撤回、ちくせう何が都合が良いチャンスだよお馬鹿さん……!
「どうだ?」
「くぉあー!?! あ……そ、あ、こ、こう、です?」
なんかしどろもどろになってしまったよ。
もう嫌になってきた。
でもこのままべそかいてどうなるって、思ったから、言われたとおりにやってみたよ。
確かに感じた、力……内側にこれまでなかったものが確かにあるようだ。
それを表に引っ張って、開くようにして――来い。
パァアアア
「お――」
出てきたのは──
つるりとした質感と、軽い手ごたえ。
「おお……!?」
現れたもの、輪っか。
が……一つだけ。
「……」「……」
輪っか……。
ははぁ、確かにこれは、そのまま通りの。
『転』がせそうな『輪』っかを出す、法……法? その部分の由来、どこですか。
っていうか──
な ん で す か こ れ は。
「輪……あ、あぁ」
輪っかだこれ。
木目みたいな模様があって綺麗──だけど輪っかだこれ!
軽くて手になじむぅ、すごい! ──でも、どうして輪っかァ!?!!
それならせめて剣とか盾とか、そういう格好良いのならともかく輪っか!?
どうなってんだい神様、アンタのお考えが
「……うむ……うむ」
うわ、神官の人、いたたまれない顔っ。
知ってるよその顔、私知ってるもん自分も前にそうだったから、わかっちゃうよ。
だからこそ余計に嫌だった、神官ならもう少し慈悲とか貫禄見せてよ、天におわす神様も泣いちゃうよよよよ。
あー恥ずかしい。
なんかすっごい嫌だ、消えたい。
「……」
「……あ、ありがとございま、したー……」
ギィー……
バタン
――逃げるようにその場を後にした
──こうして、私の人生に与えられたチャンスは終わってしまいましたとさ
とぼとぼ家に帰って報告したら、おばさんはいつも通りの調子で仕事するよう促してきた。
はー無慈悲、ひどい、仕事しないと。
「カンパーイ!!」
「ダーッハッハうめーぞこの卵焼き!」
人生で一、二を争うくらい気分が沈んだけど、帰ってみればいつも通りで。
ちょっと外に目をやればお日様は輝いていた。
腹立たしいくらいに、世界はいつも通りだった。