コロガルサイクル   作:テンプレ戦士

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第1話

 

 

 魔力が無い。

 それを世間では『魔無し』というんだって。

 

 

 

『魔無し』であるということは、良くない。

 何で? って理由を私には言えないけど。

 一番はやっぱり、他と違う、ってことみたい。

 もしも私が、たくさんの同年代と一緒に暮らす環境にいたら、どうなっていたのか。

 

 

 

「(ま──考えても仕方ないからどうでもいいんだけどね)」

 

 

 

 

 実際には行ってないんだから、なんの意味もない考え。

 

 なのにどうして考えてるのかって? やかましいわ。

 

 

 

 

 

「カーディフのアンティ・クルルン、前へ」

 

 

 

 

 単純な話、多くの人が持っているものを持ってない、ということ。

 そういうことはきっと他にもあることだし。

 魔法が使えないっていう、それは、ある意味で劣っているっていうことだから嫌なのは間違いない、だけど。

 

 

 そんなのでも15歳(この年)まではやってきたんだから。

 

 これからだよこれから、人生を嘆くような歳じゃないもの。

 

 

 

 ……大体にして、魔力が無いからって何か困ることってあったっけ? 

 考えてみたらそんなになかったような。

 沈んだ人生どころか、同年代より元気だよ私、周りから心配されるのもなんか嫌だったから。

 良いことじゃん、塞ぎこんで根暗になるよりはまともだよ、立派だよ。

 

 

 

 それに、私の生きるこの世界、何も都合の悪いことばっかりじゃあない。

 

 

 救済措置、それかセーフティ、要するに私にはまだ可能性が……『能力おろしの日』に魔力を授かるという最低保証付きの可能性がある。

 傍から見れば、強くなる才能が無いと言っても過言じゃない、『魔無し』の私であっても、他所の家の子たちと同じような『力』を手に入れられる、かも。

 たとえ弱くても、何も手に入らないってことはない、らしい。

 

 顔も見たことないけど、神様っていうのは案外融通が利くお人なのかもしれないって、そう思いながら隣町の教会までやってきた。

 

 そして、私ことアンティは、今こうして厳めしい顔つきのおじさん神官の姿を前に、不思議な光を放つ魔法陣の中に立っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれより、『能力おろし』を始める……」

 

 

 

 

 

 

 

 シュワワワワワ……

 

 

 ピカー

 

 

 

 

 

 

 

 ──カッ

 

 

 

 

 

 

 

 うわまぶしい。

 

 

 

 

 

「終わったな」

 

「ほー……」

 

 

 

 ちょっと目を開けるの早かったが、終わったみたいだ。

 

 これで私もようやく『魔無し』でなくなって……

 

 

 

 

「結果を確認させてもらう、『鑑定魔法(■■■■)』…………むぅ」

 

「これは…………ふぅむ、なんという……」

 

「どうしたもの……前例が……」

 

 

 

 

 

 

 

 ……能力おろしが終わったーと思って一息ついてたら。

 神官のおじさんの顔がいかめしいていうか、凄いことになっていました。

 

 なになに、私なにかしちゃったの? もしかしてすごすぎて規格外な属性きちゃった? 

 

 

 

 うん、はい、身の程知らずですねはい。

 でも確定するまでは期待することが許されるハズだ! 

 

 神官おじさんが再起動するまで待っていると──不意に口を開いて。

 

 

「(なんかすっごい強くて格好イイやつでどうか……いや強欲ですね分かります、お願いどうかまともなやつを何卒……お願いー!!!)」

 

 

 

 

 

「汝のスキルは……転輪法」

「転……りん?」

 

「転輪法」

「……なんです、それ」

 

 

 

 

「……大変申し訳ないが、知る限り前例が無い、故に説明もできん」

 

「身体の内に力を感じられるか? その力を外側へ送り出すように、念じるのだ」

「えっと……」

 

 

 

 

 

 

 ──何だか、様子がおかしいような。

 

 ──大丈夫か私。

 

 

 

 不安で心がキュッとなりそう。

 

 いやまだだ、まだ終わったと決まったわけじゃ……。

 

 でも『てんりんほう』……て。

 

 

 

「(転輪法……転、輪、法?)

 

「(転がる、輪の、なんか……属性って、そういうのじゃなくない? 光とか、水とかさぁ……)」

 

 

 

 なんだそりゃってなる。

 

 

 なんだそれって今なっている。

 

 

 頭の天辺からがらがら崩れ始める……私の未来に対する展望、自信が。

 

 

 魔力なんかなくても困らないとか言ってたせい? 口に出さなくても思ってたらダメだったっていうの。

 

 前言撤回、ちくせう何が都合が良いチャンスだよお馬鹿さん……! 

 

 

 

 

 

「どうだ?」

 

「くぉあー!?! あ……そ、あ、こ、こう、です?」

 

 

 

 なんかしどろもどろになってしまったよ。

 

 もう嫌になってきた。

 でもこのままべそかいてどうなるって、思ったから、言われたとおりにやってみたよ。

 確かに感じた、力……内側にこれまでなかったものが確かにあるようだ。

 それを表に引っ張って、開くようにして――来い。

 

 

 

 

   パァアアア

 

 

 

 

「お――」

 

 

 

 

 出てきたのは──

 

 つるりとした質感と、軽い手ごたえ。

 

 

 

 

「おお……!?」

 

 

 

 

 

 

 現れたもの、輪っか。 

 

 が……一つだけ。

 

 

 

 

 

 

「……」「……」

 

 

 

 

 

 

 輪っか……。

 

 ははぁ、確かにこれは、そのまま通りの。

『転』がせそうな『輪』っかを出す、法……法? その部分の由来、どこですか。

 

 

 

 っていうか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 な ん で す か こ れ は。

 

 

 

 

 

 

「輪……あ、あぁ」

 

 

 

 輪っかだこれ。

 

 木目みたいな模様があって綺麗──だけど輪っかだこれ! 

 

 軽くて手になじむぅ、すごい! ──でも、どうして輪っかァ!?!! 

 

 それならせめて剣とか盾とか、そういう格好良いのならともかく輪っか!? 

 どうなってんだい神様、アンタのお考えが理解(わか)んねーっよ!! 

 

 

 

 

「……うむ……うむ」

 

 

 

 うわ、神官の人、いたたまれない顔っ。

 

 知ってるよその顔、私知ってるもん自分も前にそうだったから、わかっちゃうよ。

 

 だからこそ余計に嫌だった、神官ならもう少し慈悲とか貫禄見せてよ、天におわす神様も泣いちゃうよよよよ。

 

 

 

 

 

 あー恥ずかしい。

 

 なんかすっごい嫌だ、消えたい。

 

 

 

 

 

「……」

 

「……あ、ありがとございま、したー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギィー……

 

 

 

 バタン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――逃げるようにその場を後にした

 

 

 ──こうして、私の人生に与えられたチャンスは終わってしまいましたとさ

 

 

 

 

 とぼとぼ家に帰って報告したら、おばさんはいつも通りの調子で仕事するよう促してきた。

 はー無慈悲、ひどい、仕事しないと。

 

 

 

 

 

 

 

「カンパーイ!!」

 

「ダーッハッハうめーぞこの卵焼き!」

 

 

 

 

 

 人生で一、二を争うくらい気分が沈んだけど、帰ってみればいつも通りで。

 

 

 ちょっと外に目をやればお日様は輝いていた。

 腹立たしいくらいに、世界はいつも通りだった。

 

 

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