コロガルサイクル 作:テンプレ戦士
「……」
「さむい」
まだ窓の外から月が見える。
このくらいの時間で普段ならそんな事は無いのに、眠れない。
理由は、よくわからないが……。
「さむい……さむっ」
なんか寒い。
窓は閉まっているのに、肌に風が這い回っているようで。
布団を被って耐えようとしても、ダメで、目が覚めてしまった。
寒さが辛い、尋常ではない、これは……。
(なんだこれ)
(くうあああ、風邪か? まさか)
(なんでこんなに急に……雨に打たれたわけでもないのに)
(いやそうとは限らないか)
(ちょっと今日の夜がたまたま寒いだけかも、そういうことはあるしね)
「どうもー」
いや、やっぱり風邪かもしれない。
いるはずのない人影がある。
姿もおかしい……チラ見して見えた姿は"黒塗り"だ。
まるで、絵の具が人の形と動きを取っているかのような。
「うっげ……ダメかも、幻覚まで見える」
「ここにいますよ?」
「……幻聴」
「現実逃避するのは構いませんがー……」
「ほら起きて起きて」パシパシ
「ぐわっ何すんの」「起きてー起きてくださいー」
ペチペチペチ
バシバシ ゴッ
コンコンコンコン コンコンッ
コンコン
「いで、あた、叩くな起きてるって、ちょ──おいこら叩くな頭を! 馬鹿になっ!!」
「ちゃんと現実を認知してください~」
「ええい見えてる! ────見えてる!!! っつってんだろうが!?!?!!!」
ドダダ
ドンッ
「というわけで、話ができそうですね」
「何だお前ぇ……?」
「おはようございます」
肩で息をする
ずい、と身を乗り出して。
真っ黒な人の影が、私にお辞儀をしている。
「……え、何?」
キョトンとしてしまう。
ていうかアレだよ、なんか居るよ。
なんか、いる。
黒いのがいる。
「(やばい)」
「(どうして)」
「(不審者? どうしよう、やばいやばいよ)」
「(いや……でも、なんか、怖くはないな……)」
「(でも、だったらなおさらどうする?)」
どうすればいいのか分からなくなる。
それに、肌の寒さが増していくように感じられて、考えがまとまらなくて仕方ない。
「(夢のはず……現実? でも、いやぁ? 夢でしょ)」
「こ、こんばんは」
「おはようと言ったのに──」
「え?」
「こんばんは、なんて、礼儀がなってないのでは?」
「あ”?」
「謝罪を要求します、挨拶をやり直して、ほら、"おはよう"、ですよ。さぁどうぞ」
「何言ってんだお前ぇ!?」
理 不 尽。
つーか何でまだ暗いのにおはようなんだよ、何が礼儀だよそんなマナーあるかよ。
ふざけんな、と言いたかったが……。
今はそれどころではない、ので、ぐっと堪えて。
せめて夜が明けてから来いよ、何で部屋の中に入ってるんだよこの不審者──とか、言いたい事がいっぱいになって爆発しそうになっていたが。
それをどうにか留めて、私は口を開くのだ。
「……帰ってくれませんか?」
こみ上げる怒りを冷やしながら促すと、黒い影は首(と思われる部位)を横に振った。
今更だがどうして全身が黒いのかは分からない。
暗さのせいかとも思ったが、月明かりに照らされているのを見るとそれそのものが黒色のようだ。
「いやぁそういう訳にもいかなくて……今日はお願いがあってきたんですよぉ」
「お願いって何よ」
「この街、カーディフについてなんですが」
「はぁ」
「暫く後に大変なことが起きるので」
「あ?」
「それを防いでほしいんですよ」
「…………あのさ」
頭痛がしてきたのは、やはり病気か。
……いやそうではないだろう多分目の前のこいつのせいだ。
「誰が?」
「あなた」
「何を、どうしろって?」
「街にこれから起こる悪い事を、あなたが防いでください」
「どうやって」
「それは"今は"まだ秘密です」
「いかがですか?」
「帰れ!」
「そうですか……」
黒い影は一度振り返って離れる──が、すぐに振り向いて言う。
「説明聞いたら心変わりしたりとか、ない?」
「帰れつってんのよっ」
「あまりにも厳しい……」
「じゃあ帰ります、また来ますね~」
「……そっちは壁」
「お構いなくー、来た道を帰るだけなので」
黒い影は消えた。
私の寒気はいつの間にか消えていた。
「……」
「明日の仕事休めるかなぁ……」
静かになった部屋の中で、再び眠った。
よく分からない夢だった……