初めまして、の人は初めまして。
書いてみたいネタがあったので、短編ということで投稿させていただきました。
ただ、あらすじにもあるよう、主人公は二人組です。なので、二人分の決闘を書いたせいもあり、とにかくクソ長いです。
そして、二人が使うのは、作者が独自に考えた、完全創作物のオリカなので、苦手な人はご注意下さい。
と、あらすじと重ねて注意点を上げさせていただいたところで、読んでくれる人、よろしくお願いします。
んじゃそんなところで、行ってらっしゃい。
※2015/5/20
長過ぎたので二本に分割しました。
「ペペロンチ~ノ!!」
「ガッチャ! 楽しい
屈辱にまみれた悲鳴を、男は上げていた。
はつらつとした歓喜の声を、少年は上げていた。
そんな、対照的な声を出している二人の人物に、海馬ドームに集まる、『決闘アカデミア』の受験生達、また、決闘アカデミアに通う生徒達は、一様に目を、心を奪われた。
決闘を学び、未来のプロ決闘者を育成するための学び舎、決闘アカデミア。
そして、たった今、その実技試験において戦った少年。その受験番号は、110番。
現在行われている実技試験において、事前に行われた筆記試験での成績は、そのまま受験番号となる。つまり、受験番号が大きいということは、それだけ筆記の成績が振るわなかったことの証となる。番号が三桁以下にもなれば、その者は、傍目から見ても、劣等生であるということの証明となる。
そんな、誰もが劣等生と断じる、受験番号110番の、実技試験の相手が、決闘アカデミアにおける、実技担当最高責任者たる教師、『クロノス・デ・メディチ』。しかも、使用したデッキは試験用のそれではなく、自身の愛用する最強のデッキ。
そして、それを破った少年、遊城十代の姿は、ここにいる者達にとって、変わらぬ衝撃となった。
「まさか、クロノス先生が、110番の落ちこぼれに敗けるとは……」
クロノスの実力を知る、二人の少年に挟まれながらふんぞり返る、青い制服の少年が、言った。
「遊城十代、面白い奴……」
同じく青の制服を着た、長身の少年の隣に立つ、金髪の少女が、言った。
それぞれが、それぞれの思いを口に出し、目の前で起きた現実を直視する。
信じ難くとも、受け入れ難くとも、起きてしまった現実と言うものは、認める以外にできることはない。たとえそれが、醜く、悲惨で、残酷極まりない光景であろうとも、過ぎた時間は元に戻すことはできず、ゆえに、その時間をやり直すことなど、できはしない。
元に戻ることもできず、やり直すこともできない人間にとって、できることは、進むこと。それだけしかない。認め、受け入れ、目の前の現実を、過ぎてしまった現実を、自身にとっての現実として受け入れ、止まることなく進む時間の中を、自らの足で進んでいく他ない。
たとえそれが、どれだけの後悔と、どれだけの辛苦と、どれだけの醜悪にまみれ、存在することすら苦痛に感じる、或いは苦痛にすら縋りたくなる、地獄にも思える世界であろうと、地獄という名の現実の中を生き抜くことこそが、生まれた瞬間から、あらゆる人間、あらゆる生物達に課せられた、共通の責務なのだから。
例え、逃げ出したいと思っても、逃げ場などどこにあるはずもなく、進む以外の道など、どこにも無いのだから。
これはそんな、過酷に極まる現実の中に身をやつしながらも、立ち止まることはせず、助けを求めることもせず、傷だらけになりながら、ボロボロになりながら、それでも、ただお互いという希望だけを頼りに、未来を信じ、歩き続けた、ある、一組の男女の秘録……
「あのぉ、クロノス教諭……」
受験番号110番。そんな、落ちこぼれと呼ばれた受験生に、自身のデッキを使用して敗北した、アカデミア実技担当最高責任者、『クロノス・デ・メディチ』。彼に呼び掛けたのは、試験管の一人である、黒いスーツと、黒いサングラスの男だった。
エリート意識の塊ゆえ、落ちこぼれに対して嫌悪感を懐くクロノスにとっては、此度の敗北は、屈辱と恥辱、その他諸々の負の感情を促す、一生の不覚に他ならない。
そんな不覚にまみれたクロノスの心情を僅かながら理解する試験管だが、それでも仕事としての義務感から、ここで声を掛け、必要事項を報告する以外に無かった。
「何なのーネ?」
今にも憤慨しそうなほどに不機嫌な様子だが、それでも義務感ゆえ、その事柄を伝える。
「実は、今の受験番号110番の他に、同じく電車の事故で遅刻した受験生が二人おりまして……」
「まーた遅刻者なのーネ!?」
たった今、その遅刻者に敗北したクロノスにとっては、忌々しいことこの上ない事実。そんなクロノスの大声に試験管も怯みを見せるが、それでも言葉を続ける。
「は、はい……一応、110番とは違って事前に電話連絡を受けていますし、遅延届も受け取っていますので、ここで受けないわけには……」
「ぬぅ……」
クロノスとしては、このまま追い返して、不合格の烙印を押してしまいたい気分でもある。実際、遊城十代にもそうしようとしたが、それを、決闘アカデミアの校長からの指示、もとい監視により、渋々試験を受諾したのである。
今回も、それを理由に断っては、またあの髭づらの禿げ頭は黙っていないだろう。
忌々しいと思いながらも、クロノスには、その二人を受け入れる以外の選択肢は無い。
「……仕方がないのーネ。それで、受験番号は何番なのーネ?」
110番以下ということはさすがに無いと思いたいが、それでも決闘での屈辱から、確認を取ることにした。
「えっと……」
試験管は手元の資料に目を通し、それを確認する。
「受験番号……2番と3番です」
「……ニョホ?」
その数字を聞いた瞬間、クロノスの顔色が変わった。
「その番号、成績優秀者ではありませンーか! それを早く言うのーネ!」
そう言えば、受験番号1番、『三沢大地』が呼ばれる以前、アナウンスしたのに出てこなかったな。そんなことを思い出しながら、クロノスは叫んだ。
「す、すみません。ただ……」
「ただ?」
試験管が最後に付け加えた言葉に、クロノスは再び眉をひそめる。
「その……受験番号3番はともかく、受験番号2番の生徒は、少し特殊らしくて……」
「構わないのーネ! 多少個性的な方が生徒としては可愛げがあるのーネ! 早く試験会場に通すのーネ!」
複雑な表情を見せ、確認を取る試験管だったが、受験番号2番と3番の成績優秀者、その事実だけが、クロノスにとっては興味の対象だった。
「は、はい……」
「それと……」
と、試験を再び受諾した所で、クロノスはもう一つ、言葉を続ける。
「遅刻したペナルティということで、その二人の相手も、私が行いまーす。もちろん、使用するのは私のデッキでスーノ」
「えぇ? またですか?」
「そうなのーネ。電車の事故とは言え遅刻をしたのだカーラ、その程度の覚悟は必要なのーネ」
「はぁ……」
と、今度こそ、試験管の男は去っていった。
もっとも、もっともらしいことを言いながら、
(受験番号110番に敗北した汚名を、何としても返上しなければなりませんーノ)
というのが、クロノスの本音だったりする。
『ただ今より、遅刻者である、受験番号2番、受験番号3番の実技試験を行います。まず、受験番号3番は、決闘場へ』
そのアナウンスにより、遊城十代の決闘が終えたことで、半ば全ての終了を感じていた生徒達に、再び意識が宿った。
「何だ、また遅刻者か……」
「けど、今度は受験番号2番と3番ですよ」
「見ておいて損はないですよ、きっと……」
「なるほど。俺の前にいるはずの二人がいないと思っていたら、遅刻していたわけか」
「同じ遅刻者なのに、成績はえらく違うね……」
「2番と3番か。てことは、俺がいるから3番と4番だな」
新たな受験生の登場に、再びそのような、様々な声を会場の生徒達に与える。
そんな、興味、関心、無関心、疑問、多くの感情に包まれた会場の中心から、
「出てきた!」
声の只中にいる人物は、決闘場に姿を現した。
「……え?」
「あれは?」
「え?」
「はぁ?」
「おいおい?」
「ニョ?」
「……」
「……」
二人組が歩いている。ただそれだけで、ほとんどの生徒達の声に、直前とはまた違った疑問が、同時に、好奇の感情が宿った。
一人は、藍色の学生服を着た長身の少年。一見細身だが、よく見れば、必要な部分に必要なだけの筋肉が付いていることが分かる。そんな長身から伸びる長い足は、その細身をスラリと映えて見せている。
そんな長身にポツンと乗せられた、小さな頭からは、赤い髪をサラリと伸ばし、一歩ずつ歩く度、ゆらりゆらりと揺らしている。
そんな髪の下に見える、切れ長な瞳から向けられる強い眼差しは、その少年の持つ、確かな強さを示しているように見えた。
もう一人は、背中や、胸に届く長さまで伸ばした黒髪の少女。肌は白過ぎるほど白く、病的な印象すらこちらに与える。なのに、大きく開かれた目から覗く、丸い大きな瞳からは、優しげで、暖かな思いやりを感じさせてくれる。
儚さと、母性。種類の違う印象を絶妙に併せ持つ。そんな、可憐な少女だった。
男子とは違い制服ではなく、ゆったりとした青色のワンピースを身に着けていた。
これだけ聞けば、ただの美男美女の二人組で済んだ。会場の客席に座る生徒達の視線も、そんな二人の容姿に惹かれてのものだと、割り切ることができただろう。
だが、それでは済まず、割り切ることはできなかった。
カタ、カタ、カタ、カタ……
二人は、そんな音を立てながら、中央の決闘場まで歩いてきた。
カタ、カタ、カタ、カタ……
二人が前へ進むたび、規則的にその音は会場に響いていく。
いや、この場合、前へ進んでいるのは、一人、と、敢えて表するべきかもしれない。
なぜなら、そんな音を鳴らしながら、自分の足で進んでいるのは、一人。そして、その音と共に進まざるを得ないのもまた、一人。
カタ、カタ、カタ、カタ……
そんな音を鳴らしながら、車椅子を押し進む少年一人と、そんな音と共に、前へ進めてもらう少女一人。そんな二人の、主に車椅子に、会場全体の注目が集まっていた。
決闘場の前まで歩いてきたところで、少年は、車椅子の少女の耳元に、自身の口を近づけた。
「じゃあ、行ってくる」
「……今日は、どっちを使うの?」
「……今は昼だからな」
「そっか……」
「すぐ戻る」
「うん。頑張って……」
少年は、少女に優しく語り掛けた後で、決闘場へ歩き、クロノスと向かい合った。
「受験番号3番、『
「はぁ……いえいえ、どういたしまして、なのーネ……」
挨拶を返しながら、少年を見据える。
「あの人が、受験番号3番……」
「やだ、イケメンだわ……」
照と名乗った少年を見ながら、女子の誰かが、そんな声を出した。
一言で言えば、クール、という言葉の似合う少年だった。逞しい長身と、整った綺麗な顔。そんな綺麗な顔の、力強い瞳から放たれる眼差しは、彼の持つ物静かな雰囲気を引き立て、無言という状態こそを、最高の姿に見せている。
そんな、とてもこの会場に集まる生徒達と、同じ年齢とは思えないほどの美貌を、彼は備えていた。
だが今、クロノスの関心を引いているのは、そんな彼ではなく、彼が共に連れてきた、後ろに座る車椅子の少女の存在だった。
「えっと……あの人は、誰なのーネ……?」
「……何か問題でも?」
「ニョ……!」
質問したのはこちらなのに、新たな質問で返される。それは本来、咎めるべきことだろう。
部外者の立ち入り自体は、筆記試験ならともかく、実技試験においては特に禁じているわけではない。とは言え、決闘の観戦をあんな場所で行うことは、禁止こそしていないものの、推奨もするべきではない。
まして、相手は見るからに病人。観戦するならこんなに間近で見るよりも、観客席の方が観戦し易いだろうに。
ただ、それでも、
「い、いいえ、問題無いのーネ……」
その、少年の静かな声と、細められた目から向けられた鋭い視線による、威圧的な雰囲気に、クロノスは呑まれてしまい、それ以上、指摘することができなくなってしまった。
(ヌヌヌ……これではいけませんーノ。教師としての威厳をもっと示すべきなのーネ……)
弱気になってしまっていた自らにそう言い聞かせ、身を奮い立たせる。言葉でそれを示せない以上、決闘でそれを示すしかないと。
そして、少年が決闘ディスクを構えたのを確認し、クロノスもまた、構えた。
「それでは、始めるのーネ!」
「お願いします」
『決闘!』
そして、二人の決闘が始まった。
照
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
クロノス
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
「先行はあなたのようデース」
「……俺のターン、カードドロー」
照
手札:5→6
先にカードを引いたのは、小鳥遊照。今引いたカードを含む、手札のカードを確認し、次に打つべき手を思案する。
そして、打つべき手を決め、そのためのカードに手を伸ばした。
「『サンシャイン・バース』を守備表示で召喚します」
『サンシャイン・バース』
レベル4
守備力2400
現れたのは、白い鎧を纏った小さな少年。その小さな両手で、白色に輝く太陽を模した、巨大な盾を構えていた。
「カードを二枚伏せます。これでターンを終了」
照
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
『サンシャイン・バース』守備力2400
魔法・罠
セット
セット
「守備力2400のモンスターに伏せカード。中々厄介なのーネ……」
と、クロノスは目の前の硬い壁を見ながら言いつつ、
(なんて、この手札なら、簡単に倒せますーノ……)
と、心で薄ら笑いを浮かべながら、デッキに手を伸ばした。
「私のターン、ドローニョ!」
クロノス
手札:5→6
「まずはカードを二枚セット。そして、魔法カード『大嵐』を発動!」
「これ、俺の決闘の時と同じ……!」
先程クロノスと決闘をした少年、遊城十代が驚く中で、フィールドには既に、『大嵐』の効果が適用されていた。
「フィールド上の全ての魔法・罠カードを破壊するのーネ」
「……」
その説明の通り、照の場の二枚の伏せカード、同時に、クロノスの場の二枚の伏せカードが、大嵐によって吹き飛び、破壊された。
「この瞬間、フィールドに伏せた二枚の罠カード『黄金の邪神像』の効果。セットされたこのカードが破壊された時、自分フィールドに『邪神トークン』を特殊召喚するのーネ。破壊された邪神像は二枚。よって、二体の『邪神トークン』を特殊召喚するのーネ」
『邪神トークン』
レベル4
守備力1000
『邪神トークン』
レベル4
守備力1000
「この二体を生贄に、現れよ! 『
二体の邪神像が光となった瞬間、現れたのは、正しく機械の巨人だった。
所々が錆びれ、色褪せながら、古い歴史を感じさせ、それでも力強く起動する、巨人。それが、二本の足でフィールドに立ち、目の前の小さな太陽を見据えた。
『古代の機械巨人』
レベル8
攻撃力3000
「ニョホホホ! 『古代の機械巨人』が攻撃する時、相手は魔法・罠カードを発動できませんーノ。また、『古代の機械巨人』が守備モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれーば、相手プレイヤーに貫通ダメージを与えるのーネ」
「……」
説明しながらも、照の表情に変化は無い。ただ、目の前に佇む巨人に対し、現れた時と変わらず、無言で見つめるだけだった。
「それでは、バトルなのーネ! 『古代の機械巨人』で、『サンシャイン・バース』を攻撃なのーネ! アルティメット・パウンド!」
向かってくる巨人の拳。攻撃力3000の前に、いかに固くとも、防ぐには600ポイント足りない守備力2400。そのモンスターへ攻撃が届いたことで、守備モンスターは破壊される。
破壊される……はずだった。
「手札より、モンスター効果発動」
「ニョ?」
クロノスが疑問の声を出しながらも、少年は平然と、手札のカードを前に出す。
「『牙城のガーディアン』の効果。自分フィールドの守備モンスターが攻撃された時、手札のこのカードを墓地へ送ることで、そのモンスターの守備力を、エンドフェイズまで1500ポイントアップさせます」
照
手札:3→2
「なぬぅー!?」
クロノスが驚く間もなく、墓地へ送られた『牙城のガーディアン』は、小さな太陽の戦士の前に立ち、背中に背負う城壁で、その拳を受け止めて見せた。
『サンシャイン・バース』
守備力2400+1500
「ぐぅ……!」
クロノス
LP:4000→3100
「すげえ! あのモンスターの攻撃を耐えやがった!」
「やるぜあいつ!」
「ほぉ。伏せカードを破壊されながら、あんな防衛手段を握っていたのか」
「中々侮れないわね」
「ぬぅ……」
攻撃を防がれ、挙句ライフまで削られてしまったことで、クロノスは怯んだものの、それでも次の手を打った。
「私は二枚のカードを伏せ、ターンエンドなのーネ!」
「そしてこのエンドフェイズ、『サンシャイン・バース』の守備力は元に戻ります」
クロノス
LP:3100
手札:0枚
場 :モンスター
『古代の機械巨人』攻撃力3000
魔法・罠
セット
セット
照
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
『サンシャイン・バース』守備力2400
魔法・罠
無し
「俺のターン」
照
手札:2→3
そして回ってきた、照のターン。照がカードを引いた、その瞬間だった。
「な、何なのーネ!?」
「何だ!?」
「あれは!」
変化が起きているのは、彼の場の『サンシャイン・バース』のカードだった。眩しいまでの光に包まれ、輝きを放っていた。
「誕生した朝日は天を昇り、森羅万象を照らし出す。『サンシャイン・バース』の効果。スタンバイフェイズ時に自分フィールドのこのカードを生贄に捧げることで、デッキまたは手札から、『サンシャイン・ユニバース』を特殊召喚します」
「ユニバース……?」
クロノスが疑問を声に出した瞬間、その光が一層強くなった。
そして、『サンシャイン・バース』が座していた場所には、新たな戦士が姿を現した。
「アダバ!?」
直前まで、大き過ぎるほど大きかった盾は、大きく成長したその戦士にとって、片手に構えられるだけの大きさとなっていた。
小さく未熟だった体には、歴戦の雄姿たる逞しい筋肉を備え、そこから伸びた二本の足で、堂々と正面を見据えている。
纏う鎧と、携える盾は、守備的な白から、攻撃的な赤色に変わり、戦士の成長と、その強さを象徴しているようだった。
そんな、成長した戦士は、誕生したばかりの時には無かった強い視線を、目の前の巨人に向けていた。
『サンシャイン・ユニバース』
レベル8
攻撃力2500
クロノスは、その召喚に驚いたようだが、冷静になってそのステータスを確認したところで、ホッと胸を撫で下ろす。
「シカーシ、そのモンスターの攻撃力では、私の『古代の機械巨人』には敵わないのーネ」
「……『サンシャイン・ユニバース』の効果」
照が、静かにそう宣言した時、また、フィールドに変化が起きた。ただし、今度の変化は照ではなく、クロノスの場、二枚の伏せカードに。
「な、なんなのーネ!?」
突然煙を出し始めた二枚の伏せカードを見ながら、クロノスは目を丸めた。
「『サンシャイン・ユニバース』がバースの効果によって特殊召喚された時、フィールド上の魔法・罠カードを全て墓地へ送る」
「なんでスーと!?」
再びクロノスが声を上げ、その最中に、効果は適用された。
『サンシャイン・ユニバース』が、全身から光を放ったその瞬間、煙ではなく、蒸気を上げていた二枚の伏せカードは蒸発、消滅した。
「マンマミーア!?」
「そして、この効果で墓地へ送ったカード一枚につき、エンドフェイズまで『サンシャイン・ユニバース』の攻撃力を300ポイントアップさせる」
「ナヌー!?」
『サンシャイン・ユニバース』
攻撃力2500+600
「バトル」
「ヒィ!」
「『サンシャイン・ユニバース』の攻撃。ヒートネスクラッシュ」
照の宣言により、『サンシャイン・ユニバース』は『古代の機械巨人』に向かった。そして、腕に備えた大盾で、機械巨人に突撃、砕いた。
「アダバー! 私の『古代の機械巨人』がー……!」
クロノス
LP:3100→3000
「……カードを一枚伏せ、ターンエンド。そしてエンドフェイズ、ユニバースの攻撃力は元に戻る」
照
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
『サンシャイン・ユニバース』攻撃力2500
魔法・罠
セット
クロノス
LP:3000
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
「すげえぜ、受験番号3番!」
「あの、クロノス教諭が押されてる!」
会場は再び熱を取り戻すものの、照は耳を貸さず、関心も向けず、ただ、クロノスを見据えていた。
「ぐぬぬ……私のターン!」
クロノス
手札:0→1
「……魔法カード『強欲な壺』発動。カードを二枚、ドローするのーネ」
クロノス
手札:0→2
「……来たのーネ。私は『
現れたのは、破壊された機械巨人を小さくし、右腕を拳から、銃に取り換えた。そんな見た目の、兵士という言葉がよく似合うモンスター。
『古代の機械兵士』
レベル4
攻撃力1300
「更に、速攻魔法『収縮』を発動。フィールド上のモンスター一体の攻撃力を半分にするのーネ。この効果により、『サンシャイン・ユニバース』の攻撃力を半分にするのーネ!」
そのカードの発動により、堂々と立っていたユニバースの体が、半分のサイズに「収縮」した。
『サンシャイン・ユニバース』
攻撃力2500/2
「おお! 攻撃力1250」
「あれなら機械兵士で破壊できる」
「バトル! 『古代の機械兵士』で、『サンシャイン・ユニバース』を攻撃!」
クロノスが、そう宣言した。だが、
「……おや?」
左拳を大きくした機械兵士は、その命令に従うことなく、ただ、そこに棒立ちになっているだけだった。
「どうしたのーネ? なぜ攻撃しないのーネ?」
「……『サンシャイン・ユニバース』の効果です」
疑問の悲鳴を上げるクロノスに対して、答えたのは照だった。
「『サンシャイン・ユニバース』はフィールド上に存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象に選択できません」
「マンマミーア! そんな効果があったのーネ……!」
「……てか、教師の癖に知らなかったのか……」
「ヌ……!」
「……」
つい、素の口調を出してしまったことに気付き、照は口を噤んだ。
(く……シカーシ、確か、あのモンスターには、もう一つ効果があったのーネ……)
「ターンエンドなのーネ。そしてこのエンドフェイズ、『サンシャイン・ユニバース』の攻撃力が元に戻るのーネ」
クロノス
LP:3000
手札:0枚
場 :モンスター
『古代の機械兵士』攻撃力1300
魔法・罠
無し
照
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
『サンシャイン・ユニバース』攻撃力2500
魔法・罠
セット
「クロノス先生、防戦一方だ……」
「こりゃ、あの3番の勝利で決まりか……」
「このまま行けば勝てるよ!」
「……いや、そう簡単にはいかない」
「え?」
「あのカード、『サンシャイン・ユニバース』は確か……」
目の前の決闘を前に、ほとんどの生徒が、その結末を予見した時だった。
「俺のターン。ドロー」
照
手札:2→3
再び照が、カードをドローした瞬間、
「ん?」
「あれ?」
先程のバースと同じように、今度はユニバースの体が光に包まれた。
そして、オレンジ色の輝きを放ちながら、立っていたのは、逞しい戦士ではなく……
「え? お爺ちゃんになっちゃった……?」
誰かのそんな言葉の通り、攻撃的な赤から優しいオレンジ色に変わった大盾を、両手に構える、白い髭の老人のがそこにいた。
「昇った太陽もやがては沈み、再生を待つ夕日に変わる。『サンシャイン・ユニバース』の効果。スタンバイフェイズにフィールド上のこのカードを生贄に捧げ、デッキまたは手札から、『サンシャイン・リバース』を特殊召喚しなければならない」
『サンシャイン・リバース』
レベル4
攻撃力1600
「攻撃力1600!?」
「何だよ、一ターンしか持たないのか?」
「ホロホロヒュー。やはり、弱体化してしまいましたのーネ」
記憶の底にあった効果が正しかったと分かり、クロノスはまた、表情を綻ばせた。
だが、そんな挑発的な言葉を受けても、照の表情には全く変化が無い。むしろ、
「バトル」
そんな、クロノスの笑顔を消してしまうため、照は宣言した。
「『サンシャイン・リバース』で、『古代の機械兵士』を攻撃」
老いてなお、その瞳には若かりし頃に宿っていた闘志を燃やし、その老兵は、機械兵士へ向かっていった。
「ニョホホ。しかーし、それで削られるライフは僅か300なのーネ」
「……速攻魔法『収縮』。対象は、機械兵士」
「ンア……?」
変わらない、淡々とした口調で、照が手札のカードを発動した瞬間、前のターンのユニバースと同じく、『古代の機械兵士』のサイズは半分にまで縮んだ。
『古代の機械兵士』
攻撃力1300/2
「こ、攻撃力650!?」
そして、クロノスが叫ぶ間に、再生の名を持つ老兵は突撃し、大きさが半分に縮んだ機械兵士を破壊した。
「ヌグググ……!」
クロノス
LP:3000→2050
「ぐぅ……しかーし、まだまだ! 次のターンで、必ず逆転して……!」
「リバースカード発動。速攻魔法『陽軌逆行』」
クロノスの言葉を遮りながら、照は新たにカードを発動させた。
その瞬間、再び変化が起こった。優しいオレンジの色が、攻撃的な赤色の光に包まれる。
「フィールド上の『サンシャイン』の名を持つモンスターを選択し、効果発動。そのモンスターの名が記されたモンスターカードが墓地に存在する時、フィールド上のサンシャインをデッキに戻し、墓地のそのサンシャイン一体を特殊召喚できる」
「何でスーと!? と、いうことは……」
「場にある『サンシャイン・リバース』をデッキに戻し、その名が記されたモンスターを、墓地より特殊召喚。再生の光よ、天を逆行し再び昇れ。森羅万象『サンシャイン・ユニバース』!」
そして再び、赤く、猛々しく燃え荒ぶ、太陽の戦士が、照の前に再び姿を現した。
『サンシャイン・ユニバース』
レベル8
攻撃力2500
「ぐぬぬ……」
「バースの効果による特殊召喚ではないため、ユニバースの効果は発動しない……バトル」
「アガ……!」
そしてまた、赤い戦士は、手に持つ巨大な赤色の盾をクロノスに向け、向かっていった。
「『サンシャイン・ユニバース』の攻撃。ヒートネスクラッシュ!」
堂々としたその宣言により、赤い戦士の持つ大盾が、クロノスにぶつかった。
「ンガァァァアアア~~~~~~~~~~!!」
クロノス
LP:2050→0
「ありがとうございました」
クロノスのライフを0としたことで、照はそのまま踵を返し、決闘場を後にした。
「す、すごい……」
「強え……」
「クロノス教諭相手に、ノーダメージ……」
「あれが、受験番号3番……」
「むぅ……」
「格好良い……」
「素敵ですー……」
「ヤバい、惚れた……」
多くの声に包まれながら、照は、待たせていた人物の元へ戻った。
「終わったよ」
「うん。格好良かった……」
「……二枚の伏せカードを破壊された時は、焦ったけどな……」
「それでも、すごく上手にカードを使いこなしてた。私には、あんな決闘はできないな……」
小さな声で、それでも自分のことのように喜び、笑顔を浮かべる。そんな少女に、決闘中でさえ表情の変化の無かった照が、笑顔を浮かばせた。
「……」
「……」
そんな二人のやり取りと、二人の見せる笑顔に、また、会場中が沈黙に包まれた。
一方は、健康そのものな好青年。もう一方は、あまりにも弱々しい病的な少女。
あまりにも対照的なのに、そんなお互いのことを誰よりも理解し、信頼し、愛し合う。そんな、二人の関係を象徴するような、美しい笑顔を、二人は、お互いに向けていた。
「なんて、綺麗な笑顔……」
「あの二人、もしかして、恋人……?」
「そんなぁ……」
沈黙する女子の中には、照の見せた決闘に魅入られたことから、そんな言葉を漏らす者もいた。
「……あ、げふん……」
と、会場の生徒達と同じく、そんな二人に魅入られていた、アナウンスの男は、マイクのスイッチを入れ直した。
『続きまして、受験番号2番の実技試験を開始致します。受験生は、決闘場へ』
そのアナウンスによって、ぼんやりしていた者達の意識が、再び戻る。
そしてそれは、二人も同じだった。
「じゃあ、いくね」
「……あのデッキを使うのか?」
「……うん。他に、戦い方知らないから……」
「……分かった」
「え?」
「な、なんだ……?」
また、二人の行動に、会場中の目が集まった。
照が、車椅子に乗っていた少女を背中に背負い、そのまま、クロノスの待つ決闘場まで歩いてきた。
「立てるか?」
「うん。ありがとう……」
そんなやり取りの後で、少女を下ろす。少女はふらつきながらも、そのか細い二本の足で、照に両肩を支えられながら、どうにかその体重を支え、立った。
「まさか、あなたが……?」
クロノスの、そんな疑問の声に、少女は頷き、答える。
「はい。受験番号2番、『小鳥遊
表情の乏しい照とは違い、笑顔で礼を尽くす。だが、その笑顔がとても綺麗な反面、その声は、全く力の籠もっていない、弱々しく、儚いものだった。
「あれが、受験番号2番かよ……」
「だから一緒に来てたのか……」
「……え? 今、小鳥遊って言った……?」
「小鳥遊……では、あなたがたーは……」
「はい。私は照の、双子の姉です……」
「ほぉ、なるほど……」
「え、ご姉弟?」
「ということは、恋人ではない……!」
「よしっ! ならまだお近づきのチャンスはある!」
と、またそんな声を上げる女子生徒がいる中で、クロノスは、目の前の少女に対し、警戒を強めていた。
例え女子であり、病弱であっても、相手は受験番号2番。その成績だけでも十分に脅威であることに加え、直前に敗北した少年の姉でもある。
弟が強いから姉も強い、という安易な結論に至るわけではないが、それでも、それだけの情報があれば、警戒しないわけにはいかない。
(これ以上、生徒を相手に、恥を晒すわけにはいかないのーネ。必ず勝って、今度こそ汚名を返上なのーネ……)
「ありがとう、照……」
警戒を強めるクロノスとは別に、時雨は、照にとっての胸の高さから弟の顔を見上げ、話し掛けていた。
「何かあったら呼べ。姉ちゃん」
「うん」
最後に、そうやり取りをし、肩から手を離され、そして、構える。
だが、照の手が離れたと同時に、その体がグラついたのを、クロノスは見逃さなかった。
「……決闘をするのは構いませんーが、大丈夫なのーネ? 辛ければ、車椅子に座ったままでも大丈夫なのーネ」
親切心から、クロノスはそう提案する。しかし時雨は、首を横に振った。
「大丈夫です。立った状態でも決闘できます。決闘、させて下さい……」
「……」
そう、やはり力の無い声で言いながら、浮かべる笑顔に、クロノスは、それ以上言葉を出せなくなった。
その笑顔は、こう言っていた。
大丈夫だよ。心配はいらないよ。
そう、相手の感情を静め、安らぎを与え、そして、その心を癒す。不朽の愛情に満ちた笑顔を、この、あまりにも弱々しい少女は、クロノスへ向けていた。
「綺麗……」
「優しそうな人……」
「ふわぁ……」
一部の男子が、先程の照を見た女子のような反応を示した。
いや、一部どころか、そんな時雨の見せる笑顔に、また、会場全体が心を奪われていた。
唯一、そんな時雨の肉親である、照を除いて。
「……それデーハこのまま決闘を行うのーネ」
クロノスがそう宣言したことで、決闘が開始された。
『決闘!』
お疲れ~。
ここまで読んで下さった方、心から感謝します。ありがと~。
そいじゃ、後書きではね、主人公、照と時雨の双子姉弟が使ったオリカを載せます。
まず、弟の照の使用カードから。
『サンシャイン・バース』
レベル4
光属性 戦士族
攻撃力0 守備力2400
このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。
自分のターンのスタンバイフェイズ時、フィールド上に存在するこのカードを生贄に捧げることで、手札またはデッキから「サンシャイン・ユニバース」1体を特殊召喚できる。
『サンシャイン・ユニバース』
レベル8
光属性 戦士族
攻撃力2500 守備力2000
このカードが「サンシャイン・バース」の効果で特殊召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを全て墓地へ送る。
その後、墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの攻撃力をエンドフェイズ時まで300ポイントアップする。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。
自分のターンのスタンバイフェイズ時、フィールド上に存在するこのカードを生贄に捧げることで、手札またはデッキから「サンシャイン・リバース」1体を特殊召喚する。
『サンシャイン・リバース』
レベル4
光属性 戦士族
攻撃力1600 守備力1000
このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない。
自分のターンのスタンバイフェイズ時、フィールド上に存在するこのカードを生贄に捧げることで、手札またはデッキから「サンシャイン・バース」1体を特殊召喚できる。
『陽軌逆行』
速攻魔法
自分フィールド上の「サンシャイン」と名のついたモンスター1体を選択して発動する。
選択したカードが記されているモンスターが自分の墓地に存在する時、選択したカードをデッキに戻し、そのモンスターを特殊召喚する。
はーい、見ての通り、太陽をモチーフにした戦士族モンスター達です。武器は盾ね。
朝日のバースが子供、昼日中のユニバースが大人、夕日のリバースが老人と、時間が経つごとに歳を取っていきます。見ての通り、大人が一番強いです。
共通するのは、全てのカードが召喚した次のターンのスタンバイフェイズにはいなくなり、歳を取るか世代交代をするかという所です。ちなみに大人だけが強制効果となっております。
そして、速攻魔法を使えば時間を遡ることができます。要するに『サンシャイン』用の『レベルダウン!?』ですわ。
ええ……まあ正直、これ使うくらいなら、素直に『レベルアップ!』を使った方が早いだろうなぁ、とは思います。
破壊効果も遅いだけの劣化版『大嵐』ですし、攻撃力アップもしょぼいですし。一応、「破壊」と「墓地へ送る」の違いはありますけど。
耐性は地縛神と同じく攻撃が届かない効果ですが、どの道次のターンにはいなくなるし……
けどどうせ主人公が使うなら、このくらいのロマンはあってもいんでね? という感じで書いてみました。
ほんじゃ、次は姉の、時雨の決闘になりますゆえ、良ければ読んでやってくんなさいな。
ではでは。