TS転生美少女のデッキは切り札まで美少女天使 作:旅するチョコボ
よろしくお願いします
この世界を支配していると言っても過言ではないカードゲーム、「
ひとつは、それぞれのカードをゲーム中にプレイする時に支払うコスト。
「リブラアーク」の際立った特徴といってもいい、もうひとつのコスト制度。
それが、『デッキ
全てのカードには、プレイ時に支払うコストとは別の「バジェット・コスト」、プレイヤーたちからは「バジェット値」と呼ばれている数値が設定されている。
リブラアークのデッキを組む際には、デッキに投入したカード全てのバジェット値の合計が、レギュレーションごとにあらかじめ定められた上限を超えないようにしなければならない。
細かい算出ルールはおいといて、
デッキの形を決める最高クラスのレアリティのカードたちは、基本的に1種類、やっても2種類までの採用が限界だ。*1
何も考えずにあれもこれもと高バジェット値のカードを採用すると、一瞬で
この「デッキバジェット制」が、リブラアークのデッキ構築に多様性をもたらす要素のひとつ。
最強のエースカードにバジェットの多くをつぎ込み、残りのデッキのほとんどを低レアカードで埋め尽くす者がいる。
バジェット値をまんべんなく振り分けて、1枚のカードに依存せずに戦えるようにする者がいる。
自分で引き当てたいわば運命のレアカードを活躍させるために、その1枚を全力で活かすための構築を考える者がいる。
プレイヤーたちの間でよく知られたカードを活躍させるために、基地となったシナジーの数々を繋ぎ合わせて構築を考える者がいる。
限られた予算で、最大限の効果を発揮させるにはどうすればいいか。
リブラアークの構築を楽しむプレイヤーたちは、頭を抱えながらも日々没頭しているのだ。
……なんて、どうでもいいことを思い浮かべていたのは、現実逃避の一種。
僕の目の前には、
周囲には、野次馬同然の空気で囃し立てるクラスメイト達が輪を作っている。
まさか学校で
さすがはカードゲームが支配する世界というか、なんというか。
「佳蓮はデッキどうすんだ?さっきも言った通り、俺は『ゼロウェイト』でも『ハンドレッド』でも構わないぜ」
「なら、
「ああ、分かったぜ!」
言うが早いかシュバッとデッキを取り出す蒼龍くん。
手つきがあまりに手慣れすぎている。これ学校でも頻繁に対戦してるなコイツ……。
『ゼロウェイト』も『ハンドレッド』も、リブラアークの対戦レギュレーションの名前だ。
決定的な差異は、デッキバジェットの上限値。
リブラアークで最もメジャーなレギュレーション、『ハンドレッド』は、読んで字のごとくデッキバジェットが
そして『ゼロウェイト』は、こちらも読んで字のごとくデッキバジェットが0点だ。
『ゼロウェイト』レギュレーションで採用できるカードは、
1枚1枚のカードパワーが低いから、構築全体でどう戦うかを考えないといけない。
種族テーマで統一してデッキを組むのは、分かりやすいセオリーのひとつだ。
「天嶺くんのデッキは、ドラゴン族デッキ。コモンのカードプールなら……バーンを混ぜたアグロタイプ、かな」
「へへっ、すごいな佳蓮!大正解だ!!ひたすら攻めて攻めて攻め倒してやるぜ!!」
想像通り……というか、さっきの自己紹介でもドラゴン族って言ってた通り。
目の前の蒼龍くんも、
セオリーに従ったわけではなく、ただただ純粋にドラゴンが好きなんだろう。
カードスリーブまでドラゴンの絵だし。
「私の、デッキは」
プレイヤーとしての
強いて言うなら、勝てるデッキ。時々刻々変わり続ける「環境で勝てるデッキ」に絶えず乗り換え続ける事こそがこだわりだった、と言えるかもしれない。
アグロも、コントロールも、ミッドレンジも、ビートダウンも、コンボも……結果を出したデッキがあると聞けば、時間と財布の許す限り何でも試した。
でも、今この世界で生きている
できるのは、少数のデッキを磨き抜くことだけ。
パックを引き、他のプレイヤーとトレードをして、どうしても足りないカードを厳選して買って。
そうして出来たデッキは。
「天使族・ビートダウン。ちょっと、相性が良くないかも」
私の
レアカードの抜けた穴を汎用的なサポートカードで埋める。
「そんなのやってみね―とわっかんねーだろ!なっ、鈴!!」
「……まぁ、蒼龍がそう言うなら、いいんじゃない」
あ、鈴ちゃんは僕の言葉の意味を正しく理解していそうだ。
蒼龍くんのツッコミ役で、クラス委員長。やはり、鈴ちゃんは蒼龍くんと対照的なデータ派なのかも。
「頑張れー、負けんな蒼龍ー!どデカい花火でアイサツかましたれー!!」
「佳蓮ちゃん!応援してるよ!」
「二人とも、良い戦いを期待してるぜ!」
流れで意識をギャラリーに向ければ、クラスの皆が囃し立てる声が止むことなく届く。
なるほど、挨拶か。この戦いこそ、口下手な
「ああ!それじゃあ始めよう、佳蓮!!」
「いいよ、いつでも」
「「リブラアーク、エンゲージ!!」」
開戦の口上。自然とぴったり重なった言葉に、思わず笑みがこぼれる。
40枚のカードを積み上げたデッキから、まず7枚を手札として引く。
――いつも通りの、可能性に満ちた手札。
「先攻は譲るぜ、佳蓮!思いっきり来いよ!!」
「じゃあ遠慮なく。ビギニングフェイズ、先行1ターン目だからバーチステップとドローステップをスキップ。そのままメインフェイズ1へ」
ことさらに丁寧に、幾度となく繰り返した手順をなぞって諳んじる。
ルーティーンをこなしたことで鼓動は静まり、意識がより鮮明に、よりはっきりと盤面と手札を捉える。
「マナゾーンにカードを1枚セット」
手札から1枚のカードを引き抜き、プレイフィールドに裏向きで置く。
マナゾーンのカードの数だけ、1ターンにマナ・コストを支払うことができるのだ。
でも、僕の手札に1マナのカードはない。
「私はカードをプレイしない。そのままターンエンド」
「しゃあっ!俺のターン!ドローっ!!」
デッキから勢いよくカードを引き、そのまま天高く掲げる蒼龍くん。
彼のアクションはいつだって大きいけれど、その全てが堂に入っている。
「マナを1枚セットして、そのままホリゾン*2!行くぜ!!」
「ひた走る炎の竜!『マッハ・リザード』を召喚!!」
『マッハ・リザード』/●
スピリット/ドラゴン
疾風(疾風を持つスピリットは、フィールドに出たターンでも攻撃できる)
パワー1/タフネス1
小さな火蜥蜴の絵が描かれたカードが、プレイフィールドのど真ん中に鎮座する。
リブラアークの主役。フィールドに呼び出されて戦う
「やっぱり、アグロタイプのドラゴン族デッキだ」
「ああ!ドラゴンは俺の相棒だからな!このままバトルだ!!『マッハ・リザード』でアタック!!」
アグロデッキ。序盤から積極的に攻撃を仕掛けて、相手のライフを素早く削り切る戦略をとるデッキ。
相手のライフに直接ダメージを与えるバーンカードと呼ばれる類や、即座に攻撃できる「疾風」能力持ちのスピリットを多用する。
ちょうど、目の前にある『マッハ・リザード』のように。
たかが1点、されど1点。アグロデッキとの戦いでは、1点を笑うものが1点に泣くのだ。
お互いに。
「ターンエンドだ!来いよ、佳蓮!!」
「そのままターンを貰う。私のターン、ビギニングフェイズ、バーチステップ……」
深呼吸をひとつ。前のめりになる心を、フラットに引き戻す。
「ドロー。メインフェイズ1、マナゾーンにカードを1枚セットして」
「プレイ、『見習い天使』」
『見習い天使』/①○
スピリット/天使
飛行(飛行を持つスピリットは、飛行を持たないスピリットにブロックされない)
召喚時、デッキから1枚ドローする
パワー1/タフネス1
小さな可愛い天使が、小さな火蜥蜴と真っ向から向かい合う。
戦場が、少しずつにぎやかになっていく。
「『見習い天使』の効果で、私はデッキから1枚ドローする。バトルフェイズをスキップして、そのままターンエンド」
「俺のターン!ドロー!マナを1枚セット!『火だるまドラゴン』を召喚!!」
『火だるまドラゴン』/①●
スピリット/ドラゴン
あなたがスペル・カードをプレイする度に、このスピリットのパワーを+1する
パワー2/タフネス1
次に出てきたのは、
上昇するのがパワーだけなのがコモンカードらしい調整だ。
「『マッハ・リザード』で攻撃だ!」
「その攻撃、『見習い天使』でブロックする」
地を走る蜥蜴を、小さな天使が撃ち落とす。
だが蜥蜴の吐いた炎も、天使の羽を焼き焦がす。
そんなイメージ。
スピリットのアタックがブロックされた時、互いのスピリットはパワー分のダメージを与え合う。
『マッハ・リザード』も『見習い天使』も、どちらもパワー1/タフネス1のスピリットだ。
2体は相打ちとなって、それぞれ墓地へと送られていく。
これで良い。『見習い天使』は、役割分の仕事をした。
「相討ちにしちゃってよかったのか?ターンエンドだ」
「いいんだよ。私のターン、バーチ、ドロー。マナを1枚セット。『盾を掲げる者』をプレイ」
『盾を掲げる者』/②○
スピリット/天使
守護(守護を持つスピリットが場にいる限り、相手は守護を持つスピリット以外を攻撃の対象にできない)
パワー1/タフネス4
相手の攻撃に対して、壁となってくれるスピリットだ。
最低限のパワーも持ち合わせているから、
これで蒼龍くんの「火だるまドラゴン」はうかつに動けない。
「へへっ……楽しくなってきたな、佳蓮!!」
「なんで相性の悪いカードが出てきて喜んでるの、天嶺くん……」
「分かってねぇな佳蓮!壁はデカいほどぶっ壊し甲斐があるんだぜ!!」
うおおおお!と天井を見上げて吠える蒼龍くん。
ノリが陽キャ飛び越して暑苦しすぎる!
「これ以上できることもないし、ターンエンド。……じゃあ天嶺くんは、この壁をどう壊すの?」
「俺のターン!ドロー!!マナセット!!もちろん、こう壊すぜ!!」
蒼龍くんの右手が、
「スペル・カードを発動!『火炎咆哮』っ!!」
蒼龍くんが今引いて来てプレイしたカードは。
『火炎咆哮』/②●
スペル
相手のスピリット1体に5点のダメージを与える
「対象はもちろん『盾を掲げる者』だ!行くぜ!ドラゴンブレス!!」
壁にするべく出していた私のスピリットを、容易く焼き尽くして灰へと還した。
このスペル自体が今引きなのは疑いようがない。
だが、このターンのドローより前の時点で、蒼龍くんの言葉には迷いがなかった。
彼の手札には、まだほかにも除去のスペルカードが残っている可能性が高い。
「どうだ佳蓮!これが俺とドラゴンだぜ!!」
「うん、すごく……熱い」
「だろ!!よっしゃあ、このままバトルだ!効果でパワーが+1された『火だるまドラゴン』でアタック!!」
再びガラ空きになった私のフィールドを飛び越えて、燃え盛る炎を身に纏った竜が僕のライフポイントを削る。
残りは16点。このまま殴られっぱなしではいけない。
「ターンエンドだ!佳蓮の天使も、まだまだこんなもんじゃないだろ!!」
「私のターン。バーチ。ドロー。手札からマナを1枚セット。プレイ『天使のいたずら』」
『天使のいたずら』/①○
スペル/ファスト
相手のスピリット1体に1点のダメージを与える。デッキから1枚ドローする。
『火だるまドラゴン』にタフネス上昇効果がなかったことがここで効いてくる。
たかが1点、されど1点。1枚で強力なアドバンテージを有するレアカードを投入できないレギュレーションだから、こういうカードでちまちまと稼いでいくしかない。
「わぁっ!?綺麗にやられちまった!!」
「続けて『見習い天使』をプレイ」
『見習い天使』/①○
スピリット/天使
飛行(飛行を持つスピリットは、飛行を持たないスピリットにブロックされない)
召喚時、デッキから1枚ドローする
パワー1/タフネス1
さっきと同じスピリットだ。
このカードは2マナの使いやすいスピリットとして、同名カードの投入上限の4枚までフルに入れてある。
目的は、召喚時効果のドロー。
「効果でカードを1枚引く。……ふふっ」
引き込んだのは、探していたこのデッキのキーカード。
次のターンにこのカードを置けば、勝利に大きく近づけるはず。
『天使のはしご』/②○○
ガジェット
自分の場の天使・スピリットは「還元」を持つ
(還元を持つスピリットがダメージを与えた時、そのダメージの点数分プレイヤーのライフを回復する)
「バトルフェイズをスキップして、ターンエンド。――天嶺くん、どうぞ」