【非在】幻創の旅路と真実の明日を運ぶものたち   作:楠崎 龍照

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ただいま到着の幻創電車は、各駅停車 エピローグ行です。
次は、2話 魔人ファレグ=アイヴズに止まります。


1話 各駅停車 プロローグ発 エピローグ行

南海なんば駅

 

南海和歌山線、南海関西エアポートライン、南海浪速線、南海極楽線、南海泉北御堂筋線・南海海洋線が乗り入れする超巨大なターミナル駅である。

 

難波地区の駅の中で唯一の地上駅であり、以前は10面9線のホームであったが、マザークラスタ極東支部駅が完成し、南海海洋線が開通したことにより高架が12面11線、地下に2面4線、合計14面15線に増設された。

それにより行き止まり式の駅としては京阪急梅田駅を抜いて国内1位の規模と駅となった。

 

 

まだ客がおらず、電車型幻創種エスカダーカーが非活性状態で沈黙をしている静寂に包まれたターミナル駅。

正に異世界にでも迷い込んだのでは?

と錯覚してしまう程に不気味かつ幻想的な景色となっている。

 

「昨日久しぶりに夢見たわ」

「へー、どんな夢?」

 

そんな中に、右肩や左太ももにメカメカしいパーツを装備している制服を身に纏っていた2人の青年が、仲良く談笑をしながら非活性状態の幻創電車に向かっていた。

 

「推しのV‐Tuber(バーチューバー)と話す夢。起きた事を後悔するぐらい心地の良い夢だった」

「おおおー! いいじゃん! 俺も夢見たよ!」

「おっ、どんな夢?」

「新幹線の運転してて、オーバーランにビビって低速で駅に止まった結果15分遅延する夢」

「なはははははは! どんな夢だよ!」

「俺が1番聞きてーわ!」

「てか、お前新幹線の運転免許取ってたか?」

「取ってない取ってない。いつか取ろうとは思ってるぐらい」

 

そんな仲の良い友人同士の会話をしながら、今日担当する電車に向かう。

 

「さて、じゃあ。今日も互いに頑張ろか!」

 

そう言って、1人の男性が1番後ろの車両に乗り込みながら、もう1人の男性に言った。

 

「あぁ! また後でな!」

「おう! オーバーランすんなよー?」

「今まで一度もしたことないわ! お前も、停車駅の案内間違えんなよー!」

 

2人は分かれ、もう1人は1番前の車両へと乗り込む。

彼は、始発の特急電車である"こうや"を担当する運転手"火之鳥(ひのとり) エース"。

マザークラスタ極東支部及び、この南海幻創総合鉄道に所属する職員だ。

余談だが、車掌は青空(あおぞら) (らく)

2人は昔からの仲で、共に具現武装を発現した為、幻創種顕現の際に対抗出来る人員として南海総合鉄道によってスカウトを受けた経緯がある。

そして、数年前にマザークラスタ極東支部との重大な取引や、その支部の様々な事があり、今は運転手と車掌を常務しているのだ。

 

「今日は長旅になるな」

 

運転席に座った火之鳥は、運転行路表を視線に入れてからポツリと呟く。

南海なんば駅から終点のマザークラスタ極東支部本島駅までの常務。

時間にして3時間40分の長旅だ。

 

「さて、と」

 

火之鳥は椅子にもたれ掛かった。

出発までまだ時間はある。

彼は少しの出来事を振り返った。

 

 

 

─数年前─

 

マザークラスタ。

その存在を知らない人はいないだろう。

エーテル通信技術を使う総合通信企業ESCA(エスカ)の中枢。

月面に本部を置いている前代未聞の企業で、高速大容量通信であるエーテル・インフラを完全に掌握している。

数年前から各国にも支部を置き始め、この日本にもマザークラスタ極東支部が和歌山県の最南端より先の人工島にも建設された。

この地球に存在する全ての国のインフラを担っている、今や、この地球に無くてはならない存在だ。

そして、その企業の中でも、一際化け物支部と呼ばれる極東支部に所属する幹部が、なんば駅近くにある本社に突如として現れたのだ。

その場にいた社員の心情は穏やかではないだろう。

幻創種に対抗する為にスカウトされた俺にとっては特にという感じではあった。

 

「少しお話がしたいです」

 

その幹部は非常に若く。

20代前半の黒色の髪をした本当にどこにでも居そうな青年だった。

特徴と呼べる特徴がない。

あるとすれば精々メガネをかけているぐらいだ。

大手どころの次元ではない企業の幹部とは思えな

い腰の低さで、"話がしたい"と口にした。

お偉いさんたちと共に、青年が会議室に入っていく姿を見てから何が起きたのか分からないが、次の日には、マザークラスタ極東支部の延伸が発表された。

 

「は? マザークラスタまで延伸!?」

 

それを朝礼で聞かされた時、社員全員が困惑の様子を見せた。

あまりの衝撃に、どこからともなくそんな言葉が聞こえた。

 

「(なんか大変なことになってるな)」

 

俺は心の中でそんな事を呟いていた。

かなり他人事だった。

俺や亜判は具現武装を使って、線路上やその周辺に具現化した幻創種を倒すこと。

だから、その延伸には然程興味がなかった。

 

「(眠いなぁ。早く朝礼終わらないかなぁ……)」

 

対して話を聞かずに、欠伸を我慢することに必死だった俺。

だが、朝礼が終わった後、一通の連絡が来た。

知らない電話番号。

俺は何も考えずに、その電話を取った。

 

「もしもし?」

「もしもし、火之鳥エースさんですか?」

 

電話の向こうからは、男の声が聞こえる。

俺と同じぐらいの歳と思われる声だ。

 

「はい」

 

俺は、その言葉にかなり気怠げな声で返した。

電話の奥からは毅然とした態度の声が聞こえる。

 

「私、マザークラスタ極東支部に務めております。幹部の小野寺と申します」

「……え?」

 

その言葉に俺は少しフリーズした。

マザークラスタ極東支部の幹部が俺に……何の用だ?

完全に思考が停止する。

 

「もしもし、大丈夫ですか?」

 

少しの時間、放心していたのだろう。

小野寺と名乗る幹部の青年は少し声を大きくする。

 

「……え? あ、はい」

 

その声を聞いて我に帰った私は、少し力の抜けた声を出す。

 

「火之鳥エースさんは、具現武装を使用できるとの情報を確認したのですが、間違いありませんか?」

 

青年の問いの真意が分からず「……え?」とキョトンとした声を出してしまう。

それに対して、青年は「……いまお時間は大丈夫ですか?」と聞いてくる。

 

「……はい」

「分かりました」

 

俺が頷くと、青年はそう一言だけ言ってから通話が切れた。

頭の中に「?」マークが浮かび上がるよりも先に、目の前に青黒い渦が発生し、そこから見たこともない青年が姿を現した。

 

「こんにちは。失礼しますね」

 

俺が驚く暇も与えてくれず、青年は俺の肩を掴み、青黒い渦が私と青年を包み込んだ。

だが、それも刹那的の時間。

 

「……え?」

 

俺が見ている景色が先程とは全く違う、巨大な和風建築物の前にいた。

千〇千尋の神隠しの油屋を連想させるその城を前に、俺は呆然と立ち尽くすしかない。

 

「手荒な真似をして申し訳ないです。ようこそ、マザークラスタ極東支部へ」

 

あまりの出来事に、意識が和風の城に向いていた為、目の前にいた青年が見えていなかった。

 

「……あぇ!?」

 

彼の発する言葉に俺は、城に向いていた意識が目の前に青年に向き、驚きのあまり情けない声をあげた。

そんな様子を見た青年は、少しニヤッと笑みを浮かべてから自己紹介を始める。

 

「はじめまして、私は小野寺龍照。このマザークラスタ極東支部の幹部、【四神】赤の使徒を務めております」

「あ、えーと。火之鳥エースです」

 

俺は少しキョドりながら、超簡潔な自己紹介を返した。

 

「少し、火之鳥さんに提案がありまして。詳しい話はこちらでお伝えします。着いてきてください」

 

彼は俺に手招きをして、マザークラスタ極東支部の中へと入っていく。

俺も少し怪訝な表情を浮かべつつ、小野寺の後を着いて行った。

 

 

 

マザークラスタ極東支部 第5小会議室

 

2階の第5小会議室と書かれた札がある部屋へと案内された俺。

小野寺に「どうぞ」と結構高級感のある黒いソファーに座るように促され、俺は「失礼します」と一言言ってから座る。

 

「……」

 

こんな社長室にありそうなソファーなんて座ったことがなかった為、無駄な緊張感が走ってしまう。

俺が座るのを見てから、小野寺はボフンと緊張感皆無の様子で座った。

 

「ふぅーーー」

 

彼は大きな一息をついてから口を開いた。

 

「南海で、線路上に顕現した幻創種掃討を行う仕事をされているとお見受けしましたが、間違いありませんか?」

 

小野寺の質問に俺は頷きながら「はい」と答える。

 

「なるほど。では単刀直入に申し上げます。マザークラスタ極東支部に転職して頂けますか?」

 

彼の突拍子もない言葉に俺の時間が少し停止した。

 

 

 

続く

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