リリム…ゼータが部屋から出た数時間後、日が完全に落ち辺りは暗闇に包まれており街は静寂に包まれている。
そんな夜遅くにも関わらず、俺は学園の寮を抜け出して下町にある寮へと足を運んでいた。
「おい、このぐらいか?」
「ウーン、ちょっと低いかな…もうちょい上げて」
「……この辺か?」
「オッケー!よし完璧!うーん、良いなぁ! 偶然拾った幻の名画『モンクの叫び』!」
「へぇ…(ム◯クの叫びの間違いだろ。絶対前世の記憶持ちの画家か何かが描いたとしか思えない程の出来だな)」
絵を見ながら内心で突っ込む。まぁ…コレクション集めに関しては共感は出来るしな、俺も前世ではライダー物のコレクションを集めていたよ。
「……それにしても、よくここまで集めたものだな」
「フッフッフ、これぞ陰の実力者に相応しい部屋さ。盗賊を狩ったのも、這いつくばって金貨を拾ったのも……全てはこの時のため!」
「銭ゲバが、それに王女様の犬に成り下がっていたからなポチ?」
「消し去りたい過去だからその呼び名やめて、せめて厨二馬鹿って言ってくんない?」
「厨二馬鹿呼び気に入ってるんだな?」
珍しく心底屈辱そうな顔をするシド。その顔を見ると愉快な気持ちになるよ。今度俺も試してみようかな…いいストレスの発散にはなりそう。
「その絵で最後か?」
「うん。後は机にこれを置いて、部屋全体を柔らかく照らすアンティークランプを付けるだけっと」
シドはゴツイ椅子を部屋の真ん中に設置すると、側に置いたアンティークテーブルの上にワインとワイングラスを取り出した。
「それは?」
「フレンチ南西部ボルドーのヴィンテージワイン、90万ゼニー。グラスもフレンチ製45万ゼニー、そして最後に……これを
「前から思うが、無駄に発音いいなお前…」
「それは君もでしょ?」
「
まぁ、ライダーの中にも英語の部分もあるし、知りたいと思えば知りたかったたちだし、上手く綺麗に言える様になる為にも勉強や発音の練習をしたのもいい思い出だ。そのおかげで前世の英語の成績はかなり上がった。
テーブルに置いたワインボトルの下、そこへシドが滑り込ませるように入れたのは封筒。気になったのでパッと手で取り、中身を確認した。
「あっ、見て良いって言ってないのに」
「……なるほど、呼び出しか。絶対罠だな」
封筒の中に入っていた一枚の手紙を広げると、そこに書いてあったのは呼び出し場所と時間。差出人は書いていないが、間違いなく騎士団の奴らだな、奴等がシドを犯人に仕立て上げようとしているのだろう。
「面白いでしょ?」
「そうだな……面白いことしてくれる」
「おっ、珍しくノリノリだね。じゃあせっかくだから右腕っぽいことしなよ」
「は?」
いや、別にそんなつもりで言ったわけじゃないんだが…
「そろそろベータが来る。チャンスはその時だ。見せてやろうよ、君の右腕っぷりを」
「普通に嫌なんだが?」
「刮目させよう。これが陰の実力者の……右腕の立ち振る舞いだと」
「無視かよ…」
こいつ、見事なまでにスルーしやがった。
「ほら、ベータが来るよ」
「ああもう……くそっ」
俺は窓際に背を預け取り敢えずそれらしい雰囲気を作る……何してんだ…俺?
部屋の扉が静かに開き、ベータが入室してくる。美しい銀色の髪を夜風に靡かせながら俺達の側まで歩いてくる。
「……わぁぁ」
ベータはシドが作り上げたこの部屋に感動しているとシド…シャドウがワイングラスを回しながら口を開いた。
「……時は来た。今宵は陰の世界」
ここで俺がベータを見ながら頷く。
「準備が整いました。シャドウ様、ゼロ様」
「……そうか」
「ベータ、報告を」
「はい。アルファ様の命により、動員可能な者は全て王都に集結させました。その数、114」
「…114?」
「っ!!も、申し訳ありません!今動員できるのはこれが最大で…」
「エキストラでも雇ったのかな…?」
「えっ?」
「えっ?」
「お前は少し黙ってろ」
「う、うん。了解」
取り敢えず小声でシャドウに黙る様に言う、これじゃあ話が進まん。
「ベータ、俺もシャドウも正直ここまで集められるとは思っていなかったからな、よくここまで集めた…感謝する」
「そ、そんな。当然のことをしたまでです」
当然って、普通ならここまで集めただけでも凄いってのに、ここまでやれたのはベータ達の力があってこそだろうに。
「話を逸らして悪いな、続きを頼む」
「は、はい!……んんっ!今回の作戦は王都に点在するディアボロス教団・フェンリル派アジトへの同時襲撃です。それと並行してゼロ様の情報でアレクシア王女の居場所、および教団のアジトの判明、発見次第アレクシア王女を保護します。全体指揮をガンマが、現場指揮をアルファ様が取り、私はその補佐を。イプシロンとゼータは後方支援。デルタが先陣を切り、作戦開始の合図とします」
今の説明、おそらくこの厨二馬鹿は数分したら忘れているだろうが、俺だけでも作戦を覚えておけば良い。
「部隊構成は…」
「ゼロ、例のあれを」
俺は懐に持っていた先程の手紙をシャドウに投げシャドウがそのまま開封する。
「ベータ、これを」
シュッと片手で封筒を開け、中に入っていた紙を取り出してベータに見せる。
「……これは」
「処刑台への招待状だ」
厨二が好きそうな言い回しで説明を終えると、案の定口元を緩ませた男が椅子から腰を上げた。
「デルタには悪いが……前奏曲は僕が…「俺がやる」えっ」
シャドウの時からは出ないような声が出ているが、カッコつけようとしていたとこなのに悪いな。
「ベータ。お前はもうアルファの所へ行け。作戦開始の合図はデルタに任せる」
「はい!分かりました!失礼します!」
礼儀正しく頭を下げ、ベータは夜の闇に姿を消した。部屋は再び、俺とシャドウの二人のみとなった。
「……なんでさ?」
「美味しいところはお前にやる。前座は俺によこせ」
「まぁいいけど…」
「ほら、さっさと行くぞシャドウ」
「はいはいー」
「ああそれと、くれぐれもあれは使うなよ?」
「わかってるってー」
「もし使った時は…わかるよな?」
「も、勿論だよー、ちゃんとわかってるからそんな怖い顔しないでよ」
どうだが…こいつのわかっているは信用ならないんだよな。取り敢えず手始めに、あのゴミクズどもには礼をしないとな。その為には…
「スタイルチェンジ…っと」
俺は顔に手をかざし煙を出すと、顔はシドとなり服はスライムスーツで形成する。
「おお、凄いね。まんま僕だ。その顔はスライムスーツによる変装じゃないね?」
「ああ、服はスライムスーツでやってるが…声と顔はシド・カゲノーそのもだけど…」
顔だけはエボルトの能力を使いやっている。一応スライムスーツでも変装出来るがこちらの方が怪しまれないだろう。魔力感知に長けた相手がいるとバレかねないしな。
「そんじゃ行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
俺はシドの姿のまま手紙に記された場所に向かう。指定された場所に向かい気配を消しながら迫ると何やら話し声が聞こえる。
「おい、ちゃんと用意してるな?」
「あぁ勿論だ。アレクシア王女の魔力が残ったブーツを通り掛かるシド・カゲノーに投げ渡して、現行犯として捕まえ、罪を擦りつける」
「その前にこの前の拷問の続きとして痛めつけてやろうぜ?ここなら悲鳴を上げてもだぁれも来ないんだからな?」
騎士達は下衆な笑みを浮かべる。まぁ、こいつらも教団と繋がりがあるのは確定だしな…遠慮なくやれる。それにわざわざ処刑場を選んだのは自分達と言う事を知らない、呑気なものだな。
「へぇ〜そういう事だったんだ」
「っ!?」
騎士達の目線の先にはシド・カゲノーの姿に変装した俺がいた。
「シド・カゲノー!?」
「まさか、聞かれてたのか!」
「問題無い、コイツを犯人仕立て上げ…あるいは抵抗したことにして殺せば問題はなかろう」
「ふーん、殺せるかな〜?お前達ごときに?」
「おい、口には気を付けろよ?」
「問題ないよ。だって今ここで…」
「……っ⁉︎ギャァァァァァッ!!!?」
「お前達は死ぬんだからな…」
俺は騎士の1人に指先から伸ばされたチューブの様なものを首に刺し、そのチューブにから体の中に何かが注入されていき騎士は跡形もなく光の粒子となり消滅する。仲間が跡形もなく突然消えて呆然とする。
「なっ!?」
「き、きさ…」
俺はスライムスーツを駆使し胸元を貫き騎士は絶命する。
「次はどっち?」
「ひぃ…た、助けてっ!!」
「あ、おいっ!?」
騎士の1人はは恐怖のあまり背を向けて逃げ出す。こいつら、散々やらかしておいてこのザマか…しかし、俺はそれを見逃す程甘くない。俺はスライムスーツで暗器を形成しそのまま矢を放つ様に放ち足や腕に命中させ走っていた騎士は倒れる。
「さて、お前もそっちに行ってもらおうか」
ついでに残っている騎士の頭を掴み倒れている騎士と死体のある場所に強引に投げ飛ばす。
「ぐぅっ…!き、騎士団にこんな事してただで済むと思っ…「ディアボロス教団の間違いだろ?」!?な、何故その名を…!」
「お前さん…こんな事をしてただで済むと思っているのか、って言おうとしたんだろうが、それはお前達の方だ…態々こんな人気のない場所に呼び出すなんてな」
「ど、どういう意味だ…!」
「そんな事も分からないと来るか。権力に物を言わせて随分と好き勝手していたみたいだが、お前達はここで消える…永遠にな」
俺は殺気を向けるとようやく状況を理解したのか顔を青ざめる教団連中。
「ま、待ってくれ!頼む!助けてくれ!見逃してくれたら、お前が無罪であると証明するし、お、俺が今まで手にした金も好きなだけくれてやるっ!!」
「あ、ああ!俺も無実を証明するから!」
「へぇ、随分と気前がいいじゃん?」
「だろっ!?だから見逃してく…!「何て言うとでも思った?バーカ」へ…?」
「お前達がディアボロス教団である以上、見逃すわけないだろ?目を見たらわかるんだよ。お前達がどんな人間なんてな…それに、俺がいつシド・カゲノーなんて名乗ったか?」
俺は変装を解くと教団連中はそれはもう驚いている。ほんと… オルバさんの様な人間が稀だと言うのがわかる。こいつらはただ己の権力や欲望を振り翳し好き勝手にやってきたんだな。
「なっ、き、貴様は⁉︎」
「シド・カゲノーの友人の男⁉︎」
「我が名はシャドウガーデン第零席のゼロ…お前ら教団に審判を下す者…」
俺はスライムスーツで黒衣を纏い、それを合図に教団達の剣や血の溜まりと言った光を反射するものからミラーモンスター達が現れる。
「な、なんだコイツらっ!?」
「ま、魔物だと⁉︎一体どこから⁉︎」
「餌の時間だ…ゆっくりと苦しませながら喰らうといい。安心しろ、夜が明ければ…全て終わっているからな」
俺は教団連中にら背を向けサムズダウンをし歩き出す。
「っ!?」
「あ、ああ……!だ、誰かっ!助けてくれぇぇぇぇぇっ!!」
俺がサムズダウンしたのを合図にミラーモンスター達は襲いかかり、教団連中は泣き叫び、助けを呼び掛ける。しかし…
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「や、やめろ!!いやだ、嫌だァァァァァァァァッ!!」
背後からバリッ!ボリッ!ゴリッ!と聞こえ、教団員は生きたままミラーモンスター達に喰われ、生き絶える。
「…お前達には相応しいエンディングだったな」
闇に溶けていく断末魔を背に、俺はアルファと合流する為静かに歩き出す。
ダブルに変身する際主人公はどちら側?
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左翔太郎
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フィリップ