全てのライダーの力を持ってしまって…   作:狼ルプス

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時は迫る

 

「(取り敢えず許可は貰えたが、やっぱり時代が時代だな…)」

 

シドがアレクシア王女誘拐の容疑者になり、騎士団に拘束されてから五日。

俺はこの期間中、どうにかシドを穏便に釈放してもらおうと努力したが、結論だけ言えば無駄な努力に終わった。

 

アレクシアさんの誘拐事件を担当している騎士団に掛け合ったり、アレクシアさんの姉であるミドガル王国の第一王女、アイリス・ミドガルに事情を説明したりもしたが、聞き入れてはくれなかった。

 

そして三日が経つとシドが仮釈放されることになった。学園に属する生徒全員に外出禁止令が出されているが、俺はシドの友人ということで迎えに行くために特例の外出が認められ、今その場所に向かっている。

 

「(あの人は優しい人だ。それこそ善人と言ってもいいくらいに…だが、その優しさ故、彼女は脆くもある)」

 

 

しばらく歩き騎士団の本拠地を囲む塀にもたれかかりシドが出てくるのを待つ。

 

夕暮れの空を見上げて待っていると、重々しい音が響いて門が開いた。そこから荒く放り投げられた男こそ、俺が迎えに来た男だった。

 

「オラよッ!」

 

「ヘヘッ、ささっと行け!!」

 

「(これが騎士のやることか?盗賊と変わらんな…)」

 

 騎士とは思えないゲスな顔でシドを捨てた騎士団の二人。俺は戻って行くソイツらの背中を横目で見ながら、パンツ一丁でボロボロの状態で放り出されたシドに声を掛けた。

 

「大丈夫か、シド?」

 

「一応平気。それにどうだった?まさに王道のモブな僕」

 

「はぁ…そんな口聞けるんなら問題はなさそうだな」

 

「なに…心配してくれたの?」

 

「まぁ、一応な」

 

そう言うとシドは信じられないものを見る様な目で俺を見ていた。

 

「…珍しいね。君が僕に対してそんなこと言うの…もしかして明日は雨…いや、嵐でも来るのかな?」

 

「あのな…無実の人間、ましてや知り合いが拷問されて気分がいい奴なんているか?」

 

流石に俺はそこまで感情が腐ってるわけじゃない…縄でキツく縛られ、警棒で殴られ、爪は全て剥がされ、挙げ句の果てには刃物に刺されていたのだ。普通ならそこまではしない、俺はあのゴミクズを今直ぐ消し去りたいくらいだが、シドからしてみればモブらしくいられるからあの程度の拷問ではビクともしないだろう。

 

「剣は持っててやるから早く服着ろ。お前の寮まで送ってやる」

 

「んー。少し待ってて」

 

シドが着替える間俺は待つ。シドとは寮が別だが今回は仕方あるまい。数分がシドが着替え終え剣を返して帰路に歩みを進める。

 

「案外騎士団も盗賊と大して変わらないな。あんな奴らのいる騎士団なんかに入るのは御免だな…」

 

「そうだねー」

 

シドが魔力を使えばこんな傷一瞬に元通りだ。しかし、そうしない理由は…

 

 

「見張りか、詰めが甘いな…」

 

「解放はしたけど、まだ疑いは晴れてないってことじゃない?」

 

そう、さっきから俺達…正確にはシドを尾行している2人の男が後をついてきていた。

 

「お前、拷問されたってのに嬉しそうだな?」

 

「いやぁ、痛めつけられる度に悶えたり泣き喚いたりするっていうモブっぽい拷問のされ方が出来たからね!彼等には感謝しないとっ」

 

「あっそう。事が終わったらちゃんと治癒しておけよ」

 

これ以上は何も言わん方がいいだろう。この厨二馬鹿にとっては怪我や死にかける事があってもモブらしくいられれば大満足なのだろう。

 

「(それに、尾行してるやつら…下手くそすぎるだろ。推理小説の読みすぎか?)」

 

ロングコートと新聞をもっていてベタな格好するのは良いが、気配も自然に溶け込めていないし視線もこちらに向け過ぎ、俺達には直ぐにバレるだろう。

 

 

そんな事を考えながら、怪しまれない様シドと何気ない会話をしている風を装っていると、前から白のローブを纏っている少女らしき人が歩いてくる。

 

「………後で」

 

それだけ去り際に呟くと、そいつは俺達の横を通り過ぎて行く。背後からの微かな断末魔を聞きつつ、俺とシドは止まることなく足を進める。それとシドを迎えにいく時から視線が気になっていたが…あいつ帰って来ていたんだな。

 

 

あの後、シドを送った後寮に戻り自分の部屋に入って、荷物と服を置きシャワーを浴びる。

この部屋は特待生が入寮出来る寮で部屋は本当に広い、こればかりは実力主義の強い制度だと思った。シドの寮は至って普通のアパートって感じだ。

 

「さて、眠る前にやっておかないとな」

 

『キューン!!』

 

シャワーを浴び終わった俺は部屋の窓を開け、ディスクアニマルの茜鷹が戻り、自動で円盤状態になると俺の手元に戻ってくる。

俺は窓を半開きのままにしてベッドに腰掛け、響鬼の変身アイテム…音又を出し、折りたたまれている音又にディスクをはめて回転させる。ミドガルに来て以降、ディスクアニマルやゴチゾウ、カンドロイドも展開しており辺りを調べてもらっている。

 

 

「成る程…地下の下水道に拠点を置いてアレクシアさんはそこに幽閉されているのか…それにゼノン先生…否、ゼノンはやはり黒か…」

 

あいつが黒と確定し情報を共有する為連絡を取ろうとファイズフォンXを手に取ると…

 

 

「流石だね…もうアジトまで突き止めたんだ」

 

すると、突然肩や背に何か柔らかいものが乗っかってきて両手が回っており、俺は背後から抱きしめられている事を理解する。

 

「久しぶり…ルイン」

 

俺の背後にいるのは紫紺色の瞳の私服姿の獣人の女の子がこちらを見つめていた。

 

「ああ…こうして会うのは確かに久し振りだな、リリム」

 

 こいつはゼータ、七陰・第六席で天賦と呼ばれている。本名はリリムでありプライベートやこうして2人っきりの時とルインとしている時は本名で呼び合っている。

 

立場上世界各地を一人で飛び回って隠密や諜報活動してる。そのためファイズフォンXを持っており定期連絡で声を聞く事もあるが、他の七陰と比べて会うことが少ないのも事実だ。そして彼女にはディスクアニマルと変身機能のない音又を渡している。いろんな環境下で諜報活動をするならディスクアニマルはうってつけだしな。

 

「シドを迎えに行っていた時から視線は感じていたが、また気配の抑えるのが上達したな」

 

「んん……どうして簡単にバレちゃうのかなぁ。アルファ様にだってこんなに早くバレないよ?」

 

耳がピョコピョコと動かしており、表情はどこか不満気だ。

 

「にしても、帰って来てたなら連絡はしろよな」

 

「ビックリさせようと思ったんだ。まっ、すぐにバレちゃったけどね」

 

「いや、昔より上手くなったな。流石だ。それと任務は順調か?詳しい事は知らないが…」

 

「いつも通り教団の調査だよ。順調かと訊かれれば、順調かな」

 

「そうか、それと何か良いことでもあったのか?かなり機嫌が良いじゃないか」

 

「まあ、ね。この国に来る前に……家族に顔を出したんだ」

 

なるほど。家族に会ってきて、嬉しそうな雰囲気を出していたのも納得だわ。

 

「元気にしてたか?」

 

「うん。お母様とお父様、弟も元気そうだったよ。……久しぶりに顔が見られて嬉しかった」

 

「そうか…ちゃんと顔を出している様で何よりだ」

 

一応リリムには家族に会える時は会っておけと念を押している。俺達シャドウガーデンの敵は強大でいつ命を落としてもおかしくない活動だ。親孝行だってしてほしいしな。

 

「皆んなルインに会いたがってたよ。時間がある時でもいいからさ…会ってあげてほしい…」

 

「わかった。流石に近いうちには無理かもしれないが、会う様にするよ…弟の方はまた背も大きくなってるんだろうな」

 

するとリリムは抱きしめる力を強くし俺は少し驚く。

 

「こうやってあんまり会えてなかったから、寂しかった」

 

「そうか…それで何の用で来た?ただ俺に会いに来たってわけじゃないだろ」

 

それが一番の目的なんだけど……鈍感…今回伝えに来たのは二つ。一つは今回のアレクシア王女の誘拐は教団の人間が関わってた。と言っても、一つ目の内容はルインはもうわかってるよね?」

 

「まぁな、けど確認のため最後まで聞かせてくれ」

 

「ん、了解。その首謀者はルインが通ってる学園講師にして、次期ナイツ・オブ・ラウンズ十二席候補…ゼノン・グリフィ、そして奴等の目的は」

 

「王族の血か」

 

「正解」

 

「で、二つ目は?」

 

「このままだと主…シド・カゲノーが王女誘拐事件の犯人として処刑される」

 

「…まっ、そうなるだろうな」

 

表面上だけの犯人をでっち上げて見せしめにするってのが奴らの考えだろう。こういうとこはホント変わんないな…どの世界も

 

「と、言う事は…」

 

「うん、それを阻止するためにも今夜すぐ作戦を実行するって」

  

「了解。準備が出来次第連絡か使いをくれ、シドの方は?」

 

「アルファ様が伝えに行ってる。それと…」

 

「ん…ちょっ、おい…」

 

そう言うと彼女は突然俺を押し倒し、胸板に顔を埋めてスンスンと匂いを嗅ぎ始める。肩、腕、足と順々に匂いを嗅いでいく。

 

 

「あの、もしかして臭いか?」

 

シャワーはしっかり浴びたんだがな…獣人は嗅覚も普通の人間よりも鋭いと聞くからしっかり洗えてなかったか?

 

「スンスン……やっぱり。私達以外の雌の匂いが沢山する」

 

「?雌?」

 

「肩とか手とかそこら辺が特に。心当たりある?」

 

リリムはいつもより少し低い声音で言うと、ハイライトが消えた瞳で此方を睨み付ける。まるで、浮気した夫を問い詰めるように…

 

「答えて」

 

「そんな躙り寄ってくるな。…学園に入学して以降女子生徒に近寄られる機会が増えてな…告白とかも何回もされた」

 

「……」

 

「後は剣術を教える事もあって…教える際に軽く触れる事もあったな…」

 

「……そう、で、その告白はどうしてるの?」

 

「丁重に断ってるよ。知らない相手にされて簡単に頷けない上困る。ましてや見ている世界も違うからな…」

 

「…ふーん」

 

まだ納得していない様子で俺の目を見つめるリリム、すると突然俺の体を抱き締めて尻尾を絡め、体を擦り付けて始める。

 

「っ⁉︎何を…」

 

「ルインについてる雌達の匂いを私の匂いで上書きしてるの」

 

「言い方…」

 

「それに、ルインの心音がよく聞こえる」

 

「……」

 

突然のリリムの行動に俺の心臓は早く鼓動している。冷静さを保ってはいるが内心かなり焦っている。こんな経験前世でもなかったからどうしたらいいかわからん!!

 

「…リリム、満足したか?」

 

「ん、満足…」

 

数十秒して満足したのかリリムは立ち上がり、一瞬にしてスライムスーツを身に纏うと俺に背を向け、窓から外に出ようとする。

 

 

 

「あ、後最後に、今回デルタのバカもいるから」

 

「デルタも来てるのか?」

 

「うん。あのバカ犬もルインに相当会いたがってた」

 

少し嫌な顔をしながらそう言い残し、リリムはベランダから飛び降りていった。

 

 

「さて、俺も準備するか…」

 

それを見てから俺も準備を始める。

ダブルに変身する際主人公はどちら側?

  • 左翔太郎
  • フィリップ
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