カレンブーケドールに幼馴染を奪われるお話(旧題:憎たらしき黄金の花束へ) 作:星組
脳破壊日記とクラシック級突入
12月26日
ドーモ。クリぼっちだった女です。
もはや日課となりつつあるインスタとウマッターの観測では、クリスマス〜出張へ行くまでのわずか2日で匂わせ投稿が出てきておりました。
クリスマスと初勝利記念を兼用したプレゼントを、お互いに贈り合った(しかもお互いにサプライズだったらしい)んですってよ奥さん。
『研修前。担当からクリスマスプレゼントを貰いました。素敵なネクタイと、フウセンカズラの絵が刻まれたタイピン。より気合いがはいりました。ありがとう!』
『初勝利祝いとクリスマスプレゼントとして、トレーナーさんからお花のアロマキャンドルと、水栽培にも使えるアロマポットを頂きました。いつもありがとうございます』
『さっそく使ってみました。今夜はダリアの香りです』
……はぁ~。キレそう。
いや、キレちまったよ。何でかって?
私が彼から最後にクリスマスプレゼント貰ったの! 小学生の頃なんだもん!
そりゃ中学上がってから照れくさくなったり、思春期特有のアレやそれで途絶えちゃったけどさぁ!
ぶっちゃけ寂しかったんじゃあ! なのにお前らはこうも簡単によぉ!
しかも! しかもだ!
花だよ。まただよ。ダリア! 白っ! 花言葉っ!
一般的には『華麗』『優雅』『気品』だ。これだけでも何かこう、しっとりとしたものを感じるのに……白は『感謝』そして……最後の一つは……!
『豊かな愛情』
嗚呼……。
あああああああああああああぁぁあっ!!
ダイゴァ! お前何なんだよモォ! 花好きな女にそんなの贈ったらさぁ! どうなるか考えなかったのかよぉ! 幼気な中学生の男性観ぶっ壊す気ですか!? しかも他にも花のキャンドル贈ったんだよなぁ? ちょっとリスト見せろや! 内容次第では貴様もペロリの野郎と同罪だ。
ペロリといえば、奴は無事クロノジェネシスの追っかけに成り果てた。
そして彼女のウマスタグラムで彼……ダイゴの姿を見かけるたびに羨ましそうに悶えていた。控えめに言ってキモい。
というか、クロノジェネシスは担当トレーナーがいないのだろうか? 見た所、全然露出が見られない。既にデビューは済ませているようなので、いるのは確定だが……まさか、いわゆる契約だけのトレーナー? いや、でも素人目で見ても実力はありそうだし、他のトレーナーも放っては置かなそうなのに。……謎だ。
まぁ、それは今はいい。問題はまだある。
なぁ? カレンブーケドールぅ……!
貴様はやはり……ダメだ。研修も含めたら出会って1年以上。そこで男にネクタイを贈る卑しい女になってたとは、このトーコの目を持ってしても……いや、わりと危険視してたし、予想もできてたわ。だってウマ娘だもん。
とにかくだ。ネクタイまでなら耐えられた。私は長女だからな。でもタイピンは耐えられなかった。そこまでして彼に絡みついていたいのか?
チョイスがフウセンカズラだしなぁ!? お前のせいで花を見るたびに花言葉調べるようになってしまったよ。どうしてくれるんだぁ……!
1月1日
あけましておめでとうを、誰よりも早く言いたいだけだったのに。
新年迎えて彼に電話したら、何か知らんがずっと繋がらねぇ。
そのまま待たされること三十分と少し。ようやく通話が出来て、何か繋がらなかったよ〜と可愛く(ここ重要)問い詰めたら……。
『ああ、ブーケと通話しててさ。一緒にカウントダウンして、そのまま少し雑談してた』
……ねぇ、初詣も一緒に行くんだよね? 新年最初に顔合わすんだよね多分。
おのれカレンブーケドールぅ!(定期)
そこは譲れよぉ! 彩り豊かなファンタジアすんのは桜花賞からだろうがよぉ!
離せや! 譲れぇ! 逃がして渡せぇえ!
……この後、実家にいた私は母と兄と妹にうるせぇ近所迷惑だと怒られました。解せぬ。
1月3日
当初の予定通り、彼はちゃんと帰省した。お食事も安定の家族ぐるみである(半ギレ)
てかこやつ、マジでカレンブーケドールの話しかしないんだが?
しかも明日帰るってどういうことぉ!? 二人きりで食事させる暇なく爆速で帰るの? タマモクロスもびっくりなイナズマステップじゃないの。そんなにあの女に会いたいの……は? 2月11日に重賞初挑戦? 目標はデイリー杯クイーンカップ?
ああ、デビューと未勝利が2着に3着の掲示板から未勝利突破。……GⅢなら賞金プラス手続き込みで参加しうるのね。
なんて私が言ったら、何か普通にびっくりされた件。
そんなに詳しくなってるとは思わなかった? ハッ、昔から物覚えがいいのは知ってるでしょうが。……まぁ、それならやることも山積みか。……ここは物わかりのいい女アピールが安定ね。
頑張りなさい。重賞勝利したら飯連れてけというおねだりも忘れない。
ずっと応援してくれてたのか? 作戦と、散々デート(断言)を袖にされている負い目による二の矢攻め。
これで差しきれるな! ヨシッ!
そんな私の内心を知ってか知らずか。彼は苦笑いしながらも、わかった。いいとこでご馳走してやんよと言ってくれた。
……マジでちょっと攻め攻めカレンチャンみたいに行かないとダメかもしれん。勝負服と勝負下着買っとくか。私もついに恋のG1に出走だ。
追記。妹に『お姉ちゃん、歳を重ねていくごとにバカになってってない? いや、個人的にはそっちの方が魅力的なんだけど』なんて事を言われた。
……お前よりにもよって姉にバカと歳の話するとかさぁ! 言っていいことと、悪いことがあるやろがい!
更に追記。
日付が変わる前に重大なミスに気づく。重賞勝ったら飯。……これ、勝てなかったらずっと飯行けないのでは?
い、いや。でも……ダイゴだ。彼はやる時はやる。だからきっと大丈夫だ。
……マジで頼むぞカレンブーケドール。私の恋はわりと真面目にお前にかかってるからな!?
1月5日
レース場ゴール近くの最前列で拳を振り上げて声援を送ってるっぽい彼とクロノジェネシスの写真が、カレンブーケドールのウマスタグラムに投稿された。
『レースに熱くなる私のトレーナーさんと、友人であり同期のクロノさんの様子です。微笑ましくて撮影しちゃいました。一年の計は金杯にありだそうです』
……私は激怒した。必ずや女心のわからぬ幼馴染を蹴り飛ばさねばならぬと決意した。
野郎、早く帰った理由絶対にこれだろぉ!? 私とレースどっちが大事なのよ!
てかやっぱおかしいだろクロノジェネシスぅ! 何でナチュラルにそこにいるんだよ! お前は自分のトレーナーと行けやぁ!
更に三人で仲良くもつ煮食ってんじゃねぇぞぉ! 私も連れてけやぁ!(血涙)
その後、クロノジェネシスが『シャッターを切らねばならぬと思ったので』というコメントと共に、彼の頬をハンカチで拭うカレンブーケドールの写真が投稿された時……。
私は内なる紅が暴走するのを感じたのである。
コメントもよぉ。誰か知らんが『どう見てもイケメンな旦那と可憐な幼妻です。本当にありがとうございました』じゃない! やめろ! 燃料を入れるなぁ!
ダイゴちょっと照れてるしさぁ!
カレンブーケドールは齢14にして雌の顔しやがって……!
ちくしょうめぇ!
2月11日
芝1600m 天候は曇り。良バ場。
現地に行くか迷いつつ、まだ呪いが残ってる可能性も考慮して中継で見守ることにした。
初詣も経たので大丈夫だろうが、念の為。これ負けたらもはや何の関係もないだろうから、大手を振って現地で野次を飛ばしてやろうと思う。
何て考えてたら、普通に負けおった。
今回は4着。掲示板にはいるが、何とも言い難い順位。
加えて……。
「クロノジェネシスぅ!」
お前もいたんかい! てかお前が勝つんかいぃ!
まさか作戦露呈してたとか……。いや、違うな。普通に彼女が強かったのか。
中継だから、敗者であるカレンブーケドールと彼の様子はしっかりとは見られない。
初の重賞は、ほろ苦く、かつそれを仲のいい友人的なウマ娘に奪われるという結果になる。ああ、何と無情なことか。
というか……。アレ? これもしかしなくても。桜花賞に出走出来ないのでは? ……え? どーすんの?
※
その日、彼とカレンブーケドールのウマスタグラムが更新されることはなかった。
一生に一度のクラシックのティアラ路線。その第一の道が閉ざされた事実はやはり重かったのか。
二人はどんな言葉を交わして、どんな表情であの後向き合ったのだろう?
クイーンカップが終わった後、私は何度もLANEを開いては閉じるをくりかえしていた。だが、結局彼にどう声をかけていいか分からぬまま夜は更け。そして……。
翌朝。私は居ても立っても居られなくて、何かに追われるように部屋を飛び出した。
人だけど走った。ウマ娘ほどスピードは出なくても、それなりの速度で駆け抜ける。割と久々に激しい運動をしたので、明日の筋肉痛が怖いが、それでも止まれなかった。そして……
「いや。いやいやいや……何してんのよ私は」
気がつけば、トレセン学園のすぐ近くまでやってきていた。