俺は書くぞ俺は!!
そんなこんなで次の日。
何事もなく目が覚めた俺は、顔を洗い、朝食を食べ終え、永琳さんを待っている
ところだった。
(昨日の月夜見の話から察するに、俺の新しい能力【霊力を変換する程度の能力】が
永琳のお眼鏡に叶ったのは間違いないだろう。
でも永琳さんは一体俺を何に使おうとしているんだろうか。
もしかしたら解剖とかされるのかも....って、だめだだめだ。)
最悪の想像を一瞬しかけたが、なんとか振り払う。
今の俺にはおとなしくしていることしかできない。
それならば永琳さんを信じるほうがまだ精神的にいいだろう。
そんなこんなで考え込んでいる間にモニターが起動し、
永琳さんが映し出された。
「昨日の疲れが残ってなさそうでなによりだわ。
今日はあなたとって良い情報を持ってきたの。」
「良い情報?なにそれ?」
俺はなんとなくデジャブを感じながらも聞き返す。
「なんと、あなたは都市の戸籍を持てるようになったの。
今日の午後からはこの部屋から移動してもらうことになるわ。」
「えっ早っ....あ」
思わず口を押える。
このことは月夜見から聞いたものであり、
そこのつながりは永琳さんは知らなかったはず。
「いや~その、そういうのって許可されるのに結構時間がかかるんじゃないですか。
だから、あの~、ほら、ちょっとびっくりしたっていうか....」
「....なんか怪しいけどまあいいわ。
私は最終手続きがあるから、少し開けるわ。
諸々はタブレットに送っておいたから、後で見て頂戴。それじゃ。」
「は、は~い。」
少々無理があったが、なんとかごまかせたようだ。
正直伝えていいのかわからないが、今はたぶんこれでいい…はず。
真っ暗になったモニターから視線を外し、タブレットを起動する。
新着のメールがあり、迷わずそこを開く。
どうやら都市に移動した後のことなんかが書いてあるらしい。
まとめるとこうだ。
・この部屋は永琳さんの実験場兼自宅の地下にあり、俺が都市に住む際は永琳さんの家の一室を借りて住むことになる。
・衣食住は保証するが、代わりに実験への協力は義務となる。健康の状態によって拒否もできるが、態度が悪い場合はこの部屋に逆戻りとなる。
・都市の中をすぐ自由に出歩けるわけではなく、最初の数か月はこの実験場兼自宅の敷地を出てはいけない。
・実験が終わり次第解放される。その後の処置は後々検討する。
だそうだ。
かなりきな臭い雰囲気もするが、今の俺は身元不明の危険人物だ。
人権があるかすら怪しい俺が衣食住を保障されるのはでかい。
それになにより、
「都市って、どんなところかなぁ。
もしかして、元の世界と通ずる部分があったりして....」
結構楽しみなのだ。
楽観的と言われるかもしれないが、自分の住む世界と違う世界が目の前にあると言われて、
興奮するなというのも無理な話である。
「....取りあえず、能力の最終確認でもしとくか。」
とりあえず落ち着くために、俺は訓練室で体を動かすことにした。
そのまま俺は着替えて訓練室へ向かう。
そして数時間がたったころ、ようやく部屋に戻った俺を、永琳さんがモニター越しに迎えてくれた。
「扉のロックは解除しておいたから、出口から外へ出なさい。
地上で合流する予定だから、すこし待ってもらうことになると思うけど。
あぁ、あとタブレットは今後使うから必ず持ち出すこと。」
それだけ言うと永琳さんは一方的に通信を切った。
準備はほぼおわっているが、最終確認をしておこう。
今の俺の持ち物は、転生した際に着ていたものと似せて作られた、パーカーにズボン。
そして永琳さんから言われていたタブレットだ。
確認をすました俺は、廊下に出て出口へと進む。
前まではどう頑張っても開かなかった出口の扉が開いており、どうやら中は
エレベーターのようになっているようだ。
乗り込むと、エレベーターは自動で起動し、強い圧力がかかる。
そして数十秒経った頃、目的地に着いたのか、扉が開いた。
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「ちょっと期待しすぎたか、まぁいいけど。」
どうやら待合室のような場所らしく、外の景色はまだ見ることができなかった。
そして待つこと数分。
自動でドアを開き、一人の女性が姿を現す。
モニター越しだったがはっきりとわかる、そう、永琳さんだ。
「一応初めましてになるのかしらね。
改めて、私は八意永琳。この都市で研究者をしているわ。」
「え、あぁ、どうも。
改めて、桜井碧です。」
「改めてよろしく、碧。
会ってすぐで悪いけど、話の続きは移動しながらしましょうか。
ここは一応私の持つ土地の一部だけど、研究所や居住区とかなり離れていて不便なのよ。
それじゃあ、私の後をついてきて頂戴。」
「あぁ、分かった。」
そういって歩き出す永琳さんについていく。
しばらく歩くと、建物をでて、外へと出た。
そこには久しぶりの緑が広がっていた。
爽やかな風が吹き、木々が広がっている。
そして向こうのほうには近代的な建物が密集しているのが見えた。
「おお~、なんか感動するなぁ。」
「一週間くらいあの部屋にいたなら、そうなるのも無理はないわ。
っと、見えてきたわ。あそこが私の研究所よ。」
永琳は苦笑しながらも、右側を指さす。
つられて俺もその方向を見た。
「うわ、でっけぇ。」
そこには、ドーム状の巨大な施設があった。
あれが彼女が持つ研究所とは、やはり彼女はこの都市でかなりの大物なのだろう。
「まぁ、この建物はいろんな研究できるようにしてるから、
必然と大きくなっちゃうのよね。
とりあえず、中に入りましょうか。」
そう言い、迷わず研究所へ入っていく永琳の後を慌てて追いかける。
中は丁度いい室温に保たれており、どでかい顕微鏡らしきものがいくつも並んでいた。
科学センターにでも来たのかと勘違いしそうなくらいだ。
少し歩くと、永琳はある扉の前で立ち止まり、中へ入った。
そのあと着いていくと、中は応接間になっているらしく、部屋の真ん中には幅の広いソファーが
大きな机を挟むようにして向かい合っている。
「少し話すことがあるから、座って頂戴。」
素直にソファに座ると、一拍おいて永琳さんは話し始めた。
「タブレットに今後のことは送ったから、基本的な説明は省くわね。
単刀直入に言うと、あなたの【霊力を変換する程度の能力】を研究に使わせてほしいの。」
「研究って、何をするんだ?
俺の安全は保障されるのか....?」
「とりあえず、話を最後まで聞いて。
あなたの能力を使えば、私の長年の目標、不老不死が実現できるかもしれないの。」
「不老不死!?」
技術が進んでいるとは思ったが、不老不死とは…
というか、龍神でもできなかったはず。
ん?待てよ....
「月夜見の力で穢れを払ってるからこの都市の人たちはもう不老なんだろ?
これだけ技術があったら、怪我とか病も直せるし、あんまり必要じゃないんじゃ....?」
「その認識は間違ってるわ。
この都市じゃ、怪我や病なんか比べ物にならないほど、妖怪の脅威は強いの。
特に、妖怪の上澄み、【大妖怪】がこの都市に襲撃してきたとしたら、少なくない被害が出るでしょうね。」
「大妖怪....」
この世界に存在する妖怪は俺が倒したあの妖怪のような強さばかりではないらしい。
というかあの妖怪ってこの世界基準じゃ結構弱い部類なんじゃ....
「そういう私も、両親が妖怪の被害に巻き込まれてしまったの。
当時は技術があまり進んでなかったから、その時の都市は、壊滅状態になった。
私の腕の中で息絶える母に、私はただ己の無力を嘆くしかなかったわ。
その影響で医者を目指していろんなことを学んでいたら、
その過程でお偉いさんの目に留まってね。
あれよあれよという間に、こんな立場まで与えられて....」
「それは永琳がすごかったからだろ、そんな言い方しなくたって....」
顔を伏せて語る彼女に、なんとかフォローを送る。
その言葉に、彼女は笑顔を作って言った。
「ありがとう、でも、大丈夫よ。
私は精一杯この都市に尽くしてきたし、大妖怪が来てもある程度は対抗できると思う。
そうは分かってるけど、私はあの時の誓いを忘れられないの。
誰も死による悲しみを迎えさせない、最高の医者になるって。
これまでいろんな研究をしても、実現できなかったけど。」
そう区切ると、彼女は改めて俺に向き直る。
「だから、あなたの能力を知った時、運命だと思った。
私の人生をかけた誓いを実現できるかもって。
だから、お願いします、私に力を貸してください。」
そういって彼女は机に額を押し付けんばかりに頭を下げた。
「ちょっちょっと、頭上げて!
今こうして生きてるのも永琳さんのおかげだし、頭を下げるのはむしろこっちだって。」
あわてて止めると、永琳さんは頭を上げて、尋ねた。
「協力、してくれるの?」
「もちろん。頭なんて下げなくても、人助けに貢献できるなら、いくらでも。」
「,,,,ありがとう。」
永琳の目が潤んだ気がしたが、彼女はすぐに目をぬぐい、立ち上がった。
「あなたの待遇も、私の権力を使って良くしていくつもりよ。
そうと決まれば、明日から付き合ってもらうわ。
覚悟はいい?」
差し出された手をしっかりとつかみ、永琳の目を見る。
「あぁ、よろしく!」
そうして、俺はこの地で初めて信頼できる人物と出会ったのであった。
やっと一区切りだ~。
こっからもっとキャラ増やしていきます。
もしよろしければ感想と評価よろしくお願いします。
月夜見さまをボクっ娘に....
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しない(現状維持)