先の展開ばっか想像しちゃってむず痒いというかなんというか。
結局、予定されていた諸々の訓練や検査は中止となり、俺は部屋に返された。
流石に罪悪感を感じる俺だったが、永琳曰く、
『壁はいくらでも直せるから気にしないでいいわ。
今回はあなたの能力の力を見誤った私の責任よ。』
と言っており、どうやらこちらに気を使ってくれていたようだった。
(最初はよくわからない人だと思ってたけれど、意外と優しい人だな。)
と永琳への考えを改めていた時
ピロン
という音が聞こえてきた。
そちらに目を向けると、どうやらタブレットからの通知音らしい。
通知の着ていたメールアプリを開けると次のように書いてあった。
≪先の実験では変に気負わせてしまってすまなかったわね。
慣れないことをしたようだからゆっくり体を休めるといいわ。
本題に入るけれど、今私が手掛けているプロジェクトが行き詰まってしまい
しばらく忙しくなるから通信できなくなるわ。
代わりと言っては何だけど、タブレットに霊力についての扱い方や
知識をまとめたメモ、この都市のルールなんかを載せておいたわ。
3日ほど開けておくことになるから、それを読み込んだり、
明日には訓練場も治ると思うから霊力の訓練に励むといいわ。
あまり問題を起こさないで頂戴ね。≫
…どうやらしばらくは自由に過ごせるようだ。
最後に釘を刺されながらも自分への扱いはよくしてくれている。
ちょうどメールを見終わったとき、机の上にまた物が置いてあることに気が付いた。
しかしどうやらそれは見覚えのないものではなく、来ていた服に、持っていたスマホだった。
服は新しく作ったと言っていたが、前にあったほつれがなくなり、より丈夫そうになっていた
「やっぱり見慣れたものは安心するなぁ。…ん?」
何か足りないものがある気がする。そう確かポケットに入っていた....
「って、龍神からの手紙がなくなってる!?」
焦る俺だったが、どうしようもないことに気づいた。
握りつぶしてくしゃくしゃになっていたのが仇となったか、
どうやらごみとみなされて処分されてしまったらしい。
かなり重要なことが書かれていただろうに。
悔しいが、あきらめるしかないだろう。
「…まあでも明日は霊力の練習できることだしまぁいっか。」
なんとか気持ちを静めた俺は、風呂や食事を済ませ、
ベットに寝ころびながらタブレットをいじる。
どうやら暇つぶし用のゲームアプリも入れてくれたようで、
夢中で操作していた俺はやがて睡魔に耐え切れず寝落ちしてしまった....
『ぉ....ぃ、あ....』
遠くから声が聞こえる。
どうやら俺を呼んでいるようで、どんどんと近づいてくる。
「起き…い、さ....よ」
重い瞼を開くと、視界いっぱいに顔が映っていた。
「お、やっと起きた「キャアアアアアアアアアア」うるさ....」
飛び起きた俺はすぐにその人と距離をとる。
「落ち着きなよ。私はきみに危害を加えるつもりはない。」
そう言いながら両手を上げている人を今一度じっと見る。
黒一色の着物を着ており、幼さが残るが永琳と同じくらい整った容姿に、
腰まで届くほどの長くきめ細かい髪を持ち、
どこかミステリアスな印象を与えさせる女性だった。
「話がきけるようになったかい?桜井碧君。」
「はぁ?!なんで俺の名前を?!」
動揺する俺に苦笑しながらも、目の前の女性は着物からあるものを取り出す。
遠目からでよく見えないが、どうやらくしゃくしゃになった紙らしい。
「それって龍神からもらった手紙!!っていうかなんであんたがもってるんだよ!」
「それはもちろん君を助けた時だよ。龍神様の力を感じて駆けつけてきたら、
君が倒れていたのさ。より力が濃く残っているのがこの紙でね。
その場じゃすぐに内容が読めなかったから、いったん私が預かっておいたんだ。」
やれやれといった感じで話す女性の話を聞きながら、
やっと冷静になった俺の頭に一つの考えが浮かんだ。
「もしかしてなんですけど、永琳さんが言っていた月夜見様っていうのは、
あなたのことですか?」
恐る恐る聞いてみると、どうやら正解だったのだろう。
笑みを浮かべながら嬉しそうに女性は答える。
「そう、私が都市を治める神にして、
君を保護するように永琳に依頼した張本人ってわけさ。」
…まだ脳が若干情報を処理しきれていないが、
とりあえずはいろいろ尋ねてみることにした。
「それは分かったんですけど、ここはどこですか?
俺はさっきまで、部屋で寝てたんですけど...」
そういいながらも改めて周りを見渡す。
見上げると雲一つなく、大きな月に、たくさんの星が浮かぶきれいな夜空が広がっている。
足元には、ススキだろうか。腰ほどの高さで、月光を受け金色に輝く植物が、
地平線の先まで広がっている。
見たこともない幻想的な景色だが、俺はこの空間から感じる力に何か既視感を抱いていた。
そう、それはまるで…
「龍神に会った空間に、似てる....?」
俺のつぶやきを聞いた月夜見様は、少し驚きながらも答える。
「へぇ、まさか気づくなんて。
そうだよ、ここはあのお方の空間をまねて作ったんだ。
もっとも、自由にしゃべれるし、景色も私がデザインしたものだけどね。
私は君と二人きりで話せるように、君の夢とこの空間をつないだのさ。」
....言っていることは全く理解できていないが、
とんでもないことをやってのけているのだということは分かった。
少し眩暈を覚えながらも、とりあえず俺はそこに触れずに話を進めることにした。
「でもなんでそんなことをしてまで俺と話そうとするんですか?
現実の俺は監視されてるから会う機会なんていくらでもあるはずなのに。」
俺の問いに、待ってましたと言わんばかりに、
少し笑みを浮かべた顔で月夜見様は答える。
「それはね、君は私の
弟
だからさ。」
一瞬思考が止まる。
オトウト? Why、なぜ?ありえない。
俺は一人っ子のはずじゃ…
「とはいっても、人間のような兄弟姉妹の関係じゃない。
私も君も龍神様から直接生み出された存在だってことだよ。
どちらかが早く創造されたかどうかってだけ。
何なら君は、他に基があるみたいだし。」
俺の反応に満足したのか、
楽しそうに話す月夜見様をみて、やっと俺はその意味を理解した。
「まさか月夜見様も同じ生まれだとは…」
「様なんてつけなくてもいいよ。
君は私の都市で生まれ育ったわけでもないんだ。
私と対等に話すことが許される唯一の人間、とも言えるだろう。」
…どうやら好意的に接してくれているようだ。
正直初対面でよくわからん人に気を遣うのは疲れるし、
ありがたく呼ばせてもらおう。
「でもなんでここに俺を呼んだんだ。
そんなに重要なことだったか?」
「あ~。実は、龍神様の存在は外部の者に
知られてはいけないって規則があるらしいんだ。
本人曰く、自分が触れないで進んでいく世界を見るのが好きなんだって。
私は創造されたときに言われたけど....
たぶん忘れてたんだろうね、あのお方はちょっと抜けているから。」
....どうやら龍神に対する印象には共感できるところがあるようだ。
少し親近感を覚えながらも、俺は話を切り出すことにした。
「とりあえず会いたい理由は分かったがそろそろ元の場所に戻してくれないか、
まだ現実でやっておくことがたくさんあるんだ。」
その言葉を聞いた月夜見は、どうやら予想外の反応だったようだ。
少し動揺を感じさせる言葉で答える。
「ちょ、ちょっと待っておくれよ。
最近話し相手がいなくて退屈していたんだ。
せっかく仕事に空きができたっていうのに、
そんなすぐ帰るのはひどいんじゃないか。」
どうやら引き留めようとしているのだろうか、
必死になって説得を試みてきた。
「...それなら、毎日は無理ですけど、
あなたの仕事が空いた日くらいならつきあえますよ。」
「本当に!!」
最初の印象はどこへやら、子供のように喜ぶ月夜見は、
まるで幼い子供を思わせるようで、少し微笑ましくなる。
「資料とかで見たときは荘厳な人だと思ってたけど、
意外と可愛いところもあるんだな。」
「かっ可愛///
いっいつもはこんな風じゃないだ、
やっと対等に話せる人ができて嬉しかっただけで…」
顔を赤くしながらも言い訳をするように月夜見は言った。
「やっぱり可愛いじゃん。」
「もういい///、
帰りたいなら勝手にかえるといいさ。
ただし、約束はぜったい破らないこと!」
拗ねたような月夜見の声が聞こえると同時に、
空間に変化が現れた。
地面が揺れ、どんどんと揺れが大きくなっている。
ついには立っていられなくなるほど揺れた時、
急に強い眠気が襲ってきて、俺は為すすべもなく意識を失った。
思い切って月夜見様を幼く書いてみました。
まぁ休みってことで浮かれたところもあったんでしょうけど。
あと、月夜見様は今のところ正ヒロインにしようとは思ってないです。
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月夜見さまをボクっ娘に....
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