進歩が見えない今日この頃
「でもこれもっといろいろできそうだよなぁ....」
さっきの出来事には肝を冷やしたが、そのまま訓練を続けることにした俺は、
朝食兼着替えのために部屋に戻っていた。
「物を斬る程度の能力」の発動条件は霊力で対象に何らかの目印を付け、
そこを切断する能力であることが分かった。
この「対象」がかなり広いようで、応用すると、
空気に目印を付け、斬撃を放つことも出来た。
「しばらくはこの飛ぶ斬撃を伸ばしてみるか。
そうなったら....技名....とか....付けてみるか?」
なんとか抑えようとしているが、胸の中のワクワクはたかまるばかりだった。
結局、俺の頭の中は名前の案でいっぱいだった。
「手刀で出すから....斬手とか?
いやでも、ちょっともじった徒手空剣もありだな…あとは....」
アイデアはたくさん思いつくが一向にまとまる気配はない。
なんとか別方向で考えようとしたその時、俺はあることに気づいた。
「そういえばこの技って剣の代用的なことだよな。
威力自体は前のほうが強かったみたいだし。
ってことは、あえて【霊刀】ってのはどうだろう....」
口では問いかけているみたいだが、
俺の心は決まっていた。
「よし、改めて、この技は【霊刀】と名付ける!
よし、そうと決まったら早速訓練場に....」
その言葉は途中で途切れる。
目の前の机にはとっくに冷めきったであろう食事がぽつんと置かれていた。
「うん…まぁ、これを食べてからだな。」
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結局食べきった俺は改めて訓練室に来ていた。
部屋を見るとさっきくっついた人形が転がっている。
「....まだちょっと不安だからどけとくか。」
人形を隅に押し寄せ、俺は壁のほうに向く。
さっきの斬撃を受けても無事だったから多分大丈夫なはず....
念のため距離を開けて構える。
腕に霊力を通し、振り下ろす。
「せいっ!!」
そして、手刀から霊力を纏った風の斬撃が…出なかった。
失敗かと思い、何度も振り下ろすが、出る気配は全くない。
「さっきは同じ感じで行けてたのに、なんでだ....?
部位強化をした腕で振ってるのに....ん?」
そこで俺はあることを思い出した。
部位強化の訓練の時、霊力を纏ったパンチをしたはず。
形は違うとはいえ、目印を付ける点では同じはず。
この違いは何なのか…
「もしかして…意識の差ってやつか。
さっきやパンチしたときは振り下ろすくらいしか考えてなかった。
でも【霊刀】や剣を使ったときは斬るイメージでやってたような…」
とりあえず、物は試しだ。
再び壁を向き、霊力を動かす。
「そんで…斬る!!」
強く思って振り下ろされた手刀からは、霊力を纏った斬撃が飛んでいき、
壁に当たって弾けた。
どうやら成功の様だ。
「よし、これでいろいろ出来るようになった。
ちょっと遅くなったが【霊刀】の訓練をはじめるとするか。」
そうして再び俺は壁に向き直るのだった。
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どれくらい練習したのだろうか。
タブレットを持ってきていないのでわからないが、たぶん3時間ぐらいだろう。
振りまくって痛くなった腕をさすりながら、俺は訓練室を後にした。
食事もとらずにベットに倒れこむ。
結局あれから斬撃でいろいろ検証しているとバリエーションもいくつかできたので、
新しい【霊刀】の技の一つとしてまとめることにした。
一つ目は【霊刀】斬
これは普通に手刀を振り斬撃を出す技だが、威力や範囲、射程どれも
この後紹介する技と比べてバランスが良く、
縦、横、斜め、どれも打ち分けることができるので、
これがメインで使えそうな技だ。
二つ目は【霊刀】突き
その名の通り、手刀で突くことで斬撃を一直線に放つ技だ。
威力や射程はぴかイチだが、範囲がかなり狭い。
斬と織り交ぜて使うことがいいだろう。
そして最後、【霊刀】獣
文字だけじゃわかりにくいが、この技は手に込める分の霊力を指一本づつに
込め、手の指をかぎ爪のように折り曲げてひっかくように振り下ろすことで発動できる。
俺は練度が浅いからか霊核から霊力を一気にたくさん引き出すことができないので、
タメが必要になったり、射程もかなり短いが、威力はぴかいちだ。
少し間合いが特殊であるが、ちょうど斬撃が重なる部分に当てると斬の5倍以上の
威力を発揮する、ロマン砲のような技だ。
実際、この技で壁が少しへこんだ。
また、この能力の理解も深めることができた。
斬撃の威力は、込めた霊力だけでなく、スピードも大事になってくる。
なので、身体強化中に腕に意識を集中させていれば、より高い威力が狙えるというというわけだ。
(これで妖怪とも結構戦えるかも....て、なんで戦う前提でいるんだ、俺。
そういうのは軍がやってくれるってのに。)
まぁこんな力を持っていたら使ってみたいのが人の性だ。
疲れからか、眠気が襲ってくる中、俺はあることを思い出していた。
(そういえば....永琳さん、明日帰って来るんだっけ....)
その思考は眠気に押しつぶされ、俺は意識を深く落としていた。
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side:八意永琳
桜井碧という少年の保護をすることになった理由は、
単純に月夜見様に依頼されたからだった。
あの時は驚いたものだ、月夜見様が一部血だらけの青年を抱えてきたのだから。
月夜見様は一方的に彼の情報や発見してきたときの状況を話し、どこかへ行ってしまった。
正直意味が分からなかったが、彼のことを調べるうちにおかしいところがいくつかある
ことに気づいた。
一つ目は膨大な霊力を保有していること。
もう一つは都市のデータベースに彼の情報が一つもないことだった。
前者はまだ飲み込めるが、後者は明らかに変だ。
妖怪ではないことはすぐに分かったが、都市周辺に住む人間はいないはず。
遠くから来たとしても、森が濃くなるにつれ霊力をかぎ取った大妖怪がゴロゴロ
出てくるだろう。そんなことは、綿月隊長クラスの力がないと不可能だ。
もしかしたらデータベースのハッキングを行うような犯罪者の類なのかも知れない。
結局私はその青年を地下で収容し様子を見ることにした。
一日目
目を覚ました彼との話を聞いたところ、
なんと都市やこの世界、妖怪のことを全く知らないという。
嘘をついている様子もないが、一応の常識は覚えているので、
単純な記憶喪失というわけでもないそうだ。
かなり面倒な用件の様だ。私は月夜見様に事情を改めて聞くためにも、
後のことは明日することにした。
二日目
結局連絡は取れなかった。どうやら事情を説明したくないようだ。
とりあえず能力があることは月夜見様に聞いていたので、訓練室で確認しようとした。
霊力の扱いもよく知らないらしく、例の試作品を使わせた。
せいぜい切れ味を上げる能力だと予想したが、なんと人形と壁を斬ってしまったのだ。
正直これにはとても驚いた。
これが切断できるのは軍の精鋭と同じかそれ以上の実力が必要だ。
どうやら彼のことは一筋縄ではいかないようだ。
その後訓練室を改修し、霊力の使い方をタブレットに送っておいた。
三日目以降は研究で忙しかったので、
やっと手が空いた今見ている。
生活面ではおかしなところはないが、注目すべきは霊力の訓練だった。
放出系は、霊力放出はできていたが、霊弾までは出せないようだ。
これは個人差があるので仕方ないだろう。
しかし、自己強化系をほとんどクリアしていたのだ。
あれは軍の実習を6年間通ってもマスターできる者は少ない
よく見てみると、彼は霊力を知覚して使えているようだ。
あれは私でも1年ほどして習得できたが、それをあの年でできるとは。
どうやら侮れないところもあるようだ。
次の日、彼は目を覚ましてすぐ、訓練室に直行していた。
そしてすぐに、手刀で斬撃を出し、人形を切断していたのだ。
突然のことで目を見張ったが、少し遅れて能力の応用だと理解できた。
改めて彼の異常さを思い知りながらも、私は処遇に頭を悩ませいた。
しかし、異常なのはそこではなかった。
画面の中の彼は、人形に駆け寄ると、直してしまったのだ。
正直理解が追い付かない。
彼の能力に直す効果はないはず。
詳細を知るためにすぐさま人形を検査にかけたが、異常は見られなかった。
しかし私は理解した。この人形はくっつけられたんじゃない。
人形の欠片が散らばっていたのは目視でも確認できた。
ならば何かを代わりに埋め、性質も合わせたということ。
(なんて規格外な存在....
でも、これをうまく使えば....)
彼女に浮かんだのは一つの計画。
常人が聞けば笑い飛ばされるような不可能だと思われていたもの。
若き日に思いついたが、諦めてしまった計画。
(これはチャンスよ。
彼を使えば、ついに手が届く....)
のんきに寝ている碧をモニター越しに見ながら、さっそく案を考え始めたのだった。
ちなみに、主人公君はへこんだ壁に能力使おうとしてやめてます。
まぁ、もしやってたらさらにガッチガチに拘束されるけど。
よろしければ感想と評価よろしくお願いします
月夜見さまをボクっ娘に....
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する
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しない(現状維持)