敏腕ハンドラーである俺は勇者の扱いを心得てる 作:バショウ科バショウ属
※共和暦4年2月10日検閲済
――前略――
貴様が掃き溜めに降り立って早々に2通目を出すことになるとは思わなかったぞ。
帝国軍の戦術勇者運用教範を送れなど言うから何事かと思ったが、どうやら私の警告は無意味だったようだな。
単刀直入に行こう。
また廃棄勇者を買ったらしいな、ハンドラー・アーチボルト。
フロス要塞の救世主が新たな剣を手にしたとトレーダーたちが謡っていたぞ。
性懲りもなく廃棄勇者を仕入れ、見違えるほど磨き上げたとな。
まったく貴様という男は……呆れて物も言えんよ。
2人体制の構築という文言を読んだ時点で、この事態は予期できていたが、帝国派閥の廃棄勇者を買うとは思っていなかったぞ。
それも帝国軍第2近衛旅団の懐刀、タチアナ・ヤスクノヴァとはな。
■■を叩き落す戦術勇者に剣術を仕込むなど無意味だと貴様も思っただろう?
近衛旅団の任務は帝国を脅かす身内の粛清だ。帝国の権力者は王国の二の舞を踏まいと必死なのさ。
まぁ、崩壊は時間の問題だろうが。
それで、貴様は目につく廃棄勇者を拾って遊撃戦隊でも作るつもりなのか?
……冗談と言い切れないところが恐ろしいな。
だが、私は言ったはずだぞ。廃棄勇者はやめておけ、と。
あれは忠告ではなく警告とも言った。
廃棄勇者に落ちた勇者を、ただの無能と判断する短絡的な塵芥は論外だ。
連中はハンドラーなどではない。掃き溜めに蓄積した汚泥の一種だ。
しかし、王国軍第1遊撃戦隊長を務めた貴様は違う。
戦術勇者とは一切の例外なく、埒外の戦闘能力を秘めた兵器であることを知っている。運用次第ではロックウェル型すら撃破可能だということも。
そして、それは廃棄勇者の烙印を押す権限を持つ我々も知っている。
能力的に問題を抱えた勇者は、そもそも天井世界で淘汰されている。
身体変質現象が生じるまで生き残った個体が、私たちの飼っている勇者だ。
ならば、なぜ能力に問題のない勇者に廃棄勇者の烙印が押されるか?
いいか、よく考えろ。
手懐けたつもりになっているなら、それは致命的な誤認だぞ。
飢えた獣に肉を恵んで得られる結果は従属ではない。
味を覚えた獣は今より多くを望み出すだろう。
その先に待っているのは、破滅だ。
貴様は優秀な王国軍士官だったが、勇者に対して感情的に過ぎる。
もう一度、警告しておくぞ、ハンドラー・アーチボルト。
廃棄勇者はやめておけ。
――追伸――
運用教範の件について、近々代金を徴収に行く。
楽しみにしていろよ。
余計なお世話だって言ったはずだぜ。
遊撃戦隊……悪くねぇ案だな。