敏腕ハンドラーである俺は勇者の扱いを心得てる   作:バショウ科バショウ属

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決闘

 最後に白い雲を見たのは、何年前だろう?

 かつて私の故郷だった天井世界(テクトゥム)が頭上に広がっている。

 世界樹の枝に支えられた浮島の群れは空を隠し、陽の恩恵を独占する。

 そして、清浄を乱す穢れと呪いだけを地上へ垂れ流す。

 

 ――歪な世界だ。

 

 地平の果てまで薄暗く、踏みつけた泥が湿った音を立てる。

 見慣れた地上世界(ソルム)の景色、私の人生そのもの。

 ただ、今日は少しだけ異なる色が混じっていた。

 

「ハンドラー・アーチボルト」

 

 黒だ。

 名を呼ばれた男は、亡き王国の黒い軍服を纏っていた。

 何物にも染まらない黒は頑なで、彼の在り方を現しているようだった。

 

「本当にいいのかね?」

「ああ?」

 

 オーガスタ家当主の物腰柔らかな問いかけに対し、その返答は粗暴。

 王国軍上級士官の制服に似合わぬ態度に面食らったことを今でも覚えている。

 私と身長は変わらないが、隣に立つトレーダーを存在感で圧倒していた。

 

「その廃棄勇者について、こちらは最(・)近(・)の(・)戦績まで把握している」

 

 古代兵器の放つ合金弾頭よりも鋭い言葉。

 それはハンドラーから支給されたバトルドレスだって易々と貫く。

 意識しなければ、緊張で身体が強張りそうになる。

 

「勝負にならないと思うのだが……」

 

 嘴のような防呪マスクから響く声は、地上世界には似つかわしくないほど優雅だ。

 しかし、ゴーグル越しに私を見る目には、これまで何度も見てきた感情が浮かんでいた。

 

 ――嘲りと少々の哀れみ。

 

 慣れている。

 私は地上世界の勇者として欠陥品だった。

 だから、黙って受け入れる他ない。

 帝国の勇者でなくなった時、私は鋭剣からな(・)ま(・)く(・)ら(・)になった。

 理不尽だと反発したこともあったが、食事を抜かれるだけで動かなくなる身体では何もできない。

 命令印の発する痛みと耐え難い飢えに比べれば、嘲りも哀れみも怖くはない。

 そう、怖くない。

 

「いいか、木端」

 

 彼は振り向きもせず、いつも通りの調子で口を開いた。

 不遜に、傲岸に。

 

 耳を疑った――この人は、どうかしている。

 

 要塞の物流を取り仕切るトレーダーを木端呼ばわりするなど、本当にどうかしている。

 彼は明日から食事も水も満足に得られない恐怖を知らないのだろうか?

 その無謀とも言える自信は、どこから――

 

「廃棄勇者じゃねぇ」

 

 音を拾う。

 不遜なハンドラーが発した声は普段通りに聞こえる。

 しかし、頭に生えた鼠の耳は微細な差を捉えていた。

 

「タチアナだ」

 

 後ろ姿は変わらず自然体だが、その声には微かな怒気が滲んでいた。

 彼は、私のハンドラーは、勇者のために怒っている。

 

 勇者(私)のため――あり得ない。

 

 都合の良い解釈だ。

 まだ使えますと言ったのは、ただの命乞いだった。

 あれを真に受けて、廃棄寸前の私に期待するハンドラーはいない。

 敏腕を自称する彼のことだ。

 その采配を疑われたことに対して憤っているに違いなかった。

 

「はぁ……心配してくれるとはお優しいこった」

 

 わざとらしい大きな溜息を吐くハンドラー。

 年季の入った軍帽を上げ、肩越しに背後へ視線を投げる。

 

「だがな」

 

 まるで猛禽のように鋭い眼差しは、オーガスタ家の剣(・)を捉えた。

 

 山羊の角、4本の腕、馬の足、そして――2対の目が私とハンドラーを見下ろす。

 

 ハンドラーの子飼い(勇者マルティナ)を上回る体躯、そして人の姿から遠ざかるほど勇者の力は強まるという不変の事実。

 オーガスタ家筆頭勇者の戦闘能力は私と比較にならない。

 地上世界を闊歩する古代兵器と渡り合える文字通りの怪物だ。

 

「飼い犬の心配をしてやった方がいいぜ」

 

 そんな勇者を一瞥したハンドラーは、愉快げに口角を上げるだけだった。

 露骨な挑発だ。

 筆頭勇者から放たれる圧力が増し、ただでさえ重い空気が沈み込む。

 ここで暴発されたら、ハンドラーを守り切る自信がない。

 

「どういう意味かな?」

 

 視線一つで従者を制したオーガスタ家の若き当主は、当然の疑問を口にする。

 それは私の疑問でもあった。

 

「言葉通りの意味さ」

 

 問いにハンドラーが答えることはなく、意地の悪い笑みを浮かべたまま踵を返す。

 どうして、そんな風に笑っていられるのだろう。

 自信過剰にも程がある。

 今から私が戦う筆頭勇者は、廃棄勇者の手に負えたものではないというのに。

 

「行くぞ、タチアナ」

「は、はいっ」

 

 話は終わったと言わんばかりに立ち去るハンドラーを慌てて追う。

 彼は軍人特有の速足で、堂々と地上世界を歩く。

 黒に泥が跳ねようと知ったことではない。

 

「……その態度、必ず改めることになるぞ」

「そうかい。3分後が楽しみだ」

 

 怒りに満ちた声を背に受けようと振り返ることはなかった。

 何者も恐れない後ろ姿が、ひどく羨ましい。

 しかし、筆頭勇者と実際に戦うのは彼ではない。

 だからこそ、聞かねばならない。

 

「あの、ハンドラー」

 

 隣には並び立たず、鼠の声が届く最低限の距離まで駆け寄る。

 

「なんだよ」

 

 歩を緩め、ゆっくりと振り返るハンドラー。

 彼は勇者と会話する時、必ず目線を合わせる。

 

 嘲りも哀れみもない、真摯な眼差し――私は足元の泥を、じっと見つめた。

 

 あの視線に晒されると、根拠のない自信が湧き上がってくる。

 それに応える実力がないと分かっていても。

 

「どうして私を決闘代理人(チャンピオン)に?」

 

 恐る恐る問いかける。

 勇(・)者(・)以(・)外(・)の(・)仕(・)事(・)を期待されることも、廃棄されることも決して望んでいるわけではない。

 

 痛み、飢え、死――全てが恐ろしいから必死だった。

 

 人間とは、期待を裏切られた時の報復が最も苛烈になる。

 ハンドラー・アーチボルトの期待を私は何度裏切って来ただろう?

 だから、彼の顔色を窺わずにはいられない。

 

「マルティナを出したら意味ねぇだろ」

 

 あくまで私たちを任務へ送り出す時と変わらない声が耳に届く。

 何を言う、と彼は笑った。

 

「それは……そうですけど」

 

 これより行われる決闘は、勇者マルティナの所有権を争うもの。

 損(・)傷(・)す(・)る(・)事態を避けるのは当然だ。

 当然なのだが、彼は勝算のない戦いを始めようとしている自覚がない。

 確実に勝利を収めるなら、フロス要塞の救世主を決闘場に立てるべきだ。

 

『アーチボルトが信じる貴女を信じる』

 

 脳裏に過る勇者マルティナの言葉。

 彼女は私の目を真正面から見据えて、そう言い放った。

 ハンドラー・アーチボルトの決定に反対しなかったのは、諦めたからではない。

 彼女もまた勝利を信じていた。

 私の実力を間近で見ていながら、だ。

 

「他人様のために戦うのは不満か?」

「そんなことは…!」

 

 否定しなければならない。

 それは帝国の剣だった頃に刷り込まれた一種の反射だった。

 他者のために剣を握れぬ勇者など存在してはならない。

 

「……それでも構わんがな」

 

 ハンドラーの口から零れた言葉が汚れた大地に降る。

 どこか寂しげで、耳に残る優しい響きだった。

 思わず顔を上げるが、再び歩き出したハンドラーの表情を窺うことは叶わなかった。

 

「どうして決闘代理人に選んだか、教えてやるよ」

 

 その迷いなき足取りが向かう先には、ここまで私が運んできた円筒型コンテナがあった。

 開拓団が各種資材を運搬するために使用し、本来は橇で牽引する。

 決闘場に掘削機や爆薬筒を持ち込むとは思えない。

 ならば、このお(・)荷(・)物(・)は何なのか――

 

「今日の主役が」

 

 ハンドラーは黒錆の滲む円筒型コンテナの前に膝を突いた。

 軍服に泥が跳ねようと気にも留めず、固定具を手早く外していく。

 そして、一息に解き放つ。

 

「お前だからだ」

 

 円筒型コンテナの内には、一振りの武器が収められていた。

 曇った翡翠色の刀身は分厚く、肉を潰すだけのな(・)ま(・)く(・)ら(・)だ。

 勇者が握らぬ限りは。

 

 それは聖剣――しかし、あまりに荒々しく暴力的。

 

 私の身長を軽々と上回る一振りは、誰の手にも負えない重量物に見えた。

 原石を打ち合わせて偶然生まれたような板状の刀身は、大剣というより棍棒に近い。

 折れぬよう、砕けぬよう、厳重に固定された柄は工具を彷彿とさせる。

 私の腰に下げている帝国謹製の聖剣とは正反対の存在。

 こんな代物を誰に使わせようというのか。

 

「私が主役…?」

 

 私だ。

 この場にいるハンドラー・アーチボルトの勇者は、私だけだ。

 明らかに分不相応と分かる一振りを前に硬直するしかない。

 

「そうだ」

 

 馬鹿げていると思った。

 でも、その圧倒的な暴力性から目が離せない。

 私の体格で扱えるはずがないと分かっていながら、振るう瞬間を想像して胸の奥で何かが疼く。

 

「あとは好きにやれ」

 

 不敵な笑みを浮かべたハンドラーが聖剣を顎で指し、思わず一歩踏み出してしまった。

 今までに聞いたことがない乱暴で、魅力的な提案だった。

 廃棄勇者の烙印を押される前から自由などなかった。

 彼は、どうして私に与え続けてくれるのだろう。

 食事も、装備も、機会も、自由さえも。

 

 高揚、そして――恐怖。

 

 廃棄勇者である私に、何を期待しているのだ。

 与えられた聖剣を壊すかもしれない。

 圧倒的な能力差から醜態を晒すかもしれない。

 この戦いに敗北するかもしれない。

 

「ハンドラー、その期待には……」

 

 否、それらは仮定ではなく確定事項だ。

 

「応えられません」

 

 震える声で現実を絞り出し、逃げるように聖剣から泥へ視線を落とす。

 

「いいや、できる」

 

 私を罵る声は聞こえなかった。

 どうすればハンドラーは諦めてくれるのだろう。

 

 違う――私こそどうしたいのだ。

 

 戦うしか能がない勇者が、己の存在価値を否定している。

 期待に応えない勇者は家畜みたいに潰されるだけだ。

 しかし、決闘に挑んだとしても未来は変わらない。

 

「お前に足りなかったのは、剣だけだ」

 

 腰で虚しく揺れている聖剣なら既にある。

 この恐怖から逃げ出したい。

 でも、逃げ道がない。

 着地点の定まらない思考が空転して、薄い身体を抱くしかできなかった。

 どうしよう?

 どうすればいい?

 

「仕方ねぇな」

 

 泥の飛び散った軍靴が視界に入り、身体が緊張で強張る。

 今度こそ廃棄される。

 恐ろしい。

 怖い。

 

「――勇者タチアナに命じる」

 

 ハンドラーの声色が変わる。

 わざとらしい軽薄な響きは消え去り、軍人然とした明瞭な声。

 ただの言の葉が、よく響く。

 

「暴れてこい」

 

 命令印は作動しない。

 

「え?」

 

 顔を上げると、既に彼は普段通りの表情に戻っていた。

 絶対的な自信に満ちていて、私の敗北など微塵も考えてくれないハンドラーに。

 

「後先は考えなくていい。俺が許す」

 

 なんて乱暴で、具体性に欠ける命令だろう。

 とても敏腕を自称するハンドラーの命令とは思えなかった。

 でも――

 

「了解…しました」

 

 身体を縛っていた恐怖は嘘のように消えていた。

 

「ハンドラー・アーチボルト」

 

 ハンドラーの命令に己の意志で頷くことができた。

 命令されてしまった以上、私には抗えない。

 何が起こったとしても仕(・)方(・)が(・)な(・)い(・)の(・)だ(・)。

 

「おう」

 

 彼の愉快そうな声を聞くと妙な自信が湧いてくる。

 不思議だった。

 円筒型コンテナに収められた聖剣を手に取って肩に担ぐ。

 見た目より軽いように思うが、趾足になった私の脚は泥に沈み込んでいた。

 

「双方、位置に!」

 

 オーガスタ家から派遣されたレフェリーの指示が飛ぶ。

 決闘場へ向かう足取りは重くない。

 こんなにも軽やかな日があっただろうか?

 決闘場――特に仕切りがあるわけでもない古戦場跡――に足を踏み入れ、オーガスタ家筆頭勇者と相対する。

 

「…廃棄勇者が相手とは舐められたものね」

 

 勇者にとって挨拶代わりの嘲笑は、私にとって猛獣の威嚇だった。

 脅威そのもの。

 でも、今は何も感じない。

 対等か、それ以上の視座で筆頭勇者を見据えることができる。

 

「弱い者虐めは趣味じゃないの」

 

 そう言いながら、筆頭勇者の目には戦意が赤々と燃える。

 引き抜かれた2本の大鉈は聖剣特有の輝きを帯び、剣身には無数の擦過痕が刻まれている。

 

「大丈夫? そんな貧相な身体で剣が扱えるかしら?」

 

 対する私は試し振りもしていない棍棒と帝国謹製のお(・)下(・)が(・)り(・)が一振り。

 帝国式剣術は棍棒の運用など想定していない。

 つまり、これまで積み上げてきた全てが無意味。

 理性は無謀だと告げているが、胸中で渦巻く感情は正反対だった。

 

「早々に降参してくれると――」

「お喋りな飼い犬ですね」

 

 ハンドラーの言葉を借りただけで、筆頭勇者は口を閉じて2対の目を吊り上げる。

 呆れるほど単純な性格で分かりやすい。

 私は何を恐れていたんだろうか。

 こんな獣、殴って黙らせれば良い。

 

「開始!」

 

 レフェリーの合図と同時に一呼吸。

 今の私に枷はない。

 唯一の取柄だった帝国式剣術に固執する必要もない。

 筆頭勇者が上体を落とすより速く、全力で、大地を蹴る。

 

「は?」

 

 間の抜けた声が眼前で聞こえた。

 加速を認識できなかったらしい。

 大きく見開かれた2対の目に、棍棒紛いの聖剣が映り込む。

 

 ――間合だ。

 

 直感的理解。

 身体の捻りも加え、右腕だけで棍棒を振り下ろす。

 切り裂かれる大気の悲鳴、そして砲声のように鈍い爆発音。

 

「ぐっ…!」

 

 翡翠色の輝きに照らされた筆頭勇者が呻く。

 大鉈を交差させることで強打を受け切り、陥没した泥の大地に立っている。

 格上の勇者が防御に徹した事実に、口角が上がる。

 

「嘗めるな!」

 

 交差させた大鉈が解き放たれ、私の身体は簡単に打ち出された。

 振り回される棍棒の遠心力に逆らわず、空中で一回転して姿勢を立て直す。

 そのまま足を揃えて着地。

 白いバトルドレスに散った泥を横目に、太い柄を両手で握る。

 もう壊す心配をしなくていい。

 

「廃棄勇者が!」

 

 追撃者の巨大な影が私の影を呑み込む。

 風を断つ大鉈が綺麗な直線を描き、頭上に落ちてくる。

 選択肢は、真正面から打ち合う。

 

「な、に…!?」

 

 硝子の砕けるような甲高い音。

 大鉈の半身が耳を掠め、翡翠色の欠片が世界を鮮やかに彩る。

 これまで体格差、能力差から避けてきた真正面からの打撃戦。

 蓋を開けてみれば、私の勝ちだ。

 

「あはっ」

 

 唖然とする勇者の顔が見られて心の底から愉快だった。

 どうして我慢していたのだろう。

 この汚れた地上世界は私の故郷(帝国)ではない。

 好(・)き(・)に(・)や(・)れ(・)ば(・)よ(・)か(・)っ(・)た(・)の(・)だ(・)。

 

「なんなんだっ」

 

 遠心力に振られる棍棒紛いの聖剣を腕力だけで方向転換、再加速。

 

「お前はっ!」

 

 お喋りな勇者に打ち込めば、4本ある腕の1本が宙を舞った。

 鮮やかな赤が飛び散り、生命の臭いが一気に広がる。

 反射的に下がったおかげで挽肉は免れたらしい。

 

「ずっと窮屈だったんです」

 

 さらに距離を取ろうと下がる筆頭勇者を影のように追う。

 疾駆で跳ね上げた泥が頬に走り、吐き出した息が白い軌跡を描く。

 勇者は再生能力を有し、対人用の帝国式剣術では殺し切れなかった。

 でも、今は違う。

 

「もう我慢しなくていいんですね、ハンドラー?」

 

 命令印は熱を発しない。

 決闘場を一等席から見下ろすハンドラーは、ただ不敵に笑っているだけ。

 彼は私の全てを許してくれる。

 

「調子に乗るなよ!」

 

 一際高く跳んだ筆頭勇者の頭、山羊の角が発光する。

 泥の臭いに混じって大気を焦がす刺激臭。

 

 勇者の一部が備える攻撃権能――おそらくは雷撃の類。

 

 腰で無為に揺れていた聖剣を抜き、逆手に持ち替える。

 帝国謹製の刃は細く鋭いが、気難しく、技量を要する一振りだった。

 も(・)う(・)必(・)要(・)な(・)い(・)。

 だから――

 

「廃棄勇――がっ!?」

 

 一投。

 筆頭勇者の胸で翡翠色が瞬き、制御を失った雷が四方へと枝を伸ばす。

 頭上を覆う世界樹のように。

 

「タチアナです」

 

 私の言葉は、きっと届かない。

 大地に激突する鈍い音がレフェリーの制止を打ち消す。

 

 ――勝利だ。

 

 目を閉じ、静かに息を吐く。

 鼻を刺す不快な刺激臭も、バトルドレスを汚す黒い泥も、今だけは気にならない。

 全身が倦怠感を訴え、空腹感に苛まれようと心地良さが勝る。

 久しぶりに味わう勝利の余韻。

 

「……ありがとうございます」

 

 傍らに棍棒を突き立て、胸の前で両手を組む。

 灰色だった地上世界が今は鮮やかに色づいて見える。

 一面の泥を彩る赤い血、光り輝く翡翠色の刃、そして何物にも汚されない黒い軍服。

 

「私を見つけてくれて」

 

 ハンドラー・アーチボルト――彼だけが私に剣を与えてくれた。

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