割れた鏡と奇跡の足音   作:何もかんもダルい

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一番好きな戦いが蓮vs司狼と刑士郎vs宿儺と波洵vs覇吐でタイなので初投稿です。「お前のことは嫌いだけど居なけりゃよかったとは言えねぇよ」な関係が好き。

 そろそろ1話から読み返して整合性確認しないとズレが怖くなってくるころ。ここまで来たら一回攻略ルート整理しないと大渋滞起こしそうですわね。もう既に起きてる気がしますけども。

結局書いてたら1万文字行く前に出したくなっちゃったのでもう気分で文量変えちゃっていいかなぁとか思ってますわよ。どうせ夢のままに駆け抜けるなら楽しい方が100倍お得ですわ!!


割れた鏡と毒と日だまり

 ダンスレッスン。レース後に行われるライブの練習。

 レースで足を酷使した後にさらに体を酷使するとか何事だと昔は思ったものだが、日和に連れられて直に目にした後はその必要性に感づかされた。

 目が潰れるほどに極大化した違和感がライブを経ることで急速に鎮静していったのだ。バカなことをしたと思ったが、意地で最後まで見届けたのは選択肢的には正解だった。

 

「位置について……よーい……」

 

 推測だが、原理的には鎮魂や神楽舞に近い。レースという極限の競争で過剰に同調したナニカを和らげ、人に戻りやすくなる……そんな風に大昔のどこかの誰かが見つけたのだろうと思う。

 それが時代を経るに従って舞や儀式からライブに変わっていったのだろう。後で調べて分かったことだが、レース後に殺気立つほど昂っていたウマ娘がライブを経ると極端に性格が落ち着く例は論文になるくらいには確認されているという。

 

「「「うー好きだっち!!」」」

 

 つまるところ、事実として身の安全のためにもレース後に歌って踊るのはこの世界においては極めて効果的であり、ついでに経済的効果も見込める一石二鳥。絵面はだいぶアホだが真面目な理屈が通るとなると適当にするわけにもいかなくなる。

 

「「「ずきゅんどきゅん走り出し――――」」」

 

 俺はトレーナーではないが、思惑からして今後も常人の手に負えない可能性のあるウマ娘(こども)の駆け込み寺になるのはほぼ確定だろう。それを考えれば、俺が学ぶべきはレースではなくライブやら何やら、要は人間的な活動の方面なのかもしれない。

 

「「「こんな想いはー初めて――――」」」

 

 俺が気を向けるべきは勝つかどうかではなく、日常へと戻ってこれるかどうか。普通のトレーナーとは勝利条件、大前提となる目標が異なる。これは心に留めておくべきで、これから本格的に動き出す以上は校門で黄昏てた時みたいにセンチになってる場合じゃないだろう。

 

「「「うぴうぴハニー321う――――fight!!」」」

 

 ミラ子は例外だとしても、自力で見つけて関わるパターンがないとは限らないのだから。最初から異常を抱えているならともかく、そうでない子供にまで変な心配をかける大人になるのは、少しばかりプライドが許さない。

 

「ふゥ――――……例は見せた。次はお前達だ」

「「ひゃい!!」」

「アファーマティブ」

「だからってトレーナーが自分で踊って見本見せるのは違くね?」

 

 何を思考巡らせてるのかって? 目の前でゴリマッチョのイケオジと細マッチョ晒した野郎のミニライブ傍観してたら思考だけでも現実逃避くらいしたくなるだろ。なんで女子が歌う前提の電波入った分かるような分からないような歌詞のダンスを「違和感」の一切を感じないくらい完璧にこなせるんだよ。俺は今トレーナーという職業そのものが怖ぇよ。

 

「薪侘トレーナー、やはり素晴らしい筋肉ですね!」

「日和トレーナーの発展途上のカラダも推せる……」

「先輩の投げキッスやっばい鼻血出そう」

「女子高には刺激強すぎるわ……」

 

 薪侘トレーナーは専属で一人を見ているわけじゃない。なのでレッスンにはチームメンバーも来ているわけだが、なんか様子がおかしい。黄色い悲鳴なら想定内だったのだが……アレだ、原稿やってるときの作家みたいなちょっと煮詰まった感じの秘めた熱量を感じる。怖い。

 

「……雨乞さん」

「やらねぇからな」

「歌詞の改稿なら……」

「歌詞が問題じゃねーんだよ」

「『INTI』……“興味深い”ね。」

「ノるな、帰ってこい。お前が一番ブレーキやんなきゃいけねぇんだぞ」

 

 こいつらはこいつらで好奇心で俺に躍らせようとしてきてやがる。ふざけんな、絶対ェやらねぇかんな。

 何が一番怖いかってマジで見本としては完璧極まってるので「違和感」を基に振り付けの指導する時にも多分役立ってしまうということだ。一生この映像頭に過ることになるのか。

 

 ちなみにセンター役だけは一番年上のウマ娘がやった。投げキッスは男がやったら流石にダメだろとなったらしい。

 薪侘トレーナーのダンス見本はどうだったかって? 奮ッ!! 覇ァッ!! 午飛翼威(うまぴょい)ッッ!! って感じだった。アレはアレでファン付きそうだったな。

 

 

 

 ヒシミラクルによる校舎案内から暫し、道中で日和が合流し、学生組のHRを挟んで初っ端からダンスレッスンということで専用の部屋に来て早速始まったのがトレーナー(男性)2名と一番ダンスの上手い最上級生1名による本気のぶっ通しだった。

 

 資料などで振り付けやら何やら確認していくのが本来の流れなのだが、今回はスティ子というド新人に加え薪侘トレーナーのチームにもあまりレッスンをやっていない中等部が混じっているとのことでとりあえず一度見本を見せることになったのだとか。綺麗に磨かれたフローリングの上で動き回る鍛え抜かれた筋肉。野郎なのでなにも嬉しくなかった。参考にはなったので感謝はしておく。

 

「はっきり言えば、覚える内容はかなりの量だ。その分歌詞も振り付けもノリと勢いを重視したものが多い……言えることがあるとすれば、ミスを恐れるな。お前たちの本領がライブ(そこ)ではない以上、多少のミスは構わんし咎められることもない」

「全部本気でやりたい、ってのも分からんでもないけどな。それでも仕上げられる範囲ってヤツを間違えると潰れるぞ、お前ら」

「「「「「はい!!」」」」」

 

 やる気に満ち溢れてんなぁ、と思う。そこに混じる微妙な下心を容赦なく暴いてきた「違和感」はもう知らん。

 

 渡された膨大な紙の束を流し読みしていくが、たとえビデオ映像があったとしても直に見ることの有用性は語るに及ばないだろう。単に歌って踊るだけでなくポジションごとの振り付けなんてものもあるので、目の前で動いてくれる見本が居るか居ないかで成長スピードは段違いになるのも分かる。

 

「指先までしっかり曲げ伸ばしすることを意識しろ。それだけでもメリハリが出る」

「はい!」

「恥ずかしいってのも分かるけど、あんまり半端にやるとかえって目立つもんだ。過剰なくらいにやってみろ」

「うぅ……はい……!」

「足ドスンドスン突くなミラ子、ソイツのせいで半テンポ遅れてんだよ。爪立ち意識してみろ」

「はぁーい」

 

 大まかな振り付けまで見ていたら時間切れになるので、そこらは勝手の分かっている上級生に任せてトレーナー二人で細かな点や目立つ癖を修正していく。意外だがスティ子とユニ子はこういうのが得意らしく、振り付け自体は既に7、8割方覚えきっている。

 

「あんまり滑らかに動き過ぎると逆に合わねぇぞスティ子。お前はちょっとロボット意識しろ。ユニ子は少し跳ねるようにステップ踏んでみな、多少ブレた方がそれっぽくなる」

「ロボット……はい!」

「『OGNC』――――“有機的”、だね」

 

 一応見てるだけというのもアレなので、3人に対し指摘できるところは指摘していく。違和感のお陰で“何がかみ合わないのか”ははっきりと見えるため、専門用語についてはうろ覚えでもなんとかなっている。後々ダンスの専門書とか申請した方がいいんだろうか。

 

「……にしても、何か随分()だな」

 

 ……多人数に囲まれて声が響いている割に、違和感による頭への負荷がそれほど大きくない。動くのも一苦労なレベルの負担を想定していたのだが、精々が僅かな重怠さに留まっている。

 試しにサングラスを外して裸眼で直接観察する。時折スティ子やユニ子と目が合うが、ミラ子の時のような無遠慮に思惟を暴いてくる感覚がない。

 

 ウマ娘という存在に囲まれ、おまけにトラウマになるほどの違和感を叩き込まれた学校という場所という二重の悪条件。最悪の場合病院送りになる前に撤退しなければならないかとすら思っていたのだが、現実としては拍子抜けなほどに負荷の少ない状態がずっと続いていた。

 

「雨乞、調子はどうだ」

「おう、意味分からん位には良いわ」

「マジかよ、またぞろ目から血でも出すかと思ったんだが」

「おまっ」

「えっ」

 

 ミラ子がなにかとんでもないことを聞いてしまった顔をする。やらかしたか。

 時間が止まったように喧騒が止んだあたり、他のウマ娘の気まで引いてしまったらしい。

 

「目から血、ですか……?」

「あー……その、だな」

「そんな心配するもんでもねぇよ。たまたま血管弾けちまって血涙流しちまっただけだ」

「ひえぇ……でも、それってやっぱり重傷なんじゃ」

「だーから心配ねぇって。何年も前だし、ちょっとばかし視力おかしくなったくらいで問題ねぇよ。バイクだって乗ってるだろ?」

「そりゃ、そうですけど」

 

 余計なこと言うんじゃねぇとサングラス越しに日和を睨みつける。違和感どうこう以前に血涙なんて異常事態はそうそう経験するもんじゃない。コイツをそういう可笑しな事に慣れさせちまった非が俺にもあるが、あまり心配させるもんでもないだろう。

 

「あんま変な心配すんなって。日和、お前もあんま不安煽るようなネタ言うな」

「……悪い、気ィ緩んでた」

「そらそら、見学してる不審者のことはどうだっていいんだよ、とっととやれや、時間無くなるぞ」

 

 手を叩いてこちらに集中していた無数の視線を逸らす。罪悪感滲ませた顔をしている日和は今は放っておく。アイツのことだ、またぞろ変に真面目だからガチ凹みしてるんだろう。ぶっちゃけそこまで気にしてないし、あとで飯奢りにでも行くか。

 

 さて続きだ、と思っているとスティ子が何やら真面目な顔で此方を見ていた。コイツにしては珍しいほど決然とした顔である。

 

「雨乞さん、軽薄な振りほど不安になる誤魔化し方は無いのですよ」

「……マジか」

「はい」

 

 ちらと視線を向ければ、ミラ子もユニ子も耳をヘタらせて此方を見ていた。へらへらしているくらいが心配させないとずっと思っていたのだが逆効果だったらしい。

 気弱と思っていたスティ子にきっぱりと注意されたばつの悪さで頭が痒くなってくる。

 

「あー……その、すまん。医者にも掛かって検査して問題ねぇってお墨付き貰ってっから、心配すんな」

「えっと、はい……」

「……」

「……私も、心配でした」

「悪かったって。ほれ、さっさと続き始めんぞ」

 

 

 

 そういえば雨乞さんのことなんにも知らないなぁ、と思った。わざわざ喋らないならそんなに気にするもんでもないのかな、とも思ってた。

 

「ミ……」

 

 目から血って、結構な大怪我じゃない? ()()()()()()()()()()()()なのと関係あるのかな?

 話したところで、やっぱりいつも通り流されちゃうのかなぁって思って聞かなかったんだけど……やっぱり一回問い詰めた方がいいのかな。

 

「……子、ミラ……」

 

 いつもはあの運動場で独りなんだよね。家族も居ないって言ってたし、もしも何かあって倒れたまま何日も見つからなかったら……

 嫌な想像がさっきから止まらなくて、上の空になってしまう。レッスンが終わって汗を拭きながら、考えるのは雨乞さんのことばっかりだった。

 期待してくれてるっていうけど、じゃあ雨乞さん自身はどうなんだろう。そりゃ、あの人にだって友達くらいいるとは思うけど……なんというか、誰にも何も知らせずに一人でひっそり死ぬような、そういうすごく寂しい情景ばっかりを思い浮かべてしまう。

 

 

「ミラ子、聞いてんのか!?」

「はい!? ……って、あれ?」

 

 ぼんやりしてたら当の雨乞さんに耳元で大きな声を出されてびっくりした。あたりを見渡すともうレッスン室には誰も居なくなってて、予鈴まで鳴っている。

 

「やばい、次の授業英語だぁ……!」

「小テストがどうこうって前言ってなかったっけお前? 色々ユニ子に教えてもらってたろ」

「それでも不安なものは不安なんですよぅ……!!」

 

 急いで道具を片付けて更衣室へ駆けていく。

 雨乞さんのこと、やっぱり後で体調についてだけでも聞いておこう……!

 

 

 

 

 ――――お前、俺の前で顔出すな。

 ――――テメェとは顔合わせたくねぇんだわ。

 

 とても曖昧で、しかし徹底された絶対命令。それは地続きだった私と“あの子”の間に溝を作る所業で、同時に“あの子”を縛る権利が私に与えられました。

 あの日以降、色々な事を考えましたが……常識的に考えて、他者の精神に言葉一つ、勝敗1つでそんな真似をすることは到底不可能。であれば、私の衝動のような何かをあの方――――雨乞さんも抱えていらっしゃると考えるのが道理でしょう。

 目には目を、歯には歯を、本能には、本能を。同じ領分のナニカであれば、可能な所業なのだと思われます。

 

 二分されてなおワタシが表出することはあり、完全に制御できているとはやはり言えません。リードを取り付けたとはいえ容易に引きずられてしまうような状態です。

 ですが、あの時の「自分で考えろ」と合わせてほんの少しだけ手がかりのようなものがある感触がずっと続いています。もう少し、何かに気づけば……そう考えるたび、ほんの少しだけ()()()()()のです。

 

「否定、なさらないのですね」

 

 あの方はもう一人のワタシを徹底的に嫌います。ですが、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ――――よく分からんが、まぁ()()()()()()()()んだろ。

 ――――あっちのお前は正直死ぬほど嫌いだが、だからって今のお前に色々言うほど節操無しでもねぇよ。

 

 “そんなこともある”。そんな投げやりでありながらも確かな受容を感じられる言葉が嬉しかった。恐れるでも、遠ざけるでもなく。それでいて真っ直ぐ“嫌い”と、そう言いながらも共に在ることを許容してくれた。

 “私”のことは嫌いでもなんでもないのでしょう。ですが、醜いと、悍ましいと、そう思っていた側面(ワタシ)。今もなお貴方を嫌い憎み恨むこの本性を、貴方は居てもいいと言ってくれた。

 

「……なんて、ことを」

 

 首輪を着けたくらいでその首筋を噛み裂かないと? 脆い口縄程度で牙など恐るるに足らぬと?――――いいえ、いいえ。そもそも恐れてすらいないのでしょう。ただ“嫌い”。徹底した拒絶は、それゆえに寛大な受容性すら孕んでいます。

 嫌いだけど、消えなくていい。嫌いだけど、存在したっていい。嫌いだけど、()()()()()()()。それは、この本能によって遠ざけられてきた私にとってはまさしく猛毒。

 

「酷い人」

 

 毒の癖に重篤な症状に至らず、ただ依存性だけを増していく様は下手な致命より猶のこと質が悪い。浴びれば浴びるほど戻れなくなるのに、啜らずにはいられなくなる。それでいて何一つ蝕まれることなく地に根を張るその姿はまさに毒草。迂闊に触れたが最後、知らぬうちに毒を飲む。

 

 ――――『ありがとう』、だね。

 ――――スティルちゃん、お菓子作りすごく上手~! 美味しくて幾らでも食べれちゃう!

 ――――おうコラお前ら、食い過ぎたら全部使い切るまで走らせるからな

 

 より最悪なのは、その毒草がさらに美しく見えてしまう花が咲き誇っていること。

 ヒシミラクルさん、ネオユニヴァースさん。あのお二人と過ごす日々はとても暖かくて、優しくて。いつもは昂る本能すらも陽光に当てられて寝惚けているような……そんな気分になるのです。ネオユニヴァースさんはともかく、ヒシミラクルさんは学園に居る間は他の方のように私にあまり気付いては下さりませんが、あの運動場に居る間は目ざとく見つけて気にかけてくださいます。

 

「あぁ、本当に――――酷い」

 

 喰らいたい――――そう思ってしまうこの本性、その異常性をまざまざと照らし出しながら、それでもそこにいていいと言ってくれること。こんな甘美な毒を知ってしまったら、どうなってしまうか分からないのに。

 

 あの猛毒を、溺れるほどに飲み干してしまったら……どれほど、満たされるのでしょう?




ヒシミラクルのヒミツ
実は、スティルインラブのお菓子を同室の後輩にもあげた。

スティルインラブのヒミツ
実は、最近寮でも育てることのできる毒草に興味がある。

ネオユニヴァースのヒミツ
実は――――『あなた』からの“尋ねる”を求める、よ。


ドンちゃん出すまでが難しすぎて次回に回してしまいましたわよ。ぶっちゃけダンスとかとっくの昔に(それこそ中等部とかで)完璧にこなして「まぁ単位獲ってりゃ出なくてもええやろ」ライン貰ってそうな気がするんですのよねあのお嬢様。
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