割れた鏡と奇跡の足音   作:何もかんもダルい

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 執筆中はウマ娘のbgm流しっぱなしなので初投稿です。

 ここから4,5話ほどは日常回を挟みたい所存ですわよ。ネタは色々あるんですけどどこでどれ切ろうかなというのが悩み所さんですわね。

 そういえばお気に入りが700件、UAが3万突破とかいうどえらいことになってて恐縮ですわ。
 妄想から始まって「こういう奇跡だってあっていいだろ」と目標を定め駆け出した道、ワタクシ正直自己満足でしか文章書けない性分なのですけれど、見切り発車の自己満二次創作にこうまで期待してくださる方々がいらっしゃると思うとキッチリやりたいことやり切って駆け抜けたいですわね。応援って確かな力があるんだと思う今日この頃ですわ。

 しみったれた話はこの辺にしてこれからもアクセル踏んでいきますわよ^~! あとついでにオリジナル作品も作ってますので出た時は宜しくたのんますわよ!

 評価や感想付けなくてもここすきは押してもらえるととっても嬉しいですわ! 確か匿名で投票できますし、正直アレが一番のモチベでしてよ! 物書きの端くれとして文章褒めてもらえるのは嬉しいですわ!


カナヅチと紅と継ぎ接ぎの鑑

「あっ雨乞さん」

「おうミラ……は?」

 

 少々用事があって学園へと顔を出した日。相変わらず何のエラーなのか黒塗りのままの三女神像の前を、もっとおかしなものが駆け抜けた。

 ミラ子だ。ただし学園指定水着の。

 

 なんで?

 

「何してんのお前」

「見ればわかるでしょ」

「普通分かる訳ねぇだろ変態」

 

 こいつにとってスク水で地を駆けるのは常識なのだろうか。だとしたら俺は自分のことを棚に上げてでもコイツの両親に物申さないといけなくなるんだが。

 

「ミラ子ー! 見つけたっスよー!」

「あっやば、そこ退いてください雨乞さん……!」

「お前それでよく俺が退くと思ったよな」

 

 追いかける声はどこか切羽詰まっている。そんでコイツの意味不明な行動。どちらにしても変な危機感が滲んでいて、俺はどちらに味方するか選ばされている。

 

であればまぁ、とりあえず。

 

「ほい」

「い゛っだだだだだだだぁ!?!?」

「確保ー!!」

 

 突進を左足を軸に90度回転で回避、そのまま頭に手を添えて親指と中指でこめかみをギュッ。人間でもかなり痛い部分を思いっきり押されてミラ子はその場で頽れる。

 その隙を突いて二人のウマ娘が飛び掛かり、体重を掛けて制圧してしまった。手馴れてんな、特に片方は何かしら武術やってた奴の動きだ。

 

「教え子に虐待なんてして恥ずかしくないんですか!」

「校内を水着で駆け回る痴女を教え子にした覚えはねーよ。どうせアレだろ、()()()()()()()()()()()んだろ、水着だし水泳とかか」

「お兄さん目敏いっスね、正解っス」

「来週に水泳のテストが迫っていまして……ですが、見てのとおりです」

「練習すら嫌で脱走したか……」

「う゛ぅ……」

 

 思いっきり腕絞められて逃げられないはずなのにまだ力を込めているミラ子。涙まで浮かんでいる。どんだけ嫌なんだよ。苦手とは聞いていたが抵抗の仕方が苦手どころじゃ無い。そういえばあまり突っ込んで話を聞かなかったな。

 

「なぁ、コイツ何でこんなに嫌がってんだよ。昔溺れたのか?」

「多分単純に嫌いなだけかと……」

「カナヅチなんスよ、ミラ子」

「なるほどねぇ」

 

 まず大前提として泳ぎ自体が上手くないのだろう。それでも授業となると嫌でもやらないといけない、けれどそもそも苦手だから練習にも身が入らず、上達しないまま苦手意識だけが増長した……と。そんなところだろうか。まぁ教育の内容的に間違ってるとかそういうことでないのなら仕方ない事ではある。人間泳げるに越したことはないのだから。

 

「ま、観念しろミラ子。これからのトレーニングにも水練は山ほど入ってくるぞ」

「雨乞さんは実際にやらないから言えるんですよ! あの息苦しさ! 辛さ! 水泳の成績どうだったんですか!?」

「息が出来なくなるのなんて日常茶飯事だったから水で呼吸妨害されるくらい屁でもなかったが」

「息をするように地獄の過去を暴露するのやめてください」

「お前が振ったんだろうが」

 

 答えた俺が悪いみたいな空気を出すな。キレたのお前じゃねぇか。

 実際のところ、あの頭が内側から抉りぬかれるような激痛を耐えるのに比べれば水中で息を止めるくらい余裕だったのはある。今どのくらいやれるかは未知数だが、まぁ潜水ならある程度行けるんじゃなかろうか。

 

「ちなみに聞いておきたいんだがどのくらい嫌いなんだ」

「たとえ補講でトレーニングに制限が入るとしても絶対嫌です」

「聞いておいて何だがトラウマも無しにそれは相当だぞ」

 

 この嫌いようでトラウマの1つも無いのは一周回っておかしいだろ。

 ……とはいえ、これで本当にトレーニングに支障が出るのもそれはそれで困る。主に俺というより薪侘さんが。

 水泳というのは全身運動だ。体全部を使うことができ、なおかつ陸上よりも負担が少ない。この点において替えが効かない、或いは効きづらい種目でもある。要は毎度毎度嫌って逃げられると面倒なのだ。

 

「雨乞さんがご褒美でも用意してくれたらやる気出すかもしれないんだけどなー」

「プールの度に用意してたらキリねぇだろうが。調子こくな」

「マッサージとかでも良いんですけど」

「整体師か俺は」

「うぅ~~……」

 

 この期に及んでドアインザフェイスみたいな真似するな、時間を稼ぐな。どんだけプール嫌いなんだよコイツ。

 

「……ん? ドアインザフェイス?」

 

 ふと、ちょっとした()()を思いついた。

 用事の方はとっくに終わっている。あとは夕方あたりに予定があるせいで時間自体は無駄に余っている。

 

 ……誇大妄想の類だと信じたいが、自分の発想に何か妙な誘導を感じて思わず三女神像(くろぬり)を睨みつけてしまう。無駄に色々聞かされたせいで冗談と投げることも出来ないのが忌々しい。修正パッチ以外で本当に何かしらやってたら一発平手打ちでもしたやりたい気分だ。

 

 

 閑話休題。チャットを起動して薪侘さんへ連絡。送信から数秒ほどで返信が来てGOサインが出た。あの人俺に“お前はトレーナーではないが”ってよく前置くけど資格持つかどうか委ねてるだけでトレーナー業務は一通りできるよう仕込もうとしてるよな。まぁいいんだけど。

 

「よし、じゃあミラ子、一つだけ聞くぞ」

「へ?」

「なぁに簡単だ、2択の片方を選べばいい」

 

 

 少し溜めを作って、サングラスを上げる。最近金色に染まった瞳でミラ子を睨めつける。

 イメージは詰め寄るヤクザ。どっちの最悪がいいか選ばせる。

 

「薪侘さんにガン詰めされるのと俺が付き添うのどっちがいい」

「後者」

「よし」

「びっくりするくらいノータイムで白旗上げたっスね」

「泳がないという選択肢を一発で潰しましたよこの人」

 

 コソ練で一回詰められて薪侘さんの怖さを知っているミラ子だからこそ通じるだろうと放った二者択一。どっちにしろ泳がされるなら怒られる前の方が良いだろ。

 

 

「がぼぼ……っぷぇ!」

「水面足でブッ叩いても進まねぇって。もうちょい力抜け」

「そんなっ、こと、ごぼぼ、言ったって……!」

 

 ミラ子の手を引いて真っ直ぐ伸びるようにしたまま泳がせる。本人の推進力に合わせて俺が後退する形だ。

 ビート板というのは確かに体を浮かせるだけの浮力があるが、コイツの場合浮けるかどうかではなく進めるかどうかが問題だったらしい。

 人間が手を引いているか、無機物に体を委ねているか。この差は意外と大きい。どんなに些細な事でも、また意識無意識を問わず助けてもらえないと思うと人間は案外すぐにやる気が萎えてしまうものなのだ。不良連中とつるんでいた時期によく理解した。

 特にミラ子は一人だとすぐやる気が散る。周りに誰かが居て気を散らす要素を潰されていると結構な集中力を発揮するのだが……まぁ、それも個性だろ。一人で出来ないならサポートしてやるなんて珍しい話でもないし、問題があるとも言えない。

 

 ちなみに俺の方は海でもないのに女学生だらけの中で肌晒すというのもどうかと思ったので、肌着代わりに水着を着けた状態で厚手のジャージを着ての着衣水泳である。ラッシュガードとかその辺持ってなかったしな。

 俺まで泳がされるならもう少し考えたが、今回はミラ子のサポートがメインなので問題ない。多少動きにくいが溺れるほどじゃない。

 

「うぅ、雨乞さんの鬼、悪魔、理事長のヒモ……!」

「よぉし雨乞さんちょっと疲れたから立ち止まっちゃおっかな~お前はそのままバタ足続行な」

「お、鬼ぃ~~~!!」

 

 この野郎人が気にしてる事ピンポイントで突きやがって。

“学園を想起する要素から離れられることが重要”らしいのでトレーナー資格取る気が無くても問題ないとは言って貰ってはいる。だがヒモは許さんぞ。一応土地の管理任されてるんだからな。断じてヒモじゃない。

 

 というかたまに見る上層部の役員に爺さんの知り合いがちらほら居るんだが、あんたら爺さんと仲悪くなかったっけ? 顔合わせるたびに罵倒合戦してた記憶しかないんだが。

 

 思考が逸れた。

 ひたすら必死に水を叩いて疲れたのか、ミラ子の全身に入っていた無駄な力が抜けてうまく浮きつつ推進力を得られるようになってきている。

 

「そーそー今の感じで良いんだよ。水嫌いなのは分かったが力入れてたら浮くのに余計に体力使って全然泳げねぇぞ。今の感じ死ぬ気で覚えとけ」

「ごぼぉ!!」

「あっはっは、何言ってっかわかんねー。ほれ頑張れ、あともうちょいで25m行くぞ」

 

 テストの合格ラインは25mらしい。つまりは片道分。往復だったら少し悩んだが、そうでないならこの調子で泳ぎ方を覚えさせれば何とかなるだろう。

 プールサイドではミラ子を追い回していた二人……バンブーメモリーとヤエノムテキが発破を掛けていた。意外と交友関係が広いというか、いろんな奴に目を掛けられているというか。本人は自分のことを普通だなんて言っちゃいるが、その実非凡な努力家ではあることは案外周りには知られてるんじゃなかろうか。

 

「ほいゴール、頑張ったな。あと3本だ」

「……」

「……ミラ子?」

「……やる」

 

 俯いて耳を絞っている。繋いでいた手を握り潰さんと力が入る。

 もしかしなくても無理矢理やらせ過ぎたかと思っていると、地の底から響くような声が漏れた。

 

「次こそ……逃げ切ってやる……」

「……ジェンティルドンナでも呼ぶか、次から」

「反則ですよ」

「フェアプレイだわ」

 

 ……もうしばらくプール付き添いは続きそうだ。逃げる前に確保しねぇと。

 

 

 

 

あら、ごきげんよう(くたばれ)

おう、元気そうだな(おまえがな)

 

 まるでそれが高貴な挨拶かのように流暢に繰り出す親指。元々今日は用事以外にも()()があったためレーンへと来ていたのだが、そこにジェンティルドンナが居た。相変わらず顔を合わせるだけで訳もなく気が逆立つ。

 

「日和の奴はどうしたよ。まさかコソ練か?」

「そのような真似をすると思って? 会議で来られないだけですわ」

「なら良かったぜ、お前の事だから誰も意見できないの良いことに無茶やってんじゃねぇかと心配でな」

「ほほほ」

「ははは」

 

 よほど熱心なウマ娘以外はもう帰っている時間帯、ビビって支障を来す奴が居ないのは幸いだった。俺はコイツのことが本気で嫌いなのだ。なんかもう本当に根源的な部分で反りが合わない。

 向こうも同じ心持ちなのか、幸いにも出会い頭に一発クロスカウンターする程度で収まっている。まぁこれもコミュニケーションだろ、多分。

 

「真面目な話ですけれど、貴方どうして此処に? いつもの運動場(なわばり)はお留守ですの?」

「真面目とか言いながら毒投げ付けんな。ちっとばっか気になってな……」

 

 レーン内に視線を巡らせる。

 

 ――――()()。予想通り。

 

「おーいスティ子、こっちだ」

「……え、雨乞さん……?」

 

 一瞬の驚愕をジェンティルドンナの耳が示す。やはりと言うべきか、コイツですらスティ子が居ることに気付いていなかったらしい。

 

 手招きに気づいたスティ子は走り込みを止めてぱたぱたと近寄ってくる。それなりの量を走り込んでいたのか、身体には汗が伝っていた。

 ジェンティルドンナを見た瞬間、一瞬“紅”が表出し掛け……すぐに鎮静化する。

 

「精が出るな」

「えぇ……少しでも、あの走り方をモノにしておきたくて」

「……学園内のどこでも見かけないと思ったら」

「普段のコイツ、びっくりするくらい影薄いからな。目の前に居るのに気づかないとかザラらしいし」

「えぇっと、その……」

「その割には貴方は即座に気付きましたわね。なにかコツでも?」

「……っ」

「あー……」

 

 ほんの数舜。確かに眼前にスティ子が来たことを目視したはずなのに、ジェンティルドンナはもう後輩のことを認識から外しかけている。

 ジェンティルドンナは勝負事には苛烈すぎるきらいがあるが、一方で平時はかなり面倒見がいい。何かしら確執があるわけでもないのに他人を苛めるために無視するような性分ではない。だというのに、ほんの一瞬で居ないもの扱いを始めているのは正直言って異常だった。

 

「あんま苛めてやんなよ、本人そこに居んだろ」

「!? ……なるほど、厄介ですわね」

「う……」

「だから苛めんなって。お前に睨まれたら誰だって震え上がるだろうが」

 

 次こそ見逃すまいとスティ子を凝視するジェンティルドンナ。その圧に怯えてか耳をピンと立てたまま動けなくなってしまうスティ子。絵面はシュールだがあまりシャレになっていない。

 

 確認したかったというのはこれだ。メイクデビュー以降、ミラ子や、時にはユニ子ですら学園内ではスティ子を認識できないことが多々あるという。それが最近は悪化しているらしく、面倒を見ようにも薪侘さんや日和ですら見つけられないアクシデントが発生していたのだ。

 俺の運動場でトレーニングをさせてもいいのだが、どうしたって設備なんかの揃いは学園(こっち)のほうが上なのだから、できるだけ学園でやらせた方が効率は良いに決まっている。

 

「……つっても、俺しか見つけられないってのもな」

「話を戻しますけれど、逆に貴方はどうやって見つけているんですの?」

 

 スティ子から視線を決して逸らさないままに俺へ向かって言葉だけ投げかける。彼女なりの配慮なのだろうが、やっぱり絵面は詰め寄っているに近い。

 

 しかし、コツか。

 教える分には構わないのだが、おそらくこれは()()()()()()()なのだろう。であれば模倣はほとんど無理筋に近い。

 

「“(くれない)色の匂いが聞こえる”」

「?」

「紅色の……」

 

 ()()()()を認識している時の俺の脳裏に浮かぶイメージを強引に言語化するとそうなる。五感から入ってくる情報量自体は常人と変わらないが、入力された情報に対する統合や接続の精度が桁外れているんだろうというのが俺と“恩師”の予想だった。

 

「要は()()()ってやつだ。数字で色を想起したり、言葉から匂いが浮かんできたりって、少しは聞いた事あんだろ?」

「えぇ……つまり、貴方の五感頼りと」

「正確には情報の連結だろうけどな。足音とか、視界の情報とか、まぁ色々なもんを組み合わせた結果そうなるんだろ。だからコツとか言われても分からんというのが答えだ」

 

 このまま影の薄さが悪化するようなら平時のトレーニングも常に俺が付いていないといけなくなる。それ自体は別に良いのだが、やはり運動場の管理が主な業務である以上連日すっぽかすというのはあまり宜しくない。

 結果として、スティ子だけ実質的に一人で練習をするということが多くなっていた。

 

「つーわけで、まぁどうしたもんかなぁとなってんだわ。今日此処に来たのは学園でどんなもんなのかってのを確認しに来たのが主だ。最近運動場でしか顔合わせてなかったしな」

「……申し訳ありません。ご迷惑、ですよね」

「謝んなって。悩むのが大人の仕事なんだから、お前は胡坐かいときゃいいんだよ」

「そういうわけには……」

 

 この気にしいな性格も問題だった。おそらくはあの制御不能の“紅”で周囲に怯えられたのが原因なのだろう。事あるごとに自罰的な言動が多く、“自分のせいで”というのを酷く気にするためか、“何が原因か”という話題に関してはひどく食い下がる。

 

 頭を悩ませていると、眉間に皺を作りながらジェンティルドンナは口を開く。

 

「抑え込み過ぎるのも問題ですわね」

「お前みたいに誰もが開けっぴろげに生きられる訳じゃねぇんだよ」

「あら、己を見せつけることに臆する理由が何処にあって?」

「……っ」 

「言ったろ、()()()()()()。お前はお前でコイツはコイツだ」

 

 スティ子も思うところはあるのだろう。己を隠すことなく自由に生きられたらどれほど良かったかと。だが、それを望むには少し傷つき過ぎた。孤立することが怖くなってしまった人間に“去るもの追わず”と言うことがどれほどの苦痛を生むか。

 

「では貴方が去らなければいいだけの事。首輪を着けたのなら最後まで手綱を握るのも義務でしょうに」

「俺一人じゃ意味がねぇだろうが。1対1だけの閉じた関係なんて最後に辿るオチは決まってる」

 

 喧々諤々。会議は踊る。このまま続けても実りのない口論になるだけだとお互い察して、話し合いは半端に幕を閉じる。

 

「では、私はここで。()()()()()()()()()()()

「おう、またな」

 

 お互いに親指で喉を掻き切るジェスチャーをして、ジェンティルドンナは帰路に就く。残されたのは俺とスティ子。

 

 正直、俺もジェンティルドンナも取るべき手段には察しがついている。要は()()()()()()が要因なのであって、解放してやらなければならない。そして、それをするのは自分ではないとジェンティルドンナは身を引いたのだ。

 

「あー、何だ、悪かったな、変なことに巻き込んで」

「いえ……こちらこそ、ご迷惑を」

「だーから気にしなくて良いんだって。結局んトコ、多分こいつは俺が原因だろうしな」

 

 結局のところ、こいつに必要なのは“紅”を愛することのできる人間だ。()()()()()

 俺がこいつの傍に立ってしまったから、俺がこいつの側面を嫌悪しているから……こいつは必要以上に抑え込んで、嫌われまいとしている。

 

――――…………思い通りにならない全部……嫌い(すき)で仕方ないの……

 

 嫌われたくない。けれど嫌い。矛盾しているようで両立してしまったそれの意味を、改めて噛み締める。

 逃げるな。避けるな。お前の道だと、俺の裡から何かが睨みつけているのを感じる。始まりが何かに誘導されたものであっても、その誘導を抜けた先で逸れることなく歩くことを決めたのは俺なのだ。

 

「……なぁスティ子。“(アイツ)”はまだ満月の日に出てくるか」

「はい……もしや」

「あぁ」

 

 言葉を選ばす言うのなら、()()は聞き分けのないクソガキだ。他人を蹂躙することに抵抗のない悪童。手の付けられない狡猾さを備えた畜生。

 

 だが、だからこそ。

 

「話付けねぇとな」

 

 ここまで拒否し続けた分くらいは、きっちり口を開かないと。




 不発弾処理が一回で終わる筈無いんですのよね。雨乞がスティルの求める“あの方”でない限り何発でも埋まり続けるんですから。
 でもそういうの埋まる度に処理するのって大事だと思うんですの。

 ミラ子は日常担当ですわよ。いっぱい後輩可愛がらせるためにも要らぬ不安要素はちゃっちゃか解きほぐすのが雨乞の仕事でしてよ。オラッ働きな理事長のヒモ!
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