割れた鏡と奇跡の足音   作:何もかんもダルい

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この創作書いてるときのテーマソングがブレイブルーの深蒼なので初投稿です。
ファンタジーって言うのは転げまわりたくなるような奴を溺れるくらい浴びるのが一番気持ちいいんだよね。

雨乞のヒミツ その?
実は、調子のいい日は無い。


割れた鏡と星見の宇宙

 ――――この広大な宇宙には、まだ我々には観測できない未知の生命体が存在する。

 異星人、或いはアストラル体と呼ばれるオカルト。

 

 だが、そんな存在達からみてもイレギュラーたりうる何かが居るとしたら?

 

 たとえば――――合わせ鏡に移った全ての像を、同時に観測することができる。そんな()()を有していたとしたら?

 鏡の向こう側という実在しない世界を、存在しないままに捉えることができるのだとしたら?

 

「『ERROR』……『ERROR』……『APTS(アポトーシス)』・『NCRS(ネクローシス)』……“何の”、あるいは、“誰の”?」

 

 屋上で天に手を広げる少女――――ネオユニヴァースが理解したのは、あの青年が「何かを壊すために現れた」ということ。本来存在しないはずのイレギュラー、並行世界論を用いても尚出現しないはずの役割が現れているということ。

 ネオユニヴァース自身、心当たりは有るには有る。だが、それ以上に“そんな大仰な役割が必要なのか”という疑問もある。端的に言って過剰戦力と言う他ない。家に出た鼠を駆除しようと考えて大陸間弾道ミサイルを持ち出す所業。それが、彼女の中に浮かんだイメージだった。

 

 端的に言って、出番がない可能性の方が極めて高い。それ以上に正直どうでもいい。

 ネオユニヴァースは常人には見えないモノを感じ取ることもあるが、基本はただのちょっと変わっただけの少女だ。頭は良いが、世界を救おうとか未来を守ろうとか、そんな大きすぎることを考えるつもりは端からない。

 

 ただ気になるのだ。危険性云々などではなく、純粋に。

 彼はどんな人なのだろうか。どうして()()()()()に居たのだろうか。

 

 少女らしい純真な好奇心が、彼女の中で芽吹いている。

 

「……あ」

「よう、お前さんが俺のこと助けてくれたんだって?」

「……アファーマティブ」

 

 現れたのは、はっきりと見覚えのある青年。 

 確かに自分が助け、保健室へ担ぎ込んだ男だった。

 

 

 

 

 ――――時間は少しばかり巻き戻る。

 

 

「ぐぉ……」

 

 目が覚めた時、真っ先に感じたのは痛み。意識を失う前の激痛を思い出して思わず仰け反ってしまったが、常識的な範囲の鈍痛で収まっている。この分ならしばらくすれば治まるだろうと分かる。

 

 次いで、ブレ続ける視界。例の如く幻覚は続いているが、壊れかけのテレビ程度には収まってマトモに周囲を把握できるようになっている。幻聴の方はひとまず消えてくれたらしい。静寂の中で鳴く虫の声がクリアに聞こえていた。

 となれば、次に気になるのは此処が何処かという話。運動場の居住スペースではなさそうだった。単純にベッドが綺麗すぎる。ついでにウチのベッドには目隠し用のカーテンは付いていない。

 点滴やら何やらの処置がされているわけではないから、ベッドから出ても問題なかろうと勝手に降りてカーテンを開ける。

 

「よう、具合はどうだよ雨乞」

「……あぁ、いつも通り最悪だよ、日和」

 

 見知った奴の見知らぬ姿がそこにあった。高卒でトレーナーになった天才がコイツだ。寄りにもよって同じタイミングで中央のライセンスを受験し、高卒の癖に成績と精神性にモノ言わせて合格をもぎ取りやがった親友にして腐れ縁。

 少し前までスーツに着られているようなちんちくりんぶりだったのが、今じゃやけに似合っている。また背が伸びたんだろうか。相変わらず成長期の概念が迷子な男である。

 

「思えば、俺とお前って目指す道はだいたい同じなのに結果は真反対だったな」

「ンなこと言ってる場合かよ新進気鋭の高卒トレーナー?」

「うっせぇ、ダチが担ぎ込まれて心配すんのがそんなに奇特なことかよ」

「ホモみてぇなこと言ってんじゃねぇよ気色悪ィ。……んで、お前が居座ってるっつぅことは……」

「そういうこった、学園の保健室だよ。病院ぶち込んだって異常なしで蹴り出されるのが目に見えるんでな」

 

 頭が割れるを通り越して抉られるほどの痛みを味わっているというのにいざ検査してみれば異常なし。それ故に処置も無し。「違和感」の厄介すぎる点の1つだった。とはいえ、俺が意識を失った時に居た“誰か”は間違いなくコイツじゃない。気持ちの悪い感想だと分かっちゃいるが、触れてきたのは間違いなく野郎の手ではない。

 

「無駄話はとりあえずここらにしとこうや。……んで、誰が俺を担いで来たんだよ。あん時居たの多分お前じゃねぇだろ」

「そうだな。俺が此処に居たのはお前が担ぎ込まれたのを知ったからだ。そんで、お前を米俵よろしく担いでた張本人だが――――」

 

 そこまで言うと、がらりと音を立てて保健室の扉が開かれる。

 そこに居たのは……

 

「ワォ、あんしーん♪」

「……アレ?」

「いやアレはただの不審者だ。目を合わせるな、刺されるぞ」

「通報しろよ」

 

 じゃあ何なんだよアレは。パピヨンマスクに真っ赤な服に白衣ってどういう組み合わせだよ。つーか手に持ってるの何だ、ダーツか? 妖怪か?

 

「アレとは失礼ね、笹針の至宝、安心沢刺々美よ」

「有名人か?」

「不審者としてな」

「通報しろって」

「しても逃げ切るんだよ」

 

 妖怪じゃねぇか。

 

「ちなみにお前に鍼治療を施した」

「あのダーツで?」

「失礼ね、人間相手にコレは使わないわよ」

「何でその一点だけ常識あんだよ」

 

 本当に何なんだコイツは。というか人間に使わないなら他に何に使う気なんだよソレ。

 色々聞きたいことはあるが、まぁこの不審者は今は良い。

 

「んで、だ。丁度良かった。そこの不審者はまぁもういいとして、お前に話があるんだわ」

「ワォ、辛辣☆」

「断っていいか?」

「聞けよ」

 

 気持ちはぶっちゃけ分かるが聞いてもらわないと困る。

 なにせ理事長直々の依頼なのだ。今もあの話を思い出そうとすると頭が痛むが、それで忘れようなんて言えるもんでもない。つまりは無理やりにでも聞かせないと俺も理事長も困る。

 

「理事長サマ直々の()()()でな。俺を裏口使ってでもトレーナーに仕立て上げて面倒見て欲しい奴が2人いるらしいんだわ」

「成ればいいだろ、トレーナー。お前の事だ、どうせ知識の方は問題ないんだし」

「アホ。ンな自分(テメェ)に言い訳する余地作る道歩いてたまるか」

「彼って意外とストイック?」

「納得しないと絶対受け入れない超筋金入りの偏屈です」

「おうコラ似たもん同士だろうが遺伝的に筋金入りの女難野郎」

 

 何故か知らんが居座っている不審者が茶々を入れてくるおかげか、変に肩肘張らずに話ができる。……とはいえ、日和がコイツを蹴り出さないのはなぜなのか。というかこの話聞かせていいんだろうか?

 

「コイツ口の堅さにだけは定評あるからな。学園に出没しても秘書さんに追い回されるだけで済んでるのはそういうとこもあるんだろ」

「これが信頼よ、お坊ちゃん」

「諦観の間違いだろ」

 

 いちいち気が抜けるなコイツ。

 

「んで、だ。話は戻すが俺はトレーナーになる気はぶっちゃけ無ぇ。今回の一件で察したが、仮に成れたとしてもそのうち頭だけ塩茹でになって死ぬ」

「あー……なんか察せて来たぞ。お前を外部協力者にしたままその問題児に担当貼り付けて体裁整えたいんだろ」

「ま、そういうこと。この学園に在籍してる以上レースへの出走だってあるだろうし、そこらの調整だっている。俺は俺で面倒自体は見たっていいが、そもそもの基礎トレだの何だのっていうノウハウと設備がモノを言う部分はコッチである程度やって貰わんと困る。だからトレーナーが要る」

「……で、選ばれたのが俺と」

「新入りだから変な柵もねぇだろ?」

「あるんだわこれが」

 

 心底頭が痛いという顔で眉を顰める日和。予想通りだが、こういう顔をして貰わないと困る。ここであっけらかんと首を振るなら棚上げしてでも責任感という言葉について問わなきゃならん。

 

「まず一つ。俺は1年ちょい経ってるとはいえ新人で、あと高卒。割と特例だ。それこそ今の理事長みたいなぶっ飛び人間でもなけりゃこんなとこに居ない。もうこの時点でイレギュラーなんだよ、俺。ぶっちゃけ面倒見てくれてる人にも迷惑掛けまくってる」

「だろうな。俺が選ぶ側だったら高卒の時点で頭抱えてるわ」

「だろ? ただでさえそんな奴が指導教官やってるベテランから担当一人任されてんだぞ」

「は? 担当いんのお前?」

 

 過去一番の驚愕だった。中央という実質的な女子高に居るからか、こいつは自分の仕事について基本口を開かない。全部抱え込もうとする癖があるのもそうだが、それ以上に10代女子の人生預かる側に居るのだ。変な噂が漏れても困るんだろう。

 

「そいつ、名前は?」

「……バラさねぇか?」

「バラす訳ねぇだろ、俺のこと何だと思ってやがる」

「…………ジェンティルドンナ」

「……………………あー、なるほどね」

 

 どでかい舌打ちが出そうになるのをギリギリで抑え込んだ。例の黒歴史事件の目撃者にして、あの運動場を欲した連中。日和の幼馴染、そして――――

 

「口だけはデケェ、コケにされて笑われてるテメェを助けもしなかった連中の娘かよ。よく受けようと思ったな」

「それはそれでこれはこれだ。というか、あの一件で一番キレてるのお前なんだよ。俺はぶっちゃけもうどうとも思っちゃいない」

「そうかよ。あんだけ唇噛み締めといてよく言えたな。精々首輪付けられないよう頑張れや」

「お金持ちと相性悪いのかしら、彼」

「そういう訳じゃなくて友達思いなんで真っ先にキレるんすよ、昔から」

「聞こえてんぞ」

 

 思い出したくもないのでもういいだろう。自分がやらかしたからというのもあるが、それ以上にコイツの悪口が鮮明に蘇ってきて精神衛生的にかなり悪い。

 

「話戻すが、ぶっちゃけお前に担当して欲しいのがさっきの含めて()()いるんだわ」

「受けれるわけねーだろ舐めてんのか」

「だよな。知ってた」

 

 ただでさえ1人でいっぱいいっぱいという感じがあるこいつに追加で3人、まぁ冷静にならずとも無理だ。となると、レースに出る場合はどうにかしてトレーナー無しの単独出走をさせることになるんだが……

 

「出来るには出来るけど、アレ相当面倒じゃなかったっけ?」

「まぁな。トレーニングしながら自分でスケジュール組んで調整して、申請した後も自分で移動の足やら部屋やら手配して……やれないことも無いだろうけど、ぶっちゃけ忙しすぎる。子供が一人でやり切るもんじゃない」

「だよなぁ……」

「スケジュールだけなら俺でも見れるが……トレーニングは流石にな」

 

 どうしたもんか、と2人そろって考え込む。内情を知らない二人は兎も角、ついでに突っ込もうかと思っていたミラ子に関しては確実に無理だ。学業とトレーニングのついでにスケジュールやれなんて言ったらアイツの頭爆発するぞ。

 どうにも手詰まり感がある。他のトレーナーに任せようにも、上で止めてる情報をバラすことになる以上使える人材は限られ、ついでに関係性があるかという点でも面倒で……

 

「私が手を貸しちゃいましょっか?」

「「は?」」

 

 何を言ってるんだコイツは。

 

「少なくとも移動の足に関しては私も助けになれると思うの。スケジュール組みはトレーナーさんに何とかしてもらわないといけないけど……」

「あーなるほど、そういう」

「ついでに言えば文字通り足で稼いで信用もゲットって算段よ!」

「台無しだなコイツ」

「鍼で稼げよ」

 

 となれば、最後に残るのは実際のトレーニング。これに関しては、正直取れる手が一つしかない。つまりは他のトレーナー、できれば複数人の面倒を見た経験のある、口の堅いベテランに任せる。だが、そんな都合のいい人材は……

 

「……仕方ないか。理事長に話して、そんで俺が先生に頭下げる」

「マジかよ。酒瓶で頭割られねぇか?」

「他人の先生の事なんだと思ってんだお前」

「新人にいきなり実地経験積ませようとするやべぇ人」

「クソッ否定できねぇ……!」

 

 打てば響くような返しが小気味よくていつまでも続けたくなるが、問題が問題だ。いつまでもふざけてはいられないだろう。

 

「実際のとこ、俺に任せたいっつってたのは多分マジのトレーニング方面じゃねぇ。多分……」

「『違和感』のことだろ? 常人じゃどうしようもない領域、あるいはメンタル面の話をお前に何とかしてほしいってことだ」

「まぁこれでトレーニングも面倒見てくれって言われたら正気を疑うけどな。あくまでそっちはついでらしい」

 

 色々問題はあるが話は纏まった。となれば、俺は俺でやるべきことをやるだけだろう。

 窓の外はもう真っ暗、学生の門限なんて過ぎている。だが、同時に直感する。()()()()()。そこに、極大のノイズがある。

 

 特異点、という言い方が正しいだろうか。ウマ娘含め、マトモな人間からは僅かにズレた位置に立っている、或いは立ってしまった何かがそこに居る。

 

「んじゃ、行ってくるわ。理事長には俺の方から連絡するか?」

「さっきも言ったろ、俺がやる。お前はお前で別方面から女の子の人生背負うんだから、荷物持ちくらいさせろ」

「……ありがとよ」

 

 保健室を出る日和に続いて、俺もまたその場を後にする。

 持つべきものは友というが、こいつが親友で本当に良かったと心の底から思った。

 

「……ところで、3人っつったよな? あと一人は?」

「ただのズブいミラ子」

「誰だよ」

「ヒシミラクルちゃんのことかしら」

「「何で知ってるんだよ」」

 

 

 

 時間を元に戻そう。雨乞はまずは近場からと学校の屋上を訪れていた。

 そこに居たのは私服姿のネオユニヴァース。その瞳は雨乞を見透かすように、あるいは射抜くように見つめている。

 

「ありがとよ、ぶっちゃけ死んだかと思ったし。手間かけさせたわ」

「……スフィーラ?」

 

 仄かに灯った感情は喜び。何故なのか、と聞かれてもきっと彼女は困った顔をすることだろう。何せ、ネオユニヴァース自身がその想いを抱いた理由が分からない。

 お礼を言われたから? 間違ってはいないだろうが、何となく違う気がする。

 思考を巡らせようとしたその瞬間、彼女の顔は驚愕に染まることになる。

 

「は? 何でお前さんが()()()()んだよ」

「!」

 

 通じた。何の前情報もなく、初対面で。

 その事実に、心の内で膨らむものがあることをネオユニヴァースは感じ取る。()()()()()()と。

 

「『CNCT(コネクト)』……“交信”、してみる?」

「何か言いたいことでもあんのか?」

「……! 貴方の所属は……“養成者”? トレー……」

「いや、俺は何の資格もねぇ無職だよ。ちょっとばかし理事長からお仕事貰ってるだけでな。そのお仕事っつーのがお前の面倒見ろって話だったワケ」

「……“求める”をしたい。“競合”の“観測”……その先の……」

「待て待て待て、トレーナーじゃねぇってさっき言ったばっかだろ。お前のレースの面倒見るのは俺のダチだ。……んで大前提だが、お前さん、レースには出たいんだな?」

「アファーマティブ」

「そいつは僥倖。第一段階はOKだな」

 

 間違いなく通じている。今まで分からないと言われていた自分の言葉が、いとも容易く。それ自体は初めてではなくとも、コミュニケーションを取ろうとしてくれる人間が少なかった彼女にとっては驚愕と歓喜が同時に来る出来事だった。

 その事実が嬉しくなり、ネオユニヴァースは言葉を紡ごうとする。だが、それはすぐに遮られた。

 

「んじゃ、こっちはこっちで準備がある。ぶっちゃけマジで面倒見れるかどうかまだ分らんとこはあるが、まぁコソ練したいならヒシミラクルってヤツに場所聞け。案内されりゃ入ってこれるからよ」

「アファーマティブ……“求める”をするよ」

「何をだよ」

「……スフィーラ」

「だから何をだっつってんの」

 

 変な奴だな、早く寝ろよ、と。まるで言葉が通じるのが当たり前かのように、何一つ気にすることなく雨乞は去っていく。

 

「……スフィーラ、スフィーラ……!」

 

 その姿を、ネオユニヴァースはただじっと見つめていた。

 




ミラ子ォォォォ! ミラ子居ねぇぞミラ子ォォォォォ!!
何だったら次スティルだぞミラ子ォォォォォ!!!

雨乞がバチボコこき下ろしてますが作者はウマ娘全員好きです。可愛いよねジェンティル。
おユニも可愛いしスティルも可愛い。ミラ子は癒し。めにしゅきの歌唱で脳みそ溶かされました。
ダンツとかケイちゃんも出してぇなぁ。
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