【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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ヤドリギの魔女

 リーフィが、アルミラージの肉を貪り食っていた。

 

「はぐっ、もぐ、もぐもぐもぐ……ぱくっ、もぐっ、あぐっ」

 

 すさまじい勢いだった。

 

 確かにこの世界では、魔力で燃費が悪い分、女の子の方が食が太いことが多い。しかしそれにしたって、十キロは優に超える肉を瞬く間に食べて行く姿は圧巻だった。

 

「お、おい……、リーフィ? も、もう少し落ち着いて食べた方が……」

 

「ぱくっ、ふぅ、ごちそうさまでした」

 

「あ、食べ終わった……」

 

 言うのが遅かったらしい。にしても、と俺はリーフィを見る。あまりにもパクパクいくから、リーフィのお腹がポッコリしてるんだが。妊娠何か月目ですかみたいなお腹だ。

 

 それを見て、大分今まで我慢させていたのか、と申し訳なくなる。言ってくれればもっと食料確保できたのに、と。

 

 しかし、そういう事ではない様子だった。

 

「では、始めます」

 

「え?」

 

 リーフィが髪飾りに触れる。すると、植物の髪飾りが光り出す。

 

 直後、拠点の外の樹木が、ざわめくのを感じた。雨の中で揺らめき、騒ぎ、島全体で鳴動していた。

 

 そこで気付く。リーフィの膨らんでいたお腹が、見る見る内にしぼんでいく。そして髪飾りの光が収まる頃には、リーフィの体型は元に戻っていた。

 

「……よし、掌握成功です。魔獣島の植物は、全部ワタクシの支配下になりました」

 

「は?」

 

「元々半分くらいは浸透してたので、ちょっと急げばこんなものですけど。では次に、情報の収集、精査に入ります」

 

「え? あ、うん」

 

 再び触れ、髪飾りが光る。今度は点滅するように。それが十数秒。リーフィは言う。

 

「この島に生息するバジリスクは、38匹です。地龍は1頭。他の雑多な魔物は障害にならないので、ここでは省きます」

 

「……マジかよ」

 

 いや、強いなとは思っていた。思っていたが、想像を超えてきた。

 

 森を支配するとは、こういう事か。そう思う。ただ木々を操るのではない。森の中の情報すら、すべて握るのがリーフィであるのか、と。

 

「……時間さえあれば、実は最強だろお前」

 

「当たり前なんですけど。『ヤドリギの魔女』がいる森は侵入者を許しません。そして魔獣島は、もうワタクシの森。侵入者は、バジリスクたちの方なんですからね」

 

 でも、とリーフィが俺を見る。

 

「バジリスクは、ワタクシには正直天敵です。森そのものがバジリスクたちに敵認定されれば、向こうは森全体を石化させるだけ。地龍は任せて欲しいんですけど、そっちは……」

 

「分かってる。連中は、俺の獲物だ」

 

 俺は装備一式を身に着ける。最後に暗視ゴーグルを装着して、こう続けた。

 

「リーフィは、俺の補助と、俺の指示したタイミングで、孤立したバジリスクを捌いてくれ」

 

 視界の闇が晴れる。これで、歩き慣れない場所でも戦える。そう俺は笑い、言った。

 

「ここから先は、俺の狩場だぜ」

 

 

 

 

 

 激しい雨の中で、俺は森の中に立っていた。

 

「ふぅぅううう……」

 

 深く息を吐く。右手には明鏡止水。左手には蛍火デコイとグラップリングフックを備える。

 

 パキキ……、と木々が動く気配がある。暗視ゴーグルで見れば、周囲の木々が、最初の目標はあっちにいるぞと、枝の先で示している。

 

 思うのはシアのこと、リーフィのこと。どちらも俺の大切な友達だ。だから、守り抜く。

 

「さぁ」

 

 グラップリングフックを構える。

 

「始めよう」

 

 そして、射出した。

 

 グラップルが飛び、木々に刺さる。直後俺は、強い力で紐に引かれて宙を舞った。

 

 木々の間を細やかに移動する。グラップルの扱いは、森の中が一番難しい。遮るものが多いから。だが、俺なら何とか使いこなせる。

 

 そうして飛んでいると、視線の先に一匹目のバジリスクを見つけた。その先に、数匹続いている。バジリスクの群れの一つなのだろう。

 

 救助隊はこのままだとバジリスクの餌になる。だから根絶しなければならない。

 

 シアに、誰かの命を犠牲にして助けられたと思わせないために。速やかに助け出すために。

 

 蛍火デコイを、放つ。

 

「ギィ……? ピギッ」

 

 一閃。飛び掛かりながらの斬撃で、バジリスクは簡単に首を落とした。俺は空中で蛍火デコイを回収して、こちらに気付きかけた数匹へ向けて投げる。

 

「ギッ」「ギィッ」「ギ?」「ギャギャ」

 

 蛍火デコイがバジリスクたちの視線を釣る。俺はバジリスクたちの居場所を分析する。

 

 ここは高所。木の上だ。バジリスクたちはそれぞれ木の枝に絡まるようにしている。その内三匹は、運よく一列に並んでいた。

 

 ならば、話は簡単だ。俺は指で、首を掻き切るジェスチャーをする。

 

 直後、奴らの周囲の木々の一つが、ギギ、と動き出した。俺はそれに合わせて、バジリスク三匹の足元をグラップルで駆け抜ける。

 

 その最中で、俺は明鏡止水を三度振るった。

 

「ピギィ」「ピギャッ」「ギャヒッ」

 

 足元の枝を一斉に失ったバジリスクたちが、地面に叩きつけられ死んでいく。それとまったく同時に、動き出した枝に挟まれて、最後の一匹がつぶれて死んだ。

 

「グギャ」

 

 直後俺は、空中をグラップルで駆け抜け、蛍火デコイを回収する。

 

「これで五匹。群れ一つ殲滅」

 

 無音。速攻。極めて速やかかつ痕跡を残さず、俺たちはバジリスクたちを殲滅する。

 

 これが、俺たちの策だった。バジリスクは徹底して、情報戦(かくれんぼ)で狩っていく。

 

 リーフィの血統魔法は強力だが、タメがいるのと、一度に一回しか動けない。どれだけ離れていても使えるが、リーフィ頼みでは勝てないというワケだ。

 

「次の群れに向かう」

 

 パキキ、と周囲の枝が、次の群れへと案内してくれる。俺はグラップルを飛ばし、再び闇夜を舞った。

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