【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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本丸の秘密倉庫

 無事屋敷から脱出した俺は、手詰まりで動けずにいたパンテラ、住む場所がなくパンテラのアジトに同居していた五ねぇに、最後の秘密倉庫の場所を伝えていた。

 

「なっ、どうやってそんな情報を掴んだんだい?」

 

「グリーディアの屋敷に忍び込んで」

 

「何やってんだいテクト!」「テッ君!? 何やってるの!?」

 

 危険なことをして、とパンテラ、五ねぇの二人からこっぴどく叱られたのは置いておくとして、場所が分かったのなら、と早々に最後の秘密倉庫を襲うことになった。

 

 魔女と呼ばれた少女、ブランの話はしなかった。俺もまだ咀嚼できていない出来事だ。

 

 一方で、待ち伏せの話はしっかりしておいた。

 

 とはいえ、それも大したことではない。大貴族の正妃なら多忙なもの。用事が入っている裏で事を進めればいいだけの話だ。

 

「じゃあ、この日にまた査問で向かうんだな」

 

「ああ、その予定だ。……悪だくみは楽しいか? テクト」

 

「いっ、いやぁ別に、そんなことはハハハ」

 

 チャミーは予定を聞き出した俺に、肩を竦めて「ま、好きにやれ」とだけ言った。

 

 そうして、グリーディアのいない時間を狙って、最後の秘密倉庫を襲う準備が整った。

 

「……よし、行くぞ」

 

 夕方。赤々とした夕焼けが港町を照らし出す時間。秘密倉庫前の物陰で、仮面をかぶった俺たちは身を潜めていた。俺の号令で同時に飛び出し、二人立つ見張りに襲い掛かる。

 

「……? っ!? てっ、てきしゅ」

 

「静かにしてろ」

 

 俺は左腕を構える。放つはグラップリングフック。

 

 ただし―――ただのグラップルではない。

 

「エレクトロ・グラップル」

 

 発射ボタンとは別のスイッチを押しこむ。それだけでグラップルのワイヤーに電流が走る。

 

 それは素早く見張り二人に触れ、感電させた。

 

「アガガガガガガッ」「ぎゃっ」

 

 バチンッ、と電気の弾ける音を立て、見張りたちが陥落する。掛かった時間は僅か0.5秒。不殺の攻撃手段としては、十分以上だ。

 

「いいな。上手くいくだろうとは思ってたけど、想定以上に使いやすい」

 

「雷獣の尾が、そこまで凶悪な武器になるとはねぇ……」

 

「うわ、ホントだ。生きてるね~……。じゃあ縛って隠しとこっか!」

 

 見張り二人を、五ねぇが爆速で縛り上げて、倉庫の塀の内側に転がす。その隙にパンテラは倉庫の錠前に触れ、指一本で粉々に砕いて見せた。『破砕の啓示』だろう。

 

 俺たちは満を持して、秘密倉庫に侵入する。

 

 大扉をあけ放ち、中に入る。中に入り、ランタンを灯す。

 

 ぼう、とほのかな光を浴びて、最後の秘密倉庫の中が照らされた。今まで以上に価値がありそうなお宝が、ずらりと並んでいる。

 

 その、中央。一番目立つ場所に、青い宝玉が収められていた。思いの外小さい。手の内に収まるサイズだ。

 

「―――これだっ! これだよ!」

 

 宝玉に、パンテラが飛びつく。取り上げ、触れ、ランタンの火で照らす。

 

 そして、つう、と涙をこぼした。

 

「ああ、記憶通りだ。子供の頃、見せてもらった通りだ。やっと、やっと見つけたよ……!」

 

 パンテラはそう言って、涙を拭う。俺と五ねぇは微笑んで、二人でパンテラの背を撫でる。

 

 その時だった。

 

「触れたわね。よくも触れてくれたわね、盗人風情が……!」

 

「「「っ!?」」」

 

 闇の中から現れたグリーディアが、パンテラの持つ青の宝玉を掴んでいた。動揺に仮面を落としたパンテラは、目を剥いて「なっ、あんた、査問されてるはずじゃ」と言う。

 

 それにグリーディアは、「あら、あなた。ふふっ、あはははははっ!」と笑いだした。

 

「誰かと思っていたら! ああ、懐かしいわ。強盗はあなただったのね、パンテラ! 私の命を救い! 私にこの宝石のありかを教えてくれた大恩人じゃないの!」

 

 動揺していたパンテラから、グリーディアが宝玉を奪う。パンテラは歯の根が合わないようで、カチカチと歯を鳴らしながらグリーディアを見つめている。

 

「ってことは、取り返しにきたのね? その為に、随分関係ない場所で暴れてくれたこと。そう考えれば可愛い復讐だわぁ♡ だって奪われたものが釣り合わないものね?」

 

 クスクスと、グリーディアは言った。

 

「だって、私が奪ったのは一族郎党すべての命に、あらゆる財産ぜ~んぶ♡ 秘密倉庫だけで済ませてくれるのなら、なんて優しいのかしら!」

 

「あっ、あんた―――質問に答えな! どうやって現れた! 王族の査問を無視するほど愚かじゃないはずだよ!」

 

 仮面を被りなおすパンテラの問いに、グリーディアは答える。

 

「魔法よ。待ち伏せていればいいって相談役から言われたけれど、そんなの面倒じゃない? だから、侵入者が居れば私が呼び出される魔法を組んでもらったの。素晴らしい魔女様にね」

 

 くつくつとグリーディアは笑う。宝玉を覗き込み、「それに、ああ。気付かなかったけれど、あなた」と俺を宝玉越しに見る。仮面の下を見透かされている?

 

「あなた、第二王子殿下の付き添いをしていた子でしょう。第二王子と組んでいたのね。そう考えれば話のつじつまが合う。まったく、上手くやってくれたこと」

 

 でも、もうダメよ。グリーディアは嗤う。

 

「あなたたちの企みは露見した。あとは私の権力で押しつぶすだけ。殿下はうるさいでしょうが、身分の低い下賤を数人どうこうしたところで、国は動かないわ。そして殿下も……」

 

 グリーディアは余裕ぶる。それに俺たちは武器を構える。

 

「へぇ、自信家だな。三対一で勝つ自信があるってか」

 

「あら、その言葉そっくりそのままお返しするわぁ♡ 若い子は勇猛果敢で愛らしいこと。知らないのね。先の戦争を。あの地獄を生き延び、今もなお健在であるという意味を」

 

 どこからともなく、グリーディアは杖を取り出した。秤のような装飾の付いた、長い杖だ。

 

「良いことを教えてあげる。私のような老人を見たら畏れなさい。今なお生きながらえる老婆たちは、戦争を長期間生き延びた古兵(ふるつわもの)

 

 そして、カァンッ、杖の底で地面を叩いた。

 

「そのほとんどが、単独で百人以上を殺しまわった、大魔法使いなのだから」

 

 直後、俺たち三人は、急激に重くなった自重に押しつぶされた。

 

「「「―――――ッ!?」」」

 

 動けない。単純にそう思う。指一本に数十キロの重みが、全身に数百キロの重みが掛かったようで、どんな身動きも取れなくなる。

 

 地べたで動けなくなる俺たちを見て、グリーディアは剽軽に笑う。

 

「はい、終わり♡ 冥途の土産には豪勢だったかしら、隔絶された実力者の魔法は」

 

「おま……っ、く、そ、ババア……!」

 

「うふふふふっ、うふふふふふふっ♡ 可愛いわねぇ。あなただけは殺さずに飼ってあげる。もっとも、楽しむ過程で死なずに済むとは限らないけれど―――」

 

 ニタァ、とグリーディアが嗤う。

 

「そうねぇ、このクソ雌どもの肉を細かく削ぎながら楽しみましょう♡ 泣き叫ぶ姿を見ながらヤるのが、好きなのよねぇ♡」

 

 俺の視界が、殺意で真っ黒に染まる。絶対にこいつは生かしておけない。そう確信する。

 

 その時、俺の耳に、何者かが囁いた。額に、指で触れられるような感触。

 

『やはりこうなったね。だからこの一回だけ、ボクからのサービスだよ』

 

 重みが、消える。

 

「―――」

 

 俺は立ち上がり様に「明鏡止水」と呟いた。すると指輪のメイが刀へと変貌し、一閃する。

 

「……。っ? なっ? はぁっ!?」

 

 だが、倒すには至らなかった。頬に一筋の傷が入り、グリーディアの顔色が一変する。顔が真っ青になり、俺を驚愕の目で見る。

 

「何で? 何で動けるのよっ! ありえないわ! 数百人を殺した私の血統魔法よ!?」

 

「うるせぇ、黙れ。お前だけは、この場で」

 

「テクトっ!」

 

 俺の手を、背後から掴む者がいた。見ればパンテラも立ち上がり、俺の手を掴んでいる。

 

 その隙を、グリーディアは逃さなかった。

 

「じょっ、冗談じゃないわ! どうせこの場を逃げ延びれば私の勝ちなんだから! こんな狭い場所で殺されて、堪るもんですか!」

 

 グリーディアが扉をあけ放ち、近くの家に停まっていた馬車を奪って走り出す。

 

「チッ、逃げられた! 追うぞみんな!」

 

「追うってどうやって!? 相手は馬車だよ~っ!」

 

 泣き言をいう五ねぇに、「こうやってだよ! メイ!」と刀を前方に投げつける。

 

 ―――メイには、複数の能力がある。鉄の創造・回収、変身能力など。

 

 その中で、無人島から帰還して以来、俺が注目していたのは、変身能力だ。

 

 というのも、メイは和服を着せるようになった以前と以後で、指輪になっても重さが変わらない。いつも着ている浴衣は、指輪から人に戻っても着たままだ。

 

 ならば、身に着けたモノは、メイの変身能力内に収納されるのではないか。そういう仮定を立てた上で実験した。結果は成功。メイの変身は、収納を伴うものだった。

 

 それ以来、メイはいつも、収納して取り出さないだけで、携帯している物がある。

 

「ご主人、乗って!」

 

 ―――不思議な光を伴って、聖印バイクに乗って、メイがその場に現れる。

 

「はぁっ!? 何だいこれは! テクト!」「メイちゃん!? 何でバイク乗ってるの!?」

 

「説明は後だ! 二人とも乗れ! グリーディアのクソババアを追いかけるぞ!」

 

 俺は素早くバイクに乗って、エンジンをかける。二人が後ろに乗ったのを確認して、俺はバイクで走り出した。

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