【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
魔獣島再び
俺たちは再び、魔獣島に向かっていた。
乗るのは小型だが、魔道回路や魔石燃料を大量に乗せた船だった。搭乗員は船を管理する船長などを除けば六人。
「おぉ~! 見えてきたわ! あれが魔獣島ね!」
魔獣島の古代遺跡探索に誘ったら、参加を即答したアイギス。
「おぇぇえええ……! し、死ぬ。船酔い、死、おえぇぇぇええ……」
研究熱心でやる気満々、しかし船酔いは最悪なウィズ。
「ご主人ご主人、だっこ。魔獣島見せて」
昼の冒険というので目をキラキラさせているメイ。
「はいはい。だっこしてやる、ほら」
そんなメイの世話を焼く俺で、まず四人。
「分かっていたことだが、テクトたちは賑やかだな。なぁカノン」
「……」
そこに、主催の二人である第二王子チャミーと偉丈婦カノンで六人だ。
他にも声を掛けたのだが、最速で予定が合うメンバーはこれ、というので向かっていた。
例えばシアは生憎の病み上がり。リーフィはシアの看病。五ねぇはvsグリーディアで疲弊していて、セラフィはジェノーヴァの教会に駆り出されているとか。
にしても、この短期間でまた魔獣島か、と思わないでもない。ちょっと前まで魔獣島で無人島生活してたんだよな、とか想いを馳せる。
そうしていると、アイギスが俺の後ろから抱き着いてきた。
「テ~クトっ♡ 楽しみね、魔獣島!」
「おおっ、アイギス?」
俺は驚いて後ろを見る。アイギスは俺の腰に抱き着き、ぐりぐりと顔をこすりつけている。
アイギス。俺の幼馴染にして、大貴族の子女。有力血統のお嬢様だ。
小柄な体躯に、輝かんばかりの金髪ツインテール。いかにもツンデレ風の特徴満載だが、
「はぁ~……久々のテクトニウム……癒される~♡」
実態はこの蕩けるような顔である。俺のことを犬猫か何かだと思ってそう。デレデレだ。
「アイギスたちは結構戻ってくるの遅かったよな。実家で忙しかったのか?」
「ん~、まぁね。里帰りの歓迎半分、鍛え直し半分、みたいな」
陰キャもそうじゃない? とアイギスは、離れたところでヘリにしがみつきっぱなしのウィズに目をやる。ウィズは延々とオロロロロとやっている。可哀想。
「お母様も気合い入っててね、『今年こそあなたが次代第一席をとり返すのよ!』って。気持ちは分かるけどね……」
それで訓練していて長くなった、という事らしい。アイギスも大変だな。
「で、そこにウチの次代第一席サマがいるワケ」
ジロ、とアイギスが半眼で見る。そこには、チャミーの横でじっと屹立するカノンの姿が。
「……え? 『小さな要塞』の第一席って、カノンなのか?」
「そうよ。第二王子様の寵愛賜る傑物。女の中の女。ウチの第一席サマにして、未来の大将軍と呼び声高い大人物。学園最強の一角ね」
俺たちが噂するも、カノンはこちらを見る気配一つない。チャミーに話しかけられ、時折簡素な反応を返すばかりだ。
アイギスは立ち上がり、船のヘリにもたれかかる。
「にしても、ちょっと見てない間に第二王子と仲良くなってるって、テクトも目が離せないわよねぇ。それに……」
アイギスが、俺に抱っこされっぱなしのメイの頬を引っ張る。
「ちびすけはいつまでテクトに抱っこされてるのかしら~? 交代の時間じゃな~い?」
「んぃ~! ここはメイの特等席! あげにゃいー!」
「テクトにくっついていいのはアタシだけなんですけど! シャー!」
「ケンカすんな」
猫かよ。
俺がメイを下ろすと、アイギスとメイでニャーニャーと揉み合いになる。とはいえアイギスが本気を出したらメイは歯が立たないので、手加減はしているだろう。じゃれ合いだ。
俺は二人を放置して、ウィズの下に向かう。
「ウィズ~、大丈夫か~?」
俺が声を掛けると、ウィズは「は、はい……テクト君……」と憔悴しきった返事をする。
ウィズ。俺の学園入学最初の友達だ。
長い黒髪をヘアピンで留めた、正統派美少女。その実オタク趣味なガジェットマニア。
そんなウィズは口元を袖で拭って、空元気で笑う。
「胃の中身全部吐き出したら、ちょっと楽になってきました……。えへへ、古代遺跡調査を前にして、こ、こんなところで脱落する私ではありませんよ……」
「お、おう……体調には気を付けてな」
「えへへ……心配してくれるテクト君優しい……ぉぇ」
ウィズがまたヘリにしがみつくので、俺はそっと目を背けつつ、背中をさする。ウィズも胃の中身は見られたくないだろう。
「にしても、逞しいよな。これだけ船酔いしてるのに、遺跡調査のモチベはダントツだし」
そうなのだ。実はこの調査に、一番乗り気だったのがウィズである。血統が学者肌だもんな、とか思ったり。そういえば血統の第一席だしなウィズ。周りと比べても優秀なんだろう。
それにウィズは、こう答える。
「も、もちろんです、ぉえ、よ……! 今まで進入禁止だった魔獣島の古代遺跡を探索できるなんて、そんな機会人生にそう何度もな、オロロロロ」
「はいはい。到着したら休もうな」
俺がウィズの背中をさすっていると、チャミーとカノンが俺たちに近づいてくる。
「テクト、そろそろ着くぞ。準備はできてるか」
「まぁボチボチだな。この通りダウンしてるのが一人、残る二人もケンカ中だけど」
グロッキーなウィズに、メイにコブラツイストをかますアイギスを示す。チャミーはカラカラと笑った。
「仲が良いな、お前たちは。とはいえ、現地での体力くらいは温存しておくことだ」
チャミーが島へと目を向ける。気付けば魔獣島は、目と鼻の先にまで迫っていた。
懐かしい魔獣島。以前にバジリスクや地龍としのぎを削った死地。今では地龍は大人しくしているらしいが……。
「未踏の地でこそなくなったものの、魔獣島はいまだに危険な地。油断はしないようにな」
チャミーに言われ、俺は「そうだな」と肩を竦めた。
魔獣島に、船が迫る。
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