【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
「おお、見つかったな。……何をやってる?」
「うわはははははははは! こんなに! こんなにたくさんの魔導素材が!」
「ひぃ~ん……べたべたするぅ……うぇ~……」
大喜びの俺と半泣きのアイギスが糸を回収していると、俺たちを探しに来てくれたチャミー一行が、階段の上から現れた。
「テクト君! アイギスさん! 無事だったんですね!」
チャミーの横から、ウィズが涙目で駆け下りてくる。俺たちを抱きしめ「無事でよかったです……! わたし、あの後どうしようかと」と声を震わせる。
「はっ! というか、メイさんは!? 一体どこに」
「ふわぁああ……、眠ってたー……? アレ、ここどこぐぇっ」
「メイさんも無事でよかったですぅぅううううう!」
目覚めて指輪から人間になったメイが、ウィズに抱きしめられて窒息する。照れ屋のウィズがこれだけストレートに来るという事は、相当心配したらしい。
「悪いな、心配かけた」
「ほっ、本当ですよっ。わ、わたし、学校にみなさんしか友達いないんですよっ? ボッチになっちゃうんですよ!? 本当に、本当にも~~~!」
「そこ?」
多分そこではない心配をしているが、これも照れ隠しだろう。ぐすぐす言ってるウィズを、みんなで慰める。
「で、ウィズがチャミー達二人と合流して、俺たちを探しに来たってところか」
「ああ。何事もなくて良かった。……ところで、その糸束は?」
「持ち主の
「ふざけているようならカノンと戦ってもらうが」
「何でっ!?」
意図せず親父ギャグになっただけじゃん! 糸だけに(笑)。
と返そうと思ったが、ガチギレされそうだったのでやめる。みんなの目がとても冷たい。
「まぁその、狙ってた性質を持つ魔導素材だよ。持って帰って仕立てれば、前々から計画してた装備に出来そうだったからな」
「へぇ? どんなのを作るつもりなんだ」
「見てのお楽しみだな。ヒントは、俺はこれで空を飛ぶ予定だぜ」
「糸で空を……?」
俺が言うと「テクト君はすでに糸で空を飛ぶじゃないですか」「そうよね?」「ご主人グラップル忘れちゃった?」と口々にみんなが言い合う。ふふふ、空を飛ぶにも色々あるのだ。
「まぁいい。合流出来たことだし、道を戻りながら、私の方で掴んだ情報についても話そう」
カノンを先導に、チャミーが歩き出す。その後ろを俺たちはついていく。
「こちらでは、いくつか碑文を見つけた。当時の人間が記した古代文字だ。当時のスラングが多く読みにくかったが、デルフィアが一目で見破ってくれた」
「だ、だってそこの謎を解かなきゃ、動いてくれなさそうだったんですもん! 『どうせあいつらなら無事だろう』とか言って!」
何か、らしいな、というか。チャミーが悩む文字を一発で見抜くウィズすげぇというか。
「ここはな、とある超生物に対抗する、前線基地であったらしい」
「……超生物?」
「詳細は分からない。ただ、超生物としか解釈しようのないモノと、尋常ならざる手段で戦っていたのは確かだ。ネックなのは、信仰に根差す単語が多く、理解に苦しむ点だな」
信仰に根差す言葉。思い出すのはセラフィだ。一番身近な聖職者である。神アンチだが。
「それに、その先にもいくつか碑文がありそうなのに、道を遮られてしまっていてな」
「道を遮られるって」
「見れば分かる。階段を上がればすぐだ」
ちょうどそこで、俺たちは階段を登り切る。チャミーが入った部屋に続き、理解した。
「……何だこりゃ」
そこにあったのは、あまりに巨大な木の根だった。頭上から降りて地面を貫通して、さらに下に伸びている。そこにツル、ツタのカーテンができている。これはあまりにも邪魔だ。
「カノンに無理やり破壊させても良かったが、これが遺跡の支えになっている面もあるだろう。無闇に破壊して土砂崩れ、というのは避けたくてな」
「そうなったら最悪だな……」
英断である。にしても、確かにこの奥に、更に道が続いてもいる。
「それで、どうしたものかと悩んでいた。テクト、解決策はあるか?」
「んー……そうだなぁ……。俺とかこの場のメンツで、破壊的な解決策以外は、微妙だな」
一応ウィズを見る。一番可能性があるとしたらウィズだ。しかしウィズは、「用意がないですよ。学園ならともかく、ジェノーヴァでは無理です」と苦しい顔で首を横に振る。
「となると、この場にいない奴になるな」
リーフィ。この魔獣島の植物は、すべてその支配下だ。連れて来れば解決するだろうが。
「では、今日は引き上げとしよう。再び準備期間を設けて、再出発だ」
チャミーが踵を返す。その判断の軽さに「お前すごいな」と思わず俺は感心してしまう。
帰りの船に揺られながら魔獣島を見ていると、チャミーに話しかけられた。
「テクト、何を考えてる」
「チャミー」
チャミーが俺の隣に並んで、船のヘリにもたれる。俺は唇を引き締め、首をひねる。
「ちょっと、招集するメンツを考えてた。あと、準備期間でもう一つ取り掛かれるかなって」
「もう一つ?」
「階段のところで集めてた蜘蛛糸だよ。アレをどこに頼めば形にしてくれるか考えてた」
「ふむ、服飾店で良ければ紹介できるぞ。代わりに、碑文と植物の障害の件、任せたい」
チャミーに提案され、「マジ?」と俺は答える。
「元からその二つは俺が手を回すつもりだったが」
「私のセリフだ。それをテクトがこなしてくれるのなら、代りにテクトの悩みを解決しよう」
「おー! 助かるよ、チャミー。なら、任せてくれ」
俺が快諾すると、チャミーはくくっと笑って、俺を見た。
「テクト、お前は頼もしい奴だな。男にこんな感情を抱く日が来るとは、思っていなかった」
「よせよ、照れるだろ。じゃあチャミーを待たせないように、急いで設計図描いちゃうな。服飾にしてはだいぶサイズがデカイから、腕の立つ人に任せたい。かなり伸び縮みもするし」
「待て待て。な、何だ? 設計図? 描くのか? この揺れる船で?」
「おう! じゃ、任せた! 行ってくる!」
「あっ、まっ」
俺は時間が惜しいと駆け出す。それを見送りながら「テクト、お前すごいな……」とチャミーは唸っていた。