【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
さて、島に戻ってすぐメンバーを集めた俺は、再集合までの数日、暇になっていた。
理由は簡単。爆速ですべきことを終えてしまったからである。蜘蛛糸もチャミーに託してしまった以上、俺がやるべきことはなくなってしまったのだ。
セラフィ、リーフィも出発に向けての準備に忙しいし、他二人も同様だろう。シアの部屋も覗いたが、思いの外五ねぇとも打ち解けていたようなので、そっとしておくこととした。
何やら、五ねぇから戦闘知識を伝授されているらしい。というのが今の懸念である。え? これアレか? ゆくゆくは五ねぇの動きする幻影騎士部隊ができる? ヤバくない?
そんな調子で、俺は現在予定が浮いてしまって、暇なのだった。
「……適当に散策でもするか」
前世ならネットで無限に時間を消費できたものだが、異世界ともなるとそうはいかない。この世にショート動画もドパガキもいないのだ。
と、そんなことを考えていたタイミングだった。
「テクト! 遊びに来たわよ!」
「アイギス?」
目をキラッキラに輝かせたアイギスが、俺の部屋の扉を猛烈な勢いで開け放った。
「夏と言ったら、やっぱり海遊びでしょ!」
まるで少年のような笑顔で訴えるアイギスに、俺は渡りに船とばかり飛びついた。
何でも、アイギスも特に再準備とかなかったため、暇だったそうだ。確かに継続探索組は、目立った装備不足がない限りは暇か。
ということは、とアイギスの文句を無視してウィズも誘いに行ったのだが、生憎ウィズはジェノーヴァの拠点に戻るなり血統からの手紙が来て、その課題に追われているとか。
「あのっ! すぐっ! すぐにでも終わらせて行きますからっ! 待っててください!」
「え~? 別にいいのよ? 陰キャも血統の課題に追われて大変だろうし~♡」
「ぜっっっっっっっっっったいに行きますから!!!!!!」
ということで、ウィズは途中参加予定。俺とアイギスは、先んじて砂浜に訪れていた。
「ん~! ジェノーヴァの海は良いわねぇ。砂浜がキレイで!」
そう言って、アイギスが伸びをする。そんなアイギスの水着姿をつい見てしまう。
アイギスは上半身ストライプ柄のビキニに、下半身はショーパンジーンズの、スポーティな着こなしだった。アイギスは痩せている分、こういう躍動感のある着こなしが似合う。
胸元はささやかだが、しかし無いワケではない。むしろくびれがしっかりある分、思ったよりある……! とドキリとさせられる。
「アイギス、水着似合ってるな。可愛いぞ」
「っ。……そういえばテクトって女の水着褒めるのよね、忘れてたわ」
アリガト、とアイギスはむず痒そうな、気恥ずかしそうな、そんな顔だ。
それからマジマジと俺を見て、悦に入った表情で俺に抱き着いてくる。
「テクトもかっこいいわよ♡ え、っていうかエロ。ちょっ、もうちょっと何か着ない?」
「俺は自分の裸を出し惜しむようなキショイ男にはなりたくない」
「テクトの精神性は女の中の女なの、何なのかしらね……じゃあ人目につかないところ行きましょ。アタシがテクトの水着姿を、他の女に見られたくないのよ」
言われて気付く。確かにビーチにいる女性の目が集まっている気がする。普通に男もいないでもないのだが、何故俺に集まるのだろう。不思議だ。
「テクトは普段でも悪くないのに、脱ぐと倍くらいエロくなる自覚がないのがね」
「アイギスの性癖は特殊だなぁ」
「極めてニュートラルよ。ほら、こっち」
アイギスに手を引かれ、岩向こうの人気のないエリアに移動する。ここなら確かに、一目を気にせず遊べそうだ。
「ふふふ……♡ これでテクトを独り占めよ……♡」
そして何故か悪い顔をするアイギスである。
だが、俺はそんなこと、知ったことではない。
「よぉし! じゃあ思いっきり遊ぼうぜ! 何やる!? 泳ぐか? それとも砂遊びか!」
「遊ぶ前に日焼け止めクリーム塗らない? 背中塗ってよ」
「……っす」
出鼻をくじかれる俺である。
アイギスは抱えていたパラソルとシートを敷き、俺に日焼け止めを投げ渡す。シートの上でうつぶせになって、ビキニの後ろ紐をほどく。
「アタシ日焼けすると赤くなっちゃうのよね~。魔力補助で日差しも解決すればいいのに」
アイギスは照れらしい照れをまったく見せずに、俺を待つ。俺は日焼け止めを出しながら、その警戒のなさに渋い顔。
貞操逆転世界らしいというか、何と無防備な姿だろうか。エロいことをされるとは微塵も思っていない。
とはいえ、こういう発想をするのも俺くらいのものなのだろう。何を言うこともない、と俺はアイギスに近づき、背中にクリームを塗っていく。
「んっ♡ ふふっ、くすぐったいんだけど~♡ 悪戯しないでよね~?♡」
「してねぇぇええええ……!」
思い出せ。シアの世話と同じだ。心頭滅却すればどうという事はない。そもそも背中だし。
と思いつつも、感じるのが肌の柔らかさだ。
魔力補助とは不思議なもので、女の子の肌は丈夫だが固くない。女の子らしい柔らかさ、華奢さは維持しながらも、衝撃には男よりも頑丈になる、というものなのだ。
だからか、クリームを塗って感じるアイギスの肌は、華奢な女の子そのもののそれだった。柔らかく、温かく、すべすべで……。
―――心頭滅却! 心頭滅却!
「ぬ、塗り終わったぞ……!」
「ありがと♡」
俺は汗を拭う。夏の暑さにかいたものか、このシチュに浮き出たモノかは分からない。
するとアイギスは言った。
「じゃ、じゃあ、アタシもテクトに塗ってあげるわね……?」
何か妙な笑みを浮かべるアイギス。俺は首を傾げつつ言う。
「俺は黒くなるだけだし、別に塗らなくてもいいけど……」
「いやっ! 男の子なんだから、塗った方がいいわ! ケアしとくに越したことはないの!」
「そ、そうか……?」
よく分からないが押し切られて攻守交替。俺がうつぶせになって、アイギスが俺の上にまたがって日焼け止めを塗り始める。
「……テクトの体、ムキムキね……。服着てるとそういう感じしないのに、やせマッチョっていうか……」
「あー、まぁ、機動力が落ちない鍛え方をしてるからな」
「肌も何かすべすべしてるし……、筋肉も柔らかいし……! なのに無防備で、エッ……フー……ッ! ……ケア、とか、してる、の……?」
「えー? ははっ、俺がするタイプに見えるかー?」
カラカラ笑いつつ、俺はくつろぎスタイル。妙に手つきが嫌らしい気がしないでもないが、どうでもいいのでスルーしておく。
「あ……ねぇ、テクト……? アタシの日焼け止め、肌に結構残ってるから、こっちも塗ってあげる……♡」
「はっ? いや、それは問題じゃないか!?」
「いいからいいから♡ えーいっ♡」
「っ!?」
アイギスが俺の上にのしかかってきて、肌同士をこすりつけてくる。俺はアイギスのいたずらっ子っぷりに困りつつ、腕力差的にどうしようもないので、険しい顔で堪えるばかり。
「フー……ッ、フー……ッ こんなに無防備で…… 我慢よ、アイギス……我慢……!」
アイギスは全身で日焼け止めを塗りながら、夏の熱気にやられているのか、やたら呼吸が激しい。大丈夫かな。熱中症になる前にやめさせて、水でも飲ませた方がいいか。
振り返ると、顔を赤面させてじっと俺を見るアイギスが、俺の上で影を落としている。
「なぁ、アイギス。大丈夫か? 暑いなら一旦休んで水でも―――」
「―――もうダメっ! ちょっ、ちょっと行ってくる!」
「えっ、どうした。あ、休憩?」
俺がキョトンとしている間に、アイギスが砂煙を立てながら、爆速で向こうへと駆けていく。「んん……?」と見守っていると、妙なことが起こった。
視界の先にある、やたらデカイ岩。その一つが、轟音と共に根元から砕け落ちたのだ。
「はぁっ!?」
かと思ったら、すぐにすっきりした顔のアイギスが戻ってくる。
「ふぅ……。これに限るわね」
「いやっ、はっ? なっ、何があった!?」
「欲求は発散するに限るってこと! じゃ、日焼け止めも塗り終わったし遊びましょ!」
「お、おう……? そう、だな……?」
釈然としないながらも、俺は頷く。
……えぇ……? どういうこと……?
さて、そんな一幕がありつつ、俺とアイギスはしばらく二人で海遊びをしていた。
とはいえ体育会系の二人である。遠泳したり潜水したりして時間が過ぎた。
そうして昼飯時を過ぎて午後。食事を済ませて、さて次は何をして遊ぼうか、という時にウィズが現れた。
「テクト君! 終わらせて来ましたよ! あの課題地獄、終わらせてきました!」
「ウィズ!」
俺が目を向けると、ウィズが輝かんばかりの笑顔で走り寄ってくる。アイギスは俺の後ろで「チッ、意外に早く来たわね」と舌打ちしている。
ウィズは、基本は普通のビキニで、清楚風な着こなしだった。目立つのは、今まで気づかなかったお尻の大きさである。
胸もよく見たらデカいよな、とは思っていたが、尻が想定よりもずっと大きい。それが重ね掛けされた水着を纏っていて、防御力は上がっているのにセクシーさが上がっている。
しかも走っていて胸もブルンブルン揺れるものだから、俺は思わず「すぅー……」と深呼吸。すごい。ウィズがすごい。
「……スゥー……え、テクト君脱ぐとすっご。いえ、知ってはいましたが、エッロ……」
「テクトをエロい目で見てんじゃないわよ陰キャァッ!」
「ううううう、うるさいですよちびっこ! 私の目がエロいって分かるってことは、ちびっここそそういう目で見てるんじゃないですか!?」
「あああああ、アタシはいいのよ幼馴染だし!」
そして二人のいつものケンカである。俺は「はいはいよー分からん理由でケンカをするな」と止めに入る。
「テクトっ! いいの!? こんな弱者女性陰キャにエロい目で見られてるのよ!?」
「何も思うところがない」
「ちちちちちが、いやちょっと! 弱者女性は言い過ぎじゃないですか!? これでも血統第一席なんですけど! ちびっこと違って!」
「言ったわね陰キャ! 今日という今日こそ白黒つけてやるわ!」
「お前ら何か今日興奮気味じゃない? 落ち着けって」
諫めても、二人は歯を食いしばって睨み合っている。何だってんだ。
と、そこで俺は思い立つ。
「いや、せっかくなら勝負にするか」
「はい?」「え?」
「泳ぐのには飽きてきたし、次はビーチバレーでもしようぜ。ちょうど持ってきてあるし」
荷物から空気を入れた軽いボールを取り出す。それから「でも戦力差がありすぎるか、よし」と俺はウィズの隣に立つ。
「じゃ、俺はウィズチームに参加する。俺&ウィズVSアイギスだ」
「っ! 聞きましたかちびっこ! 私が官軍です!」
「てっ、テクトぉ~っ!」
アイギスが涙目で俺を呼ぶが仕方ない。だってアイギスが強すぎるし。
「せめて先行はアイギスに譲ってやるよ。そら」
ボールを投げ渡す。フィールドが区切られているわけではないが、十分な空間はある。
アイギスは受け取って、ぐす、と拗ねつつ言った。
「こうなったら、陰キャには徹底的に痛い目を見せてやるわ……! とぉっ!」
アイギスが、ボールを投げ上げる。そして跳躍し、腕を振るう。
「ぶっ飛べ、陰キャァッ!」
「ひっ、ひぃぃぃいいいっ!?」
明らかにウィズを狙い撃った一撃に、ウィズは避け切れずに吹っ飛ばされる。どんな威力だよ、と思いつつ、俺は「ウィズっ!」とウィズのカバーに走った。
だがアイギスの放った球の威力は流石で、俺は受け止め切れずにウィズに押し倒される。すると体勢的に、倒れる俺の顔がウィズのお尻で押し潰される形に。
や、柔らか、重、柔らか……。
「うぅぅううう……! ちびっこ、本気出すんじゃないですよ! その所為でテクト君が、アレ? テクト君?」
「陰キャ! 早くテクトの上から退きなさい! 汚い尻で踏んでんじゃないわよ!」
「あっ、大丈夫ですか!? ご、ごめんなさい私の汚いお尻を―――汚くないんですが!?」
「だ、大丈夫、大丈夫……」
乗りツッコミしつつ、慌ててウィズが退く。完全にラッキースケベ展開でも、貞操逆転世界では責められる展開にならない。むしろ心配までされてしまう始末。
「……役得でした」
「はい? ともかく、無事ならよかったです。ちびっこ! この借りは忘れませんよ!」
「上等! 掛かってきなさい!」
そして何事もなく、二人はビーチバレーに戻っていく。俺はそれに参加しながら、ウィズのお尻の感触をどうにか脳裏から引き剥がそうと苦労するのだった。